(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
ロゼモンの周りに黄色い蔦が巻きついていて、妖艶さが増している。
「なるほど、そうやって洗脳してここまで侵入したってわけね。残念ながらここから先は通れないけど」
「アンタは、ジュンじゃない。裏切ったのね」
「従わされてた理由がなくなったから、私はやりたいことをしてるだけよ」
「あら、奇遇ね。あたしもネオ様のために自分がすべきことをしているだけよ」
ギャルの割に頭良さそうな発言である。真っ黒な爪を見せながら笑う彼女がテイマーなのは間違いなさそうだ。
「この結界は暗黒勢力を通さない効果があるの。入れないってことは、あなたも侵食されてるってことよね」
「それがなにか?問題でもあるわけ?」
「あるからいってるのよ。超究極体のデジゲノム入れられて平然としてるなんてどうかしてるわ」
「必要なチカラだもの、なにを拒む必要があるのかしらね?この邪魔な結界を壊して、彩羽レイを保護することがあたしの任じられた仕事なのよ。邪魔しないで頂戴」
「なっ!?」
「なに驚いてるの?兄が妹を探すのがそんなにいけないこと?座標がズレちゃったせいで妹がデジタルワールドに迷い込んでいると知ったら、探すのはあたりまえよね?いわば、今のあんたたちは誘拐犯よ。彩羽ネオと彩羽レイを引き離す悪逆非道のホーリーエンジェル軍てわけ。だから攻勢に出たのよ、わかる?」
「ものはいいようね、引渡しに応じたら撤退するとでもいいたそうね?デーモン軍がそんなことするわけないじゃないの」
「あら、ならどうして今すぐにでも戦争に踏み切れるのになにもせず、包囲したままネオ様たちが待機していると思っているの?そんなの待ってるからに決まってるでしょう。彩羽レイ、聞いてるわよね、あなたのお兄ちゃんがお迎えに来てくれたわよ。帰りましょう?」
「レイちゃん、来てもいいけどパソコンはもってきて。ネオ君から話を聞けないならどうとでもなるもの」
「余計なことをッ───────」
ロゼモンの稲妻みたいに光る長いムチの線がジュンのパソコンに襲いかかったが、結界によりはじかれてしまう。しなやかな手に持たれたしなやかな黒い鞭がわなわなと波打った。
「ほら、油断も隙もない。こうやって拉致される可能性もあるから、お守り代わりに手放しちゃだめよ、レイちゃん」
ギャルが舌打ちをした。どうやらレイをここまでおびき寄せてロゼモンに捕獲させるつもりだったらしい。
「やっぱりあんた邪魔だわ、あんたさえいなけりゃ今頃この城は戦場になってたのに。ネオ様のいうとおり、真っ先に排除させてもらうわ。いくわよ、ロゼモン」
「準備はできているわ」
「この空間だけでいうなら、あんたの味方はあんただけだってこと、教えてあげる」
ギャルがそう宣言した瞬間に、ホーリーエンジェル軍のデジモンたちがこちらに敵意を向けてきた。なるほど、すでにあたり一帯のデジモンは洗脳してしまったらしい。
「あんたたちは、ホーリーエンジェモンの味方によって殺されるの。素敵な結末よね」
「私の結末は私が決めるわ、あなたに決められるものじゃない。それにここで負ける結末でないことはたしかよ」
「いうじゃない」
ジュンはパソコンを起動した。
「シグマみたいなことして......ま、まさか」
「シグマが誰かは知らないけどみたことあるみたいね。結界はね、こういう使い方もできるの。さあ、あなたと私の一騎打ちといきましょうか。私はジュン、本宮ジュンよ。あなたは?」
「あたしはマリ、豪徳寺マリよ。ロゼモンが相手になってあげるわ」
ジュンはパソコンを起動した。
「あなたはまだ闇の本当の恐ろしさをしらぬようだ。なら教えてさしあげましょう。私に勝つための戦略は頭にありますか?確認しておきなさい。それがあなたの生きる唯一の方法なのだから」
「ソーンウィップッ!」
ロゼモンが動いた。
電気を帯びた棘の鞭でどんなに狂暴なデジモンでも手なずけてしまうといわれているが、ベルフェモンが黄色い鞭に拘束される。
「フォービドゥンテンプテイション」
無数のバラの花が出現し、データ破壊されていく。
「おや、この程度ですか?」
ベルフェモンは嘲笑した。あえてさけなかった。むしろ、鞭を掴んだ。だらだらと血が流れるのお構い無しだ。ロゼモンは何とか引き抜こうと電撃を放つがベルフェモンは微動だにしない。
本来、犠牲者の身体はミミズ腫れで済めばマシで、皮膚が裂けたり出血したりして当然の惨状となり、そして1発~数発目から気絶しても無理はない程の痛みが襲う。 切断されたりしないだけマシという『だけ』の話であり、鞭打ち回数が少なくてもかなり痛くて辛いが、鞭打ち回数が多い場合は死に至るケースも普通にある。 打たれた後は痛みと傷で体が熱を持ったりするため、治療が施されなかったり、衛生環境や食事などの待遇が悪い場合も同様に危険であるが、ベルフェモンは意に介さない。
「超究極体のデジゲノムの影響か、あなたもまた七大魔王のように相手のデータを奪い取ることが出来るようですね。ほかのデジモンには脅威でも私には脅威たりえない、それはなぜか?それはですね、私がデーモンと同じく暗黒勢力そのものから生まれいでた存在だからですよ」
ベルフェモンは高笑いする。
バラが枯れていく。鞭が枯れていく。データが逆に取り込まれているのだ。驚いたロゼモンが距離をとろうとしたが鞭を掴まれてしまい、思うように動けない。
「鞭というものは遠心力を利用するので非力な者でも十分な威力を出せるが、大きく振りかざさないと威力を発揮出来ないため、音を出すだけならばともかく、戦場で敵に対しての長時間使用を考えると結局体力が必要になりますねえ。あなたにそこまでの体力があるようには思えませんが」
ロゼモンは悔しげにベルフェモンをみる。
「万全な環境ならばリーチの長さがあって強力だが、狭い場所では満足に使えず大きな空間が必要で仲間も邪魔になりかねないので乱戦でも使いづらい。振るうことしかできず、近寄られると威力が減衰するため、環境の違いに比較的対処しづらく、戦場でよくある突進がしづらい上に相手側の突進も止めづらい。そもそも鞭という道具自体、なるべく相手を傷つけずに痛みのみを与えるためのものなので、本気の戦闘で使えるものではない。ゆえにひとりでここまできたのでしょう?」
「それを後悔させてさしあげましょう。セブンス・ペネトレート」
怠惰の冠から力が滾る。真紅のエネルギーがベルフェモンを包み込み、体内の潜在的エネルギーを波動として放出するためにベルフェモンは練り上げる。ロゼモンの武器である鞭を鷲掴みにした状態で、超至近距離から最大出力でエネルギー波が放たれた。禍々しい色をした爪からもいくつものエネルギー波が放たれ、そのいくつかがロゼモンを貫通し、マリは悲鳴をあげた。みるみるうちにロゼモンの肉体は崩壊していき、0と1に溶けていく。そのデータはベルフェモンに還元されていき、マリは悟るのだ。ベルフェモンを相手にするということは倒す気じゃないと相手を強化することにしかならないと。
「これが七大魔王の力、そして暗黒勢力たる所以の本来あるべき力です。もっともダメージは受けますがね。ゆえにロゼモンのようなデジモンがもつべき力ではない。現に私の技の発動までにはタイムラグがあったにもかかわらず、そのスピードでもってロゼモンは回避する事が出来なかったのですから。後悔するのです、そしてロゼモンを育てるだけの力量がありながらデータ種で単身ウィルス種に挑んだその愚行を恥じて、私を通して恐ろしさを身をもって知るがいい」
「ロゼモンッ!」
マリはたまらず走り出す。ロゼモンは飛行能力すら奪われて床に転がった。
「ま、マリ......」
マリがベルフェモンとロゼモンの間に立ち塞がる。こうしている間にも刻一刻とロゼモンの構成データは破壊されていき、きえはじめている。マリはわかったのだ。このままいけばロゼモンはデジタマに自らのデータを転写して転生することすらゆるされず、ベルフェモンの糧にされると。
「あたしの負けよ、ベルフェモン。完敗だわ......だからこれ以上ロゼモンを痛めつけないで」
ベルフェモンは動きをとめた。
「いやですねえ。いまやデーモン軍がホーリーエンジェル城を完全に包囲されている今、工作員として潜入し、デーモン軍の侵入を許した貴女を生かしておく意味はないのでは?」
「そ、それは......」
「ましてや彩羽レイを奪還に来たというじゃあありませんか。エイリアスでしたっけね?タイチさんたちがまだ援軍に来れないのは、あなたたちのせいでは?」
「そう......だけど......」
マリの声がどんどん小さくなっていく。涙すら浮かんでいた頃。
「そのデジヴァイスを預けてくれるってなら考えるわ」
ジュンの言葉に弾かれたようにマリは顔をあげた。デジヴァイスはテイマーの命より大切なものだ、それを預けてくれるなら、というジュンの提案にベルフェモンはその意図がわかったのかニヤリと笑った。
「わ、わかったわ。これでいいんでしょ?」
マリはほとんど衝動的に腕のデジヴァイスを外して床に投げた。
「解析させてもらうわ。ベルフェモン、マリたちを連れて行って。処遇はレオモンに任せましょ」