(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第46話

「へー、みんなは新年をデジタルワールドで過ごすんだ?」

 

冬休みの宿題をやるという名目で集まっている女の子たちに混じる唯一の中学生として先輩らしくしなければと張り切っているジュンはそういいながら席についた。休憩にしようとジュンが言ったから、空たちは大晦日の予定について雑談していたのだ。

 

昨日母親にくっついてデパ地下で買ってきたロールケーキと予め聞いておいたコーヒーか紅茶を人数分並べていく。13時にだいたいみんな集まって宿題を進め始めてはや2時間が経過して集中力が切れ始めていた矢先だったから、ミミは特に喜んだ。

 

「なにいってるのー。ジュンさんも行くでしょ?ファスコモンに会いたいよね?ね?私もパルモンに早くあいたーい」

 

ロールケーキにいちはやく口を付け始めたミミはおいしいと笑顔を振りまいている。お花があたりに浮かんでいそうな笑顔だ。

 

「あれ、ジュンさん、ゲンナイさんから聞いてないんですか?」

 

「光子郎くんからも?」

 

「なんか意外」

 

ね、と誰もが目を合わせるものだから、ジュンは笑った。

 

「プライベートでゲンナイさんたちと連絡は取り合ってないわよ。光子郎くんとは違ってね。手伝いばっかりよ」

 

「えー、嘘だ。ファスコモンとしょっちゅうメールしてるじゃない」

 

「えっ、そうなのジュンさん!?」

 

「ずるいずるい、私もパルモンと会いたい!」

 

「わたしも.......。いいなあ」

 

「あのねえ。ファスコモンはみんなと違ってアポカリモンの残滓であるガルフモンを前世にもつパートナーなのよ。前例がないの。なにかあったらみんながファスコモン倒さなきゃいけなくなるのよ?嫌でしょ?私だって嫌よ。だから間違いがないようにゲンナイさんに託されてるんだから。気持ちはわかるけど我慢してよ」

 

ジュンの言葉にファスコモンの特殊性をすっかり忘れていたらしい空たちはなるほどと呟いた。

 

「ファスコモンと私が上手くやっていけたら、今は封印するしかないアポカリモンもいずれは転生する未来があるかもしれないんだから」

 

「そうはいってもうれしいんでしょー、ジュンさん。笑ってるもん」

 

「まあね、否定しないわ」

 

「それがずるいの!」

 

「あっ.......いい話みたいにまとめてるけど、ミミちゃんの言う通りだわ。私達がピヨモンたちとメールしたっていいじゃない。なんでいってくれなかったの、ジュンさん」

 

「ジュンさん.......」

 

「バレたかー」

 

「ジュンさん!」

 

「だからごめんて」

 

非難轟々なアウェー感にジュンは早々に白旗をあげた。そして優遇されている理由を語るのだ。

 

「2000年問題でデジタルワールド大変なことになってるみたいだから、うっかり手伝いましょうかっていったらえらいことになってるのがほんとのところなのよね、あはは」

 

「2000年問題ってテレビでずっとやってるやつですか?」

 

「聞いたことあるー」

 

「ニュースのやつですよね?」

 

「うん、そう。これでも将来はプログラミング関係の仕事目指してるからね」

 

「うわー」

 

「大変そう」

 

「もしかして、あの日からずっとデジタルワールドに行けないのってそのせいなんですか?」

 

「それもあるわね。来年の3月を乗り越えればデジタルワールドにもっと行けるようになるんじゃないかしら、たぶんだけど」

 

ジュンの言葉に空はふと考える。

 

「そんなに忙しいのにデジタルワールドにいっても大丈夫なのかしら?」

 

「でもゲンナイさんから来てるんでしょ?なら大丈夫なんじゃない?むしろ間に合わせるために必死なのかもね」

 

「もう、ゲンナイさんも言ってくれたらいいのに.......」

 

「いっつも遅いよね、いうことが!」

 

「うんうん」

 

「あははー、まあ許してあげてよ。大変みたいだから」

 

ジュンは肩を竦めた。

 

「で、来ます?大輔くんと」

 

「そーねえ.......そうしたいのは山々なんだけど。アタシ、部長になっちゃったのよ、パソコン部の」

 

「お台場中学校の?」

 

「そうなの」

 

「凄いじゃないですか」

 

「ありがとう。ただそのせいで顧問の先生がえらく気合い入っちゃってね.......ここ数年田町の恵王にパソコン部の全国大会毎回負けてるから.......」

 

はあ、とジュンはため息をついた。

 

今年の光が丘霧事件の電波障害により2日間大惨事となった東京は、その復興の過程で大きな方向転換をすることになったのだ。

 

1994年にも光が丘では電波障害からの爆弾テロ事件があったものだから、どちらも未解決となる未来が見える以上なにかしらの対策をとらなければならない。内外からすさまじい圧力があったせいか、デジタルワールドと現実世界が共に動き出す第一歩となるような流れが加速した。

 

まずは電波障害に対する厳罰化が進み、電波障害に対する対策を講じたライフラインが整備され、公共設備を中心にその設備を行った場合、補助金が下りることになった。あるいは大きな補修工事が行われることになった。

 

ジュンがパソコン部部長となったお台場中学校もその候補の1つである。うまくいけば新たに設定された避難所としての機能を果たすため、優先的に補修工事が行われ、補助金も下りることで設備がどんどん導入される。

 

その補助金によってデジタル教育に力を入れ始めれば、いずれお台場中学校は文部科学省から先駆的な教育を許される数年単位の授業の導入を許可されるだろう。

 

おそらく数年後には東京を中心に張り巡らされたネットワークを通じて、小学校単位ではあるがメールなどの簡易な機能が自由にできる小さなパソコンが支給されることになる。

 

今はその下準備として全国にあるいくつかの学校が特待校に指定されるための大会が行われる予定なのだ。表向きはネットワークを活用した授業や部活の成果を発表し合うような形になっていた。学校全体の教育水準を引きあげるためだと。やがてそれは次世代のデジタルを活用する提案という形で全国の子供達が発表し合う建前のもと、新たなる特別枠を見つけ出すのだ。

 

お台場中学校としてその指定校になるためにもいよいよこれからだ、と顧問の先生はなおさら気合いを入れているのだ。

 

(まあ、部長になった方がなにかと便利よね.......うん。光子郎くんに引き継ぐときに色々残してあげたいし)

 

それは周りにまわって大輔が選ばれし子供となった時に通じているからジュンは頑張っているのだ。2足のわらじである。ついでにいえば将来はデジタルワールドのセキュリティ関係につきたいジュンからしたら、コネを少しでも作りたい気持ちもあるのだ。

 

1999年現在、世界中で30人前後の子供達がデジモンと出会い、世界を救っている。2002年でもまだ130人にも満たない。

 

デジタルワールドが現実世界におけるデジタルモンスターの関わる事件などを削除しまくるのはまだ時代が早いから仕方ないにしても、選ばれし子供達のコミュニティネットワークはどんどこ広げるべきなのだ。光子郎とアメリカの大学に在住している小学生が運営しているSNSだけじゃもったいなさ過ぎる。なら、その土台を作ってしまえばいい。

 

ジュンはデジタルワールドの信頼を勝ち得て、やりたいことが色々あるのだ。まずはいろいろとサポートに回らなければならない。全てはそれに通じている。

 

「発表回が控えてるのよ、正月明け直ぐにね。それぞれがプログラムをくんで、最後にプレゼンで優勝したものを大会に出すからかなり大事なわけ。部長が粗末なの出せないでしょ?」

 

デジタルフロンティアだか、デジタルアーキビストだか計画の特区に指定されるためには必要不可欠、まさに正念場なのだ。上手く行けば小中高一貫計画が持ち上がっているお台場小学校にスムーズにD3が支給されることになる。

 

「たいへんそう.......」

 

「頑張ってね、ジュンさん!」

 

「そっか.......じゃあ、ファスコモンにも言っておきますね。なにか渡したい物があったら預かりますよ」

 

「ありがとう、空ちゃん」

 

空はうなずいた。ただでさえお台場中学校は全国大会で入賞する常連校なのだ。検索すれば部員達が学習成果を公表しているすごいページが出てくるし、卒業した生徒が有名な中学校、高校に行っていることを空は知っている。

 

なにせ創立××周年ということで、お台場中学校のホームページは最近ちょっとリニューアルしたのだ。第1期卒業生の写真を同窓会で集まったOBOGのおじいちゃんおばあちゃん達から提供してもらい、今とどう違うのか比較できるページができた。

 

ついでに小学校のイベントの歴史について記事をかいて、写真を掲載するようになった。学校にある石碑とか記念樹にカメラを向けると、名称と歴史と当時の写真が閲覧できるページに飛ぶ。無駄に年表から、ワードから、地図からも検索できるようにしたりして。

 

この部活が資金をもらえるのは、それなりの仕事をして教育委員会とかそういったところから褒められて、結構大きな賞をもらっちゃたりしているからだ。光子郎がパソコン部をつくりたいとボヤいているのを空は知っている。あと2年も待たなければならないなんて待ちきれないのだろう。

 

ジュン曰く、ほんとはあちこちに設置している動画についている無駄な解説なんていれず、写真をばんばん並べていって、気になったところでクリックしてもらってページを見てもらう構成にしたかったらしい。

 

だが学校のホームページにのっける以上、職員会議などを通過しないといけない。ちゃんと根回ししたとはいえ、パソコンなどに疎い先生たちに結構けちょんけちょんにされたようだ。

 

それを自由につくっていいよーといってくれた顧問の先生が熱意と実績で真っ向から反論して、その目玉がデジタルアーキビストだかフロンティアだかの指定校の枠のかちとりだった。目の色を変えたのは大人の事情なのだとジュンは苦笑いしていたが、そこまで把握するのはすごいと思う。

 

「ほっといたら決められたものを時間内にくみ上げるとか、正確なプログラムを作るとか、そういうのばっかりやらされるから先生には感謝してるのよ。だからその恩返しも兼ねてね、お正月返上で頑張るつもりなんだ。そういうわけだから、みんな楽しんできてね。お土産話楽しみにしてるわ」

 

 

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