(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第143話

 

その異変に気づいたのは地下遺跡最深部に到達したシグマではなく、誘導役をしていたジュンでもなく、ジュンの傍で様子をじっとみていたレイだった。

 

「ジュンさん、今カオスピエモンの影が動いたような」

 

「えっ」

 

「なに?」

 

ジュンとシグマが気づいたときには、探索する相方の護衛を細心の注意を払いながら行っていたはずのカオスピエモンが動いていた。かちゃり、と得物を手にする音がした。煌々と炎が揺らめいて、遺跡の中が明るくなる。その得物の矛先は相棒のはずのシグマだった。

 

「シグマ、今すぐ私から離れろ!!」

 

カオスピエモンの敬語がなくなったことが事態の悪化を物語る。一気に緊張が走る。

 

はじかれたように顔を上げたシグマは、とっさに体をかがめた。ひゅおっと空を切る音がする。轟音が響いた。さっきまでシグマがいたところが無数のナイフでズタズタになる。シグマが避けるたびに灯籠にあたったナイフが燭台を貫通して、地面に火種が転がり、爆破音が響いた。

 

「カオスピエモンどうしたの!?まさかデーモンの干渉!?」

 

シグマはあわててカオスピエモンから距離をとる。

 

「どうして!?超究極体の因子は脚を犠牲にして侵食を抑えたのに!!」

 

「わからない、わからないんだ、体が私の意思とは無関係に動いている!いうことを聞かない!」

 

「まさか除去しきれなかったのか?!」

 

「シグマくん!カオスピエモン!!」

 

壁伝いに立ち上がったシグマめがけて、巨大な剣を取り出したカオスピエモンはじりじりと近づいてくる。しかしその足取りは遅い。とても遅い。かたかたかた、と不自然に剣が揺れている。懸命に勝手に動く体を制御しようとしているようだが、いうことを聞かないらしい。

 

ジュンはあわてて地下遺跡に張り巡らされた古代デジ文字の碑文を読み上げる。シグマの背後に広がる碑文にめを走らせる。古代デジ文字で描かれた造形文字をなぞる。これじゃない、これじゃない、と右にずれていく。そしてジュンは、古代デジ文字が並んでいる碑文のひとつを見つけ出した。

 

「シグマくん!ここをおして!!」

 

一瞬だけ、近くの壁面の絵が輝いた。シグマはカオスピエモンの攻撃からにげながら手を伸ばす。ぱ、と暗闇が落ちる。小さく息を殺したシグマは、慎重に距離を取った。炎上する遺跡が遠くなる。

 

「ジュンさん、このままじゃシグマさんが!」

 

「いったい誰よ、こんな大事な時に!!」

 

ジュンは表示モードを切り替える。カオスピエモンの周囲に不自然な大気流動。不連続な反響音。高周波のマイクロ波。強力なプラズマ波。ジュンは舌打ちした。敵襲ではない。カオスピエモンにハッキングがしかけられているのだ。

 

「何度邪魔したら気が済むのよ、デーモンのやつ!!同じめは食わないわよ!!カオスピエモンからでてけ!!」

 

ジュンはディーターミナルに搭載されているウイルスバスタープログラムをカオスピエモンにぶち込んだ。

 

「よりによってクラッキングですってえ!?いい度胸じゃないの。アンタのせいでどんだけ苦労してるとおもってんのよ、ふざけんなこの野郎!!」

 

ウイルス種にある意味劇薬ともいうべきプログラムがダウンロードされた。シグマのデジヴァイスの画面が発光する。コンピュータのスキャナのような色を発して、光の波が右から左に流れていく。あまりのまぶしさに誰もが目を細めた。世界が瑠璃色に染まる。

 

ずん、とカオスピエモンの体が重くなる。どうやら流れ込んでくる大量のデータに処理が追いつかず、頭が割れるような頭痛に襲われたカオスピエモンは、その場から動けなくなり、手から剣が滑り落ちる。濁流のように流れ込んでくるデータのダウンロードが完了し、再構築され、再起動する。シグマはおそるおそるカオスピエモンを覗きこんだ。

 

「大丈夫?」

 

「ええ、大丈夫です......ジュンのプログラムのダメージの方が大きいですが」

 

「敵影は消滅したわ、これで大丈夫なはずよ」

 

とりあえずは一安心である。そしてシグマたちは無事デジメンタルが封じられている場所にたどり着いたのだった。そこにあったのは高エネルギーを発する不思議な形をした石のようなものだった。ジュンの予想通り、力を使うにはなんらかの条件を要求するらしく、シグマが触れてもなんの反応もない。

 

「あとはこれをシグマさんたちがタイチさんたちに届ければいいんですね!」

 

「じゃあ、ゲートの準備をするわね」

 

ジュンが転送する準備にとりかかったときだ。今度はいきなりカオスピエモンが苦しみ始めたではないか。シグマがダウンロードした義足がどんどん侵蝕され、食い破られていくのがわかる。

 

「やはり残っていましたか!」

 

先程の襲撃である種の覚悟ができていたのだろうか。カオスピエモンはなんの躊躇もなく義足をふたたび破壊すると、まだドットマトリクスの餌食になっていないところから体を切り離す。ジュンはとっさにレイの目をかくした。侵食は止んだが遺跡に転がる義足から、ギイギイという鳴き声が聞こえてくる。生きているのだ、今なお。

 

「急ぎましょう、シグマ。いずれはこの地下遺跡すら新たな超究極体が生まれる土壌になりかねない!」

 

「タイチにはやくとどけないと!!」

 

「ゲートの準備ができたわ!」

 

「ジュンさん、みてください!外!!オグドモンがいません!」

 

レイの呼びかけにジュンは我にかえるのだ。ジュンたちがデジメンタル探しに必死なうちに色々と戦況が動いたらしい。オグドモンがいない。カオスドラモンもいない。オメガモンズワルトたちが苦しみ始めたあたり、カオスピエモンと同じ状況なのはたしかだ。

 

「アルカディモンの周りにデジメンタル並のデータ量が集まってく......まさか、ドットマトリクスを発動したの!?」

 

嫌な予感はあたってしまう。ジュンたちはモニターごしに、アルカディモンが究極体を超えた存在となった瞬間を目撃することになってしまった。

 

代わりにいるのはアルカディモンとネオ、そして驚きをかくせない仲間たち。なにかくるかもしれない。今のネオは危険だ、レイがいるからってホーリーエンジェル城を攻撃してこないとも限らない。

 

「アタシたちも逃げましょう、なにかくるわ!」

 

ジュンたちが急拵えのデジタルゲートを通じて離脱するのと、ホーリーエンジェル城が地下遺跡ごとふっとばされてクレーターになるのはほぼ同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

ゼロマルが進化したのはこの世界の戦争を終わらせた救世主、アルフォースブイドラモンだった。自身の持つアルフォースの力で今までの蓄積してきたダメージやケガを治癒し、闘志をみなぎらせるゼロマルをみて、タイチは歓喜した。

 

アルカディモン超究極体を圧倒するほどの能力を持ち、 元々最速クラスだったスピードも磨きがかかっている。また、アルフォースによる治癒能力を持つ。

 

せまりくるドットマトリクスを上回る超回復により必殺技をやぶり、真正面から突破に成功した。

 

「どうだ、ネオ!アルカディモンにはもうドットマトリクスを撃つエネルギーは残ってない!!次の一撃でお前の野望は終わりだ!」

 

「ふっ」

 

「なんだ、なにがおかしい!」

 

「負ける?このオレが?くくっ、ははっ、あーっはっはっはっは!たしかにおまえらはオレとアルカディモンをここまで追い込んだ。さすがはバグコンビだといってやろう。だが頭の中までバグってるようだなあ?なんのためにオレたちが超究極体の因子をいろんなやつらにぶち込んできたと思ってる」

 

「ま、まさかおまえ......」

 

「デジメンタルを手に入れるまではと思っていたが、おまえらとの戦いで発動することになるとはな。だがおまえらはそのトリガーを引いたんだ。さらなる絶望のな!これでゲームは終わりだ!みせてやる、すべてのモンスターのエネルギーを取り込み、超越した絶対的な力を!」

 

ゼロマルの近くにいたカオスドラモンが苦しみ始める。オメガモンズワルトたちは一度は失ったはずの腕や脚に幻痛を覚えて行動不能になる。一度でも超究極体の因子をぶち込まれたことがあるデジモンたちはみな一斉に地面に転がった。それはあれだけ絶望的だったはずのオグドモンにも及ぶ。超究極体の因子が一斉にドットマトリクスを発動したのだ。カオスドラモンが消滅した。オメガモンズワルトたちは侵食が止まっていたところにわずかに残っていた因子を排除しなければならなくなり、自傷行為を強要される。そして、災厄の権化ともいうべきオグドモンもまた取り込まれてしまった。

 

「これでアルカディモンは究極体に進化した!」

 

「ネオ、それはもうデジモンじゃない!悪魔の力だ!キミはなにをするつもりなんだ!」

 

「教えてやるよ、これから世界がどう変わっていくのかをな!」

 

ゴッドマトリクスが発動する。ホーリーエンジェル城は一瞬にして消し飛んだ。目の前で0と1が乱舞する。タイチたちは凍りついた。

 

「な、なんてこった......ホーリーエンジェル城が......」

 

「あはははは、さすがは超究極体!素晴らしい力だ!」

 

「ばかやろう、なにやってんだ!あそこにはレイちゃんたちがいるんだぞ!!」

 

「ジュンたちもいるのに!!」

 

ホーリーエンジェル城だけではない、地下に広がる遺跡すら跡形もなく消し飛び、焦土と化していた。タイチは叫ぶ。

 

「なんてことするんだ、ネオ!!レイちゃんたちが生き埋めになっ......!」

 

ゼロマルが助けに行こうとするがアルカディモンが立ち塞がる。

 

「おまえ、いいかげんにしろよ!!レイちゃんが救いたいからやってんじゃねーのかよ!お前は世界を消滅させる気なのか!!」

 

「消滅?違うな、創造だ。オレはこの世界をリセットして新たに作り直す。全てをオレがコントロールするアルカディアを!」

 

「どこがアルカディアだ!」

 

「理想郷だよ。オレの意思どおりにすべてが整然と作動する世界だ。そのためにオレはこいつにアルカディモンと名付けた。オレのアルカディアをつくるために!」

 

「レイちゃんを危険に晒すとかなに考えてんだ、おまえ!!」

 

「死んだらそれまでだ、違うか」

 

タイチとゼロマルは一瞬言葉を失った。戦場にいた誰もがネオがデーモン側についた理由を知っていたために世界が凍りついた。鳥肌が立つのがわかった。いくら洗脳されているとはいえ明らかにおかしい。おかしすぎる。

 

「お前、ネオじゃないな!?誰だ!」

 

「ネオは絶対にそんなことはいわないはずだよ、タイチ!」

 

「ああ、わかってる!」

 

そこでひとつの可能性にいたるのだ。

 

「お前......まさか、デーモンか?」

 

「えっ、デーモンはさっきオグドモンに喰われて死んだんじゃ......」

 

「デーモンの洗脳がとけない時点で怪しむべきだったんだ、ネオに残った洗脳が強固なんじゃない!オグドモンの中にいたデーモンがネオに干渉しつづけてるんだ!!」

 

「えええっ、でもさっきアルカディモンがオグドモン食べちゃったよ、タイチ!!」

 

「デーモンのやつ、そこまで読んでたのか!アルカディモンの犠牲にならないようにテイマーを支配下におくために!!」

 

タイチの言葉に今までギギギとしか言わなかったアルカディモンが初めて明確な意思をもってにやりと笑った。

 

「アタシたちなら大丈夫よ、タイチくん!!」

 

「みんな逃げられました、だから安心してください!」

 

怒りに我を失いそうになったタイチたちに、ジュンたちの声が響く。顔を上げたタイチたちは、マスティモンの率いる軍勢がシェルターに逃げていたデジモンやジュンたちをかかえているのがみえた。

 

「ジュンさん!」

 

「レイ!よかった、無事だったんだな!」

 

「タイチ、これを受け取って!!」

 

「シグマ!」

 

「今のキミたちにしか使えない最終兵器だ、受け取ってくれ!!」

 

シグマから鮮やかな光が投げ落とされる。それは真っ直ぐにゼロマルにむかっていく。

 

「あれはまさか......」

 

「デジメンタルか!ナイスだぜ、シグマ!こっからが正念場だぜ、ゼロ!やれるな!」

 

「もちろん、タイチがいるならどんな敵だって負けはしないよ!!みんなを守るんだ。この世界も、タイチの世界も、ネオだってまもってみせる」

 

「これ以上デーモンの好きにさせてたまるかよ!!」

 

タイチとゼロマルのまっすぐな気持ちがデジメンタルにとどいた瞬間にその超物質は相応しい相手だと認定する。ただちに高濃度なエネルギーがゼロマルにダウンロードを開始する。その威力はすさまじくなにものもよせつけない光の柱となる。それを突き破って現れたのは、完全なる超究極体として降臨したアルカディモンに唯一対抗しうる伝説上の英雄、アルフォースブイドラモンフューチャーモードだった。

 

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