(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
「しかし、おかしいですね。ダークマスターズはピノッキモン、ピエモン、メタルシードラモン、ムゲンドラモンと聞いていたのですが」
アスタモンの言葉に遼と賢は顔を見合わせた。
「そうですよね、ウォーグレイモン」
「うん、確かにそうだ。僕達が四聖獣たちが封印される前にデジタルワールドに帰還出来たからかもしれないけど、間違いないよ。このデジタルワールドは明らかにおかしい。僕達が知ってる敵じゃないヤツらの方が多すぎる」
「ふむ、一体何者なのでしょうね。はるか未来、もしくは過去、平行世界からの攻撃か。選ばれし子供たちを抹殺しようとする理由はなんなのか、謎はつきませんねえ。なるほど、だからこそホメオスタシスたちはワープ進化のリミッターを解除したのでしょう。ワームモンの経験値をためる時間が足りなさすぎますからね」
「そうなの?」
「誇りに思いなさい、一乗寺賢。アナタはホメオスタシスにワームモンを進化させるために必要なエネルギーを増進、生成するための精神的な性質成長は必要ない。すでに備わっていると認定されているのですから」
「意味がよくわからないよ」
「今はまだわからなくてもよろしい。ようするにアナタのいいところは優しいところだということですよ」
アスタモンの言葉に賢は照れたように笑った。そのやり取りを見ていた遼がアスタモンに問掛ける。
「じゃあ、じゃあ、おれは?」
「秋山遼、アナタは規格外すぎてワタクシから言うことはありません。選ばれし子供のパートナーは選ばれし子供しか進化させられないというのに、ハッキングによる成りすましではなく正規の手順を踏んで進化させられるという時点で意味がわからない。アナタ、いろんな人と友達になれると言われませんか?」
「よく知ってるなあ、アスタモン。うん、よく言われるよ」
「誰とでも仲良くできるということは、誰にでも出来ることじゃありませんからね。だからこそ可能なのでしょうか。そういう意味では、ホメオスタシスがアナタ方を今回呼んだのは、なるほどよくわかる人選です」
「ふーん、よくわかんないけどありがとう。でも賢みたいに紋章とかパートナーデジモンとかおれも欲しいなあ」
「一乗寺治もまだパートナーデジモンが現れていないというのだから、時間の問題ではありませんかね。太一たちも4年かかっているわけですから」
「えーっ、そんなに!?」
「きっと遼のパートナーデジモンはいいやつだよ。遼はいいやつだもん」
ウォーグレイモンの言葉に遼は照れたように笑ったのだった。
「つまり、遼はクラウドにアクセスできる管理人みたいなものらしいな」
「あ、兄さん!」
「治くん」
「お待たせ、やっと本宮さんの居場所がわかったぞ」
マップが提示される。どうやら都市のエリアに幽閉されているようだ。
「クラウドってなに?」
「なんだ、わからないまま使ってたのかデジヴァイス?」
「うるさいなあ、いいだろ。テレビの原理なんかわからなくても使えるんだから」
モニター越しの治は笑った。
クラウドとはユーザ一人ひとりがソフトやサーバを用意しなくても、ネットワークを通じてそれらを使うことが出来る、という考え方だ。
今までサービスを利用するには、専用のソフトウェアをインストールしたり、サーバを一から作る必要があった。それが、クラウドによって「どこにあるか分からないけど、ネットワークの中から、必要な時に必要な量を取り出して利用する」ようになったのだ。
例えば、ワードやエクセル、パワーポイントなどのアプリケーション。これらは、当然自分のパソコンの中にインストールしなければ使えないし、作成したデータも(USBなどの外部領域を使わないのであれば)一般的には、そのパソコンの中に保存している。
このような非クラウドなサービスでも問題はないが、Gmailなどの誕生を機に「この形式でサービスを作れば、より便利になるんじゃないか」という流れが生まれた。そのため、「ユーザがそれぞれの領域にソフトやデータを確保する」という今までの使い方に対して、これからは「ネットワークにソフトやデータを配置して、場所は分からないけど簡単に使えるようにしよう」とクラウドが使われはじめたのだ。
「たぶんデジヴァイスは無線でデジタルワールドの進化に関するデータバンクにアクセスして、デジモンにデータをダウンロードして、進化させることができるんだ。特定の人間との絆や絆を増幅させる感情とかを数値化して、条件を満たした時だけ進化できるリミッターがある。遼は絆を作ることが得意だから、それが進化させるトリガーなら仲良くなればなるほど進化させることが出来るはずだ。それは特定のデジモンじゃなくてもいい。すごいことだぞ、これは」
「熱弁してるとこ悪いけどわからない……」
「なんでここに本宮さんがいないんだ」
治はあからさまに落胆してみせた。
デジヴァイスはどこからでも、どんな端末からでもアクセスできるパソコンアプリを搭載した端末だ。わざわざSDカードやUSBメモリを使ってデータを移し替えなくても、データはインターネット上のデジタルワールドというサーバに保存されているから、他のデバイスでもログインするだけでデータの共有が可能。
しかも、インストールして使用するタイプのソフトは、定期的なアップデートが必要だが、デジヴァイスはデジタルワールド側で行ってくれるため、煩雑な更新作業や、それに伴うシステムの不具合に悩まされる必要がない。
たしかにインターネット上にデータを保管するわけだから、デジタルワールド側の不手際でその情報が流出してしまう可能性があるデメリットはある。だが選ばれし子供にとってはどうしようもないので、信頼するしかない。
サーバ障害、サービス自体の廃止など、クラウド上に保存しておいたデータがいつのまにかなくなっていることもあるから、大切なデータは、自分の手元にバックアップを取るようにした方が無難だ。
「というわけで、僕のパソコンにも2人のデータとかデジヴァイスとかバックアップはとっておいたからな」
「うん、全然わからないけどありがとう、治くん」
「ありがとう、兄さん」
「ああ、くそ。ほんとになんで本宮さんがいないんだ、ピンポイントで。アスタモンもなにしてるんだ、パートナーデジモンなんだろう?」
「本当に面目無い。ワタクシとしたことが」
「まあ、無事みたいだからよかったが。本宮さんはどうやらスパイラルマウンテンを内側から崩壊させる方法を探してハッキングしていたところを捕まったらしい。僕達と連絡をとる手段を探している形跡があったから、わかったんだ」
「さすがはジュンじゃのう。ただデジヴァイスの結界が張ってあったにもかかわらずジュンは捕まっておる。侵入するには十分注意するんじゃぞ」
ゲンナイさんの言葉にみんな頷いたのだった。
「ケン、見つけたよ。都市エリアに向かうデジタルゲートはこっちだ」
空から声がふってくる。
「ジュエルビーモン、ありがとう!」
賢は先程までこのエリアから次のスパイラルマウンテンに向かうためのゲートを探してくれていた相棒に手を振る。
ジュエルビーモンと呼ばれたデジモンは、昆虫系デジモンにしては珍しく完全な人型であり、スタイリッシュな外見は非常にカッコいい。人型で目が複眼なので、遼が仮面ライダーだと興奮したように叫んで羨ましがったものだから賢も喜んでいた。
ジュエルビーモン系列は昆虫型では珍しい人型のデジモンだ。暗殺能力に長けており、冷静で高い知能も持つ。飛行可能なため機動力に優れ、また全身を甲殻に覆われているため防御力も高い。
特にジュエルビーモンはタマムシのような虹色の輝きを放つ槍を持った人のような姿をした昆虫型デジモンであり、見る角度によって色が変わるプリズムのような鎧は防御に優れているだけでなく敵の目を眩ませる効果もあり、美しい戦いを好むエキスパート。
必殺技は槍を光の速さで振るい、衝撃波を起こす『スパイクバスター』。
ウォーグレイモンとアスタモン、そして自身の防御力を上昇させる能力にも秀でており、少数部隊である今、大いに助かっていた。
「む?」
ジュエルビーモンが空を見上げる。
「気をつけて、ケン!リョウ!敵だ!」
「えっ、でもデジヴァイスの結界があればバレないんじゃ?」
「ジュンも捕まってたじゃないか、相手にはバレているみたいだ!」
それはメガドラモンとギガドラモンたちの軍勢だった。
「ムゲンドラモンの手下たちだ。もう場所がバレたのか!?」
ウォーグレイモンは驚きの声を上げる。それは完全体の中の竜型サイボーグデジモンの中で最強最悪のパワーを誇るといわれている暗黒竜デジモンたちだ。何者かによって人為的に改造されたデジモンで、全てを破壊するためのプログラムが施されている。
まさにその存在はコンピュータウィルスそのものであるといえる。強力なセキュリティーで守られているコンピュータネットワークへ簡単に侵入でき、ホストコンピュータの破壊、改造をいとも簡単に行ってしまう。必殺技は両腕から有機体系ミサイルを無数に発射する『ジェノサイドアタック』と、あらゆる物質を切り裂く事ができる『アルティメットスライサー』。
ギガドラモンはメガドラモンと同時期に開発された暗黒竜デジモン。更なる改造で完全武装した戦闘竜で、その存在は凶悪なコンピュータウィルスそのものである。得意技は、両腕のギガハンドで攻撃をしかける『ギルティクロー』。必殺技は、有機体系ミサイルを無限に放つ『ジェノサイドギア』。
隊列のように並びながら爆撃の準備を万全にしながら、無数の軍隊が襲い掛かってきた。
「スパイクバスター!」
ジュエルビーモンが槍を振りかざすと衝撃波が襲いかかる。拡散する波動により、次々と異常をきたしてメガドラモンたちはフリーズしてしまった。
「今だ、ガイアフォース!」
ウォーグレイモンから特大のエネルギー体が放たれ、一瞬にして地上は焦土とかした。
「逃げられるとお思いで?ずいぶんと舐められたものだ。オーロサルモン!」
マシンガンから放たれた自我ある弾丸が逃れた取り残したちを一体残らず屠っていく。直近の部隊は全滅したが遠くの空がくらいことから、途方もない数が控えているのがわかる。
「きりがない。そろそろいこう、案内するよ。こっちだ!」
ジュエルビーモンはウォーグレイモンが賢たちを乗せて飛び立つのを見て先導を始めた。