(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
「アブソーベントバン」
パラレルモンの一つ目から光線が放たれる。それは真ん前に立ちはだかるマグナモンではなく、その向こう側でノートパソコンをかかえている大輔目掛けて放たれた。
「大輔っ!」
マグナモンがすかさず庇う。
「マグナモン!」
次の瞬間、大輔たちの目の前でマグナモンが忽然と姿を消してしまったではないか。
「マグナモン!!」
パラレルモンは高笑いした。
「俺は様々なパラレルワールドを移動し、渡った先にいるテイマーをデータを吸収し、自らを強化することが出来るのだ!お前達デジモンに興味はない!狙いは選ばれし子供たちだ!!」
「マグナモンをどこにやったんだよ、お前っ!」
大輔の叫びにパラレルモンは返した。
「お前が素直に取り込まれていれば助かったのになあ!俺の光線はテイマーを吸収し、それ以外を別次元へと飛ばしてしまうのだ!どこにいったかなど知るはずがないだろう!時空の狭間から飛ばされたデジモンたちが生きて帰ったことなど今まで1度もないのだから!アッハッハッハッハッ!!」
「そんな......」
大輔の瞳が揺れる。
「お前達もろとも俺の糧となるがいい!」
「大輔くん、あぶない!にげて!」
「大輔っ!」
手を伸ばしたが遅かった。姉が攫われ、マグナモンがいなくなり、大輔に蓄積していた精神的ダメージは致命傷となり前後不覚になってしまう。反応がおくれた。我に返った時には大輔はパラレルモンの放った光をもろに受けてしまう。自分を構成しているデータがすさまじい勢いで輪郭を失い、近くにいた京の悲鳴が聞こえる。大輔を取り込み、自身を大幅に強化することに成功したパラレルモンの咆哮が轟いている中、世界は闇に塗りつぶされていった。
「......あれ、おれ......なんでここに?」
大輔は気がつくと見覚えがある黄色い花畑の真ん中に倒れていた。
「そうだ、マグナモン!みんな!パラレルモンはっ!?」
一気に朦朧としていた意識が覚醒状態にはいり、大輔は飛び起きるのだ。あわててあたりを見渡すが広がっているのはサマーメモリーズとよく似た黄色い花畑である。大輔はデジヴァイス、ノートパソコンがあることは確認できたがパラレルモンはおろか選ばれし子供たちもパートナーデジモンも見つけることができない。
「も、もしかして、おれも別次元に飛ばされちゃったのか?パラレルモンに取り込まれちゃった!?」
おーい!と叫ぶ大輔の声はゆるやかにとけていく。
「どうしよう、どうしよう、デジモンに取り込まれちゃったらどうすりゃいいんだ!?マグナモンやっぱいないし、大丈夫かなあ!?」
古代種の特徴について真っ先に思い出した大輔は青ざめるのだ。
「どうしよう、マグナモン死んじゃったら......どうしようどうしようどうしよう!おれ取り込まれちゃったら誰が姉ちゃん助けるんだよ......ちくしょー!!」
叫んでも無駄なことなのはわかっていたが大輔は衝動を抑えることができない。ここが今の大輔にとって全ての原点であるサマーメモリーズによく似た空間だからだろう。
迷い込んだグミモンとチョコモンを迎えにいたグリフォモンと初めて遭遇して、色々と勘違いして戦いになった。チョコモンたちが連れ去られ、ホメオスタシスによる介入があってみんな忘れてしまったのだ。
「......まてよ、チョコモンだけ?いや、違うよな?この時おれ、選ばれし子供になったってゲンナイさんいってたし」
なにかわすれているような。
そのとき緑色の巨大な羽が大輔の前に舞い降りた。それはまるで雪のように降り注ぎ、大輔は空を見上げた。そこにはチョコモンと共に連れ去られていくジュンの姿があった。
「姉ちゃん!」
大輔はあわててはしる。
「姉ちゃんを離せ!どこに連れてく気だよ!」
大輔はジュンを呼びつづけるがぐったりとしたまま動きもしない。
「姉ちゃん!」
目の前で無常にもグリフォモンはいなくなってしまった。
「えっ、なんだよ、これ。なんで姉ちゃんが?!そうだ、これを使えば!」
大輔はとっさにデジヴァイスをかかげた。
「デジタルゲートオープン!」
今度は世界が白に塗りつぶされた。気づけば大輔はさっきまでいた闇貴族の館地下施設から繋がるデジタルゲートまえにいた。緑色の羽を拾いながら先を進んでいくと、デジタルゲートがあらわれた。初めから設定されている。通り抜けられるやつだ。大輔はその先に進んだ。
「なんだこれ、ピラミッド?」
大輔がいたのは世界ふしぎ発見あたりで見た事があるピラミッドの内部みたいな狭くて暗くて赤い土壁の通路だった。どうやらこの先にグリフォモンはいるらしい。大輔は恐る恐る先を進んだ。
ミイラたちが眠る地下室ではなく、オーバーテクノロジーじみたら立派な研究室がそこにはあった。見たことがない鳥型のデジモンとグリフォモンが寝かされてなにか研究されているのが見える。その向こう側の手術台にジュンが横たわっているのがみえた。
ぶあついガラスの向こう側でまっ白な手術衣を着た男達に囲まれて、やはりまっ白な手術台にジュンがいる。
「姉ちゃん!」
大輔はたまらずガラスを叩いたが男達は聞こえないらしい。大輔はなにがなんだかわからない。なぜジュンがデジタルワールドに連れ去られて手術をされているのかわからない。そのせいで、ジュンの死が決定的になるような不安が強くなってしまう。麻酔で昏睡しているのかもしれないが、死の予行演習のような気がしたのだ。
「姉ちゃんから手を離せよ!姉ちゃんに何する気だ!くそっ、姉ちゃん!姉ちゃんてば目を覚ませ!!」
その時アラームがなった。手術室が真っ赤に染まる。
「あ、や、やっべ、ばれた??」
ようやく我に返った大輔は今更ながら縮こまるがどうやらアラームが知らせているのは別の侵入者のようだ。男達はなにやらボタンを押したり、パソコンのキーボードを叩いたりと大騒ぎしている。だれもが真ん前の巨大なモニターをみていた。
「な、なんだ、バレてないのかあ。よかった......」
大輔はガラスに張り付きながらモニターを見てみる。そこにはフードをかぶった男達と同じ体格をした人影が真っ赤な世界で逃げ惑っているのが見えた。
「えっ」
大輔は目を疑った。そこにいたのは侵入者と思しきデジモンだったのだが、次々と人影を取り込んで大きくなっていく。人影だけではない。そこにあるデータも機械もなにもかも取り込んでどんどん大きくなっていくのだ。まるでb級ホラーの映画かゲーム、小説の冒頭のような流れがそこにはあった。研究室で実験体が関係者を皆殺しにして脱走する。そんな妄想に震え上がってしまうくらいにはスプラッタな光景が広がっていく。
やがてモニターは白黒になり、セキュリティシステムが作動したのか隔離の防壁がわりのシャッターが降りていくのがみえた。そして手術室は騒がしくなる。
大輔は耳をそばだてた。
「時間がありません!」
「だが、このままではこの子供の精神データまで食われてしまう!はやく!」
「我々はどうなってもいい!これからの未来を担う人間だ。害したら我々の未来も閉ざされる!」
「やつに限界はないのか!?」
「わかりません!」
「データならなんでも融合するなんて!」
ジュンの頭部にはめられている機械と繋がっているパソコンのパーセンテージがどんどん高まっていく。100になった瞬間、男達はジュンをかかえてグリフォモンをふたたび起こし、デジタルゲートに送り返した。
「な、なんだったんだろ?」
よくわからないまま大輔も離脱しようとしたが、ばき、という音が響く。シャッターに凹みができたのだ。がんがんがんという黒板をひっかく音に混じりながらシャッターをべこべこにしていく。やがて失ったシャッターは見るも無残なまでに破壊されつくし、侵入者をいよいよ許してしまう。ひとりがパロットモンを転送しようと必死で、他の男達は時間稼ぎをし始めた。
断末魔が響き渡る地獄絵図が一気に展開されていく。
「......ぱ、パラレルモンみたいなやつ......」
大輔は見ていることしか出来ない。侵入者は成長期にしかみえないというのに、次々と研究所のあらゆるもののデータを吸収して強くなることを望んでいるようだ。人間もデジモンも機械も扱いに違いはなく、たんたんと取り込まれている。
大輔はその場から動くことができなかった。