(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
一乗寺賢という少年は並行世界に必ず存在しているのだが、世界によっては兄の一乗寺治はいなかった。一人っ子だったり、兄はいても2002年までに必ず死んでしまい、実質一人っ子になってしまっていた。ほとんどの場合は事故死であり、2000年に選ばれし子供になった賢が気に入らず喧嘩になりデジヴァイスをとりあげて塾に行こうとした矢先の交通事故だった。
そのため一人っ子の賢は自ら望んでデジモンカイザーになり、ミレニアモンの自爆に巻き込まれて消息不明になったリョウを探すためにミレニアモンをつくろうとして大輔たちとぶつかる。
それ以外の賢は兄の葬式に父の同僚としてきていた及川さん(ヴァンデモンに憑依されている)と接触することでミレニアモンに植え付けられた暗黒の種が芽吹き、ミレニアモンの残滓に誘導される形でデジモンカイザーになるという違いがあった。
前者はすべてのことを覚えているし、後者はすべてのことを忘れていた。
そういうちがいがあった。
そのため、治はミレニアモンが生まれた最初の世界は一乗寺賢が一人っ子の世界であり、渡り歩くたびに同じ世界に帰ることができず、デジモンカイザーになる運命の一乗寺賢の周りを捻じ曲げる形で再現しようとしたのでは無いかと考えた。実際、治が交通事故にあったとき、ジュンが救急車を呼んでくれたからこそ助かった命でもある。下手すれば出血多量で死んでいたと医者から言われていた治は、ジュンが平行世界のジュンと違うからこそバタフライエフェクトというやつで助かったんじゃないだろうかと考えた。
だからデーモンに拉致されて行方不明になったジュンが助けられたら、お礼を言わなくてはなら無いと考えていたのである。
「ここが原始世界か......」
四角いモニターごしに治はつぶやいた。暗黒の種が植え付けられてしまっている治は原始世界にいくことができない。時間を操作できるクロックモンとデジヴァイスの結界機能のおかげで正気を保てているため、ゲンナイさんの隠れ家からサポートに徹していた。
「ファイル島といっしょだなあ、トロピカルジャングルみたいなとこ」
きょろきょろ見渡しながら太一がつぶやく。どこからどうみてもそのままつっきればはじまりのまちにいくことができるトロピカルジャングル。最初の冒険で漂着した場所だ、忘れもしない。太一と共に冒険した仲間たちはうなずく。
「生息しているデジモンも成長期までのようですね。間違いなくトロピカルジャングルです」
ノートパソコンを広げながら光子郎がいう。
「一緒でも名前は違うはずじゃ。たしか名前ははじまりのしま。まだフォルダ大陸もサーバ大陸もウェブ島もない、はじまりの島だけが存在する。原始世界デジタルワールドはちいさい世界なのじゃよ」
「ほんとに姉ちゃんの反応あったんだよな、ゲンナイさん!?」
「まちがいない、デジヴァイスの反応があった。それにデジモンの探知機能によればガーゴモンとミレニアモンの配下が交戦した記録があったと話したじゃろ、大輔。はじまりのまちにいるはずじゃ」
「はやく、はやくいきましょ、太一さん!!」
「おう、そうだな。ミレニアモンの部下がまたくるかもしれない。いそごうぜ、みんな!!っておい大輔!そんなにあわててたら迷子になるぞ!?」
「おれもいくから大丈夫だよ、太一!まってくれよ大輔!おれおいてかないでくれよ!!」
ブイモンがあわてて大輔を追いかけはじめた。
ジュンが行方不明になってから50日が経過している。ようやく訪れた2月14日、今は亡きクラヴィスエンジェモンの巨大な鍵をつかうことで大輔たちは無数に存在する並行世界のデジタルワールドを旅してきた。ミレニアモンの部下と戦ったり、大輔たちがアニメとして放送されてる世界のデジタルワールドの危機に助力することもあったりした。
大輔がよく知る「本宮ジュン」という少女は平行世界のデジタルワールドを渡り歩く中で一度も見つけることができなかった。
大抵はミーハーでアイドルが好きでバンドをやっている石田ヤマトさんか医者の卵にして陸上部エースの城戸シュウさんに惚れて積極的アプローチをする人で。2003年春に選ばれし子供に選ばれてパートナーデジモンはガーゴモンじゃなくて。大輔のお姉ちゃんによく似た人ではあったけれども大好きなお姉ちゃんみたいにストパーあててメガネをかけてないし、パソコン得意じゃ無いし、光子郎さん並みにすごいプログラマーじゃ無いし。
たったひとりしかいないのだと大輔は痛感していた。デーモンに拉致されてから消息不明なジュンとミレニアモンの自爆に巻き込まれて行方不明のリョウを探して始まった平行世界の旅は原始世界にまで到達した。
「お姉ちゃん!!」
「大輔、久しぶりね!無事でよかった」
大輔はたまらず泣き出した。50日しかたっていなくても安否不明な大好きなお姉ちゃんが無事でほっとしたのである。よしよしなでるジュンの手はたしかにあたたかかった。