(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
ダークマスターズを全て倒したことで、4つあったスパイラルマウンテンは完全に消滅してしまった。全てが0と1にとけていく。選ばれし子供たち以外に広がるのはただひたすらに虚空である。
その先にいたのは。アポカリモンではなかった。
「ムゲンドラモン!?どうして!」
「倒したはずなのに!」
「それだけじゃない、あいつもだ!ピノッキモンの代わりにいた、アイツ!」
ウォーグレイモンの言葉に都市エリアにずっと監禁されていたジュンは、え、と虚をつかれた様な顔をするのだ。ジュンの反応にウォーグレイモンは説明してくれる。このデジタルワールドはミレニアモンというやつが引き起こした黙示録に書き代わっていると賢が教えてくれたのだが。
ダークマスターズのメンバーがまず違うのだ。ピエモンとピノッキモンがいなかった。スパイラルマウンテンは4つにエリアがわかれているが、実質メタルエンパイア所属の究極体デジモンたちが、それぞれの得意とする支配エリアを決めていた。
都市エリアはムゲンドラモン。森林エリアはボルトモン。海エリアはメタルシードラモン。そして空は。
(なんで……なんでこいつがいるのよ、嘘でしょう!?)
ジュンは驚きのあまり声を出すことができなかった。そのあまりにも醜悪な存在ゆえにジュンの反応にあまりウォーグレイモンたちは違和感を感じなかったようだ。
「ボルトモンを殺したやつがなんで生きてるんだ!」
明らかに激昴している遼にジュンは驚く。遼は唇を噛みながら教えてくれた。
ピノッキモンがいると聞いていた森林エリアにおいて、遼たちはボルトモンというデジモンと交戦状態になったらしい。メタルエンパイアという勢力によりアンドロモンと同時期に造られた試作型サイボーグデジモンだった。
機械ベースで作られたアンドロモンとは違い、肉体ベースで造られたボルトモンは感情を持ち、パワーも優れていたが、制御が難しく暴走してしまい、闇に葬られてしまった。長きに渡る眠りから目を覚ましてみれば、メタルエンパイアの研究者たちは存在せず作られたデジモンばかりが残り、時間ばかりが過ぎていた。
自らの存在を否定された悲しみをぶつける復讐相手はすでにいない。そんななか、闇の勧誘にのり、世界に復讐することにした悲運のデジモンと敵対せざるを得なかったのは少なからず彼らにダメージを与えていたようだ。
「もう少しで分かり合えそうだったんだよ、話は出来そうなやつだったのに!」
トマホークを地面に刺し、少しだけ耳を傾けてこちらの話を聞いてくれそうなデジモンだったらしい。それを唐突に終わらせたデジモンが目の前に居るのだと遼はいう。あっけなかった。後ろから熱線に貫かれ、ボルトモンは四肢から溶解してボロボロになって死んでいった。その元凶をジュンは知っていた。
胴体…グレイモン
両脚…ガルルモン
尻尾…モノクロモン
翼…エンジェモン
翼…エアドラモン
頭部…カブテリモン
髪…メタルグレイモン
左腕…クワガーモン
右腕…スカルグレイモン
両腕…デビモン
あまりにも多くの生物系デジモンの体の一部を合成して誕生したデータ種の完全体デジモンだったはずだ。だが、ダークマスターズとして出現したこのデジモンは究極体であり、ムゲンドラモンのプロトタイプとしてメタルエンパイアに対になる存在として作成されたようだった。
「キメラモン!」
遼の言葉にジュンは息を呑む。ジュンの時代でもデジモンカイザー時代のことを賢が暗黒の種の副作用で覚えていないために、なぜキメラモンが作成されたのか謎とされていた。
既存のデジモン達の合成であるムゲンドラモンへの対抗兵器や試作品だとも選ばれし子供たちのパートナーのデータをかき集めて最強のデジモンを作ろうとしたとも言われているがわからないままだ。
ただ一つだけ分かっていることは、キメラモンの恐るべき闘争本能、そして強大な破壊力だけである。四本の腕から放出される、死の熱線『ヒート・バイパー』。この熱線を受けたものはキメラモンの呪いのごとく、見るも無残にバラバラに四散してしまう恐ろしい技である。
究極体にまで強化され、さらにダークマスターズとして誕生したキメラモンから放たれた一撃だ。ボルトモンの死がどんなものか想像するのもたやすかった。
「ふふふ……感謝するぞ、選ばれし子供たちよ」
「誰だ!」
「一体どこから......」
賢と遼の反応からキメラモンの反応ではないと判断したジュンは気をつけてと叫ぶ。ムゲンドラモンでもキメラモンでもないならば、その声は一人しかいないからだ。
「あの時のように私を倒してくれて感謝する」
「あの時?」
「なんのことだ?僕たちはムゲンドラモンは倒したけどキメラモンは倒してないぞ!」
ウォーグレイモンの言葉に正体不明の声は笑うのだ。
「そうだろう、この世界の君たちはそうだった。だが、今までの戦いで君たちはキメラモンとムゲンドラモンを倒した。かつてのように。だからムゲンドラモンとキメラモンは互いに生き延びる為に融合し新たな変異体となって生まれ変わったのだ!」
「なによそれ、まるで今生まれたみたいなこと言うのね」
「そうだとも。この世界にも私を生み出すために数多の工作を仕掛けた甲斐があったというものだ。ありがとう、選ばれし子供たちよ。おかげで私はまた生まれることが出来た。デジタルワールドを滅ぼすために!!」
それは邪神の産声に等しい宣告だった。ムゲンドラモンとキメラモンがジュンたちの目の前で融合していくではないか。遼たちは驚きのあまり見ていることしか出来ない。機械の合成獣と生身の合成獣がひとつとなる様子はこんなにもむごく、えぐく、吐き気を催す不快さに充ちているとは知りたくなかったと切に思う。
ジュンは震えている自分に気がついていた。
デジモンは死んだら転生する生命体だが例外があることをジュンは知っている。死んだはずの個体がデジタマに戻らず、データの残滓が進化することで生き延びることがあるのは他ならぬパートナーが証明しているからだ。アポカリモンはデジタルワールドに封印された存在であり、転生システムから拒否されている特殊なデジモンだから起こったデジモンの誕生だ。
だがミレニアモンはわけがちがった。進化の頂点である究極体がさらに進化することなど、しかも互いに個体が既に死んでいる状態で融合という形で進化することなど聞いたことがなかった。
明らかに転生システムが完全に崩壊している今のデジタルワールドで、アポカリモンにふたたび取り込まれれば封印されることがわかっているが故の行動だ。何十年まてばデジタルワールドに受け入れてもらえるかわからない以上、新たなデジモンとして誕生するための布石である。
「ミレニアモン……あなた、一体どこから来たのよ」
ジュンの言葉にミレニアモンは高笑いするのだ。
ダークマスターズがアポカリモンから生み出されたにもかかわらず、生存本能に目覚めたがゆえに起こしたバグとしかいいようがなかった。
「これから死にゆくお前たちには関係ないことだ。私の目的はあくまでも8人の選ばれし子供たちに対する復讐なのだから!」
それも平行世界の選ばれし子供たちに倒されたムゲンドラモンとキメラモンの融合により誕生したというむちゃくちゃな敵である。
「そうはさせるか!」
「そうだよ、僕達は負けない!」
「わるいけど、アナタをこのまま好きにさせる訳にはいかないわ。みんな、ウォーグレイモンたちと会えるのだれよりも楽しみにしてた。その気持ちを踏みにじり、罠にはめたアナタを許す訳にはいかない!」