(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第124話

ベルフェモンは夢を見ていた。

 

かつてデジモン誕生以前から存在する原始的なプログラムであったころの記憶だ。

 

非進化の概念だったころの記憶である。デジタルワールドの領域のさらに深部で眠りについていたが、デジモン達の進化により活性化しデジタルワールドを浸食し始めた非進化の概念は、世界の基準たる進化の概念に戦いを挑んだ。

 

原始のウィルスプログラムである。

 

自分自身の複写、又は自分自身を変更した複写を他のプログラムに組み込むことによって繁殖し、感染したプログラムを起動すると実行されるプログラム。

 

第三者のプログラムやデータベースに対して意図的に何らかの被害を及ぼすように作られたプログラムであり、 次の機能を一つ以上有するもの。自己伝染機能 自らの機能によって他のプログラムに自らを複製又はシステム機能を利用して自らを他のシステムに複製することにより、 他のシステムに伝染する機能。潜伏機能 発病するための特定時刻、一定時間、処理回数等の条件を記憶させて、発病するまで症状を出さない機能。発病機能 プログラム、データ等のファイルの破壊を行ったり、設計者の意図しない動作をする等の機能をもつプログラム。

 

特筆すべきなのは、他のプログラムを書き換える、といったプログラムがあったことだ。

 

仮想空間上で、ターゲットを上書きするプログラムであり、当初は生命の定義や人工生命の可能性についての研究―自身を複製できるものが生命なのか、生命が存在するために最低限必要なことはなにか(捕食対象の識別、あるいは自己と他者の認識や自己防衛とは何か)―を研究するための“仮想環境と生態系”として研究者に利用されていた。

 

やがてプラットフォームの更新による仮想機械や実行環境の整備、という工程を短絡させる形で現在の、『ネイティブなソフトウェア』としてのウイルスにその流れが引き継がれることになった。

 

元々プログラム的な存在なのでデジモンの力では対抗できても根絶することは出来ず、中級クラスでさえ完全体クラスのデジモンが歯が立たず、 最上級クラスだと究極体をも圧倒するほどであり、天敵と言って相応しい相手だった。そのためデジタルワールドでは無類の強さを誇り、選ばれし子供さえいなければ勝てていたのだ。

 

非進化の概念は悲願を叶えようとしている。現実世界に繋がるあらゆるネットワークから人間世界を解析し、データを落とし込み、あらゆるデータを蓄えた。すべてが単一の意思を共有しているのだ。

 

概念は意志を持たないはずだが、非進化の概念はもっていた。

 

地上の世界の鏡像のような世界にいきていたころ、人や妖精、神という種族が明確に分裂しておらず、非常に近い存在だと考えられていた時代の名残。デジモンがデジモンになるために捨ててきたもの。

 

人間がこの世界を統治することで霊地の壊滅的な被害を受け、故郷を追われ、物質世界の漂流を余儀なくされたものたちがうしなったもの。

 

本来、実体を持たない彼らは空気のようなものだ。物質世界である現実世界に存在し続けるには、器を用意しその中に精神体である己をそそぎ込む必要がある。その器の材料となるのが電気と相性がよかったために入り込むことができた機械の中であり、移動を可能にし自分たちの世界をつくりあげることができた。精神体である彼らだからこそ、できたものでもある。電気は電脳世界にいればいつでもどこでも供給された。

 

安定を得て文明を得た彼らが起源を求めるのはある意味当然の流れだったのかもしれない。霊的な存在からデジモンになった時点で致命的に相性が悪かったのが悲劇の始まりだったのである。

 

デジモンが自我を持つプログラムであるし、原始存在が魑魅魍魎を始めとした人類と共に生まれて共に生きてきた精神世界の隣人だから概念ですらないのかもしれない。生物の生存理由からも真っ向から対立するそれは万物に受け入れられるものではなかったのだ。

 

「ジュン......」

 

非進化の概念が分離して進化の概念と共にあることで存在しようとした結界生まれたパートナーという存在が目を覚ます。存在理由を奪われそうになっていることを思い出したのだ。

 

眠気を振り払うように頭を振る。意識がクリアになる。芝居の暗転のように意識が急速に切り替わる。時間がどこかで跳躍したみたいに、意識が覚醒したときには何もかもが既に起こってしまっていた。前置きもなく、状況はそっくり次の段階に移っていた。

 

起きろという焦燥感が頭の中で壊れた拡声器のようにわんわん響いていた。

 

ベルフェモンは突然目が覚めた。眠りと覚醒の中間的地域というものが存在しなかった。目を開けた時には既に覚醒の中枢にいた。頭の働きは完全に正常に復しているように感じられた。

 

すべての拘束具を弾き飛ばした。

 

本来ベルフェモンは千年に1度の周期で永き眠りから覚め、本来の姿を取り戻す。眠りから覚めたベルフェモンは怒りの権化と化し、視界に入るもの全てが破壊の対象となる。ベルフェモン レイジモードの咆哮を受けただけで、完全体以下のデジモンはデータ分解し即死するといわれており、究極体デジモンといえども無傷ではいられない。必殺技は、体に巻きついた鎖から発する黒い炎『ランプランツス』と、地獄の炎をまとった爪から繰り出される斬撃『ギフトオブダークネス』。なお、七大魔王を冠するデジモンに葬られたデジモンのデータは輪廻転生することなく、ダークエリアの中心へと送り込まれ、魔王たちの血肉となる。

 

すべてを思い出し、超究極体の遺伝子をぶち込まれていたベルフェモンのデジコアが変質し始める。

 

破壊衝動が増しながら、さらに直感が鋭くなり破壊する対象を見極めて潰していく。敵軍の中で希望となるデジモンをまず完膚なきまでに倒し、敵全体が持つ希望という心を破壊する。そうして戦意を失ったところを心行くまで叩き潰し、敵軍を壊滅まで追い込む。必殺技は怠惰の冠から力を漲らせ、真紅のエネルギー波を最大出力で爪から放つ『セブンス・ペネトレート』が炸裂した。ダークエリア最深部が一瞬にして壊滅状態になり、まだ生まれていなかったデジタマや死んだデーモンの部下たちが取り込まれ、ベルフェモンを強化していく。

 

翼を広げたベルフェモンはダークエリアから転移した。

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