(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第140話

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《無限ジョグレス》 はもともとネオにどうしても勝てなくてヒデトが編み出した戦術だった。デジヴァイスをふたつもつヒデトは、これらを駆使してオメガモンズワルトをジョグレスとパーティションを繰り返すことでHPを無限に回復させ続けるテクニックを確立したのだという。ついでにそれぞれブラックウォーグレイモンのオーグとブラックメタルガルルモンのメルーガという名前があるのだと教えてくれた。おそらくデーモンに召喚された関係でデジヴァイスにプログラムが仕込まれており、それにより真っ黒になったがもともとはオメガモンだったというから驚きだ。

 

「そんな手があったとはね......どのみちロスト待ちの延滞されたら詰みだったわけか。やるじゃない」

 

「奥の手は最後までとっておくものだからな」

 

そんな大事な奥の手をヒデトがわざわざ教えてくれたのは、ヒデトがもっているデジヴァイスに搭載されている機能をつかえばオグドモンに干渉できるのではないかと提案されたからだ。

 

オメガモンズワルトはジョグレスとパーティエーションを繰り返し、回復スキルも駆使することで万全の体勢を取り戻している。それはどうやらデーモンのハッキングがないかどうか確認する意味もあったらしかった。ジュンのデジヴァイスにあるプログラムをそちらにぶちこんだおかげかもしれない。なんの問題もなくプログラムは起動し、正常に機能している。少なくても、先程のようにハッキングされてガルルキャノンが喰われることはなくなったわけだ。

 

「オグドモンは七大魔王が強制的に統合されて超究極体の因子をぶちこまれた状態なんだろう。分離することさえできれば個別撃破は骨が折れるが可能かもしれない。これができるのは、きみだけだ。ジュン」

 

「アタシ?」

 

「ベルフェモンと特別な繋がりがある君だからこそ、まだ希望はある。精神的な繋がりがあるなら、ベルフェモンに悪影響があったなら少なからず君にも影響がでるはずだ。でも、ないんだろう?君がいる限りベルフェモンが弱体化しないのは今もかわらないんだ。だからネオは俺たちだけ狙った」

 

アルカディモンとカオスドラモンを従えるネオと交戦状態に入っているタイチたちの空中戦を見上げながらヒデトがいう。ジュンは息を呑んだ。

 

「君がどれだけプログラミングの力があるかはよく知ってる。まだ諦めるのは早い」

 

「パーティション、か。すごいわね、ジョグレスがそんな簡単にできるなんて。アタシの世界だとデジタルワールドが全て用意していたから中身はブラックボックスだったのよね。それに膨大なエネルギーがいる。運用がすごく大変な技術なの。でも、ヒデトくんの話を聞いていたら、やる気が出てきたわ」

 

「それはよかった」

 

ジュンのデジヴァイスにヒデトから提供されたジョグレスとパーティションのプログラムが展開されていく。ジュンはベルフェモンのデータを通してオグドモンに干渉すべく、ハッキングを始めたのだった。

 

ヒデトはオメガモンズワルトに呼びかけ、ジュンに背を向けた。

 

「いくの?」

 

「タイチにだけ任せるわけにはいかないからな」

 

「そうね、オグドモンをマスティモンが抑えててくれるうちに、デーモンとネオくんとの戦いに集中すべきだわ。頑張って」

 

「ああ、俺たちは俺たちのやるべきことをすればいい。がんばろう、お互いにな」

 

「そうね」

 

そして、オメガモンズワルトとヒデトは戦場に戻っていったのだった。それを見送ってから、ジュンはふたたび己に託された闘いに目を向ける。

 

ヒデトのいうとおり、パートナーデジモンは選ばれし子供の精神性の拡張という大切な役割があるのとひきかえに、パートナーデジモンになにかあったら選ばれし子供もただではすまない。なにせもうひとりの自分なのだ。オグドモンの力がデジヴァイスの結界を貫通するほどの威力があるのなら、間違いなくベルフェモンになにかあったらジュンもただではすまなくなる。さいわいまだなんの異変もないのはベルフェモンがオグドモンの中で今なお抵抗し続けていることにほかならない。

 

原罪の統合がオグドモンだというのなら、人間という存在の中に普遍的に存在すると思われる情念がかたちをもった意思から生まれ出たと思われる中にぶちこまれたに等しいだろう。そこから解放してやるには、ベルフェモンという個人を呼び続けるしかないのだ。

 

アクセスした座標はオグドモンを構成する複雑怪奇なデータの中だった。統合され、完全にひとつになったわけではないのか、ベルフェモンの構成データそのものはベルフェモンを象徴しているオレンジ色の紋章を中心としたテクスチャのあたりにデジゲノムとなって集まっているようだった。

 

「オグドモンの核はなんなのよ、一体......。ベルフェモンは返してもらうわよ、そこにいるべきなのはデーモンであってベルフェモンじゃないんだから。それすらわかんないなら思いださせてあげるわよ」

 

ジュンはベルフェモンを呼んだ。

 

「聞こえる、ベルフェモン?」

 

何度か呼びかけているうちに、オレンジ色の輝きが増した気がした。

 

「よかった、まだ意識はあるみたいね。待ってて、今パーティションのプログラムを起動するから」

 

ジュンのデジヴァイスを通じてベルフェモンの構成データにパーティションのプログラムがダウンロードされる。オレンジ色の輝きは増していき、やがてそれはひとつのテクスチャを再構成していった。こちらに第三者からの干渉してこないようロックをかける。プログラムの実行率がどんどん高まっていく。それはやがて100パーセントになり、ジュンのデジヴァイスはいちど再起動の段階に移行した。

 

複雑怪奇なデータの空間がぼこぼこぼこと泡立ち始めた。構成しているデータからごっそり14パーセント強のデータがぶんどられようとしているわけだから無理もないが。

 

「ベルフェモンに超究極体の因子をぶちこまれるわけにはいかないのよ、そのまえに何としても......!」

 

まだ侵食はされていないとデジヴァイスが教えてくれる今しかチャンスはないのだ。

 

それを阻止するためにオグドモンの脅威が迫り来る。

 

「!?」

 

それは突如出現した無数のナイフによって軌道を逸らされ、別のテクスチャにぶつかり内部から粉砕される。

 

「大丈夫ですかな?」

 

「あ、あんたはピエモン......?いや、違うわね。こんなところにいるなんておかしいし、そんなに黒くない......色違いにしてはオグドモンに攻撃が通るなんて」

 

「私はカオスピエモン、テイマーたるシグマはヒデトたちの仲間だといえばわかりますかな?」

 

「3人いたネオくんの手下、タイチくんと戦ってたっていう?」

 

「はい、私たちはタイチとゼロマルの友情と絆、そこからもたさられるコンビネーションに敗れました。私に仕込まれていた超究極体の因子の暴走であやうく命を落とすところでしたが、ゼロマルがその感染源だった片足を粉砕したおかげで一命をとりとめましてね」

 

「五体満足に見えるけど」

 

「とんでもない。シグマが急遽義手となるプログラムを組んでダウンロードしてくれたおかげにすぎません。私にはオメガモンズワルトやロゼモンのような自己治癒能力はありませんのでね。おかげで私もシグマも助かった。タイチたちは仲間に誘ってくれました。だからこそ、我輩はここにいるのです」

 

「なるほどね、アンタがここにいるのはシグマくんのおかげってことか」

 

「はい。お手伝いしますよ、ジュン。我輩はシグマとともに超究極体の因子とはなんなのか、この強さの正体について調べ上げ、タイチたちに知らせる義務があるのです」

 

心強い味方を得たジュンは気合いを入れ直して、作業を再開したのだった。

 

超究極体の恐ろしさは、デジタルワールドの生態系バランスを崩壊させるほどのエネルギーをもつ。最後まで育てたとしても制御不能なモンスターとなるのは目に見えているため、デジメンタルを求めている。

 

シグマから話を聞いたジュンは目を丸くするのだ。ジュンが知るデジメンタルは誰にでも進化を可能とする膨大なエネルギー体だったが、あまりにも危険なために封印が施された。ここまではこの世界と歩んだ道は同じだったのだが、選ばれし子供のパートナーたる古代種たちがつかえるのも太一たちの紋章を刻むことで精神的な気質を要求することで制限をかけ、実質古代種しか使えなくしたためだ。

 

デーモンはジュンの世界を観測したことで並行世界たる自分の世界にもデジメンタルはあると確信したことになる。それもなんの制約も受けていない、原始の存在たるデジメンタルが。

 

「ホーリーエンジェル城を執拗に攻撃するのはもしかしてそのためなの?」

 

「古代の戦争の史跡をすべて掌握しましたが見つからずここしかあとはないとなれば自ずと答えは出るでしょうね」

 

「なるほど......」

 

「おや、シグマさまからメールが......ああ、なんということだ。デジメンタルの座標が確定したようですよ、ジュン」

 

「シグマくんすごいわね」

 

「シグマさまはデーモン軍にはそのハッキングの力を買われたのですよ、あなたのようにね」

 

「その力を存分に発揮してくれてるってことか。やっぱりその場所って?」

 

「はい、ホーリーエンジェル城の地下に広がる遺跡の最深部になります」

 

カオスピエモンが持ち込んだ端末を見せてもらったジュンは、高濃度のエネルギー反応がそこにあるのをたしかにみた。あらゆるデジモンをその自我や理性、知性を持たせたまま進化させたり、能力のみを無限にひきだすことができる永久機関。デジメンタルの性質を完全に把握したならアルカディモンにデジメンタルを使えば制御できる形で進化させることができると考えた。

 

「デーモンもそれには気づいてるはずよね?なんで自分でやろうとしないのかしら」

 

「光と闇の均衡を崩すのに、シグマさまたちを召喚する必要があったからでは?」  

 

「それはそうだけど、うーん、なんかひっかかるわね。わざわざ人間にデジメンタルを渡す理由......になりえるのかしら。ひとつしかないんでしょう、たぶん。というか永久機関てなによ、そんなのネットワークに存在するデジタルワールドにおいて電気以上に汎用性の高い電気以上の力なんてありえるの?引き出すってことは与えるってことじゃなく、崩壊するからかけてるリミッターをむりやり外すことと同じじゃないの。デジモンだってそんな負荷をかけたら普通死にかねないわ」

 

「それができるからこその最終兵器なのでは」

 

「いやまあそうなんだけど......媒介になるデータがあるはずなのよ。それはなんなのかしら。それがなきゃこの世界には実体化できないでしょ」

 

そこまで考えて、ジュンはふと思い至るのだ。

 

「昔の遺跡は人間が前提のプログラムばかりが展開されてたけど、もしかしてデジメンタルも私の世界と同じような運用が前提になってるとかないかしら」

 

「精神的な気質を要求するというあれですか」 

 

「ええ、それも誰も彼もが持つようなものじゃなく、オグドモンの要求する悪意を持たない心のような」

 

シグマがメールで戦況を教えてくれている。

 

「ゼロマルの攻撃がオグドモンに無効化されなかったってことは、想いに邪なものがなく、真摯でいっちょくせんならば大丈夫ってことよね」

 

「タイチならデジメンタルを扱えるということですか」

 

「タイチくんだけじゃないわ、デーモンに感情を操作されて視野搾取に陥ってるネオくんもそうみたい。レイちゃんのためにって気持ちだけは本物で、それに至るまでの全てを管理下におかれていれば、側から見たらレイちゃんのためにすべてをささげているようにみえるわ。それはきっと真摯で誠実よ。客観的に見てそれが悪でもね。たぶん、それがデーモンに目をつけられた理由なんだろうけど。ほんとにゲスなことするわ、デーモンのやつ」

 

そうしているうちに、ようやくカオスピエモンが持ち込んだ端子が100パーセントを表示する。アルカディモンを構成している超究極体の因子を解析できたようだ。

 

「ドットマトリクス......」

 

「これはこれは」

 

それは恐ろしい性質だった。物体であれエネルギー波であれ、対象とした全てを観測した瞬間に0と1に分解し、吸収してしまう性質だ。これこそがアルカディモンの超究極体もしくは最終兵器たる所以。相手からすればなにが起こったのかすらわからないまま消滅し、取り込まれることに他ならない。しかもそれは目に見えず、聞こえず、なんの兆候もなく行われている。アルカディモンが進化するということはその速度の選択肢が広がることを意味している。

 

「ベルフェモンが抗っていられるのはやはりあなたとの繋がりがあるからでしょうね」

 

「そうなの?」

 

「はい、取り込まれたデジモンのデジゲノムが分解に対抗しているのはあなたのベルフェモンだけです。そのエネルギーが弱まるどころか強まっているのは間違いなく」

 

「ありがとう、カオスピエモン。ですって、ベルフェモン。やるしかないわ、うまくいけば脅威は増すけど敵数が減る!頑張って!」

 

ジュンの言葉にオレンジ色の紋章が呼応するようにひかる。それを妨害しようとする不完全ゆえに避けることができるオグドモンの攻撃を回避しながら、ジュンはデジファームにベルフェモンのデータが転送される瞬間をひたすらに待つ。

 

100パーセントが表示された。

 

「今です、ジュン。こちらへはやく!」

 

カオスピエモンに手を引かれ、ジュンはあわててオグドモン内部から離脱する。そしてシグマのまつホーリーエンジェル城の治療室に転移したのだった。

 

無人になったオグドモンの内部にて、14パーセントを失ったことに気づいたオグドモンの本能は安定をもとめてただちに行動を開始する。本来あるべき7つの大罪の空白を埋めるべく、マスティモンではなく別の存在を探して地上を暴れ始めたのだった。

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