(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
ジュンはただちにディーターミナルを起動し、デジモン図鑑を広げる。
「よし、ヒットしたわ。解析不能じゃないならこっちのものよ」
「初めて見るデジモンすら載ってるのか。この図鑑のデータはどこからくる?」
「対象のデータを読み取って解析してるみたいだからリアルタイムじゃないかしら」
「なるほど、お前はそっちのデジタルワールドで余程信頼されていたらしいな」
「デジタルワールドのセキュリティ側から直々にもらったプログラムだからね。否定はしないわ」
「それがこっちの世界のセキュリティの討伐に使われるとは皮肉なものだな」
「でも気をつけた方がいいわよ、ネオくん。相手はどうやら究極体だわ」
「なんだと?」
ジュンはネオにディーターミナルを寄越した。ネオはざっと目を通す。そして舌打ちをした。今彼が使役するスカルサタモンはデビモンとオーガモンをジョグレスさせて誕生したばかりの完全体なのである。
相手は究極体が2体。しかもワクチン種である。
片方はデュランダモン。自身の剣を極限まで磨き上げ、さらに神話やゲームからなる『伝説の剣』のデータを得て進化した究極の聖剣を持つデジモン。デュランダモンの剣を手にすれば勝利をもたらすと言われ、剣に変わる「Legend-Arms」の中では最強クラスの強さを誇る。その斬撃の凄まじさはどのような防壁も真っ二つにするが、盾に変わる「Legend-Arms」の頂に立つデジモンのみが耐えられたという記録が残されている。
「ツヴァングレンツェ」
ジュンはただちにデジヴァイスの結界を展開した。闘気を込めて両手の剣で敵を斬る必殺技が防がれ、彼は驚いている。
「ならばこれはどうだ!トロンメッサー!」
複数の敵をまとめて一掃しようと飛びかかり、回転斬りをしかけてくる。スカルサタモンは間髪で避け、リリスモンはデジヴァイスの結界に守られた。
どちらも命中すれば敵を一撃で仕留めるだけの威力を持つ。
「その光は聖なる光!まさか君はテイマーなのか!?なぜデーモンに味方する!」
「悪く思わないでね、アタシはパートナーが人質に取られてるの。あの子が死んだらアタシの世界のデジタルワールドの闇勢力が激減してバランスが崩れちゃうのよ」
「もしや君もか!」
デュランダモンはネオをみた。ネオは鼻で笑う。
「お前にいう必要がどこにある?」
「むむむ、君もどうやら訳あってデーモンに味方しているようだね。ならばその気にさせるまでだ!」
デュランダモンの姿がみるみるうちに代わっていく。そこにはRPGでよく出てくる勇者の剣があった。武器となって放つ斬撃がデュランダモン最大の威力を誇るらしい。
その変形の隙を狙ってスカルサタモンの斧がデュランダモンを攻撃しようとした。
「おっと、待ちな。こいつを倒すのはオレだと決まってるんでね。邪魔させてもらうぜ」
スカルサタモンの強烈な一撃があっけなく弾かれてしまう。そこにいたのはほぼ身体が盾で形成されたドラゴン、ブリウエルドラモンである。デュランダモンの対となる存在であり、神話やゲームからなる『伝説の盾』のデータを得て、どんな攻撃をも傷がつかない最強硬度の盾に進化している。見た目はレッドデジゾイド製に見えるが、その硬質は解析不能である。ブリウエルドラモンには「ゴース」と「フェイ」という2体の自立型AIが全方位の視覚を担っている。この「ゴース」「フェイ」も炎のバリアを持ち、バリアの範囲はブリウエルドラモンまで拡げることができる。「ゴース」「フェイ」はどこまで遠くても活動ができるため、世界全てをバリアで包むことも可能と言われる。最強の盾であるブリウエルドラモンだが、宿敵デュランダモンにバリアを打ち破られ圧倒されたことがあるらしい。
スカルサタモンが攻撃の標的を変更し、襲いかかる。だが。
「グレンストーム!」
ブリウエルドラモンの炎の翼から烈火が放たれ、斧をやき尽くしていく。
「くっ」
少なくない熱さがネオを襲う。
「ブラストスマッシュ!」
翼が分離し、炎のバリアがブリウエルドラモンを中心に展開していくのが見えた。そして標的に狙いを定め、一気にスカルサタモンに突撃する。
「アタシたちを忘れてもらっちゃ困るわね。放置したこと後悔させてあげるわ」
スカルサタモンの真後ろから強烈な闇の光が放たれる。アゲハ蝶のように黒い光が広がって行き、オーロラのように変幻自在に変化していく。そしてそこに色欲の紋章が浮かんだ瞬間、リリスモンが振り上げた両手の前に発生した魔法陣から光線が発射された。
「ファントムペイン」
明確な意思を持って放たれた貫通攻撃がブリウエルドラモンに直撃する。データ種であることが足を引っ張り、ピンポイントで相性の関係でダメージが叩き出された。一撃だった。高魔力と潤沢な闇の力による暴力により一瞬にして屠られたブリウエルドラモンは倒され、すべてのデータがリリスモンの糧となる。0と1に溶けていく灼熱のドラゴンを目にしたデュランダモンは発狂したように叫んだ。
「よくもブリウエルドラモンを!!」
相方を失ったがゆえの激昴が響きわたる。
「許さん!いくら君たちが善良なテイマーであろうとも許しはしない!!」
デュランダモン自身が変形し、巨大な剣が出現した。
「ツヴァングレンツェ」
一直線にスカルサタモンに向かって巨大な剣が振り下ろされる。
「ネオ様!」
横から鷲掴みにされたスカルサタモンがワイヤーアームによって射程圏外まで吹き飛ばされる。かわりに横切ったワイヤーアームがデュランダモンの必殺技をうけて一刀両断する。それまで引きづられ、空中を2体のデジモンが吹き飛んだ。
「お前は.......」
ネオは目を丸くした。どうやら知り合いらしい。
「知ってる子?」
「いや、オレが育てていたのはグレイモンのはずだ」
「えっ、タイチくんみたいに?」
「だが勝率が振るわなかったから削除したはずだ。なぜここに.......?」
そこにいたのは、全身の半分以上をサイボーグ化することで、戦闘力を高めたグレイモン系デジモンの完全体だった。完全機械化された左腕「トライデントアーム」などの武器群に加え、6枚の翼を使っての飛行能力も獲得した個体である。ファイル島より高度なサイボーグ化技術により、拒絶反応を起こすことなく進化することに成功した黄色のメタルグレイモンだった。
必殺技はギガデストロイヤー、トライデントアーム。得意技はメタルアーム、メタルスラッシュ、メタルスラッシュ改、テラデストロイヤー、オーヴァフレイム。
「そう、オレはあの時削除されたグレイモンです」
「なんだと?」
「残留データがこの世界に流れ着いた結果、オレは実体化することができた。もっと強ければ捨てられることもなかったのだと考えたオレは自らを改造して強さを追い求めてきた。どうやら運は向いているようですね、こうして再びネオ様に会うことが出来たのだから!」
「お前は完全体だろう。助太刀に来たつもりかもしれないが相手は究極体だ。お前があの時のグレイモンなら考え無しに来たとしたらとんだクズだな」
「ご安心ください、ネオ様!」
「なんだと?」
「今のオレならジョグレス素体に値する自信があります!」
ネオは大きく目を開いた。どうやらジョグレス機能が追加されたゲームで育成していた個体だからか、ジョグレスという概念自体は知っていたらしい。ゆえにジョグレス素体にすら選ばれないほど弱いのが原因だと切磋琢磨してきたらしいメタルグレイモンである。ネオは一瞬考えた。
このスカルサタモンに足りないのは経験とそこから成長するはずの数々の能力である。ジョグレス素体にするため心血注いだにもかかわらずめが出なかったグレイモンが自力でここまで来ているのだとしたら明らかに歴戦の勇士に値するだろう。そこいらの完全体よりよっぽど強いはずだ。ならば。
「いいだろう」
「ネオ様.......それじゃあ」
「1度だけチャンスをくれてやる」
ネオはふたつの機械を手にした。
「おい、ジュン」
「なに!?」
ようやく離されていた距離を詰めることが出来たらしく、リリスモンにのったジュンがやってくる。
「その結界で時間稼ぎをしろ、勝算がある」
「何パーセントかしら」
「60パーセントだ」
「上等だわ、さすがにワクチン種とタイマンだと紙耐久しかないリリスモンじゃ長くは持たないわよ。結界も無限じゃないから気をつけてね」
「ああ」
ジュンはふたたび結界を展開する。その直前、リリスモンが色欲の紋章が輝く翼をはためかせ、デュランダモンにデータが四肢の先から崩れ落ちていく呪いをかける。そのデータはリリスモンに還元され、魔力が増していく。
メタルグレイモンは構えた。スカルサタモンは咆哮する。2体は光に包まれ、ネオは急速に落下する。
「メタルグレイモン、スカルサタモン、ジョグレス進化!」
2体のデジモンが一体に融合していく。光を突き破り現れた真っ赤な個体がネオをおいかけて降下する。その姿を見たネオはニヤリと笑った。
「上出来だ」
ネオを受け止めたデジモンがふたたび上昇を開始する。そしてリリスモンを守っている結界を破ろうと執拗に振るわれる剣を追尾弾で牽制する。
「オレの名はカオスドラモン。まずはコチラの相手をしてもらおうか!」