(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第120話

ダークエリアに空いた穴のせいで本来存在しないはずの天気や時間の流れが発生してから随分たっていた。

 

ダークエリアの有象無象たちに避難を強いるほどの嵐が襲っていた。デジタルワールドの嵐が大穴を通じて入り込んでくるのである。

 

微かに遠雷のように聞こえる嵐の音はいつのまにか虚空の隅々からあるだけの風を集めてたたきつけるような、ものすごい嵐に変貌をとげていた。

 

傘を差してもほとんど意味がないくらい、ひっくり帰ってしまうほどの強い風が吹く。この世の終りみたいな空をデーモン城から誰もが不安そうに見上げていた。

 

 

海が荒れているように、ごとんごとんと鳴ったりざっと聞こえたりするのだ、不安で仕方ない。空に星明かりも見えない荒れ模様の夜、警笛が、荒れ狂っている暴風の中で、何か悲壮に聞えた。自然は何かに気を障さえだしたように、夜とともに荒れ始めていた。

 

吹き落ちる気配も見えないあらしは、果てもなく上空で吹きまくる。目に見える限りはただ暗闇ばかりだ。

 

風の音、雨のしぶき、それから絶え間ない稲妻の光、世界が覆くつがえるかと思う位だった。

 

 

どーっと見さかいもなく吹きまく風の中、黒い嵐雲の捲き立ち物凄く藍色に光っている。

 

七大魔王のデジタマが孵化したのは、そんな夜のことだった。

 

ディーターミナルに表示したベルゼブモンの基本データをジュンは本人に手渡した。

 

基本データは以下の通りだ。

世代/究極体

タイプ/魔王型

属性/ウィルス

勢力/七大魔王

装備/ベレンヘーナ

 

ここから先は概要となる。

 

七大魔王の一体で暴食を司る。 多くの悪魔型デジモンを統べる事が出来る能力を持ち、闇の軍団「ナイトメアソルジャーズ」の頂点に立てる実力が有りながら孤高を貫き、強者を求めて放浪を続ける一匹狼。 二丁のショットガン「ベレンヘーナ」(スペイン語で「ナス」)を愛用し、バイク型マシン「ベヒーモス」を乗りこなす。

 

冷酷無比で非常にプライドの高い性格であるが、決して群れたり弱者を攻撃したりすることはない。

 

「ここから先は超究極体のデジゲノムとアタシのパートナーのエネルギーをぶちこんだことで起こった変化よ」

 

ボタンを押してやるとベルゼブモンの姿が変わり、自分と同じ姿が表示される。ベルゼブモンは無言のまま食い入るように見つめていた。

 

具体的な変かは仮面の色が紫から赤へ、右手が猛禽の様な三本指となり、左腕が「ベレンヘーナ」と一体化して背中から翼が生えるというものだ。

 

自在に形を変える意思を宿した紅蓮の炎「エル:エヴァンヘーリオ」をダークエリアから召喚する事が可能になり、「ベレンヘーナ」から魔弾として放ち、“暴食の冠”で威力を凝縮して放つ一撃を身に付けた。

 

この炎はダークエリアに堕ちた罪人の魂を裁き、救済する為に用いられるもので、魔王型の様な邪悪なデジモンはデジコアごと消滅させられてしまうのだが、このベルゼブモンは身を灼かれることがなく、炎の意思を押さえつけて自分の力として操る事が出来るらしい。

 

「ブラストモードってのはなんだ」

 

記述の中にそんな単語を見つけたものだから質問が飛んでくる。

 

「単語クリックしたら出るわよ。えーっと、ちょっと貸して」

 

そこには精神を究極的に高めて、その力を解放したベルゼブモンの真の姿とあった。精神が落ち着き、右腕と一体化した陽電子砲を装備し、黒い翼が生えて眼の色が赤から緑へと変化しているらしい。つまりある種の高みに到達した個体が獲得する姿によく似ているらしい。

 

「らしいわよ。他に質問は?」

 

「いや」

 

ベルゼブモンは少々困惑しているようだ。超究極体のデジゲノムに自我を食い潰されているだろうに理性がだいぶ残ったまま生まれてきたらしい。

 

「オレたちが生まれるってことは相当世界も成熟して好き勝手してもいいと思ってたんだがどうやらそうじゃないらしいな」

 

「デーモンの一存だしね」

 

「身も蓋もないな」

 

「事実だもの、どうしろっていうの。どうあがいたところでデーモンはアナタたちを生贄にするつもりだし、アタシはそれまで育てるよう言われてるの」

 

「にしては自由にしてる奴もいるようだが」

 

「その時が来るまでは好きにしろって感じじゃない?」

 

「なるほど。なら、もしオレがここから姿を消したとしても問題は無いわけだな」

 

「いやあ.......どうかしらね。リヴァイアモンはずっと寝てるから黙認されてるみたいだけど、アナタはそうじゃないでしょ」

 

ベルゼブモンはそうかとだけ返して、なにやら考え事を始めた。ベルゼブモンに始まったことではないが、かつて別世界で七大魔王を学校の授業で習ったジュンとしてはずいぶんと聞き分けがいい究極体は違和感しかない。超究極体のデジゲノムにより破格の成長率とステータスと引替えに自我の成長機能を破壊されている彼らをジュンの知っている七大魔王と比べる方がおかしいのかもしれないが。

 

もしかしたら、このベルゼブモンは本来の性質を持って生まれてきたんだろうか、とジュンは思った。オレは誰だと情報をもつテイマーがジュンだとしった瞬間に聞いてきたのはベルゼブモンが初めてだったのである。

 

「裏切るの?」

 

「それ以前の問題だ。オレはこの世界のこともオレ自身のこともなにも知らなさすぎる」

 

「知りたかったら教えてあげるわよ」

 

「頼む。考えたくても考えるだけの知識がオレにはない。デーモンのやつめ、こんなことなら初めから思考回路まで破壊しやがれ」

 

ベルゼブモンは憤りを感じているようだ。ジュンの知るベルゼブモンは誇りのために大きな代償を支払う事も厭わない、手の届かない高貴な宝石のように気位が高く近寄りがたいデジモンだった。間違っても自尊心を下ろし金にかけるようなことはしない。理想が高く、己に課しているものが大きい。

 

ベルゼブモンは何かに押されてねじくれてしまった運命の中で必死に自分を保つためにあがける個体なのだろう。

 

ジュンは話し始めた。

 

「.......」

 

「席外す?」

 

「ああ」

 

ベルゼブモンは思考の海に沈んでいった。

 

そしてベルゼブモンが失踪したとジュンは翌日知ることになる。

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