(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第37話

見渡す限り広がる結晶世界である。コウモリに覆われた空は太陽が遮られてしまい、氷のような寒々しい風景となっていた。これこそがグランドラクモンたちが望んでいた世界である。これがやがて現実世界全体を覆い尽くしていくのだ。それがたっせいされたとき、闇の王の野望が達成される。

 

 

赤いマスクを付けた金髪蒼眼の成人男性に似た外見で、大きな襟を立てたマントやドラキュラをイメージした礼装の男はニヤリと笑う。もともとヴァンデモンは死滅した凶暴なコンピューターウイルスが闇の力で蘇った姿で、データを吸収・破壊して悪質なウイルスとして復活させる能力を持ち、アンデッドの王と呼ばれるほどの力を持つが、日光とにんにく、十字架が弱点で、昼間は力が弱まるとされる。これを克服する強さを求めていた彼は、暗黒の勢力に出会った。

 

暗黒の勢力に協力するにあたり、ヴァンデモンは先代の選ばれし子供たちがのこした記念碑たる予言の書を受け取っていた。

 

予言ではヴァンデモンはヴェノムヴァンデモンに進化すると書かれていた。それを知った彼は、激昴した。ヴェノムヴァンデモンは、ヴァンデモンが進化した中ではパワーと引き換えに理性を失った魔獣型の究極体デジモンである。圧倒的パワーを持つが、本能のままに暴れ回る事しか考えていない野蛮さからヴァンデモン自身はこの姿を嫌っているのだ。

 

たしかに必殺技である敵デジモンの体内に破壊型コンピュータウイルスを注入して構成データを全て破壊して機能を停止させるヴェノムインフューズは強力な切り札だ。だが理性を無くしたらヴァンデモンはヴァンデモンではなくなり、ただの怪物と化してしまう。

 

ならばと理性を保ったまま進化する方法をヴァンデモンは探し回った。そして野生のデジモンにもかかわず出会った人間の子供が忘れられずに何回も転生してはデジタルワールドを探し回る哀れなデジモンを見つけた。

 

そいつは見つけてもらうために進化先がいつしか固定化されており、成熟期以上の進化を拒んでいた。自我を保ったまま進化できるのは明らかに人為的ななにかがあった。そして、ヴァンデモンは光が丘テロ事件と同時期に起こったアメリカのサマーメモリーズ爆弾テロ事件に行き着くのだ。

 

その子供の血やエネルギーを根こそぎ奪った今、ヴァンデモンは予言とは違うデジモンに進化をとげる。

 

それはヴァンデモンが理性や知性を保ったまま更なる進化を遂げ、全ての面でヴェノムヴァンデモンを超えることに成功した究極体デジモンだった。魔王型デジモンであるにも拘らずデスモン同様七大魔王には属さないが、魔王型デジモンとして相応しい強大な戦闘力を備えている。

 

残虐非道で冷酷な性格を持ち、自らの欲望のためには手段を選ばない。必殺技は両肩に寄生させている生体砲「ソドム」と「ゴモラ」から発射される超高熱線『パンデモニウムフレイム』。

 

「我が名はベリアルヴァンデモン!さあ、ゆけ、我が眷属たちよ。デジモンたちからエネルギーを奪い尽くすのだ!」

 

ベリアルヴァンデモンからすれば、またあとから蘇生させればいいという考え方なのだろう。役目を終えた拉致要員、催眠術要員、騒ぎを起こす要員たちは、無差別に根こそぎコウモリに襲われてエネルギーがベリアルヴァンデモンに吸収されてしまう。

 

阿鼻叫喚が響き渡る。地獄絵図が広がっていた。壁と言わず天井と言わずまるで噴霧器で吹き飛ばしたような血しぶきがあがり、瞬く間にすい尽くされてしまう。

 

その結果、ドラマで見る鮮やかな赤い血しぶきの跡がみるみる変色し、飛沫はその血を流した者の痛みの強さとは比例せず、乾いてただ点々と、海老茶色に変色して散った。黒血がその腹から、斑々として結晶世界にたれていった。やがて0と1に溶けたデータがベリアルヴァンデモンの体に吸収されていった。

 

「貴様らの敗北は確定したのだ!」

 

ベリアルヴァンデモンは高らかに宣言した。幼年期に戻ってしまったデジモンたちはなすすべがない。

 

グランドラクモンによる魔眼がひとり、またひとりと結晶化していく。デジモンたちもまた肖像となっていく。これで終わりだとベリアルヴァンデモンが寄生させている魔獣から灼熱を吐き出した。

 

その刹那。

 

閃光が2つ、デジタルワールドから現実世界に向けて2本の柱がよこぎった。

 

黄金色に輝く目を奪うほどきらびやかな柱だった。その中には地上に通じるらせん状の非常階段ににたシルエットが浮び上がる。窓という窓が、丁寧に磨きあがられたように輝いている。一度カシャーンと砕け散ったあとのガラスを拾い集め、再びつなぎ合わせたような虹色のビルに似たそれは、グランドラクモンとベリアルヴァンデモンの頭上から結晶世界をつらぬく希望の光だった。

 

光の壁面を彩る碁盤目状の模様は、ついたり消えたりし、ある文字になろうとしていた。

 

それがマトリックスレボリューションとデジ文字で書かれていると2体が気づいた瞬間に、光が爆発した。

 

その先に2体のデジモンがいた。

 

「ウォーグレイモン......」

 

デジヴァイスの結界の中で見守ることしかできないジュンは見とれるのだ。

 

それは超金属「クロンデジゾイド」の鎧を身にまとった最強の竜戦士の名であり、グレイモン系デジモンの究極形態である。グレイモン系デジモンに見られた巨大な姿とは違い、人型の形態をしているが、スピード、パワーとも飛躍的に向上しており、完全体デジモンの攻撃程度では倒すことは不可能だろう。

 

両腕に装備している「ドラモンキラー」はドラモン系デジモンには絶大な威力を発揮するが、同時に自らを危険にさらしてしまう諸刃の剣でもある。また、背中に装備している外殻を1つに合わせると最強硬度の盾「ブレイブシールド」になる。

 

歴戦の強者の中でも真の勇者が自らの使命に目覚めたときウォーグレイモンに進化すると言われている。必殺技は大気中に存在する、全てのエネルギーを1点に集中させて放つ、超高密度の高熱エネルギー弾『ガイアフォース』。

 

「メタルガルルモン......」

 

もう一体はほぼ全身をメタル化することでパワーアップした、ガルルモンの最終形態。メタル化をしても持ち前の俊敏さは失っておらず、全身に隠されている無数の武器で敵を粉砕する。

 

鼻先にある4つのレーザーサイトからは不可視のレーザーを照射しており、赤外線、X線などあらゆるセンサーを使って前方の対象物を分析することができるため、視界の届かない暗闇のなかでもメタルガルルモンから逃げることは不可能である。

 

また、背部から伸びたアームからビーム状のウィングを放出して超高速でネット空間を飛び回ることができる。必殺技は全ての物を氷結させてしまう絶対零度の冷気を吐出す『コキュートスブレス』。この攻撃を受けたものは瞬時に生命活動を停止してしまう。

 

2体とも強烈な閃光を帯びている。

 

グランドラクモンとベリアルヴァンデモンはすかさず必殺技を繰り出した。

 

「なんだと!?」

 

ガーゴモンを生贄にして生成されたデータが彼らを守っているのだ。ジュンと会うために途方もない数の転生を繰り返してきたデジモンが蓄積してきたデジゲノムはまちがいなく彼らに対抗策を教えてくれる。そのデータはデジヴァイスをつうじて全てがワクチン種にして聖なる力に変換された。膨大なエネルギーが彼らに活力を呼び起こす。

 

2体の究極体がグランドラクモンとベリアルヴァンデモンと相対する。そして叫ぶのだ。

 

「これからは」

 

「俺たちが相手だ!」

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