(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
マスティモンが召喚した異世界の大天使にかかえられながら、ジュンはアルフォースブイドラモンフューチャーモードとアルカディモンの激闘をみていることしかできない。ジュンだけではない。誰もが近づくことができないのだ。助太刀しようにも戦いの余波ではるか彼方に吹き飛ばされてしまいそうな応酬が続いており、それほどまでに戦いは熾烈を極めていた。
超究極体となったアルカディモンのゴッドマトリックスは大規模にエネルギー減少なしという上位互換だが、ゼロマルのテンセグレートシールド(おそらくは自己修復付きシールド)によって防がれた。おかげでジュンたちは巻き添えを喰らわずに済んでいるところがある。
おそらくゴッドマトリクスは相手のエネルギーが自分のエネルギーを超えてると使えないから、今のゼロマルみたいに莫大なデータ質量持ってる相手には弱ってないと効かないのだ。
単純なポテンシャルだけならデーモンもゼロマルもただの究極体止まりのコイツとなら渡り合えるんだろう。マトリックスが超性能の良い必殺技だから、必要以上に強く感じるだけで(地力が大した事が無い訳ではない)。ただ、今は超究極体という未知の領域にまで突入してしまった。
アルカディモンが今なおデータを取り込み成長しつづける戦いの権化だとするならば長期戦になるとまずい。不利なのはゼロマルだ。みんなをまもりたい、という気持ちにブーストをかけるかたちでアルフォースも古代種としてのポテンシャルも能力値も極限値まで高まっている。こちらの世界にあるデジメンタルはアルフォースと同様に認定された感情、あるいは想いがなんらかの形で妨害されたり、揺らぐようなことがあったら力を失う。タイチとゼロマルに限ってそれはないとは想うが、アルカディモンの成長速度が万が一それを上まわってしまったらと考えると。まして、アルカディモンに潜伏しているデーモンが頑なにアルカディモンを改ざんして表に出てこないあたり、なにかをまっているようで不気味でならないのである。
なにかできることはないかとジュンは考えていた。
そして、嫌な予感は的中することになる。
「そんな......ゼロの必殺技がきいてないなんて!」
レイの悲鳴がひびいた。いきなり、アルカディモンにゼロマルの攻撃が通らなくなったのだ。それだけではない。シールドや回復スキルといったアルカディモンに唯一対抗できるだけの理由が次々と潰されていっているのだ。ディーターミナルをみるにデジメンタルの力が失われたわけではなさそうだった。ジュンは冷や汗が浮かぶ。
「まずいわね......」
「ジュンさん、ゼロになにがあったんですか!?」
「ゼロマルくんじゃないわ」
「え?」
「アルカディモンの成長速度がゼロマルくんを上回っているんだわ」
「えっ、アルフォースの力がつかえないのはゼロになにかあったからじゃないんですか!?」
「ちがうわ。アルカディモンの因子が今の体に適合してアルフォースを上回るように進化して、新たな力を獲得したんだわ」
「い、今、たたかってるのに......?」
「末恐ろしいわね、アルカディモン。戦いの環境に適合する方向で成長をはじめたんだわ。今のアルカディモンの中にはいろんなデジモンのデジゲノムがあるから、そこから最適解を探してアップデートしたのよ。0と1をあやつるウイルスから生まれた七大魔王を取り込んだ今、原罪と判定される感情に影響をあたえる力を知ってるから、アルフォースがどんなものかも理解した。だから無効化しようとした。アルフォースに対抗する形で進化したのよ」
「アルフォースが封じられてるってことですか!?」
レイとジュンの会話はどうやらデーモンの支配下におかれているネオにも届いているようでニヤリと笑った。タイチもジュンと考えることは同じだったようで、焦りが浮かんでいる。
「人間を想う心がアルフォースブイドラモンを弱体化させている、皮肉なモンだな。本能のままに生きるのが生物のあるべき姿、ゆえに人間は弱い。たしかに我々を作ったのは人間かもしれないが、人間に世界の行く末を決められるのがいやで世界から追放した分際で、また危機に陥ったら頼るのか。なんという弱い存在よ。だからおまえたちはいつまでたっても自立できないのだ。あらゆる決断の権限から殺生与奪の権利まで人間に握らせている。いつまで人間ありきで生きるつもりだ」
「人間はオイラたちの敵なんかじゃない!仲間だ、友達なんだ!」
「タイチたちと接してきた私たちもそれが悪いことだとは思わないな」
「なるほど、お前たちはそれが人間でなくてはならないわけではないだろう。代替がきくのだからな。ゆえに用意してやろう、お前たちの願う世界をな」
「AIにでも代行させるつもり?どこのディストピアよ」
「人間と共に生きることは弱さなんかじゃない!強くなる力だ!タイチがいなければ今のボクはないんだ!」
「それがどれほどの力だというのだ、この世界しかしらない井戸の中のかわずが!」
「ぐあっ!」
「ああっ、ゼロ!」
「ぐうっ......」
「大丈夫か、ゼロ!」
「うん、大丈夫、心配いらないよ!」
「ゼロ......体にヒビが!」
「アルフォースもない貴様が超究極体の力を手にしたアルカディモンに勝つ可能性は0パーセントだ!」
「違う!」
「なんだと」
「それは違う!デジモンは、ゼロは、信じることでどこまでも輝いてくれるものなんだ!未来を示してくれるものなんだ!だから、オレは、ゼロは、諦めない!絶対にだ!」
タイチとゼロの覚悟は本物だった。デジメンタルはその想いさえぶれなければ無尽蔵にエネルギーを供給する。次第にゼロの攻撃がアルカディモンに通るようになってきた。
このままではまた適応されて押し返されてしまう。やはりなにか......なにかではないのか。必至で考えていたジュンはふとベルフェモンがデジタマになったことで使えなくなってしまったデジヴァイスが目に入る。
そういえば、カオスピエモンにハッキングしてきたデーモンにはデジヴァイスのウイルスバスターが効いていた。ベルフェモンを侵食していたドットマトリクスもオグドモンに適応することでかなり性質が変質していた。頭の中でも今までの4年間で蓄積してきた情報が、知識が、展開していく。
「進化するってことは、ある意味、汎用性を失って小袋に入るってことだわ。もしかしたら」
「ジュンさん?」
ジュンは大天使に頼んでマスティモンを呼んだ。
「どうした、ジュン。なにか思いついたのかい?」
「ええ、これをあなたに託すわ、マスティモン。タイチくんにデジヴァイスを渡したのはあなたでしょう。だからこれはあなたにしかできないことよ」
「これはきみの世界のデジタルワールドから提供されたデジヴァイスだね」
ジュンはうなずいた。
七大魔王を取り込んだアルカディモンはどうやらそのデジゲノムに適合したことで、正体不明の属性がウイルス種に傾いているようだ。つまりジュンのデジヴァイスの結界プログラムで効果があるということだ。
「ここには七大魔王になる前の原始の存在を封じてきた、あるいはイデアを追放してきたプログラムがあるの。それだけじゃない。テイマーとデジモンの繋がりをブーストさせる力も、アルフォースみたいな力もある。いちいちダウンロードしてたら時間がないから、これごとタイチくんのデジヴァイスに転送してほしいの」
「本気かい、そんなことしたらきみは......」
「デーモンはアタシの世界のデジタルゲートだけじゃない、この世界のデジタルゲートも自由にあけられるじゃないの。今ここでしとめないとアタシの世界に飛ばれて、原始のデジタルワールドに侵攻しかねないわ」
「そうか、そうだったね。わかった。きみの覚悟はたしかに受け取ったよ、ジュン。まかせてくれ」
マスティモンはジュンのデジヴァイスを手にする。それはどんどん形を失い、光の矢となる。放たれた光はタイチのデジヴァイスに届いた。
「今よ、タイチくん!」
「ありがとう、ジュン!いくぞ、ゼロ!はずすなよ!」
「わかってるよ、タイチ!」
異世界のデジタルワールドを幾度も救ってきたジュンのデジヴァイスからもたらされたデータは、ゼロマルにさらなる力を付与した。タイチとゼロマルの絆、タイチの感情、ゼロマルの感情、さらにウイルスバスター機能がブーストを加速させていく。
その神速のスピードもさることながら、自身の持つ究極の力アルフォースがさらに引き出されていく。ゼロマルは驚異的な治癒を獲得し、どんなダメージもすぐに自己回復する領域にまで突入する。仮にゼロマルを捉えて攻撃を当てても、瞬く間に100%のパワーで反撃を受けるだろう。
あらゆる覚悟と諦めない想いを詰め込んだ強烈な一撃がアルカディモンの必殺技を粉砕し、アルカディモンにとどく。効果は抜群だったようで、ゼロマルのあらゆる攻撃が有効打となったことで一気に逆転する。
「これで終わりだ!!ドラゴンインパルスX!!」
断末魔だけを残して、アルカディモンは完全に消滅したのだった。
そして、ウイルスバスターの機能により正常化したあらゆるデジゲノムはただちにあるべき世界に転送されていく。
「闇を滅するのではなく、正常化するプログラムか......すごいな。七大魔王のデジタマがダークエリアに転送されたようだ」
「ってことは罰は受けない?」
「ああ、ジュンの判断が正しかったようだ。ありがとう」
マスティモンは光と闇のバランスが正常化したためか、ホーリーエンジェモンに戻ってしまった。
「ネオ!」
ネオの体がぐらりとゆれる。支配下においていた諸悪の根源がダークエリアにおくられたことでようやく解放されたようだ。
「お兄ちゃん!」
あわててジュンたちはネオのところに向かう。
「息はあるが意識が戻らない。急ごう」
ホーリーエンジェモンはあわててネオを抱えて難民キャンプに向かったのだった。