(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第14話

ケルベロモンがガーゴモンによって倒され、ガーゴモンがジュンのパソコンの住人となったことで、デジモンがすっかりいなくなった。電波障害の原因であり、電気を際限なく食べてしまうデジモンがいなくなった夏フェスの会場は、すぐに明るくなっていった。暗闇が追いやられ、原因不明の集団催眠に陥っていた人々は、すぐに目を覚ました。

 

 

きっと選ばれし子供を探してるんだろうなあ、ってジュンは思った。お台場霧事件でみんなが眠らされたのは、こんな感じだったはずだ。起きている人はデジモンの攻撃を受けない、=デジヴァイスに守られてる=選ばれし子供のはずだから、いぶりだそうとしたのかもしれない。

 

ここでようやくジュンは、ノートパソコンに入ってる太一のデジヴァイス・プログラムが原因でケルベロモンに追っかけられたことを悟ったのだった。遅すぎでしょ、アタシとしたことが。でも、今はガーゴモンという心強い仲間が出来たことを喜ぶべきだ。

 

 

ふあ、と大きくあくびをした百恵を見て、ああよかったあ、ってその場に崩れおちたジュンである。そのうち人ごみをかき分けて万太郎が合流したころ、アナウンスがなった。夏フェスの中止である。

 

あたりまえだ。大停電と電波障害、しかも集団昏睡事件となれば大騒ぎになって当然である。医者の診察を受けるよう言われ、先生からお墨付きをもらって帰宅したジュンは、デジモンのことなんて、誰にも言えるわけがなかったりする。そして、ジュンは帰ってきたのだった。

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりー。今日は大変だったでしょう、テレビで見たわよ。大丈夫だった?」

 

「へーき、へーき、大丈夫よ。万太郎さんのおかげで無事に帰れたしね」

 

 

あはは、と笑ったジュンは、ここまで送ってくれた万太郎さんに、今日はありがとうございました、と振り返る。いいよ、いいよと眼鏡越しに保護者の笑みがうかんでいた。すっかり夜遅くなってしまった帰宅である。

 

さすがに中学生の女の子をたったひとりで帰らせるわけにはいかないから、と荷物持ちをかってでてくれた万太郎さんは、今日はほんとうにお世話になりまして、と頭を下げるジュンのお母さんに、いえいえ、と返した。百恵は鍵をかけた車でうとうとしている。妹を待たせているから、と万太郎さんはこれで失礼するつもりのようだ。もう遅いから仕方ない。

 

 

「夏フェス、中止になっちゃって残念だったけど、楽しかったよ。ありがとな、ジュンちゃん」

 

「アタシも楽しかったです。ありがとうございました」

 

「それじゃ、またな」

 

「はい、おやすみなさーい」

 

 

ぱたん、と扉が閉められる。はやくお風呂に入っちゃいなさい、っていいながら、お母さんは夕御飯の片付けにむかった。はーいっていいながら向かうのは大輔の部屋だ。こんこんとノックをして、ただいま、大輔、って言えば、鍵があく音がしてドアが空いた。

 

ジュンだとわかった瞬間、不安で不安でたまらない、といった様子の怯えた眼差しは、ぱっとした明るい表情に変わる。よっぽど怖いものが見えていたのか、大輔はそのままくっついてきた。ただいまって言いながら頭をクシャクシャになでるとくすぐったそうに大輔は笑った。

 

 

「おかえり、おねえちゃん。よかった、おねえちゃん帰ってきた。怖かったんだよ、お姉ちゃんが行ってたとこ、でっかい犬がいっぱい火を吐いてたり、走ったりするの見えたから。大暴れしてたから。みんな、倒れてくんだもん。すっごい怖かった」

 

「そっかあ、やっぱアンタには見えてたのね。心配かけてごめんね、大輔。アタシなら大丈夫よ、ゴジラみたいな怪獣がやっつけてくれたから」

 

「しってる!それしってる!真っ白な羽が生えてる怪獣でしょ?でっかい銅像だしたり、おっきな犬を石にして、どこかにやっちゃった怪獣でしょ?かっこよかったあ!」

 

「そんなとこまでみえてたの?」

 

「見えてたのは僕だけだよ?お母さんも、アナウンサーの人も、みんな真っ暗だっていってたもん」

 

「そっか、やっぱり見えてる人と見えない人がいるわけね。電波障害で写りも悪かったでしょうに、よく見えたわね。さすがよ、大輔。それにアタシのいったこと、ちゃんと守れてるみたいね。えらいわよー」

 

 

へへ、と照れくさそうに笑った大輔は、ちょっとおいでって言われて、なに?って言いながらジュンの部屋に向かう。ちょっと待ってて、って言いながらローラー椅子を引いたおねえちゃんの背を眺めながら、はーいって言いつつベッドに座る。

 

ノートパソコンを常設しているパソコンに接続したジュンは、太一のデジヴァイスのプログラムをコピーして転送した。DIGIという名前のアプリが表示される。しばらくダウンロードに時間がかかるが明日の朝には終わっているだろう。おいでって手招きされた大輔はそっちを覗き込んだ。

 

 

「なに?おねえちゃん」

 

「アタシを助けてくれた怪獣がね、これをくれたのよ。これをクリックすると、この部屋にバリアが貼られて、あの怪獣たちから守ってくれるんだって。怪獣が見えてる人しか、怪獣は襲ってこないからね。これでお母さんを守ってあげてって」

 

「ほんと!?」

 

「うん、ほんと。だからね、大輔。もし、この近くに怪獣たちがきたら、これをクリックするのよ?明日、明後日、このパソコンつけっぱなしにしとくから、マウスを触ればこの画面になるからね」

 

「クリックだけでいいの?」

 

「そうよ。他になんにもいらないわ。いいわね、大輔」

 

「うん、わかった!」

 

 

大好きな戦隊もの、もしくは仮面ライダーに出てきそうな秘密基地を彷彿とさせるアイテムである。大輔はきらきらと目を輝かせていた。ジュンはそのプログラムをお台場に住んでいるパソコン部の部員や友人、先生、パソコンに登録しているアドレスに片っ端から転送することにした。

 

いたずらメールと思われるかもしれないが、簡易な説明書と怪獣について触れる。何もしないよりはずっといいはずだ。これは徹夜かしら、って思いながら、ジュンはお風呂に入るための準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

髪を乾かしていたジュンに、電話がかかってきたのは、11時すぎのことである。男の子からよってなにを邪推したのか、にやにやしてるお母さんから受話器を受け取り、そんなんじゃないわよ、って言いながらジュンはお母さんを追い払う。会話が聞こえないように手でおおう。てっきりさっき送信したメールを受け取った誰かからだと思ったのだ。

 

 

「もしもし、お電話変わりました。ジュンですけど」

 

『あー、もしもし。こんばんは。おれです。太一です』

 

「え、太一くん?どうしたのよ」

 

『えっとー、その、今日は、ホントにありがとう』

 

「ああ、いいのよ、いいのよ、それくらい。今はそれどころじゃないんでしょ?大変だと思うけど、がんばってね」

 

『あ、うん、ありがとう。ジュンさんのおかげで、8人目探さなくてよくなったからさ、ホントにありがとな。それで、その、ジュンさんのこと話したら、光子郎が・・・・・』

 

「光子郎くんがどうしたの?」

 

『それがー、その、明日、ジュンさんにも手伝ってもらえないかって』

 

「え?ごめん、なにを?」

 

『あ、そっか。ごめん、まずはそこからだよな』

 

 

太一は説明を始めた。

 

1995年にあった光が丘爆弾テロ事件の真相は、デジタルワールドという異世界から迷い込んだデジモンという怪獣の大乱闘である。そのとき、団地に住んでいた8人の仲間たちは、そのデジモンを回収した神様から、なんらかの才能を見出されて「英雄に選ばれた子供」となった。そして、4年後の今、デジタルワールドは悪い奴らに滅ぼされそうになっていて、太一たちはサマーキャンプ先で召喚された。

 

しかし、今の敵である吸血鬼のデジモンがこちらの世界に、たくさんのデジモンを引き連れてやってきているため、太一たちは一時的にこっちに帰ってきている。選ばれし子供は8人いないとデジタルワールドを救えない、とゲンナイのじいさんに言われているため、光とパートナーは絶対に連れて帰らないといけない。

 

しかし、英雄の証である紋章とデジモンは、ヴァンデモンにとられている。しかもヴァンデモンは、光を狙っている。つまり、ヴァンデモンに取られた紋章とデジモンを取り返さないといけないのだ。東京23区のどこかに潜んでいるヴァンデモンから。

 

 

『ほんと、ごめん。そのさ、マジで人が足りないんだ。ゲンナイのじいさんが言うには、ヴァンデモンが光を見つけ出すために、光の紋章とパートナーのデジモンを持ってるらしくって。明日、片っ端から探さなきゃいけないんだ。でも、ほら、光はデジモンがいないだろ?だから一緒に連れて回るわけにもいかないから、明日、俺、お台場に残ることにしたんだ。ほんと、ごめん。でも、マジでこんなこと頼めるのジュンさんしかいないんだ。明日、光のデジモンと紋章、探すの手伝ってほしいんだ』

 

「あー、なるほど、そういうこと。まあ、光ちゃんを連れて歩くわけにも行かないわよね、風邪だし。一緒にいてあげるってのは、アタシも賛成よ。光ちゃんは一人にしちゃダメよ、お兄ちゃん」

 

『うん、わかってる』

 

「でも、なんでアタシなの?選ばれし子供でもないのにさ」

 

『だってジュンさん、すっげえアタマいいじゃん。デジモンもデジタルワールドのことも知らないのに、オレがしゃべったことだけで、デジタルワールドがネットにある世界だってわかっちゃったじゃないか。ほんとすごいよ。それに、デジタルワールドのゲートを開けようとまでしたじゃないか。光子郎も驚いてたよ。やっぱ、オレたちだけじゃ不安だし、ジュンさんだから気づいてくれることもあるかと思って』

 

「あー、かえって選ばれし子供じゃないアタシだから気づくこともあるってこと?なるほどねえ、そーいうのって大事だわ、うん。了解、わかったわ」

 

『え、ほんとか!?』

 

「ええ、いいわよ。手伝ってあげる。たぶん、誰か一緒についてきてくれるんでしょ?」

 

『あたりまえだろ!ジュンさん一人にするわけにはいかないし!』

 

「ならいいわ。ただし、ひとつだけ条件があるけどね」

 

『え、なに?』

 

 

ジュンは笑った。

 

 

「なに、簡単なことよ。太一くんが光ちゃんを守りたいのと同じように、アタシは大輔とお母さんを守りたいの。そんなアタシにお願いするんだから、聞いてくれるわよね?明日、うちに遊びに来て。アタシが帰ってくるまで、うちにいて。今日のおかえしよ、簡単でしょ?」

 

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