(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第113話

ジュンがリリスモンと共に暮らし始めてから数日が経過した。それなりにリリスモンについてわかってきたことがある。

 

リリスモンは夜中の1時に目覚めて夕方の18時に寝るという生活サイクルを持っているようだ。果物系が好物である。

 

豊潤な果実、特大メロン。新鮮な果実、ブルーリンゴ。みずみずしい果実、レモン。よくある果実、ヘビーイチゴ。アセラロ、黄金どんぐり、天然甘栗、オレンジバナナ。

 

この辺りに目がない。

 

ある日、デーモンの手下がスピリチュアルランドにある稀少なキノコを献上したものだから事態が一変した。

 

リリスモンの新たな好物になってしまったらしく、ないと拗ねてしまい言うことを聞かなくなってしまったのだ。ユキワリタケは30年ほど前に麓で菌が発見された品種らしい。

 

見た目はエノキによく似ているが、食べてみると食感や味はまったく違う。ただ、この品種は今のところ大量生産ができないのと、常温では日持ちしないのが欠点。

 

というわけでジュンはリリスモンとユキワリタケをとりにスピリチュアルランドに行くはめになったのだった。

 

「ジュン、ジュン」

 

あ、と口を開けて待っているリリスモンにジュンは一口サイズに切ってやったバナナリンゴを渡すのだ。リリスモンは咀嚼し始める。まるでツバメの雛状態だがリリスモンの自我はこれ以上発達しないのだ。

 

リリスモンはすべてを腐食させる右手を持つのだが自我が育たないためにコントロールができない。触れたものを全て腐らせてしまうために世話をやいてもらわなければたちまち餓死してしまう。

 

だからだろうか、本来のリリスモンとは違い、自身につけられている色欲の紋章が刻まれた王冠から光を受けたものを魅了し傀儡にしてしまう能力があった。ジュンがいなければその眷属に身の回りの世話をやらせていたのかもしれない。

 

リリスモンは吐息ひとつで対象を猛毒にしてしまう。腐食させるのと猛毒にしてしまうの二重苦だ、きっと眷属は陰惨なことになるのが目に見えているのでジュンがやっていた。さいわいリリスモンは暗黒勢力のデータから誕生したためにデジヴァイスの加護があるジュンには通用しないのだ。

 

息をするだけで食べ物が硬くなり、飲み物が毒のように固まるのを見たとき、リリスモンは自身の能力が破滅のもとであることを悟り、強く嫌悪しながら呪詛をはいた。ジュンが生命線だと気づいた時点で世話をやいてくれる存在だと懐くのは当然の流れだったのだ。

 

リリスモンはいつでも飢餓の恐怖から解放されることを願いながら生きている。ジュンもコントロールする術を模索していた。やはり超究極体のデジゲノムの影響か成長が著しいリリスモンだ。能力を使いこなす経験が足りないのはジュンでもわかる。

 

「どっかにバトルコロシアムみたいな施設があれば話がはやいんだけどねえ.......どこに自軍の兵士を腐らせたがる隊長がいるんだって話よね.......」

 

ベルフェモンがいたら暗黒勢力同士、攻撃は無効化されてしまうから全力でぶつかりあえただろうがリリスモンを世話する境遇にいたるまでを考えたら叶わぬ願いである。

 

「光の勢力を過剰にするって言ってたけど具体的にどうすんのかしら。相手を進化させるとか?倒される可能性高まるのに?背水の陣ねえ」

 

ジュンはようやくたどり着いたスピリチュアルランドにてユキワリキノコを探すことにしたのだった。

 

「ジュン、ジュン」

 

「なあに、リリスモン。珍しいわね、何か気になるものでもあった?」

 

振り返ると嬉々とした顔で指さす先には一体のデジモンがいた。

 

「あれ、デーモン城にいた人造デジモンの試作体じゃなかったっけ。なんであんなところに?」

 

そこにいたのは、巨大な宇宙船を展開しながら何やら準備を進めているイーバモン。

宇宙人として有名なベーダモンをデーモン軍が捕獲し、体を構成するデータを解析・改良して人工的に生み出されたサイボーグ型デジモンだ。

 

ジュンの時代には某国の「エリア51」という施設で、地球外のテクノロジーを使って作られたらしい噂が絶えないデジモンだったが、真相は謎に包まれている。某国はデジタルワールドを手中に収めるべく秘密裏にデジモンの研究開発を行っているとも言われているからだ。

 

「デーモン城からずいぶんと離れたところに来てるわね。偵察かしら?」

 

デーモンと対になる存在であるホーリーエンジェモンの構える城はこのスピリチュアルランドにあるのだ。

 

「ジュン」

 

「だからなによ」

 

「食べていい?」

 

「えっ、イーバモンのデータを?」

 

こく、とリリスモンはうなずいた。ユキワリタケを前にした時くらいランランと目が輝いている。ジュンはひやあせをかいた。

 

「なんでよ、理由を聞かせてくれる?一応なにも問題起こさないようにって忠告はされてるのよ、リリスモン」

 

「あいつ、敵」

 

「えっ、なんでよ。デーモンたちが作った人造デジモンじゃない」

 

「ジュンの敵」

 

「えっ、アタシの?」

 

こく、とリリスモンはうなずいた。

 

「あいつ、ずっと、おかしい」

 

「なにが?」

 

「デーモンの城、ずっと、監視、してる」

 

「じゃあホーリーエンジェモンの味方ってこと?」

 

リリスモンは首を振った。

 

「あいつ、嫌。こわい。きらい」

 

「どのへんが?」

 

「盗んでる」

 

「なにを?」

 

「データチップ」

 

「データチップ!?データチップってあの、デジコアの記憶をつかさどってるあのパーツ!?」

 

リリスモンはうなずいた。

 

「リリスモン、みた。何度もみた」

 

リリスモン曰く、イーバモンがデーモン城にいる人造デジモンなどを隠れて銃でクラッキングプログラムを相手の脳に放ち、脳に蓄積されたデータを吸収しているのをみたらしい。

 

「まさか、じゃあ一体誰が......?」

 

「わからない」

 

リリスモンは首をふる。

 

「イーバモン自身がハッキングされてるのかしら?」

 

「わからない」

 

そんな雑談をしていたとき。リリスモンが顔を上げた。つられて顔を上げたジュンはリリスモンとの間に強烈な光が走ったのがわかる。体がこわばり固まるジュンをよそに、色欲の紋章が発光するアゲハ蝶のような大きな翼が羽ばたき始める。リリスモンは一瞬ういたかと思うと、左手でジュンを抱き上げて一気に風を産み落として飛んで行ってしまう。

 

「リリスモン!?」

 

今も光がこちらを攻撃してきているが、ハッキング能力がある光線のようでデジヴァイスのセキュリティ機能に弾かれて意味をなさない。ジュンはデジヴァイスのコマンドを入力し、前に結界を展開した。これで一安心である。

 

いや、安心じゃない安心じゃない。まさに攻撃してきているところに飛び込もうとしているのだから。それに気づいたジュンは下ろしてともいえずリリスモンを見るしかない。

 

リリスモンは攻撃対象とされた段階で敵意を感知したらしく、明らかに目が煌々と輝き濃厚な殺意がみてとれる。

 

優雅にアゲハ蝶の翼ははばたいているというのにすごいスピードである。人を乗せて飛ぶのは初めてのくせに攻撃自体を吸収しながら相手の位置を正確に捕捉しているようで躊躇がない。なにせ息をする度に周囲がすさまじい勢いでデータが消失してしまうものだから、木々はもちろん施設や建物まで忽然と姿を消していくのだ。飛行できる空間は常に確保できるというわけである。

 

「セブンス・ファシネイト」

 

色欲の紋章が刻まれた王冠が眩い光を放ち、周囲の森が一瞬にして輝き出す。リリスモンはなおも突撃を続ける。ジュンの結界をあてにしているのかもしれない。

 

森を抜けた先でジュンはこの森に生息しているはずの成熟期、完全体の恐竜型デジモンたちが凶暴化してイーヴァモンを取り囲み押さえ込もうとしているのが見えた。広範囲の魅了効果がある必殺技の威力に驚くジュンの前でリリスモンはイーバモン目掛けて舞い降りる。

 

「ファントムペイン」

 

暴力的な知力の3倍というデータ種であれば一撃で屠れる貫通攻撃がイーバモンに襲いかかる。時間進行につれてデータが消失していくという恐るべき呪いの付加効果が発動した。七大魔王は共通で相手のデータをそのまま自分の血肉とすることができる共通点がある。この技が決まった時点でリリスモンは一定の回復と相手のダメージが約束された。イーバモンは呻く。袋叩きにしようとする恐竜型デジモンたちを押しのけるために必殺技をはなち、周りは吹き飛ばされたデジモンたちによる地響きがこだました。

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