(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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番外編

「大輔に残念なお知らせがあります。今年のバレンタインデーのグレードが予算オーバーにつき大幅に下がります」

 

「えー!?なんで!?お姉ちゃん、お小遣い去年よりアップしたのに!」

 

「仕方ないでしょ、今年からあげる数が増えすぎなのよ」

 

「そんなー」

 

「選ばれし子供たちだけで11人もいるのよ?それにお父さん、大輔、百恵達もいれたら大変なことになるじゃないの」

 

「あ、そっか......」

 

大輔はあからさまにがっかりした。去年までジュンは井上兄妹、家族くらいしか配らなかったのだ。高めの小分けのチョコレートを買ってみんなに配り、残ったやつはジュンと大輔で半分こしていたのである。

 

「いーじゃないの、アタシの分がしょぼくなるのくらい。大輔、毎年たくさんチョコもらってるじゃないの」

 

「でもデパートで売ってるような高そうなのないもん」

 

「いいじゃないの、もらえない子はほんともらえないわよ?」

 

「3倍返し期待してる子ばっかりだよ?」

 

「あのねえ、それは友達に唆されて3倍返しするからちょうだいちょうだいクラスの女の子たちに言いまくったせいでしょーが、バカ大輔。お母さんと私が謝って回ったの忘れたの?」

 

「あれっ、そうだっけ?」

 

「都合がいい頭してるわね......。バレンタインデーってのはおやつが増えてラッキーなんて脳天気な日じゃなくて、お返しがいるんだから調子にのらないの。あ、もしかしなくてもホワイトデーのお返し、アタシにやらせるつもりね?」

 

ジュンのジト目にあははとあらぬ方向を見る大輔である。

 

「まあ大輔2年生だから許すけど4年生になったら手伝わないからね。お小遣いの範囲でってお母さんに言われるわよ、きっと。バレたらお小遣いカットどころの話じゃないからね、覚悟しなさいよ」

 

「ってことは来年もお姉ちゃんにお願いしていいんだ。やった」

 

「調子のいい耳ねえ......。まあいいけど。ということでアイマートのお菓子をだね、選びに行こうか」

 

「えーっ!やだ、いつも買ってるやつじゃん!!」

 

さすがに大輔はごねた。そんなのバレンタインデーもクソもないではないか。ただでさえジュンはなぜ完成しているチョコレートを素人の手で不味くするのか理解に苦しむといってはばからないほど料理が苦手だというのに。

 

それは忘れもしない、手作りという響きにつられてお願いした年のことだ。いつも料理をしない中学生が1人でチョコレートを手作りするのはかなり難しかったようだ。温度管理不足でコンクリートのような硬さになった上に溶けて悲惨な姿になり、大量の失敗作を家族で食べたのも記憶に新しい。いいやつは百恵達が食べてしまったものだから大輔は大いに拗ねたのだ。それ以来、ジュンはバレンタインデーのチョコレートは買うのである。

 

なお、なんて建設的だ。最初は自分で作ると張りきっていたが、徐々に飽きてしまい結局は親が作る羽目になった。深夜まで大量に作らされた。材料が途中で足りなくなってしまい買いに走った。じゃないあたりまだマシだと万太郎さんから知らされた大輔だったりする。

 

「じゃあなにがいいのよ」

 

「これ!」

 

大輔が突きつけてきたのは、チョコレートフェアのチラシだった。

 

「んー、まあ行くだけ行ってみよっか。大輔もくる?」

 

「いく!いきたい!」

 

「じゃあ大輔に選んでもらったやつみんなにくばろうかなあ。今年のバレンタインデー、月曜日だからね。大輔に配達係頼まないといけないし」

 

「わかった!」

 

そして本宮姉弟は出かけたのだ。予算はひとり300~500円くらい。みんなにあげるから金がかかるし、個別の包装にラッピングをお願いしたらまたおかねがかかってしまう。

 

チラシをみた女の子たちが考えるのは同じようで、美味しそうなチョコレートのコーナーとチョコレート菓子をつくるキットのコーナーで綺麗に分かれていた。

 

「ねー、大輔。大輔的にはどうなの?チョコレートってやっぱ大事?」

 

「チョコをもらえるのは嬉しいよ。好きな子からもらえたら、すごく嬉しい」

 

「でもホワイトデーのお返しは、アタシが選んでくれればいいか。ませてるわねえ。普通、小学校低学年のうちは、家族以外からチョコをもらえなくても、男子は気にしないもんだけど。もらえるのが家族からだけでも、いつものおやつにチョコがプラスされてラッキー!くらいの感覚じゃないの?」

 

「え?だって京とか千鶴さんとかくれるよ?」

 

「あー、うん、そうね。ある意味アタシがいるせいか......大輔の周りには強気な女の子が多すぎるわね」

 

「?」

 

「いや、なんでもないわ。大輔が光ちゃんが好きな理由がわかった気がするだけよ」

 

大輔は顔が真っ赤になった。

 

「いきなりなんだよ、お姉ちゃん!」

 

「あーうんごめんごめん」

 

「だからー!」

 

ジュンが小学生のころだったら、たしか男子は高学年になって気になる子ができたりすると、多少はバレンタインデーを楽しみにするようになった気がする。女子に比べて精神年齢がかなり幼いこともあり、女子ほどバレンタインデーに向けて、事前に盛り上がることなかった。

 

ただし、まったく意識していなかった女子からチョコをもらって、初めてその子を意識し出すということはあった。チョコの受け取り方は子供によってかなり差はあると思うがチョコをもらった数を自慢し合うようなことは、小学生のうちはなかった。だから大輔が去年起こした騒動はかなり衝撃だったのだ。

 

自分用のご褒美チョコを買っていたら、買い物に来ていた百恵達に偶然会って驚かれた。バレンタインデーイコール男の人にチョコをあげる日とインプットされていた百恵たちにいたく感動されて、友チョコブームの兆しがあったからかこつけて交換するようになって。お姉ちゃんばかりずるいと拗ねる大輔に京たちがあげるから3倍返しの概念をうえつけて渡すようになって。

 

「これもアタシらのせいだったりする?もしかして」

 

監督責任というやつなのだろうか、とジュンは考えた。もらったものと同額、または同額以上のお返しをしなければいけないと感じるよう大輔に言わなかったのは事実だ。百恵達との友チョコイベントのおまけを大輔にあげてただけだから。

 

おかげで大輔は明らかに友チョコである少量のチョコに対しても、それなりのお返しをしなければと感じていない。お返しをするという考えがないから、毎回ホワイトデーの説明をしないといけない。

 

普通は低学年男子の場合、誰からどんなものをもらったのかを、すべて母親が管理することになるらしいから、これはジュンの役目だろうか。というか大輔が幼稚園のころからそうなっている気がした。お返しの準備もジュンの役目であり、子供にはホワイトデーという日があることの説明はするが大輔はジュンに丸投げしている。

 

まあ、大輔はずっと光が好きみたいだから、小学校高学年になったら男子も今までの経験から「お返ししなきゃいけないかも?」と思うようになるだろう。どこへどんなものを買いに行けばいいのかは分からないみたいなら教えてあげればいいか。

 

人から何かをもらったら、それに対してお返しをするというのは人づきあいの基本だ。

 

子供が中学生以上になり、本命チョコをもらった時に「親に知られたくない、自分でお返しを考えよう」と思うようになった時のためにも。お返しをする方法を小学生の内に教えてあげるのも一つの社会勉強かなと思う一方でめんどくさい。とてつもなくめんどくさい。なんでアタシがここまでしなきゃいけないの、とぼやく自分がいるのも事実だ。

 

「今年からみんな友チョコにしよう」

 

「じゃあ、豪華なの?」

 

友チョコ=豪華なの、と大輔は完全にインプットされてしまっている。ジュンは苦笑いした。本命のが豪華のよ、と教えてあげたから、一応本命と義理の違いはついているようだが。

 

「だから予算がないっていってるでしょ。このあたりのファミリーパックあたりから」

 

「えー」

 

「じゃあ、数がたくさんあるやつある?」

 

「探そう、お姉ちゃん」

 

「はいはい」

 

なんでか大輔のほうが張り切っている。ジュンはカゴを持ったまま後に続いた。

 

 

 

 

 

「あれ、ジュンさん」

 

「あ、おはよう空ちゃん」

 

「おはよう、空さん」

 

「おはよう、大輔君。ところでバレンタインデーの買い物ですか?」

 

「まあねー」

 

空が手作りコーナーにいたことに気づいたジュンは、もうそんな時期かと思った。

 

「今年はあげる人数が増えすぎだからファミリーパックにしようかと思ってたら大輔に猛抗議うけてるとこ」

 

「だってー」

 

空は笑った。

 

「そうですよね」

 

「ねー。いっそのこと割り勘にしちゃう?その方が負担少なくならない?」

 

「割り勘ですか?」

 

「うん、そう。大学だとみんながお金出してチョコレート買うんだって。パソコン部のOBが友達のお兄さんなんだけどね、聞いたことあるのよ」

 

「へー、そうなんですか」

 

「みんな一緒にしちゃえばよくない?今年はあげる子多すぎるからさ、友チョコってことで一括でみんな同じやつ配るとかどう?そうすれば財布に優しい気もするのよね」

 

「友チョコって?」

 

「簡単に言うとバレンタインに友達同士で交換するチョコの事よ。一般的には女友達に渡すのが友チョコで恋愛対象外の男友達に渡すのは義理チョコと呼ばれるみたいだけど」

 

「僕京に仲の良い男友達にも友チョコだからってもらってるよ?」

 

「そういやそうね。まあ、アタシたちの場合は食べたいからとか、余ったから交換しよっかって感じだしねえ」

 

「友チョコかあ、そんなのもあるんですね」

 

「だって楽じゃない?友チョコと言って手作りチョコを渡された男の子の気持ちも気になるとは思うけど、

基本的には持ち寄ってその場で交換するからホワイトデーにお返しは不要なのよ」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「えー、僕ホワイトデーも渡してるよ!京とか千鶴さんとか3倍返しだってうるさいもん。万太郎さんとかお父さんからもお返しもらってるじゃん、お姉ちゃん!」

 

「あれは気を使ってるだけだと思うんだけどね......。とまあ、場合によっては男の子にエラい負担がかかるイベントとかす可能性もあるわけだけど、ようするに義理チョコを友チョコにしてお返しいらないことにすればお互い楽じゃない?ってやつ。人にもよるとは思うんだけどね」

 

「ジュンさんはいつもそうなんですか?」

 

「だってめんどくさいもん。沢山入ってるの分けたほうが安上がりだし、余ったのを百恵達に配ってたらそうなっただけよ。もともとバレンタインデーは自分のご褒美のためにチョコレートを買う日だもん」

 

「そっか、だから大輔君拗ねてるんですね。いつも貰えてた高級チョコレートがファミリーパックのお菓子になっちゃいそうだから」

 

「うん!」

 

「うん、じゃないの、うんじゃ。もらえるだけありがたいと思いなさいよね」

 

「えー」

 

「あはは。じゃあ、ミミちゃんや光ちゃんに後で聞いてみます?」

 

「いっそのこと買い物した方がはやくない?あ、それとも手作り派なの、空ちゃん」

 

「えっ、あー......そうじゃなくて、その、私サッカーやめてお母さんから華道ならい始めたんですけど、料理とかも教わり始めたから作ってみようかなあって」

 

「そうなんだ?手作りとなるとかなり量が多くなるわね」

 

「いや、その、あれです。義理チョコは買うつもりだったんですけど、手作りもやってみたいなあって」

 

「なら、なおさらみんなでお金出した方がよくない?予算オーバーで困ってたんでしょ?誰にあげるのかは知らないけど」

 

空は恥ずかしそうに笑った。

 

「そうですね、みんなで買ったらなんとかなるかも。ところでジュンさんは?」

 

「へ?なにが?」

 

「ジュンさんは誰かにあげないんですか?」

 

「誰かにって?家族と友達と空ちゃんたち以外に?いないわよ?」

 

「あれ?夏フェスに連れて行ってもらったっていう」

 

「あー、あれ、さっき話したパソコン部のOBってアタシの友達のお兄さんなのよ。あの時はたまたま彼女さんに振られて予約してた夏フェスチケットが余ったから妹と一緒に連れて行ってもらっただけよ」

 

「そうなんですか?」

 

「え、やけに食いつくわね、空ちゃん。どうしたの?」

 

「だって、その、ジュンさんがすっごいおしゃれして出かけるとこ太一とアグモンが見たっていうから、てっきり彼氏じゃないかって私たちの間ではもちきりなんですけど」

 

「..................はい?え、今なんて?アタシと万太郎さんが?いやいやいやいや、それはない。絶対にない。だって万太郎さん大学生よ?中学生に手を出したら犯罪者になるじゃない!」

 

「だって光子郎君とデジタルワールドの手伝いしてるとき、よく出てくるじゃないですかその人」

 

「だから万太郎さんはパソコン部のOBなんだってー!コンクール作品の相談とかによくのってもらってるだけよ!なに、アタシそんなに言ってる?!」

 

「言ってます、言ってます」

 

「うっそだあ、まじですか......これはダメだわ、緊急事態だわ。アタシ、今まで彼氏なんて出来たことないわよ、なにその噂あああ!」

 

ジュンはたまらず叫んだ。

 

「そんなに否定することですか?」

 

「なにその片思い自覚してない的な流れ」

 

「違うんですか?」

 

「ちがう、ちがう、断じてちがうからね。だいたい私はまだそういうの興味ないのよ」

 

「ほんとに?」

 

「ほんとに」

 

「ちなみに年上と年下とどっちがいいですか?」

 

「そーねえ、年下かな」

 

「大輔君くらいは?」

 

「大人になれば変わらないでしょ、6歳差なんて。あ、もちろん大人になったらよ、大人になったら。14の6歳下なんてショタコンじゃない」

 

「ふふ、そうですね。私は年上か同い年かなあ」

 

「なるほどね」

 

「ちなみにジュンさんのタイプって光子郎君ですか?一乗寺治君ですか?」

 

「なんでピンポイントで聞いてくるかはわからないけどまだわかんないわね」

 

「仲良さそうだし」

 

「サッカーやってた空ちゃんが太一と仲いいのと同じよ」

 

「なるほど」

 

「ただねー、アタシ後輩に弱いのよ」

 

「後輩」

 

「そうそう、後輩。光子郎君も治君も歳が離れすぎてるでしょ。だから後輩」

 

「じゃあ2つまでなんですね」

 

「たぶんね」

 

「たぶんて」

 

「自覚したのはずいぶん後だったからね」

 

「?」

 

ジュンはあいまいに笑った。

 

 

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