(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第109話

黒いオメガモンは明らかに高い防御力を誇る個体だった。太一たちのオメガモンとは異なり、ガルルキャノンをメインで扱うまさしく高防御高知力の二点で絶対的な安定性を誇る個体だった。

 

グレイソードは威力こそ高いが攻撃力が控え目で、オメガモンほどダメージはない。だがそれと引き換えに氷属性の単体大貫通魔法のガルルキャノンはより大きなダメージが出る。ウォーグレイモンとメタルガルルモンは間髪でよけたが、さっきまでいた場所は一瞬にして凍りつき、またたくまに瓦礫とかしたのである。反撃として放たれた2体の必殺技は物理耐久を高めてどっしりと構え、魔法で倒していく展開が得意らしく、目立ったダメージが見つけられそうになかった。

 

つまり同じオメガモンながら、太一たちのオメガモンより堅実な立ち回り方を得意とするデジモンのようだ。

 

「ガルルキャノン!」

 

真っ黒な砲台が炸裂した。ここぞという時にガルルキャノンが突破口になるほどの威力となるらしい。厳重に封じられているはずの旧ゲートポイントに続く扉に穴が空いてしまう。

 

連発するのは威力に任せて無理やり突破するつもりのようだ。何度も漆黒の氷が打ち付けられ、すさまじい衝撃が内側から扉をこじ開ける。

 

「まずいぜ!」

 

「逃がしてたまるか!」

 

ウォーグレイモンとメタルガルルモンはふたたびジョグレスを試みる。2体の究極体のデータが分解され、一体に融合していく。3月4日の奇跡をデジタルワールド側が再構築して再現したオメガモンである。あの時ほど強力なステータスでこそないがこれ以上ないほどの強さなのは太一たちも自負しているのだ。みんなから託されたものを自覚しているヤマトも諦める気など微塵もなかった。

 

「聞くまでもないが、一応、問うておこうか、若造。ここで何をしている」

 

ぞわりと悪寒が走る。勢いよく振り返ると、かなり距離をとっていたはずだが、黒いオメガモンはすでにいた。

 

オメガモンは装填されていた銃弾を連射するが、強固にされた黒い輝きに防がれ、被弾することはない。追いかけてくる黒の閃光を避ける。ド派手な音を立てて砕け散る岩壁。貫通した衝撃は想像に難くない。期待はしていなかったが、生かして帰す気はないらしい。憎悪を隠そうともしない黒いオメガモンは容赦ない。

 

 

進行方向に現れたのは黒い障壁。身に覚えがある妨害だ。3月4日に何度もデジタルゲートでみたものだ。衝突する寸前で方向転換し、追いかけてきている黒いオメガモンに発砲する。

 

銃声が響くが、黒いオメガモンを傷つけるには至らない。人工的に氷結する小細工など意味をなさない。純然たる悪意は、邪悪さを持たない。オメガソードは邪悪に侵されたデータしか作用しない。初期化したところで、ミレニアモンのところにかえる暗黒物質となるだけだ。復活などされたら純粋なダメージしか与えられない。予想をはるかに超える速さで接近し、オメガモンの武装の合間を縫って、切断しようとする。

 

オメガモンは伝家の宝刀を抜いた。どうにかかわすことができた。倦怠感に襲われながら嫌な汗が伝っていく。連発は出来ない。他の仲間に連絡を取りたいが、その猶予すら黒いオメガモンは与える気はないのだろう。連絡で来たところで無意味だ。黒いオメガモンが展開する結界が重厚になっている。

 

 

「なるほど、そうくるか。面白くなってきた」

 

オメガモンは全速力で駆けた。大量の漆黒の被弾が舞う。それに追従する形で黒いオメガモンは追いかけてきた。それを確認したオメガモンは辺りに弾丸をばら撒いた。爆発音がして、閃光が走り、辺り一面が氷結と化す。すぐに身を隠し、引き金を引いた。

 

微かに聞こえた声は、何かを発動させる。生存本能が悲鳴をあげている。それはほぼ反射的だった。周囲にあるものが粉みじんになる。駆け出したい衝動に駆られるが、オメガモンは堪えた。過ぎ去った周囲が瓦礫と化す。冷静さを失いながらも、精細さを欠きながらも、オメガモンは銃口をふるった。物言わぬ骸になるのは、黒いオメガモンを滅ぼしてからだ。許されざる蛮行だけは阻止しなければならない。

 

 

「どうした、もう終わりか」

 

 

黒いオメガモンは防御などしなかった。躊躇せずオメガモンの目前まで踏み込み、その大剣を受け止めた。じわりと血がにじむ。赤い目が細められる。積み重なった瓦礫から現れた漆黒の閃光がオメガモンを貫いていた。

 

 

「お前の本気はこの程度じゃないんだろう?あの時のお前のように、私を倒しうるとっておきがあるんだろう?みせてみろ」

 

 

焦点が合わない。立つこともできない。完全に感覚がやられている。嬉々としてこちらを見下ろす赤は、狂気に満ちている。殺し合いを切望する。身を焦がすほどの激情を滾らせながら生きている。

 

「「誰のことをいってるんだ。俺(ぼく)たち自身とでもいうつもりか?俺たちは負けない!」」

 

オメガモンが叫んだその瞬間に、太一とヤマトのデジヴァイスが光り輝いた。

 

「なんだ!?」

 

「光が......」

 

オメガモンは琥珀色の光につつまれた。

 

 

白い翼が舞った。

 

「オメガモンが......」

 

「変わった......?」

 

一瞬、太一たちはタケルたちがパラレルモンを倒して加勢に来てくれたのかと思った。だが違うのだ。その翼は太一とヤマトを守るように存在しており、オメガモンから生えているのは明らかだった。

 

まるで白いマフラーのように揺らめいている。

 

主に変化した部分としては、マントが翼になったこと、ボディに水色のラインが入ったこと、グレイソードが日本刀っぽくなり、ガルルキャノンがビームソードにかわったこと。白銀の天使と化したオメガモンがそこにいた。

 

黒いオメガモンのオメガソードを一刀両断し、ガルルキャノンの銃口をねじ曲げて軌道をずらしたのだ。あまりの早さに太一たちすら目視で確認することはできなかった。

 

「なあ、ヤマト......こいつ、もしかしてあの時のオメガモン?」

 

「太一もそう思うか?」

 

ここにくるまで世界中のテイマーたちに育てられた無数のディアボロモンたちが融合して誕生した謎のデジモンに窮地に追いやられたとき。セラフィモンとホーリードラモンが自信の持つ全ての聖なる力と進化に使用していたエネルギーすべてをオメガモンに明け渡した。

 

ほんの少しの間だけ半透明になったオメガモンのステータスが急上昇し、一気に形勢逆転したことを太一とヤマトは思い出したのだ。そこに光の進化を司る力が本人が失神するレベルでオメガモンに流れ込み。あまりの激闘に熱くなっていた世界中のテイマーたちがディアボロモンだけでなくオメガモンも応援し始めたことで一時的とはいえ3月4日みたいな状況下になったのだ。

 

しかも選ばれし子供たちだけだったあの時とは違い、ディアボロモンが用意した凄まじい数のテイマーたちの応援がたしかにオメガモンの力になっていたのだ。

 

あの時太一とヤマトが感じたデジヴァイスの振動と熱さは尋常なものではなかった。それと同じくらいの鼓動がたしかにこの手の中にある。

 

あの状況下でさえ半透明にしか顕現できなかったオメガモンが今、デジタルワールドが選ばれし子供に提供したヴァリアブル機能により解放されたのだとしたら。

 

明確な形をえることで無限大な力が形にハメられて弱体化するのだとしてもオメガモンが獲得した新たなる形態が場合と状況によってはすさまじい力を発揮するのは間違いなかった。

 

「虜玲刀(グレイトウ)!」

 

黒いオメガモンのガルルキャノンがすさまじい勢いでガラクタと化していく。その膨大な魔力を増大させて集約し、発射するためのパーツを失った黒いオメガモンはその魔力の行き場をうしなう。

 

あたりが真っ黒に染まるほどの大爆発が太一たちを襲った。

 

闇は先刻よりいっそう深くなった。中は真っ暗に静まり返っている。真っ暗闇で何も見えない。墨のような闇に浸された濃くて深い闇がある。

掌を広げると、闇のベールの感触がつかめそうなくらい、まるで夜がそこに結晶していた。

 

まるで深海の底におしこまれたみたいだった。濃密な闇に奇妙な圧力を加えていた。沈黙が鼓膜を圧迫していた。黒色の絵の具を幾重にも塗り重ねたような深く隙のなき闇。冗談抜きで恐いのだ。丸裸にされたような気がする。

 

嫌な気分だ。暗い暗黒は暴力の粒子をまわりに漂わせている。それがうみへびのように音もなくするすると近寄ってくるのを見ることさえできないのだ。救いようのない無力感が支配している。体中の毛穴という毛穴が直に暗闇に曝されているような気がする。

 

 

無数の世界がシャボン玉のように強烈な風を伴ってふきこんでくる。そこには選ばれし子供たち、パートナーデジモンたちが閉じ込められていた。

 

「パラレルモン!」

 

「みんな!」

 

「みんなを返しやがれ!」

 

太一の叫びにシャボン玉に閉じこめられている選ばれし子供たちはデジヴァイスをみた。激しい発光と振動を繰り返し、平行世界に閉じこめられている最中1人ではないのだとしらせてくれる。

 

真っ白なオメガモン目掛けて選ばれし子供たちのデジヴァイスから放たれた光が一気に集結していく。

 

「「いけえええええ!」」

 

二重で太一たちの声が木霊する。

 

「虞玲刀!!」

 

パラレルモンは一刀両断された。

 

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