(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
七大魔王の紋章がオグドモンのはるか上空に浮かんでいる。ただしくは憤怒の紋章の代わりに怠惰の紋章がふたつうかんでいるが。オグドモンの語源は名前の由来はおそらくギリシャ語で数字の8を意味するオグドアからだとその光景が見えたのならばジュンたちは確信できたはずだ。雲の向こう側に消える頭上である。見えるはずもなかった。
かろうじて巨大な脚に突き刺さるグレイソードのような巨大なエネルギーを内包した聖剣達がみえるくらいだろうか。封じられてきた天災が呼び覚まされたことを強く意識させるのは間違いなかった。
オグドモンの巨体はホーリーエンジェル城の城下町を城壁ごと焦土と化しながら進んでいく。そこにはなにも残らない。殺したデジモンたちのデータを自らの糧にしていく性質は七大魔王から継承しているようで、遺体すら残らない。あるのは瓦礫にすらなれなかった砂埃ばかりである。
オグドモンが誕生するときに発生した漆黒の風も分厚い暗雲も健在であり、オグドモンが歩くたびに上空の空は黒で塗りつぶされていく。ふいにその積乱雲のような闇が明るくなった。高出力のエネルギーが検知された。オグドモンをとりかこむように6つの魔法陣が上空にあるとわかるくらいには明るくなっていく。それが魔法陣から放たれた光の柱がこちらに向かっているからだと気づくのは、それが雲を貫通してからだった。それはまるでレーザー砲のように空からホーリーエンジェル城目掛けてぶっぱなされたのである。
ジュンはたまらずホーリーエンジェル城を見た。最悪の光景すら脳裏をよぎった。ジュンのデジヴァイスの結界すら貫通するほどの威力があるのは明白で、あの城に施した結界もやぶられてしまう確信があったからだ。
だが、そうはならなかった。7つの光の柱がホーリーエンジェル城に着弾するというその刹那、眩い光が展開され、城を防ぎ切ったのである。
「よ、よかった......なにか防衛プログラムでも稼働したの?でもあの城にそんな詳しい人いたかな......」
「ジュンじゃないのか?」
「アタシじゃないわ、全てのプログラムを掌握してるわけじゃないのよ。調べる前にマリちゃんやヒデトくんたちが来ちゃったから」
「そうなのか。じゃあ一体誰が......」
オグドモンは目の前にあるホーリーエンジェル城を完全なる敵だと考えたようで、執拗に攻撃をはじめた。口と思われる部分から放たれた旋律や巨大な脚から繰り出される拡散する波動は漏れなくあたりを破壊し尽くしたが、ホーリーエンジェル城はびくともしなかった。
「ここは最後の砦だ。お前たちの目的がデジメンタルなのだとしても、絶対に渡すわけにはいかない」
ひとつの光が、ちいさな光が、オグドモンの前に立ち塞がる。
「デーモンにより意図的に強まった光と均衡を保つためにお前は生まれたのかもしれない。だが今、この瞬間に世界は闇に傾いた。ゆえに世界は光に加護をさずけたのだ」
そこにいたのはこの城の主人、ホーリーエンジェモン、その人だった。
「世界の均衡を保つために力を抑えていたが、そうもいってられなくなった。今ここで力を解放させてもらう」
そして、ジュンたちは、ホーリーエンジェモンがタイチとゼロマルを召喚することができた理由を知ることになるのだ。デジタルワールドの守護デジモンゆえにセキュリティシステムからデジタルゲートをあける力を付与されていたと考えていたジュンはそれが誤りだと悟るのだ。それはほかならぬ、ホーリーエンジェモンとして正体をかくしていたデジモンの能力にほかならなかったのである。
オグドモンの破壊衝動に震撼する世界のはるか上空に、無数のデジタルゲートが構築されていく。そこから現れたのは、数多の天使、いや、それだけではない。悪魔、あるいは魔王、堕天使型デジモンたちがいる。
それを従える形で現れたのは、白の翼と黒の翼をもつ異色の天使だった。
「我が名はマスティモン。世界を終焉に導きし原罪の権化よ、今ここでいつかの決着をつけようではないか」
ジュンのデジモンアナライザーが更新された。
マスティモン
レベル 究極体
タイプ 天使型
属性 ワクチン
必殺技
・ホーリーディザイア
・ダークディスパイア
・カオスディグレイド
デジタルワールドに未曾有の危機が訪れたとき、相容れない天使型デジモンと堕天使型デジモンが手を取り合い、ジョグレス進化を果たした姿で現れるという天使型デジモン。ゲートを繋ぎ別のデジタルワールドから呼び寄せた天使族・堕天使族の勢力を統制し窮地に立ち向かう。
普段は敵対する両種族をまとめ上げられるのも、『異世界の軍師』と呼ばれるマスティモンの持つ資質ゆえである。自身も相反する2体のジョグレス進化でありながら一本気な心の持ち主で、光と闇のエネルギーを自在に操って様々な状況でデジモン達に力を貸し、また自らも強敵を討つ。
必殺技は右腕から放つ光の矢で邪悪なる者を討ち滅ぼす「ホーリーディザイア」と、左手で掴んだ相手をデジコアごと握り潰しデリートする「ダークディスパイア」、そして。
デジモンアナライザーが全てを読み上げる前にマスティモンは両腕の光と闇のエネルギーを融合させてゲートを作り出す。マスティモンとオグドモンのあいだに巨大な門が出現する。
「異次元の彼方へ消え去れ!カオスグレネイド!!」
すさまじい光と闇があたりを覆い尽くした。門にオグドモンが吸い込まれていく。
「攻撃することができないならばこの世界から追放すればいい、確かにそれは有効な手段だろう」
どこからか、男の声がした。ジュンとヒデトは弾かれたように顔を上げた。デーモンの声だった。高笑いが聞こえてくる。
「長きにわたる平和でボケてしまったようだな、マスティモン。七大魔王に運命づけられたその忌々しき因縁を忘れてしまうとはな、愚か者め!」
その瞬間、門が破壊された。オグドモンの力ではない。なにかよくわからない法則が働いて門を構成しているデジゲノムが破壊されてしまったのだ。
気づけばデーモン軍が出現していた。傍にはアルカディモンと超究極体の因子を取り込み変質したカオスドラモンを従えたネオがいる。
「七大魔王はその余りに強大な力から、全ての平行世界に存在させる事で力を分散させている。一つの世界に存在する七大魔王達を全て倒してしまうと世界から罰を受けるのだ。ゆえに天罰を受けるのは貴様の方だ、マスティモン!!」
「ようやく姿を表したな、デーモン。私は初めからオグドモンの排除など考えてはいない。想定内だ」
「なんだと」
「そこにいるオグドモンは普通のオグドモンではない。ジュンのパートナーたるベルフェモンを強制ジョグレスさせて作り上げたまがい者だ。この災禍を放逐してもこの世界には貴様が残る。ゆえに問題はない。だがジュンと特別な繋がりがあるベルフェモンを救う必要がある、初めから放逐する気などなかったさ。消えるのは貴様の方だ」
マスティモンの号令が響いた。どうやら初めから陽動するつもりだったらしい。あらゆる方向からデーモン目掛けて光と闇の力が発射される。
「オグドモンを解放するためにワシがどれだけ労力を割いてきたと思っているのだ。この程度、予測済みよ!さあ、食らうがいい、オグドモン!素体となった七大魔王たちになんのために超究極体の因子をつぎ込んだと思う?このためだ!!」
光と闇の弾幕が迫り来る中、デーモンは高らかに宣言する。オグドモンに超究極体の因子がぶち込まれた瞬間、誰もが世界が歪んだ気がした。
オグドモンの蜘蛛のような姿が内側から食い破られ、さらなる悍ましい姿に姿を変えていく。タコのような、不定形のような、原型すら超究極体の因子によって崩されていく。七大魔王の悪の思念、破壊衝動がさらに増幅され、存在するだけでデジタルワールドが崩壊しかねないパワーが漏れ出てていく。6本の腕と頭は七大魔王それぞれの能力を備えた触手剣となり、敵味方関係なく、近づくもの全てを消し去ろうと振るわれる。それだけでなにもかもが消滅した。マスティモンが召喚した数多の軍勢すら消し去ってしまった。
デーモンの高笑いが聞こえてくる。状況は考えうる限り、最悪の方向にひた走っていることだけはたしかだった。
「いけ、アルカディモン。さっき食い損ねた分だ、ガルルキャノンというメインウェポンを失ったオメガモンズワルトなど敵ではない!」
ネオの命令にアルカディモンがこちらに向かってくる。
「ネオ......」
その瞳の奥に憎悪とデーモンの紋章をみとめたヒデトは顔を曇らせた。オメガモンズワルトは主たちを守るべくグレイソードを構える。ぐらつく体で巨大な剣を天高く掲げた。迫り来るアルカディモンとオメガモンズワルトのあいだにわってはいる影がある。
青い翼を広げたドラモンがそこにいた。
「みんな、待たせたな!」
「大丈夫かぁー?」
アルカディモンの目の前から獲物をかっさらい、安全圏にまで退避させたのは。
「タイチくん!ゼロマル!」
ジュンが誰よりも待ちわびた存在だった。シグマによる妨害を退け、なんとか戻ってくることができた、タイチたちだったのである。