(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
パラレルモンを倒したことで平行世界に幽閉されていたパートナーデジモンたちは帰還した。パラレルモンに取り込まれていた選ばれし子供たちも生還できた。だが。
「ダメです、あちら側からゲートが閉じられている」
「まさか、ミレニアモン」
「いや、世界が正常化してるんだ。未来にいったわけじゃなさそうだ」
遼とミレニアモンの姿がどこにもないのだ。セイバードラモンの姿もない。ダークエリアに送られた形跡もない。突然消えてしまったのだ。
デジタルワールドイリアスの歴史が正常化しているからミレニアモンは倒されたはずだがいない。ジュンの行方もいぜんしれない。
亀裂は塞がり世界は救われたが選ばれし子供がふたりも行方不明になってしまったのだった。
デジタルワールドから帰還した賢は、コクワモンと自室で待っているはずの治を迎えに行った。
「兄さん、デジタルワールドにいこうよ。ミレニアモンが改変した歴史がなかったことになったから、暗黒の球体、消えるんじゃないかってゲンナイさんが」
「そのことなんだが、賢。僕はこのまま待機しようと思う」
「えっ、それじゃあ治兄さん、ゲンナイさんみたいに部屋から1歩も出られなくなっちゃうよ!?」
「それでもだ。ミレニアモンが倒されたはずなのに遼が行方不明な今、その動向がわかるのは球体がある僕だけだからな」
「わ、わかるの、兄さん!?」
「ああ」
治は感情的になった瞬間に暗黒の球体に意識を乗っ取られそうになるためか務めて冷静に返した。
「ミレニアモンは遼が存在する限り復活し続ける。時空を超えるために遼とサイバードラモンごと自爆したミレニアモンは今、未来にいるらしい」
「未来?」
「遼を探してるが、見つからないようだ」
「じゃ、じゃああのゲートの先に行って未来のデジタルワールドを助けに行かなきゃ!」
「いや、僕達も遼を先に探さないとダメだ。ミレニアモンの目的はあくまでも遼だ」
「どうやって?」
ゲンナイさんから緊急連絡が入った。治たちは一旦隠れ家に向かった。
「ミレニアモンの改変した歴史の修正具合を把握するため、精査していた予言の書の初代選ばれし子供の欄に秋山遼の名前が新たに記述されていることがわかったんじゃ」
一瞬、時が止まった。初代選ばれし子供。それはかつて古代デジタルワールド期において、5人でアポカリモンを封印した子供たちのことだ。1946年、アメリカのフィラデルフィア大学が開発し、公開起動したENIACが最初のサーバである。それ故に判明している子供の中にENIACの開発に携わった女性プログラマーが混じっていた。ここにいる全ての子供たちとデジモンたちの共通認識である。
「Mrsマクナルティに問い合わせたところ、かつての仲間に秋山遼という少年がいることを認めてくれた。つまりじゃ、正常化したデジタルワールドの歴史に遼の名前があるということは、遼は初代選ばれし子供ということになる」
「ふざけんな!じゃあ、今までのミレニアモンとの戦いは初めから決まってたってことかよ!」
「ここまでくると偶然と片付けるにはおぞましい符号ばかりじゃ」
はっきりといいきられ、太一は言葉に詰まってしまう。
「ワシらの世界でさえミレニアモンにとっては平行世界にすぎないように、連動する現実世界もオリジナルの世界では決してないのじゃろう。だから遼は1946年生まれの少年だったのかもしれないし、ミレニアモンの時間跳躍能力で世界を救おうとしたのかもしれん。憶測でしかものを語ることはできんが、ワシらの世界ではミレニアモンの自爆に巻き込まれた遼は今のデジタルワールドのはるか前のサーバ時代、古代デジタルワールド期に飛ばされたのじゃ。それは揺るがしようがない事実」
そしていきをはいた。
クロックモンを庇って死んだクラヴィスエンジェモンの居住区に設置されている用途不明の古びた柱時計が再起動した、とゲンナイさんは告げるのだ。
それは今はデジタルワールドの最深部に眠っているはずのかつてのサーバとかつてのデジタルワールドの時間が動き出した証である。なにかが起こっているのだ。
「どうやっていけばいいんですか?」
「そうよ、亀裂がなくなっちゃったから昔のデジタルワールドにはもう行けないわよね?」
選ばれし子供たちのもっともな指摘にゲンナイさんは頷きながら返した。
クラヴィスエンジェモンが残したデジタルゲートのゲートキーで柱時計に設置されているゲートを開けばいい。
「じゃあ今すぐ遼たちを助けに行こうぜ!」
太一の言葉にゲンナイさんは首を振った。
「デジタルワールドはまだその時が来ておらん。柱時計には西暦と日付も表示されておる。ケイト・マクナルティ氏によれば初代選ばれし子供たちの冒険は1946年の2月14日12時ちょうどじゃ。この時間の経過は現実世界と連動しておる」
みんな絶句するのだ。
「バレンタインデーまでなにもするなっていうのかよ!」
太一の叫びにゲンナイさんは首をふる。
「なにもするなとは言わん!その時が来るまでデジモンたちは強くならねばならん。ジュンの行方もいぜんとしてわからん以上、デーモンの襲撃に供えておかねばならんのじゃ」
デジタルワールドの安定には紋章やデジメンタルの返還が手っ取り早いがそうこういっている訳には行かない。
「ミレニアモンが遼のパートナーデジモンである以上、どこにいるのかわかってしまうはずじゃ。古代デジタルワールド期に侵攻してくるのは間違いない。原始のデジタルワールドが滅んだとしたら、それはワシらの世界やイリアスだけではない。ほかの同じ起源をもつデジタルワールドの消滅を意味することになる。それはワシらはもちろんデジモンという存在の消滅でもある。絶対に避けなければならんのじゃ」
「ミレニアモンはアポカリモンの本体に強く干渉を受けているらしいからな。進化を否定する概念としては都合がいい展開じゃないか」
怒りを胸に秘めている治にみんな息を呑むのだ。
「くそー!あと2ヶ月もあるのかよ!」
「2ヶ月か.......長いな」
「僕達にできることを探すしかありませんね」
「みんな、強くならなきゃね。昔のデジタルワールドにいくんだもの」
誰もが頷いた。
「大輔くん」
「.......治さん」
「大丈夫、古代デジタルワールド期に転移できるようになれば派生した平行世界にアクセスできるようになるはずだ。デーモンも同じ原理でデジタルゲートを開けたようだから、ジュンさんのデジヴァイスを辿って探しにいくことができるはずだ」
「ほんとっすか!?」
「ああ。だからな、大輔。バレンタインデーまでに誰にも負けないくらい、強くならなきゃいけないぞ」
「はい!」