(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第132話

「あなたがジュンさんですか!?」

 

「え?ええ、そうだけど。あなたは?」

 

「私はレイ、彩羽レイといいますッ!」

 

「彩羽?ま、まさかネオ君の......?」

 

「お兄ちゃんのこと知ってるんですか?!」

 

「お兄ちゃんてことは妹さんね?どうしてここに?」

 

「実は、お兄ちゃんが1週間前から行方不明になってて、最後にみたのがパソコンの前だから調べたら......」

 

「俺が最後のタグを手に入れるとき、ネオと戦ったんだ。そのとき、現実世界に繋がるゲートを開いてデスモンをネオが解き放とうとしたから、それがネオんちのパソコンと繋がっちゃったみたいなんだよ。この世界は危ないからっていったんだけど聞いてくれなくてさあ」

 

タイチは困り顔だ。たしかにデーモン軍との全面戦争を控えた今、テイマーでもない人間のレイがいても危険しかない。でもレイは頑としていうことを聞かないようだ。

 

「私の......私のせいなんです」

 

「どういうこと?」

 

「私が交通事故になんかあうから......」

 

レイはよほど追い詰められていたのか、泣き出してしまう。ジュンはあわててレイのところにかけより、慰めてから事情を聞くことにした。

 

事の始まりはレイが交通事故にあい、両足が動かなくなってしまったことだという。今はピンピンしているし、普通に歩けているが、現実世界では怪我のせいで足を動かす機能そのものが死んでしまったせいで車椅子なのだという。今の技術ではどうしようもなく、これ以上動かなくならないように現状維持のリハビリしかできない。友達や家族には心配をかけないよう気丈に振舞ってこそいたが、レイは兄であるネオにだけは弱音をはいていたという。ネオはお兄ちゃんに任せろ、何とかしてやると励ましてくれた。レイはそれが元気づけるための優しい嘘だと思っていたが、どうやらネオは本気だったらしい。

 

1週間前から様子がおかしいと両親から聞かされ、心配していた矢先に行方不明になったと聞かされたのだ。思い当たる場所はどこにも無く、レイは警察などの対応に追われる両親の代わりに家にいた。レイに出来ることはなにもなかったが、失踪直前の兄がなにを考えていたのか知りたくて部屋の中を探していたら、パソコンが目に止まった。

 

兄がデジモンというモンスターを育成して戦わせるゲームにハマっていて、大会に出るくらい強いのは知っていた。失踪したのも全国大会の決勝戦の会場からだと両親から聞いている。なにか失踪のヒントはないだろうかと調べていたら、見知らぬアドレスが添付されたメールをみつけた。兄は頻繁に連絡しているようだった。でもどこの誰だかわからなかった。なぜなら、文字化けしていたからだ。

 

「これです!」

 

レイが指さしたのは、ジュンがこの城のセキュリティシステムを完全に起動するために展開していたプログラムである。それはデジ文字でかかれており、ローマ字や英語をアレンジしたものだという知識がなければ読むことすら出来ないだろう。

 

「これ?この字で書かれていたの?」

 

「はい。そっか......あれ、文字だったんだ......文字化けだと思ってた......」

 

レイは兄がデジモンの大会に出るために出かける直前見ていたと思われるメールにあったアドレスをコピペしてネットで検索しようとしたらしい。該当のサイトがあればそこから兄の行方がわかるのではないか、と踏んだのだ。

 

そして。

 

「ホームページはありました。でも、リンクも文字もなにもなくて、ただ動画がひとつだけあったんです。それを見ていたら、銀行にありそうな頑丈そうな扉が出てきて、それが開かれたとき、真っ白な光に目がくらんで、いつの間にかこの世界にいたんです」

 

「そんで、クワガーモンのコロニーに迷い込んじまって、追っかけられてたわけだな」

 

「うん、そうみたいなの。助けてくれてありがとう、タイチ君」

 

「えへへへへッ!ま、いーってことよ!しっかし、気づいてよかったよ。あのままデーモン城に向かう途中で気づかなかったら、今頃死んでたかもしれないもんな」

 

「うん......。私、お兄ちゃんがデジモンを育ててるの横で見たことしかないから......。なにがデジモンで、なにがデジモンじゃないかすら、よく知らないし、わからないことだらけだから、ほんとに怖かった。右も左も言葉が通じないモンスターだらけだし、言葉が通じるモンスターは見たことない姿してるし......。人間に会えてほんとによかった......」

 

本当に怖かったのだろう、レイは安堵の息をはいた。今でこそ落ち着いているものの、それはタイチやジュンがいて、デジモンたちが仲間であり、味方であり、怖い存在ではないと知ることか出来たからこそだ。

 

「そっかあー、俺たち、初めっからデジモンのこと知ってるもんな。なんにもわかんなかったら怖いに決まってるか」

 

「お兄さんがこの世界に来たことしかわからないものね。最初に会えたのがタイチ君でよかったわね、レイちゃん。ネオ君は今、デーモンの軍の総司令官をしているの。なにも知らないデジモンたちが知ったら、なにをされたかわからないわ。あたし達だからこそ、ネオ君はなにか事情があってデーモンに味方しているんだろうってわかるけど、普通はそんなことわかんないもの」

 

「お、お兄ちゃんが......?そんな......どうして......」

 

「それはたぶん、レイちゃんの足がこちらの世界だとなんともないことと関係あるわね」

 

「えっ」

 

「普通、パーソナルデータはデジタルワールドに呼び出した存在が厳重に管理して、勝手に書き換えできないようにしているものよ。もし現実世界に帰る時にその構成データにバグがあったら、なにか不具合が起きて二度と帰れなかったり、死んじゃったりするかもしれない。でも、レイちゃんはあってはならないことが今まさに起きてるわ。それは、レイちゃんの構成データが初めから弄られていたからよ。ネオ君はいずれあなたをこの世界に呼ぶつもりで準備していたとしか思えないわ」

 

「お兄ちゃんが......?」

 

「ネオ君はデーモンの召喚に応じたから、非正規に呼び出されたせいでパーソナルデータのセキュリティシステムが正常に働いていないのよ。レイちゃんもね。それが抜け道。きっとこのまま今のアバターを上書き保存することになれば、現実世界でもレイちゃんは歩けるようになるわ」

 

「!!」

 

「でも、今のデジタルワールドはデーモンがセキュリティシステムを掌握しているせいで、現実世界に帰還するときどんなバグを仕込まれるかわかったものじゃないわよ」

 

「た、たとえば......?」

 

「デーモンはね、構成データを書き換える力があるのよ。だから洗脳したり、思考を誘導したりできるの。レイちゃんが今から現実世界に帰るのは危険すぎるわ」

 

「わ、私、どうしたらいいんですか?」

 

ジュンはデジヴァイスをマリに見せた。

 

「さいわい、私はね、デジタルワールドからデジヴァイスっていうウィルスバスター機能がある許可証をもらったの。このデータ、このパソコンの中にあるからね、このパソコン持っててもらえる?今から持ち主をレイちゃんにするから。そうすれば、このパソコンが壊れなきゃ守ってくれるわ」

 

「は、はいっ!」

 

「そっかー、全然知らなかったけど、俺たちが平気なのはホーリーエンジェモンが呼んでくれたからなのか」

 

「そうね。きっとそのデジヴァイス01にもセキュリティシステムのプログラムが組まれているんだと思うわ」

 

「つまり......」

 

「つまり、レイちゃんはこの城で、この場所で待ってて頂戴。そうすればデーモンの干渉を受けずにすむわ」

 

「は、はいっ!」

 

「そーいうことなら話ははえーなッ!ネオの事情もわかったし、デーモンに騙されてるってわかったんだ。なにがなんでも勝ってネオを連れもどすぞ、ゼロッ!」

 

「うん、そうだねッ!ネオのレイを思う気持ちにつけ込むなんて、ボク、絶対に許せないよ、タイチッ!!」

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