(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
2001年3月10日、あと2日で運命の国公立大の後期試験日である。残りわずかな時間も惜しいとばかりに自由登校をいいことにジュンは自宅での勉強にあけくれている。
なぜこんなことになっているのかというと、遡ること1ヶ月前のこと。
非進化の概念を平行世界から集結した選ばれし子供達でなんとか撃退することができた日のこと。8月1日のお台場メモリアルデイにまた再会することを約束してわかれ、ジュン達は元の時代に無事帰還することができたのだが......。
かなしいかな、現実世界においてはジュン達はまだまだ大人になるのが先の未成年、もっというなら学生、あるいは生徒でしかなかった。事情を知っている家族がいるだけまだマシだった。みんなほったらかしだった学校や部活という現実が迫り来る。
特にジュンは一番大変な時期に行方不明者になってしまったために一番ひどいことになってしまったのである。こればかりはいくら助けを求めてもどうしようもなく、自分の力でなんとかするしかないのだった。
1946年2月14日から2001年2月14日に帰還したジュンは、体感的には4年ほど経過していたために諦めていた受験がまだ間に合うことを知ってその時差を喜んだが地獄を見ることになった。本来ならば第一志望の工業大学の試験を受けるはずだったのだが願書は出しても50日間も行方不明だったせいで受験すらできなかったのだ。なんとか担任の先生達の支援で百恵と同じ大学の経済学部後期の試験を受けることができることになり、全く対策していなかった学科のために勉強するはめになっていた。
これでジュンもめでたく朝から晩まで勉強に追われる背水の陣の受験生である。
50日間の謎の失踪に興味津々な同級生達もいたが、彼らは推薦入試ですでに進路が確定していたため、先生が注意すればなりを潜めた。そんな暇があるなら大学が出している課題を少しでも進めるか、自動車免許をとるために勉強しろと怒られた彼らはそのうちジュンへの興味を失った。
机には写真立てがおいてある。最近会う暇もない平行世界から助けに来てくれた選ばれし子供達が一堂に会したあの日の写真がジュンの励みだった。
「ねーちゃん、がんばれ!」
やる気のない応援にジュンは脱力する。本日のサッカークラブは午後からのためのんびりゲームをしている大輔をうらめしげにみる。大輔はゲーム画面から目を逸らしもしない。
「大輔もサッカーのレギュラー取れるようにがんばりなさいよ」
「わかってるよ、ボランチ狙ってるんだ」
「へえ、そうなんだ。あとでどういうポジションか教えてくれる?初めて聞いたポジションだわ」
「了解、ねえちゃんの勉強終わったら教えてやるよ」
「はいはい。ねえ、ガーゴモン」
「はい、なんでしょうか、ジュン?なにか御用ですか?」
Dターミナルの育成フォルダからガーゴモンが顔を出す。
「非進化の概念をデジタルワールドから追放してからこれで一月たったわけだけどさ、これで本当に終わったと思う?」
「さあ......あなたのよく知る2027年まで暗黒勢力との戦いが終わらないのかどうかはわかりません。なにせワタクシ達の存在があらゆる因果を崩壊させたわけですからね。ここから先は誰も知らない未来が待っているわけですから、ワタクシからはどうともいえませんね。ただ、非進化の概念が宇宙から来たと明言した以上、人間が宇宙に進出し、デジタルワールドも進出することになればまた新たなる脅威が現れる日もそう遠くはないのかもしれませんね」
「うーん、そりゃそうか。そういや、今になって気づいたんだけどさ、正史のヤマトくんが最終的に宇宙飛行士になったの、案外それを警戒してたのかしら?」
「かもしれませんねえ」
「そっか......」
「はい」
「今は今、これからはこれからですよ。なにか起こったら対応したらよろしい。それよりもっと有意義なことを考えたらいかがですか、ジュン。たとえばそうですね、ジュンは将来なにになりたいのですか?」
「アタシ?アタシはとりあえずデジタルワールドのセキュリティシステムに関わりたいからプログラマーを目指すわ。経済学部後期になんとか受かってから自動車の免許をとって、レンタカーでみんなを乗せてどこかに遊びに行くのが当面の目標なのよ」
「おや、そうなのですか。どこに行くつもりなんです?」
「そんなの決まってるじゃないの、8月1日にみんなで集まってサマーキャンプをするのよ。きっと楽しいことになるわ。大学は8月から夏休みみたいだしいけるはず!」
「それはたのしみですね」
「でしょ!」
ジュンは楽しそうに笑う。ジュンのベッドでゲームをしている大輔もつられて笑ったのだった。
「だいしけ、キャンプってなに?」
「みんなで遊ぶってことだよ」
「それいいな!おれもみんなと早く会いたい!!」
ピンポーンとチャイムが鳴った。聞き慣れた声がする。ジュンと大輔は玄関に向かったのだった。