(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

148 / 160
多重世界の侵略3

ジュンの待ちに待った瞬間がようやく訪れた。

 

デジタマが光に包まれ、構成していたデータがたちまち分解され、ひとつのデジモンに再構成されていく。

 

「あれ?」

 

そのシルエットは転生するたびに見てきたボタモンではなさそうだった。ジュンは早速デジヴァイスをかざしてみる。スキャンコードが読み取りを開始し、パーセンテージがあがっていく。数秒でデータが表示された。

 

ズルモン

 

レベル 幼年期Ⅰ

タイプ スライム型

属性  なし

必殺技 毒の泡

 

可愛らしい外見をしたポヨモンとは対照的に黄色いジェル状の体と厳つい赤い目等と、全体的に気味悪そうな雰囲気が特徴を持つ小型の幼年期のスライム型デジモン。

 

ネームモデルは引きずる様の擬音「ズルズル」or「ずるい」から来ている。

 

超悪質のコンピュータウィルスとコンピュータを悪用する人間の負の念が融合して生まれたデジモンで、他のデジモンとは発生原因が異なる特殊なスライム型デジモン。軟体の体を器用に動かし、地を這うように移動する。体を構成する物質は毒性が強く、口からは強烈な毒を帯びた泡を吐き出すため、大型のデジモンでも近寄らない。

 

「デジゲノムがウイルス種に傾いたの?今までずっとボタモンだったわよね、あんた」

 

ジュンの言葉に反応して黄色いスライムはこちらに顔を向ける。さすがにまだ話せないのはボタモンと変わらないようで、なにかいいたそうな仕草こそするが読み取るのは難しそうだ。

 

「んー、やっぱオグドモンに取り込まれたり、超究極体のデータをぶちこんだ七大魔王のデジゲノムを取り込んだりしたから、その影響とか?大丈夫?デジヴァイスのリミッターにはひっかからないみたいだけど。どっか違和感ある?」

 

ジュンの言葉にズルモンは首を振る。

 

「ならいいんだけど。でもよかったわ、ちゃんと記憶は継承されてるみたいだし。なんかあったらすぐいいなさいよね?わかった?」

 

うなずくズルモンにジュンはよろしいと笑った。ちゃんとしたコミュニケーションは時間経過による幼年期Ⅱまでお預けだろう。

 

「とりあえずご飯にしましょうか、お腹すいたでしょ。ホーリーエンジェモンたちに報告しなくちゃ。おいで」

 

差し出された手にズルモンがよじのぼってくる。さいわい毒の泡をぶっぱなされる様子はなかった。

 

「好みとか変わった?」

 

ズルモンは首をふる。

 

「あちゃー......難民キャンプにそんないい肉ないわよ、ズルモン。あんま期待しないでよね」

 

ジュンの言葉にズルモンは無言で見上げてくる。こころなし赤い目が睨んでいるような気さえする。

 

「あのねえ、復興途中なのよこの世界は。それにデジタマんときに聞いてたか知らないけど、数日前にホーリーエンジェル城上空に多面体が現れて......」

 

赤いカーペットがひかれた大理石の廊下を歩きながら、ジュンはズルモンにデジタマから誕生した今までの出来事やこれからしなければならないことについて手短に話し始めるのだ。

 

ジュンの手にズルモンがいることに気づいた城内の兵士たちが挨拶してくれる。よかったねと言われるたびにジュンはうれしそうに笑った。

 

ホーリーエンジェモンたちに挨拶回りを済ませたあと、ジュンの手の中で時間経過による進化が行われた。

 

パグモン

世代  幼年期Ⅱ

タイプ  レッサー型

属性  ウィルス種

必殺技  毒の泡

 

頭部から生えた耳のようなもので低空を飛ぶことができる小型デジモン。この耳を器用に動かし手のように扱うことができ、「あっかんベー」や「おしりペンペン」などの相手を小バカにするような態度をとる。性格は結構イジワル。コロモンやツノモンなどを追い掛け回してはイジメている。口から『毒の泡』を吐いてイジワルをすることもある。

 

 

大きな耳が特徴的なデジモンで、性格は非常に意地悪で弱いものイジメと人を小馬鹿にする行為を好む。 耳を羽ばたかせて少しだけ浮けるという特技がある。 進化すると見た目が似ているガジモンやピコデビモンと言った小悪魔系や魔獣系になる事が多い。

 

 

「さすがパグモンなのは変わらないわけね、よかった。ボタモンからズルモンに変わっただけか」

 

「そのようですね。デジゲノムの因子による影響は抑えられてしまう。選ばれし子供のパートナーである限りその自由度を犠牲に強さを手にしているわけですから文句はいえませんからね」

 

パグモンらしからぬ口調ももはや慣れてしまったとはいえ、初見のホーリーエンジェモンたちは思わず笑ってしまい、パグモンに睨まれていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ネオが目を覚ましたのは、ホーリーエンジェモンが多面体を派遣してきた世界線の座標をようやく特定したころだった。

 

「2050年、この世界線だけ時代がかなり進んでいるようだ。世界人口にまだパートナーデジモンをもつ人間が追いついていない、極めて珍しい世界線でもある」

 

ホーリーエンジェモンがそちらの世界線のセキュリティシステムに協力を仰いだ結果、まだ表沙汰になっていないだけで多面体の影響はかなり深刻らしかった。

 

選ばれし子供の1人が運営していたサイトが前身のデジモン研究所という最大規模の交流サイトを名乗ったウイルスメールが世界中にばら撒かれ、送り付けられてきたデジモンが紫色のデジモンに感染していた個体だったのだ。

 

送り付けられたデジモンは、どう育成しようとベムモンというデジモンに進化することがわかっている。自身はデジモンのマトリクス・データを吸収して強くなることを望んでおり、フュージョナイズという機械と一体化して一つのデジモンとなる能力を持っており、ネットワークを利用してあらゆるデータと融合しようとしてくる。しかも、デジモンだけでなく人間のマトリクス・データをも吸収できるようで、何人もの選ばれし子供とパートナーデジモンが襲われて行方不明になっているらしかった。

 

大量のマトリクス・データをベムモンに吸収させた多面体は、軍事衛星をハッキングし、人々のマトリクス・データを奪うデジタル・ウェーブを発射、一気に世界人口とパートナーデジモンたちを進化の糧にするつもりらしい。そいつはラグナモンと名乗っているそうだ。

 

それを止めようとしている世界中のパートナーデジモンをもつ者たちに、軍事衛星と融合していないベムモンに寄生していた紫色のデジモンが牙を剥いた。ベムモンを糧に進化したそいつらはひとつとなり、襲い掛かってきたのだという。

 

「クズルーモン。それが多面体から湧き出してくる紫色のデジモンの正体であり、進化先だそうだよ」

 

あちらの世界のセキュリティシステム曰く、もともとはデジタルワールドを構成する不の摂理(死、破壊、衰退、滅び等の)のタスクを司り繰り返す為の、言わばデジタルワールドの自滅因子と言える存在であったという。あくまでも次の生のタスク(復興、再生、誕生などの)に繋げるための行いであり、元来善でも悪でもない存在である。

 

ただ、次なる滅びの要因として人間社会の膨大に広がったネットワークに目を付け、人間の止め処なく溢れる負のエネルギーを養分として、次なる災いを齎すための力に利用することを選んだ。 それが問題だった。

 

人間のネットワークに満ちた不のエネルギーは、想定を遥かに超えて濃厚かつ膨大で、そして美味なものだった

 

途切れることなく溢れる不のエネルギーを喰らい、成長・肥大化し、また飢えて喰らう。本能と食欲はやがてシステムの枠を超えて暴走、肥大化していき、自身のプログラムすら上書きされ、あらゆるデータを見境なく喰らう本能のみの存在に成り果ててしまい、 世界の全てを喰らい尽くし、やがては自分すら喰らい、完全なる虚無へともたらす最悪の破滅へと進化を遂げてしまった。

 

「うっわあ......多面体にうつってた世界線はそうやって滅んだってことか」

 

「この世界も滅びる寸前じゃないか、本当に多面体を派遣した奴がいるのか?世界線が消滅したら自分も死ぬだろうに」

 

タイチとネオの言葉にホーリーエンジェモンはうなずくのだ。

 

「この世界が1番時代が進んでいるからね。なにかしらの生存戦略があるんだろう」

 

「多面体が本命ならラグナモンもいずれクズルーモンに食われる運命な訳だけど......ラグナモンもそもそも寄生されてるわけだし。なら、クズルーモンを倒せば多面体を派遣してる奴がいる場所にいけるってことよね?」

 

「普通はそうかもしれないが、あちらのセキュリティシステムはラグナモンが本命でクズルーモンはあくまでも護衛というか足止めにすぎない印象を受けているそうだ」

 

「あー、全人類を融合しようとしてるのはそっちだから?」

 

「きみの方が詳しいかもしれないが、《進化を否定する概念》とやらが望む世界を実現できるのは全てを虚無に返すクズルーモンではなく、ラグナモンらしい」

 

「あー、なるほど」

 

「なんかすげーのでてきたけど、なんのこと?」

 

「概念とたたかってるのか、お前たち。デジモンですらないじゃないか」

 

「アタシらだって好きで戦ってるわけじゃないわよ。パートナーデジモンの誕生がそもそもの始まりなんだけど......」

 

ジュンはため息をついて、1995年から2027年まで続くはずだった暗黒の力との戦いについて、ネオとタイチに話すのだった。

 

「さて、ここからが問題だ。ジュンは2050年にいくのは確定事項として、多面体の脅威が具体的にわかった今、私たちだけではクズルーモンたちが湧き出す事態になったらきっと太刀打ちできない。タイチたちには残ってもらいたいんだが、ジュンたちを単身で送るのは心配だ。どうしたらいいと思う?」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。