(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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後日談3(終)

「やっぱたくさんいるわねー、バケモンたち」

 

ワクチン種のパタモン、選ばれし子供のもつデジヴァイスに反応して、

バケモンやファントモンたちは寄っては来ない。ウィルス種の野生のデジモンたちが漂っているエリアを進んでいく。

 

大輔はジュンから離れない。ジュンのもつパソコンのスイッチを押せばバリアが貼られて、一定の距離から離れなければ大丈夫だと知っているからだ。

 

タケルはパタモンと一緒にずいずい歩いている。パタモンは野生のデジモンではないし、タケルによって育て上げられたデジモンである。そのへんを徘徊している野生のデジモンに負けるほど、やわな鍛え方はしていないのだ。

 

見知らぬ侵入者に、見張りをしていたバケモンたちがやってくる。なにをいっているのかさっぱりわからないが、タケルとパタモンに話しかけているようだ。

 

ファスコモンが横からバケバケいい始める。そのうちバケモンはいなくなってしまった。

 

「すごーい、バケモンのいってることわかるの?」

 

「ヴァンデモン様が留守中もちゃんと仕事をしていたまともなデジモンだったようですね。ワタクシが転生先だと言ったら納得したようですよ」

 

「どうやって?」

 

「それはですね、大輔。ウィルス種にだけわかるサインみたいなものがあるんですよ。そもそもヴァンデモン様は自分の部下には一度やっつけて復活させたやつしかいませんでしたのでね」

 

「うわあと、映画で見たゾンビだ!」

 

「似たようなものですね」

 

「そっかあ、だからわかったんだ。ゲームだと吸血鬼ってたくさんゾンビとか仲間とか操ってたもんね」

 

「その操るために必要なエネルギーを見ればわかるんですよ」

 

「へえー、知らなかったわ」

 

ファスコモンはニヤリと笑った。

 

「どうやら転生前の契約は有効のようだ」

 

「あっ、なんか怖いこと聞いた気がするけど聞かなかったことにするわ」

 

「そうですか、それは残念ですね」

 

ファスコモンは特に気にする様子もなく、先を促す。だからジュンたちは進んでいった。

 

それでも時々珍しい客人が気になるのか近くにきて群がろうとするバケモンたちがいる。タケルはファスコモンの仲間だと思ったようでどうしようか迷っていたが、デジヴァイスの光で脅せと言われて戸惑いながらもかざしてやった。

 

「バカはいらない、がヴァンデモン様の方針でしたのでね。消されて復活は嫌だと思い出したのでしょう」

 

ファスコモンのいうとおり、バケモンたちは一目散に逃げていった。それでもやめないバケモンがいると、ファスコモンは気に入らないのか成長期とは思えない威力の黒いエネルギーを打ち込んだ。

 

魔力の込められた球体を手にかけながら威圧する。そのただならぬ殺気に気圧されて、バケモンたちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。どうやらかなわない相手だとわかったらしい。いちいち喧嘩売ってたら先に進めないわよ、とジュンは苦笑いである。

 

「上下関係を思い出させてやっているだけですよ。クラヴィスエンジェモンの言うことが正しいならば、ここはいずれワタクシの領地となるのだから」

 

ジュンたちは闇貴族の館をくまなく探し回った。ファスコモンの記憶をたよりに厨房を見たのだが、すっからかんだったのだ。ダークマスターズたちにより破壊され、再構築された世界である。さすがに細かいところまで再生は出来ないらしい。

 

どこかになにかないか、宝探し気分である。なにせパタモンはチンロンモンにより究極体に進化することが出来るようになっているものだから、一度進化できれば経路は開拓されてワープ進化が可能なのだ。気楽なものだった。

 

手入れされている様子もなく、あれ放題の屋敷の先を行くと、次第に視界不良になり始めた。霧である。黒い、霧である。モヤのように立ち込めるそれは、次第にエリア全体を覆っていく。10m先が確認できないほどの濃霧になり始めた頃、本命ですね、とファスコモンは指差した。

 

こうこうと揺らめくロウソクが灯る廊下である。ジュンたちはファスコモンに言われるがまま迷うことなく、地下に続く扉を開いた。

 

「ヴァンデモン様は夜までこちらで寝ていましたのでね」

 

「これだけ真っ暗なのに?」

 

「おや、タケル。あなた、一日中明るかったらずっと遊んでいるのですか?」

 

「えっ、うーん......無理かなあ?」

 

「あー、僕しってる!それ白夜っていうんだ!テレビでやってたよ!」

 

「ほんと?」

 

「うん。ずーっと明るいけど、みんな時計みながらいつもと一緒なんだって」

 

「そっかあ。でもずーっと明るいと寝れなさそうだよね」

 

「だね!」

 

「なんだって地下に肉の種があるのよ。貴族なら食事は部下任せなんじゃないの?」

 

「こんな環境で肉畑が正常に育つとでも?バケモンたちがつまみ食いしてなくなってしまいますよ」

 

「なるほど......だからバカはいらない、か。大変ねえ吸血鬼って。てっきり地下施設にでも篭ってんのかと思ってたわ」

 

「どの闇貴族の話をしているのやら」

 

「なんでもないわよ」

 

地下室に到着したジュンたちは、扉を開いた。

 

「もしかして、料理はヴァンデモンがしてたの?」

 

「血の方が満足感があるし、バケモンたちでも集めることが出来ますからね。美食家ではありましたが料理までは凝っていなかったようですよ」

 

「なるほどねえ」

 

だからあれだけ厨房が広かったのか、さすがは貴族だとどうでもいいことを考えながらジュンはヴァンデモンの部屋に入った。キリスト教に喧嘩をうっているとしかいいようがない悪魔崇拝の結晶である。

 

悪趣味で不気味な部屋だ。タケルも大輔パタモンも嫌そうな顔をしている。蜘蛛の巣やホコリですごいことになっている部屋に入ったジュンたちは、なにかありそうな家具の引き出しという引き出しを探し回ることになったのだった。

 

「あったよ!」

 

見つけたのはタケルだった。いわゆるマンガ肉である。マンモス肉というか、骨が刺さっていて肉の塊がついていて、そのままかぶりつくタイプの肉。それがパッケージになっている。ずいぶんと厳重に保管されていたようだが、壊れかかっていた上に鍵の隠し場所を初めからファスコモンが知っているものだから意味がなかった。

 

「ほんとに種だー」

 

「これからお肉がなるのかな」

 

「これがお肉!タケルの家で食べさせてもらったやつだ!すごいね、育てたら毎日食べられるのかな!?」

 

「一生懸命育てないと極上肉は育たないらしいので、育てるのが上手なデジモンを探さなければなりませんね。貴重な種ですから、ちゃんと落とさないように持って帰りましょうか」

 

はあい、とタケルたちは返事をするのだった。

 

 

 

 

 

 

タケルたちがはじまりの街に戻ってくると、トイレの真横に畑が出現していた。元々放棄されていた場所を再び開墾し、根っこや石を取り除き、なにか植物を燃やしたやつをまいては混ぜていた。

 

「もってきたよ、お肉の種!」

 

「あったよー」

 

「すごーい!ひろーい!」

 

「はてさて、最初はなんの肉がとれますかねえ。ドキドキ肉か極上肉か」

 

「普通の肉じゃない?」

 

「普通ならワタクシいりませんので」

 

「あんたねぇ......こんなことなら普通肉あげりゃよかったかな」

 

「なにをいまさら」

 

ジュンはタケルから受け取った肉の種が肉畑というどういうメカニズムで肉ができるのか分からないやばい畑にまかれるのをみていた。

 

「おや、誰かベジーモン勧誘してくださったんですね。手間が省けました」

 

ファスコモンの視線の先には長く伸びたツタと大きく開かれた口を持つ食虫植物型デジモンがいる。口から吐き出される甘い香りにつられてやってくる小型デジモンを触手のような長いツタの部分で引きずり込んでしまう凶暴凶悪なデジモンだが、同世代のデジモンと比べるとまともな攻撃力を持ち合わせていないため、強いデジモンには太刀打ちできない。 成長すると花を咲かせ実をつけ、レッドベジーモンが本来の姿と言われている。

 

「うわ、ウンチまいてる」

 

「うっげえ」

 

「......えー」

 

「まあ、畑には牛とかのうんち撒くっていうしね......こっちの世界には牛とかいないみたいだから仕方ないんじゃない?」

 

タケルたちはいかにもなピンク色のうんちを見てたじろいでいる。ジュンは自分が食べられる訳じゃないし、と他人事だ。ファスコモンはあとどれくらいだろうかと太陽の位置を確認している。

 

「ファスコモン、極上肉、極上肉っていってるけどそんなに美味しいの?」

 

うっかり肉畑の栽培を見てしまったパタモンは食欲が失せたのか聞いてくる。

 

「おや、この程度で食欲が失せるならばワタクシが食べてさしあげますよ。肉に失礼だ」

 

ファスコモンはいうのだ。肉畑の肉は脂身が少なく、そのくせ柔らかで味わいがある。気の合う仲間同士でロースターを囲み、ワイワイガヤガヤと楽しく食べる。これが魅力である。みんなでわいわいとお肉を囲んで楽しい時間を過ごすのだ。

 

「肉がチリッと音を立てて身を縮め、焦げて、胃を刺激するいい香りが立ち上るわけです。食欲のそそる脂の匂いがたち込める中、二枚まとめて口に入れるんですよ。肉を焼く美味おいしそうな油の匂いがまた美味しくてですね」

 

「えらく臨場感あふれてるわね、ファスコモン」

 

「デジタルワールドでは生のまま食べてましたが、現実世界と比べたら野蛮すぎて嫌になりますね。今更戻れませんよ」

 

「あはは......」

 

「せめて丸焼きにするなり調理したいところですね」

 

「誰が?」

 

「ワタクシ、調理に向いていないのですよ」

 

「あー、はいはい、わかったわよ。仕方ないわね......。だから厨房にあったなけなしの調味料を根こそぎ持ってきたわけね」

 

「そういうことです。ところでジュン」

 

「今度は何よ」

 

「デジタルワールドが閉じる頃までにはパソコンの環境はアップデートしていただけるのですよね?」

 

「えっ、まさかゲンナイさんの隠れ家に居候したり闇貴族の館で守護デジモンしたりしないつもり?」

 

「いやですね、ワタクシまだ成長期なんですよ。出来るわけないでしょう」

 

「あんたいつまで成長期のつもりよ......」

 

「なに、選ばれし子供のパートナーはかるく4000年ほど幼年期だったわけですからね。大したことありませんよ」

 

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