(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第138話

激闘の最中、明らかな邪魔が入ったと両者が気付くのは早かった。まずはオメガモンズワルトから放たれた漆黒の砲撃に被弾したベルフェモンは絶叫した。今までにない悲鳴だ。もがき苦しむベルフェモンはジュンと会話する余裕すら失われたようである。

 

「どうしたの、ベルフェモン!?大丈夫っ!?」

 

デジヴァイスが異常を検知したとエラーを吐き出し始める。

 

「な、なにこれ!?どうしてベルフェモンの構成データに異常が!?」

 

すさまじい勢いでベルフェモンを構成するデータが破壊されていく。それは虚空に消えていく。明らかに七大魔王がもつ特性だ。オメガモンズワルトがもっていていいスキルではない。

 

「ベルフェモン!」

 

叫ぶジュンとベルフェモンに動揺をかくしきれないのは、ほかならぬオメガモンズワルトだった。ガルルキャノンを見つめている。闇の粒子がまた集まり始めていた。オメガモンズワルトの意思とは全く無関係の法則が働いている。オメガモンズワルトは抗うことができない。相棒の異常に気づいたヒデトはオメガモンズワルトを止めようとするが無常にもデジヴァイスは操作を受け付けようとはしなかった。

 

無常にも放たれた漆黒の砲撃がジュンのデジヴァイスがもつ結界すら貫通して、ベルフェモンの巨体をみるも無惨な形で破壊していく。

 

オメガモンズワルトのガルルキャノンがその砲撃の出力に耐えきれず青い稲妻が走り始める。それはみしみしと内側からヒビが入っていき、メタルガルルモンの頭部を模していた装甲を内側から破壊していく。砲撃は止まらない。オメガモンズワルトを構成しているエネルギーをも変換する形でどんどんその威力を増していく。

 

その砲撃を構成しているデータは、内側からベルフェモンを食い破っていった。このままではジュンもろとも死にかねないと悟ったベルフェモンは、必死で呼びかけるジュンの体を掴むと空に向かって放り投げた。

 

「ベルフェモン!!!」

 

ベルフェモンを構成していたデータは、すべて0と1に変換され、消滅していく。ジュンの叫びはいよいよ届かなかった。ジュンの目の前でベルフェモンは消滅し、その蓄えていた膨大なウイルス種のデジゲノムは、漆黒の砲撃に仕込まれていたプログラムに回収されていく。それがひとつの禍々しい色をしたデータチップになった瞬間に、それははるか上空から飛来した影に捕食されてしまう。

 

オメガモンズワルトを侵食していったデータもまた、そこからその影に喰われていく。

 

「ヒデト、逃げるんだ。このままだときみまで死ぬ!」

 

オメガモンズワルトに庇われる形で地上に下ろされたヒデトは、なにがなんだかわからないまま空を見上げるしかない。オメガモンズワルトは自身のガルルキャノンをグレイソードでぶったぎる。そこで侵食は終わった。

 

「ヒデトくん、こっちにきて!ただでさえあなたは、パーソナルデータが保護されてないの!オメガモンズワルトみたいになっちゃうわ!!」

 

ジュンが結界の中に連れ込むのと、オメガモンズワルトのガルルキャノンとベルフェモンを喰らった影が咆哮するのはほぼ同時だった。その瞬間にデーモン軍とホーリーエンジェル軍の兵士たちが消滅してしまう。そのデータは全て禍々しい風に飲み込まれていき、巻き上げられていく。そのさかまく漆黒の中心は、黒い球体となり、やがてそれはひとつの不気味な模様が浮かんだ卵を産み落とした。かろうじて貫通を免れたのはオメガモンズワルトのグレイソードがその拡散する波動をぶったぎり、初期化してただのデジゲノムの粒子としてくれたおかげだった。

 

「デジタマだ......」

 

直感的にオメガモンズワルトは思ったが、そこに浮かぶ模様の意味が理解できない。反応したのはジュンだった。

 

「七代魔王の紋章だわ......まさか、あれがぜんぶ取り込んじゃったの?ベルフェモンまで?嘘でしょ......」

 

「7つの究極体のデジタマがひとつになったのか......なんてことだ」

 

七代魔王を象徴する紋章が浮かぶ。リリスモンを象徴する緑色の色欲の紋章。ベルフェモンを象徴する青色の怠惰の紋章。リヴァイアモンを象徴する水色の嫉妬の紋章。ベルゼブモンを象徴する黄色の暴食の紋章。バルバモンを象徴する紫色の強欲の紋章。そして、ルーチェモンを象徴する赤色の傲慢の紋章だ。

 

「ベルフェモンの紋章がふたつあるのに、デーモンの紋章がない......デーモンが核になったんじゃないの!?あのデジモンの核は一体......」

 

煌々と光り輝く蛍光色の光はやがてウイルス種のデジゲノムを取り込み、次第に肥大化し、やがて見上げるほどの巨大となっていく。

 

「うまれる......」

 

そうとしかいいようがなかった。真っ黒な巨大なデジタマにヒビが入る。そのデジタマのデータすら喰らいながら現れたのはみあげるほどの巨大。空を覆い尽くさんばかりに現れたデジモンだった。

 

ジュンのデジモンアナライザーが更新される。どうやらこの恐るべき怪物はデジタルワールドのアカシックレコードにしっかりと記録されていたようである。

 

かつてデジタルワールドのセキュリティの末端の仕事をしていたジュンも聞いたことがないデジモンだった。だがそこに記述された言葉を見ればその脅威を即座に把握することができた。デジモンアナライザーをみせられたヒデトも絶句するしかないのである。

 

ジュンの世界ではアポカリモンを受け入れるために種族ごとにデジゲノムを分割し、そのうちウイルス種のデータを7つにし、デジタマにすることでようやく受け入れることができた経緯がある。生まれながらの究極体になることが運命づけられた個体だ。時代が早すぎるからまだまだ生まれるのが先で、ベルフェモンはその特殊な役割ゆえにジュンがいるからこそ許された存在だった。

 

この世界ではアポカリモンを生み出さないようにするためにデジタルワールドの負の念を吸収する装置(それぞれが司る紋章)をコアに備え付けていた存在だ。光と闇のバランスが崩れたときに、光にばかり力が偏ったときに誕生するはずだった。デーモンだけが誕生したのも相対する光があったからにほかならない。

 

ただ、今回、デーモンはわざと光の存在としてヒデトたちを召喚した。光に偏りすぎた世界は闇を生み出して均衡を保とうとした。そして生まれ落ちた存在が曲折を経てひとつになってしまった。すべての罪の因子がひとつになってしまった。

 

「まさか、初めからこれが目的だったの、デーモン!?オグドモン......っていったい......」

 

それは、便宜上名づけられただけで、ジュンたちの知るデジモンでは断じて無かった。デジモンのデータをかぶっているだけで、もっとおぞましいなにか、なのはたしかだった。

 

オグドモン

 

レベル 究極体

タイプ 化身型

属性 ウィルス

必殺技

・オーラーティオ・グランディオロクア

・カテドラール

・グラドゥス

 

オグドモンとは、七つの眼と七つの脚、そして第八の眼をもつ異形の超魔王である。デジタルワールドの全て罪を内包し、さらに全ての罪を贖罪する力もつ謎の化身体であり、故に、少しでも悪意のあるデジモンでは力を相殺され、倒すすべはない。

 

必殺技は、欲望のままに暴走する『オーラーティオ・グランディオロクア』と、口部より奏でられる衝撃波動『カテドラール』。

 

また、巨大な脚で相手を粉砕する『グラドゥス』をもつ。

 

タコのような体を持ち、七つの眼と七つの脚、そして第八の眼を有する異形の超魔王。デジタルワールドの全て罪を内包し、さらに全ての罪悪を贖罪する力を秘める謎の化身体ともされる。少しでも悪意のあるデジモンの攻撃は全て無力化してしまう。

 

デジモンアナライザーに記されたのは、もはや天災としかいいようがない言葉たちである。

 

あまりにも巨大な体だ、全貌は到底のぞめない。巨大な脚が歩くたび、地面が大きく揺れた。地響きがした。地面が裂け、崖がつくられ、地面が大きく隆起した。オメガモンズワルトがいなかったら、ジュンもヒデトも奈落の底に落ちていたに違いない。

 

ベルフェモンは雄叫びで究極体以下を死滅させる力があるが、オグドモンの咆哮はその比ではなかった。オメガモンズワルトが近づいてくる衝撃波をぶったぎろうとしても相殺され、無効化されてしまうのだ。

 

絶句するジュンに、俺のせいなのか、とヒデトはここにきて初めて弱音をこぼした。無言で先を促すジュンに、ヒデトはネオたちに起こった悲劇とここにくるまでの経緯をはじめて話した。

 

デジモンアナライザーの説明が本当なら、なにをもって悪意と判定されているのかはわからないが、オメガモンズワルトがここにいるのはヒデトのため。ヒデトはレイとネオの贖罪のためにいるのだ。ヒデトは自分が許せないでいる。だからネオの手下になった経緯がある。それはもしかしたら、傲慢なのかもしれない。

 

「そんな無茶苦茶ある?清廉潔白な人間なんていやしないんだから、誰も倒せないってことじゃないの」

 

オグドモンの破壊衝動の矛先はデーモン軍でもなければ、ホーリーエンジェル軍でもないのは明らかで、ただただ目の前を焦土と化すために暴れているのはたしかだった。気づけばあれだけいた軍勢はもぬけのから、かろうじて生き残ったのはオメガモンズワルトしかいなかった。

 

「デーモンはそんなに世界が憎いのか......」

 

「あいつ、初めからベルフェモンを贄にするつもりだったのね、許せない!」

 

「なにをする気なんだ、あいつは」

 

「七大魔王はその強大さゆえに生まれながらに並行世界に同一の存在が生まれて、力を分割されているそうなの。デーモンはそれを心の底から憎んでいたわ。この世界を滅ぼしたら、そんなふざけた定義をした原始の世界にいくか、あらゆる並行世界を統合して全盛期の力を取り戻すと言ってたの。この戦争はほんの足がかりにすぎないのよ、あいつにとっては」

 

「なんだって!?それをネオは知ってるのか?」

 

「わからないわ......だってあなたと一緒でデーモンに召喚されたのよ、ネオくんも。パーソナルデータをどこまでいじられてるかわかったものじゃないわ。だってこの世界のデーモンは、0と1の配列を操ることで感情を操るダークウィルスなんだもの、記憶や感情を改変することなんて簡単じゃない」

 

「そうか......そうなのか......」 

 

ヒデトは拳を握りしめた。

 

「でも、ネオがレイをもう一度自分の足で歩かせてやりたいと誰よりも願っていたのはたしかだよ。そのためなら現実世界をデジタルワールドみたいにすることだって構わないのかもしれない」

 

「そうなの......。でも、デーモンがはいそうですかと認めるとは思えないわ。オメガモンズワルトのガルルキャノンがハッキングされたのだって、本来は余計なお世話じゃない。あんなことされなくても遅かれ早かれ決着はついていたもの」

 

「そうだな」

 

「なんか随分とすんなり認めるのね、あれだけ取り付く島なかったのに」

 

ヒデトは息を吐いた。

 

「なんだか、目の前が急にひらけた気がするよ。さっきまでの焦燥感が嘘みたいだ」

 

「この結界のおかげかしらね、ウイルスバスター機能があるから。あるいは相方が片腕を失ってまで助けてくれたから?」

 

「はっきりとはいえないが、どちらでもあると思う。ネオたちとあんなことがあってから、色々なことがありすぎたんだ。行き着くところまで行きついてしまったのかもしれない。それならいっそのこと、と思っていたのはたしかだ」

 

「オメガモンズワルトはそれでもついてきてくれたのね」

 

「そうだな......ありがとう、オメガモンズワルト」

 

「いつか目を覚ましてくれると思っていたよ、ヒデトは俺にとって最高のテイマーなんだから」

 

「正気に戻ってくれてありがたいんだけど......ごめんなさい、素直に喜べそうな状況じゃないわ。どうしたらいいの......」

 

ジュンはたまらず本音をこぼす。時空を越えてまでパートナーデジモンになりたいと追いかけてきてくれたかけがえのない存在が世界を滅ぼそうとする天災と化している。どうしたらいいのかわからない。デジモンアナライザーを見つめながら、ジュンは途方にくれる。

 

「まだだ、まだなにかあるはずだ」

 

「ヒデトくん......」

 

「きみはヒデトを元に戻してくれたんだ、その恩を返さなきゃならない」

 

「オメガモンズワルト......」

 

「あれだけの戦いに水をさされたんだ、決着がつかないままベルフェモンに死なれたら俺たちが困るんだよ」

 

ジュンはつられて笑ったのだった。

 

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