(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
「ホーリーエンジェモン、観測不能になったデジタルワールドは西暦何年まで進んでる世界線なの?なにかしら共通点があると思うんだけど」
「私が観測した時点では西暦2028年前後が多く、遅くても2050年まで進んでいる世界線はないね」
「そうなの......2028年か」
「なにか心当たりがありそうだね」
「観測不能になった世界が私の世界とよく似てるっていうのなら、それもデジタルワールドにとって関係ありそうなことといえば、ひとつしかないわ。私とパートナーみたいに特殊な繋がりがある人間が世界の全人口と一致した年なのよ」
「それはたしかに大きな節目ではありそうだが確かなのかい?」
「間違いないわ、セキュリティシステム側に確認をとったこともあるもの。どういう理屈かは知らないけど、1995年の時点で2人現れてから、毎年2の2乗分、その特殊な関係性をもった子供が増えていくのよ。実際に一致してたしね」
「なるほど......その増え方が共通しているのだとすれば、観測不能になった世界線の西暦のばらつきは現実世界の人口増加にその特殊な繋がりのデジモンと人間が追いついたか否かってところかな」
「だとしたら、意図的に全人類がパートナーデジモンを持つ時代の到来と同時に多面体を送り込んでることになるわね」
「そうだね」
「......」
「......」
「たしか、人間が死んだらパートナーデジモンは死にはしないが弱体化するんだったね」
「そうよ、それだけ特殊な繋がりだから」
「ということは、万が一パートナーデジモンがあの紫色のデジモンを食らって苗床になった場合どうなるんだろうね」
「わからない、わからないけど、やばいのはたしかよ。だって人類が肉体的な進化に限界を迎えて精神的な進化を選択した結果生まれたのがパートナーデジモンて説もあるのよ。いわばもうひとりの自分てやつ。その繋がりは強固で魂が同じならまたパートナーデジモンは時空すら超えて追いかけてきて、また会えたねって笑ってくれる。寄生された程度で壊れる関係じゃないけど、なにかしら歪になるのは間違いないわよね。デジゲノムとしてパートナーデジモンの中に刻まれるわけだし」
「そこまで強固な関係なのか......それはもはや私たちとはまた違う存在になることを選んだデジモンたちなんだね」
「そうね。ホーリーエンジェモンみたいなセキュリティ側のデジモンも、野生のデジモンもデジタルワールドにはたくさんいる。でも1995年に現れたパートナーデジモンは急速に数を増やしていくことがわかってたから、セキュリティ側が初めから管理下においてたし、現実世界との付き合い方を考えはじめたから今がある感じ。そしてパートナーデジモンが多数派になったのはまちがいなくその年なのよね」
「それは心強い味方だ。タイチくんたちのように間違いなくセキュリティ側は支援をもとめる。ということは多面体が現れたら間違いなくジュンたちは戦うわけだね」
「そうね、きっとそうなる。パートナーデジモンの中には無意識に感染したり、デジゲノムに刻まれたりする子も現れる」
「セキュリティシステムがどの程度整備されているかわからないが、突破されてしまうパートナーデジモンたちが傀儡になって牙を剥くわけか」
「地獄絵図になるわね......全人類がパートナーデジモンをもつ時代にそんなことになったら、もう世界中がえらいことになる」
「セキュリティの管理下にあるはずのパートナーデジモンですら傀儡に堕ちる可能性があるなら、野生のデジモンたちはもちろん、下手をすれば私たちのような者も危うくなるわけだね」
「ツメモンみたいに人の悪意から生まれたデジモンなら、もう天国みたいな状況になるわね。いくらでも餌はあるわけだし」
「タイチくんたちがみた咀嚼音はそういうことなんだろうね......デジタルワールド自体を喰らい尽くすほどに強大な存在になってしまった」
「あーもう、考えるだけでゾッとしてくるわ。頭が考えるのを拒否してる」
「ジュンはパートナーデジモンをもつテイマーだからね、無理もないさ。当事者なのだから。私の想像以上に恐怖を感じても無理はない」
「そうなんだけどね、あはは......。実際問題、やらかしそうな存在を私は知ってる。知ってるんだけど、なんでそんな未来に多面体を送り込んでるのかわからないって疑問が浮かんじゃうのよね。普通に原始の世界に多面体をばら撒けばそれだけで勝ちなとこあるわよね、正直。なんでこんな回りくどいことしてんのかなって」
「もしかしたら、今のジュンと同じ状況下なんじゃないかい?」
「今のあたしと?」
「そう。原始の世界にいくためのゲートを探して、多面体をばら撒いているんだとすれば?」
「本体を未来においといて、過去を侵略しようとしてるってこと?いやでもそれはおかしくない?世界線が消えたら死んじゃうじゃない」
「それでも同じ時代になければ倒されることはない」
「いや、たしかにそれはそうなんだけど」
「ジュンが最終決戦を迎える相手はかなりの強敵のようだからね。まるでパートナーデジモンみたいなやつだと思ったんだ」
「......うん、まあ、当たってると思うわ。だからこそ厄介な敵だし、なんとか倒して迎えに行ってやらないといけないって頑張ってる子を私は知ってるから」
「やはりそうなのか......背景になにかいるんだろうね。途方もない悪意を感じるよ」
ジュンは大きくうなずいたのだった。
「本体を原始世界に送らないと倒せないってことよね?」
「敵が未来から動く気配がなく、多面体ばかり派遣しているならそうだろうね」
「ねえ、逆探知できない?ホーリーエンジェモン」
「一応聞くけれど本気でいってるのかい?」
「だって終わらせないと意味がないのよ、私たちの戦いは。今回の敵を倒さないとどう足掻いても背景にいる強大な敵に手が届かない」
「いいたいことは痛いほどわかるよ、ジュン。だが君は今置かれている状況についてよく考えた方がいい。まず君はパートナーがデジタマから生まれてくるのを待つべきだ。それにセキュリティを強化してる途中なのだから、そのアップデートがまだなのも忘れている。さすがに逆探知して敵の本拠地のデジタルゲートの座標を特定することができたとしても、私は君に使用を許可することはできないから、そのつもりでいてくれるかい」
いつになく厳しい口調で返されてしまったジュンは、わかってるわよ、と小さくなるしかない。
「さあ、今日はこの辺にしてパートナーに会いに行ってあげたらどうだい?君の唯一無二の存在なんだろう?」
優しい口調で促されてしまうと、もうジュンは玉座から退室するしかないのだった。ジュンはため息をついて、そのまま医務室に向かうのだ。
いくつかある部屋のうち、すっかり専用部屋と化しているカプセルポットが中央に鎮座する個室に入る。ウイルス種特有の毒々しい色をしたデジタマがひとつ入っている。複雑な回線とたくさんのパソコンや機械に繋がれている。そのうちひとつのデスクトップ前の椅子をひいたジュンは腰掛けて、そのままカプセルポットをみた。
「よかった、やっと30%まで回復できたのね。ここ数日減ったり増えたりしてたから心配してたのよ」
オグドモンに取り込まれ、デジゲノムレベルで分解されてしまったパートナーは自己修復能力を駆使しても未だにデジタマが孵る気配はない。それでも早速今日あったことを色々話すのだ、出来ることといえばそれくらいしかないのだとジュンはよく知っている。