(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第129話

タイチたちが見たのは、クロノモンと戦うリリスモンと見たことも無い真っ赤な究極体と思われるデジモン、そしてその指揮を執るネオの姿だった。

 

「リリスモン!」

 

リリスモンがネオのいうことを聞いている。

 

「ジュンッ!いま、たすけるッ!」

 

ファントムペインにより、クロノモンは毒状態になった。明らかに精彩をかきはじめる。

 

カオスドラモンと呼ばれたデジモンはネオが育て上げたデジモンに違いない。多数の部下たちを一斉に総動員して指揮を執り、 情報を収集して敵の居場所を見つけるとそこに全戦力を集中するという組織力と統率力をフルに生かした戦法を披露している。

 

さらにネオが頭の回転にも優れているために的確な指示を飛ばすものだから、一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

爆発で起こった熱気でクロノモンの黒い翼が焦げる。地響きがして、はるか向こう側で黒煙の柱が立ちのぼった。

重々しい響きとともに、黒い煙が一すじ薄くなびいていく。

 

アルミ箔のように破れて炎を噴き、炎はさらに巨大化して、天に向かって猛々しく咆えていた。

 

ぐわうんと空間を破壊して、炎と猛炎が、一丈も噴騰した。 火と、焼け土とが、滝となって、ざっと落ちてきた。

 

 

一瞬何が起こったのかわからなかった。 ちょうど雷のように、光と音がほんの少し違和感をなしてずれたような感じだった。向こうの角に見えるビルの上が明るくなり、急に火が出て、鈍い音と共にガラスの破片がスローモーションで闇に降りそそいだのだ。  

 

不謹慎だけど、花火みたいだった。

 

空間が震えるほど重い地響きが伝わり、高射砲の炸裂する音がパアン、パアンと聞こえてきた。空を遠雷のような唸りを伴った砲声が渡る。喊声と砲声と銃声とが、怒涛のような響きとなって聞こえてくる。

 

砲煙が綿のようにわきおこって、ミサイルがトビウオの群れのように大陸間を盛大に飛び交い、流弾が時折り蚊のような音を立てて頭上を通り過ぎる。

笛のような音を立てて流弾が飛んで来る。

 

高射砲が花火の炸裂するような音を立て、砲台は七つの頭をもった神話の怪物のように、斬っても斬っても新しい頭をもちあげてくる。砲弾は繻子(しゅす)の帯でもしごくような、しゅるしゅるという音を立て、黄塵を捲き、

終止符のように、はっきりと哨舎の天を破る音が聞えた。

 

花火のように赤い曳光(えいこう)弾が音もなく飛んで来る。

 

その煙幕が晴れていった先で、タイチたちは無傷のクロノモンを目撃することになる。

 

クロノモンはカオスドラモンたちの一斉攻撃でもノーダメージという驚異的な防御力、 を見せつけた。

 

「物理攻撃は効かないか。ならば」

 

一斉にカオスドラモンたちの軍勢が左右にわかれていく。その先には膨大なエネルギーを集束し、蓄えているリリスモンがいた。アゲハ蝶のような美しい翼から7色の光が溢れたかと思うと、頭の冠にある謎の紋章からもビームがクロノモン目掛けて放たれた。

 

「───────......ッ!」

 

クロノモンのコアに幽閉されているジュンは目を覚ます気配すらない。タイチたちは究極体の激突に遠くから見ていることしか出来なかった。

 

そして、タイチたちがいることに気づいてはいたが、意識を向けるほどネオには余裕がなかった。クロノモンはネオの想像を遥かに凌駕する性能の持ち主だったのだ。

 

今のクロノモンは悪しき心に触れて究極進化したデストロイモードであり、破壊だけを求め何物であろうと制御することは不可能な状態だと電子端末が伝えてくる。

 

「......ジュンを取り込んだ癖にデストロイモードなのか。ホーリーモードの方が相応しいと思うが」

 

クロノモンが善良なテイマーの精神にふれたとき、真っ白な鳥のようなデジモンになり、いま戦っているデストロイモードより強くなるらしい。だが、この姿はどうみてもデストロイモードだった。ジュンはどちらかというと善良なテイマーにあたる印象だったネオは不思議でならない。

 

どの道疑問はあとだ。リリスモンとカオスドラモンの力をもってしても、クロノモンのコアに取り込まれたジュンを取り出すのは難しそうなのだから、ベルフェモンを手中におさめるためにもクロノモンを沈静化させて捕獲する必要がある。

 

クロノモンの攻撃をわざと受けるカオスドラモンを見ながら、ネオは精神力を回復するアイテムを使用した。リリスモンにも指示して味方陣営全体の状態異常と体力を全回復させる。ここで死なれるとネオたちまで死ぬ可能性がある。動く盾には役立ってもらわなければならない。

 

「スキャン率......100パーセント。よし、これでいい。カオスドラモン、ベルフェモンが近づいてきた。スキャンの作業に入れ」

 

「はッ!」

 

「リリスモン」

 

「なあに?」

 

「ベルフェモンが来た。これが最初で最後のチャンスだろう」

 

いわんとしていることを察知したのか、リリスモンはうなずいた。そしてベルフェモンの前に立ち塞がる。ネオは電子端末を構えた。

 

そして、クロノモンが自己修復機能を発動させ、真っ白な球体になっているのを前に、リリスモンとカオスドラモンの軍勢がベルフェモンに立ち塞がる。ベルフェモンはパートナーを助けたい本能のままに攻撃を仕掛け、それが激しい空中戦の幕開けとなった。

 

「お前がベルフェモンを取り込んで融合するとしても、ベルフェモンに殺されて逆に取り込まれたとしても、ジュンのパートナーの1部になるのはかわらない。喜べ」

 

ネオはなんの躊躇もなく超究極体の成長期を電子端末から解放してしまう。超究極体は嬉嬉としてクロノモンに襲いかかろうとして、それを察知したのかベルフェモンが破壊光線を放った。その一撃がリリスモンの翼を貫通する。ベルフェモンの視界にはクロノモンとクロノモンを害しようとしている超究極体しか映らない。リリスモンはなおも立ち塞がり、突撃するベルフェモンの攻撃を受けてしまう。カオスドラモンが跳ね除けるが、その隙間を縫ってベルフェモンは進軍してしまった。

 

リリスモンが味方に回復魔法をかける。そして後ろを振り向き、ようやく超究極体がクロノモンを襲っていることに気づくのだ。リリスモンの悲鳴が上がる。どうやら頭がいっぱいでネオがやらかした事が一切わからなかったらしい。

 

「ネオ、どうして!?ジュン助けるって、いったのに!」

 

「俺はなにもしてないさ、なにもな」

 

スキャン率がどんどん上がっていく。超究極体同士の争いは激しさを増し、貴重なデータがどんどんネオに集まっていく。

 

「こいつが勝手にクロノモンを攻撃してるだけだ」

 

しれっと答えるネオにリリスモンは攻撃しようとしたが、カオスドラモンがそれを封じる。そして、ベルフェモンはジュンを守るために一体化しているクロノモンを庇うように攻撃し始める。超究極体はそれすらも取り込んでどんどん肥大化していく。

 

リリスモンはようやく自分がなにをすべきなのかわかったようで、泣きながらベルフェモンに加勢した。

 

「......よし、スキャン完了だ」

 

「はい、ネオ様」

 

デーモンが作りあげた専用の育成プログラムをまだ成熟期の超究極体は突破できないらしい。光の触手が超究極体を取り込み、一瞬にして姿を消してしまった。残されたのは自己修復機能が完了して完全体となったクロノモンデストロイモードと満身創痍のリリスモン、ベルフェモンである。

 

「ごめんなさい......ごめんなさい......」

 

泣きながらリリスモンが最後の力を振り絞ってベルフェモンを回復する。そして、クロノモンからジュンを助けるようお願いして自らベルフェモンの糧になるべく力を使い果たしてしまった。0と1にとけていった光はベルフェモンに吸収されていく。

 

「......」

 

ベルフェモンの瞳に光が宿る。

 

「私のパートナーになにをしているのですか?断じて許せませんね、さあどうしてくれようか」

 

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