(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第123話

ゆっくりと重厚な扉が開かれる。そこには巨大なコアがあった。

 

「ジュン!」

 

「なんで?え、ジュンがなんでこの中に!?」

 

「大丈夫か!?」

 

「なんでだよ」

 

「ちい、遅かったか!やはりクロノモン起動に使われてやがった!」

 

明らかに狼狽しているベルゼブモンは、目の前の現実が受け入れられてはいないようで、さっと血の気がひいていく。

 

「ジュン!」

 

タイチの悲痛な叫びなど意にも介さず、無情にもクロノモンと呼ばれたたくさんのコードに繋がれている巨大なデジモンは武装をこちらに向ける。

 

 

背後の扉が閉じる音がする。そして、静かな声がタイチたちの耳に響いた。表情ひとつ変えないまま、クロノモンはどこか虚ろな目を向けてくる。その腹の中には体育座りをしたジュンが入ったコアがあった。

 

足下には肉片が飛び散っている。致死量と思われる赤が床を塗らしている。おそらく数人分の被検体が完全解体されたのだろう、惨状が広がっていた。

 

「これは性能試験だ。合格することが私の試験となる。こころしてかかれ」

 

クロノモンが宣言すると同時に、かつて被検体であった少年、デジモンたちの肉片はひとつに固まっていく。そして嫌な音を立てながら形をなし、ユートと克己の前に立ちふさがる異形と化す。

 

 

完全に戦意を失っているウイングドラモンたちに、ベルゼブモンは呼びかけるが聞く耳を持たない。

 

「いいかげん目を覚ませ!ジュンを助けたかったら起動を止めるしかねえだろうが!!」

 

ベルゼブモンが思い切り声を上げると、ようやくウイングドラモンたちはタイチを見た。ふらふら前線に行きそうな気配すらある仲間の手をつかんだ。

 

「お前らをなんのために連れてきたと思ってんだ!クロノモン止めるのに邪魔しやがるやつらを倒すためだろうが!」

 

タイチはうなずいた。

 

「ジュンに何があったのかは後で聞こうぜ。でも今は集中してくれ、頼むから!こいつらを倒さないと駄目だろ!」

 

「倒す、倒す、そうか、そうだよな、倒さなくちゃ、ジュンを助けられないんだ!」

 

あまりのおぞましさに囚われそうになったウイングドラモンたちはその瞳には若干の生気が宿る。でくの坊になられては、さすがにベルゼブモンたちでもかばいきれない。戦闘態勢に入ったゼロマルたちに、連れてきてよかったぜ、とほっとベルゼブモンは息を吐く。そして銃を装填しようとした。

 

突然の衝撃にかろうじて受け身をとれたタイチだったが、何するんだと声を上げようとして、見えたのは豪快に体がはじけ飛ぶベルゼブモンの姿だった。

 

「ベルゼブモンっ!」

 

奇襲をもろに食らった胴体からはらわたが豪快に吹き飛ぶ。血しぶきと言うには歪な色をした液体があふれ出るが、ベルゼブモンは微塵も痛がる様子はない。知識としては知っていても、目の前で肉片が散らばり、上からその液体をもろにひっかぶったタイチはたまらず叫ぶ。ベルゼブモンは冷静に銃をぶっぱなした。被弾した敵が死ぬ。

 

「心配するな、大したことないさ」

 

みるみるうちに傷が塞がっていく。

 

「くるぞ!」

 

ゼロマルがタイチを乗せて回避した。

 

「ワレラの名はベムモン」

 

被検体から生成された謎のデジモンはそういった。

 

「ワレラはデジモンのマトリクス・データを吸収して強くなることを望む」

 

じじじ、ががが、と音声を響かせながら、ベムモンは壁に張り付いた。コードと連結する。

 

「オプティカル・ネットワーク接続。クロノコアマシーンとの融合を開始。フュージョナイツ」

 

「!?」

 

目の前で複数のベムモンが融合しはじめた。

 

「ジョグレス進化、デストロモン」

 

デストロモンがさらに融合する。

 

「我が名はスナッチモン」

 

ぱきん、と機械が壊れる音がした。

 

「ベルゼブモン!」

 

ベルゼブモンが取り込まれてしまった。

 

「オレたちも黙っちゃいられないぜ!」

 

ウイングドラモンたちが叫んだ。そしてジョグレスした。

 

「我が名はスレイヤードラモン!」

 

それはクロンデジゾイドで身を包んだ竜人型デジモンだった。「四大竜の試練」を修了した竜型デジモンだけが進化できる姿だと言われている。 独自の究極剣法「竜斬剣」にて、大剣「フラガラッハ」を自在に操り戦う。

 

何本もの刀の斬撃がデストロモンの体に突き刺さる。大男の豪快な一撃が襲いかかる。衝撃から立ち直る前の一撃だ、ろくに受け身もとれないままのデストロモンはなすすべがない。両足が切断され、足が吹き飛ぶ。

 

露出した骨で歪な体勢を強いられることになったデストロモンは笑みを浮かべている。どうやら手痛い一撃を二発も食らったおかげで、嫌でも目が覚めたらしい。ゼロマルは戦闘態勢にはいった。スレイヤードラモンの支援をすべく必殺技を放った。

 

「Vウィングブレード」

 

デストロモンの上半身が吹き飛んだ。

 

「ベルゼブモンの仇だ!」

 

スレイヤードラモンが動く。速い。一瞬タイチはスレイヤードラモンを見失った。視界の隅にとらえることができたが、それ以上は叶わない。

 

「我が伸縮自在の大剣「フラガラッハ」を用いた独自の究極剣法「竜斬剣」を受けるがいい!」

 

スレイヤードラモンは咆哮する。

 

「壱の型『天竜斬破』!!」

 

回転体術によって加速された剣を脳天から垂直に打ち込みデストロモンの両腕を両断する。

 

「弐の型『昇竜斬波』!!!」

 

剣で練った竜波動を下方から上方に向けて解き放ち、剣圧だけで胴体を切り捨てる。

 

「参の型『咬竜斬刃』!!!!」

 

至近の間合いまで踏み込み「フラガラッハ」をデストロモンに巻きつけ、巻きつけた刀身で全身を削り取った。

 

「やった!?」

 

ゼロマルは叫んだがタイチはデジヴァイスの反応をみて目を見開いた。

 

「スレイヤードラモン、ゼロ、気をつけるんだ!こいつ、必殺技のデータまで取り込んでる!」

 

「なっ」

 

足元のデストロモンの残骸が全て生き物のようにうごめいていた。そしてゾンビのようにあらぬ方向につり上げられる。一網打尽にしたはずのデストロモンだったやつは無数の糸が互いが互いを補足して、たちまち新たな姿を獲得しようとする。

 

「させないね!Vブレスアロー!」

 

ゼロが残骸をもろとも吹き飛ばす。爆音が響きわたり、すべての残骸が一瞬で吹き飛んだ。そしてデストロモンを形作っている部位がその攻撃により崩れ始め、ぐちゃりと上半身と下半身がお別れした。

 

「いいかげんに消し飛べ!」

 

スレイヤードラモンが叫ぶ。違う方向から繰り出された大剣がワイヤーとなってしなり、デストロモンを絡め取り、幾重にも残骸を切断した。様々な部位で作り上げられていた張りぼては、完全に解体されてしまった。

 

「これで終わりだ!」

 

最後の一片をゼロマルが吹き飛ばす。目の前でベルゼブモンを取り込まれたことがゼロマルの逆鱗だった。よほど気が立っていたらしい。すさまじい集中力を発揮したゼロマルは、デストロモンの残骸がわずかに残っているのを見逃さなかった。

 

「今だ、ゼロマル、タイチ!これで邪魔者は無力化できたぞ」

 

「ああ、一気に行くぜ」

 

タイチたちの前に立ちはだかるのは、ベルゼブモンがクロノモンと呼んだ不気味なデジモンとテイマーの融合体だった。

 

クロノモンはゼロマルとスレイヤードラモンの行動がまるで分かっているかのように、その機動を読み切り、かわしてしまう。爆風にあおられて機動がずれ、スレイヤードラモンの得物は横の瓦礫を裁断してしまった。容赦ないゼロマルの必殺技がクロノモンに降り注ぐ。

 

目が吹き飛んだせいで射程がわからなくなったのだろう、あらぬ機動を走る手を無理矢理軌道修正すれば、クロノモンは一気にはじけ飛んだ。次は翼を狙えとタイチはゼロマルに指示を飛ばす。四肢と翼が弾け飛んだ。

 

悪臭漂うが視界は良好だ。移動手段を失ったクロノモンはもはや単純な行動しかしてこない。妨害を代行する手駒はもうない。盾もいない。近づくことしか能が無いでくの坊と化したクロノモンめがけて、ゼロマルは死刑を執行した。

 

その時だ。謎の光が走り、タイチたちはあまりの閃光に目がくらむ。光がやんだ時、クロノモンは忽然と姿を消していた。残されたのは黒い羽根だけだ。

 

「ど、どこいったんだ!?」

 

タイチの目の前に黒い羽が落ちてくる。みんな、上を見上げた。

 

地面が揺れる。壁が揺れる。すさまじい轟音が響き、内部で機械仕掛けの装置が作動したことがわかる。ガシャンと言う音が反響する。天井が一瞬にして弾け飛び、上空に穴が開いていたことに気づくのだ。

 

『合格おめでとう、お前は戦場で戦うに値する性能を持ったデジタルモンスターであることが証明された。次なる戦いに向けて、幸あらんことを』

 

録音された電子メッセージが垂れ流される。うへ、とタイチは顔をゆがめた。

 

「なんだよこれ」

 

「クロノモンの生産工場みたいだからな」

 

「まじかよ、早く追いかけないと!」

 

「ああ!」

 

ゼロマルとスレイヤードラモンは翼を広げる。そして真っ黒になったクロノモンをおいかけはじめる。

 

強い風が吹いている。今にも降り出しそうな曇り空だった。

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