(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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番外編2

「おや、懐かしいですね。スイーツてすか。ゴージャスなスイーツとは奮発しましたね、ジュン。たしかにお気持ちは受け取りましたよ、ありがとうございます」

 

ゲンナイさんの隠れ家にて。2月末に迫る2000年問題に対処すべく連日通いつめているジュンは、ゲンナイさんやデジモンたちに配ったチョコレートとは明らかに内容が違うと思われる包装をファスコモンに渡した。いつもはポキュパモンなのだがあのラバースーツでは細かな作業に向かないため、ジュンのアシスタントを務める上ではこちらの方が適切な姿だった。

 

どーいたしまして、といいかけたジュンは目が点になる。

 

「えっ、どこが懐かしいのよ、ファスコモン。アナタには極上肉しかあげたことないじゃない。ヴァンデモンの記憶と混同してない?」

 

前世の記憶を辿ってみるが極上肉で腹を満たし、トイレを済ませて、いざトレーニングってところだったはずだ。闇貴族の館で極上肉のたねがあったことを思い出し、グルメだったであろうヴァンデモンを連想するがファスコモンは首を振った。

 

「ゴージャスなスイーツ、リッチなスイーツ、ありふれたスイーツ、シンプルなスイーツ、ひと通り味わったことがありますよ。まあ、たしかにワタクシ自身の記憶ではないですが、アナタからいただきましたよ?」

 

「えっ、うそ。幼年期は専用のお菓子しかあげられないんじゃなかったっけ?あまあまなお菓子、あまいお菓子、うすあじお菓子、ぽそぽそお菓子よね、たしか。残ってたっけ、アイテム欄」

 

「残ってはないですね」

 

「......て、待って待って待って。今なんていったの?ファスコモンの記憶じゃないのに、アタシからもらった?意味がわからないんだけど。アタシ、ヴァンデモンにチョコレートあげてないわよ?」

 

「そりゃあ決まってるじゃないですか、アウルモンの記憶ですよ。ジュンのパートナーデジモンだった、アウルモンの」

 

ジュンは固まった。

 

「えっ、ちょっとよくわからないんだけど、ファスコモン。怖いこと言わないでよ。幼年期で凄まじい回数死んでようやくガーゴモンにまで進化できたっていってたわよね?実際はガルフモンまでいけてたみたいだけど。アウルモン取り込んだの?ジョグレスしたの?」

 

「そんな訳ないでしょう、カオスモンになりますよ。単なるデータドレインだ。それにジョグレスしたならスキルを引き継げるわけだからワクチン種の技が使えます。クロスモンなら時空の裂け目からここにたどり着ける。次元を超えるアイテムを強奪する必要がないでしょう」

 

「......言われてみればそうね。じゃあなんで?」

 

「さあ?ワタクシがジュンのパートナーデジモンとなったことであちらのアウルモンにも影響が出ているのではありませんか?時系列的にはこちらが過去なのだから。しかも現在進行形で歴史改変を繰り返して平行世界に移行しつつある特異点でもあるのですし」

 

「あはは......そうね、そうなるわよね。ミレニアモンのこと考えたら明らかにそうよね......」

 

ジュンはひきつったまま笑った。

 

「ねえ、ポキュパモン。ふと思ったんだけどさ、今のポキュパモンはアタシのパートナーじゃない?ホントは本宮ジュンのパートナーって2003年に現れるはずな訳だけどさ、そっちはどこいっちゃったんだろ?」

 

「どこいったもなにも、ここにいますよ。まだ産まれていない訳がないじゃないですか」

 

「えー」

 

「おや、なにが不思議なのです?」

 

「だってさ、前のアタシにだってパートナーはいたわけよ」

 

「ああ、あちらの心配ですか」

 

「まあねえ」

 

「自ら育成を放棄しておいてなんて今更なことだ。大学時代の後輩にアウルモンを預けておきながら」

 

「生活に腹は変えられないもの。あの時のアタシの極貧生活じゃオハカダモンになってたわ。結晶化事件以後のアタシには帰る場所なんてなかったもの、実家も友達も頼れるわけないじゃないの。支援しなきゃいけない立場だったのにそれすらできなかったんだから」

 

「それでもアウルモンは傍に居たがったのでは?」

 

「そりゃそうよ、もちろん。だから、いつか新人から抜け出してベテランの域になったら迎えに行くつもりではいたのよ」

 

「不摂生で早死しては元も子もありませんが」

 

「うっぐ......いうじゃないの......まったくもってそのとおりよ」

 

「ジュンの知ってのとおり、パートナーデジモンはパートナーが存在しなければあらゆる面で弱体化を強いられる生命体です。だから早死にするでしょうね、アウルモンは」

 

「わかんないじゃない、後輩はなかなかに優秀な子よ。うちの職場に内定決まってたんだから」

 

「まあ、たしかにそうですね。肉体は死んだが精神的にはこちらにアップデートという形で生きているわけですから、生きながらえる可能性はある」

 

「でしょ?」

 

「ただし、パートナーデジモンというものはパートナーに一体ですからね。それは死後も適応される」

 

「えっ、そうなの?」

 

「おや、ご存知なかったのですか?アウルモンに言われたことはなかったので?ずっと待っていた、会いたかったと」

 

「パートナーデジモンお決まりの第一声ね。......え、待って?もしかして、それってそういう意味なの?」

 

「そういう意味ですとも。だからある人間に惚れ込んだデジタルモンスターはパートナーデジモンの存在に大きく絶望を感じるわけです」

 

「......てことは、アタシと魂が同じ本宮ジュンのパートナーもアウルモンだったってこと?本来は?」

 

「まあ、パートナーの進化経路はホメオスタシスに決定権がありますから、まるきり同じではないでしょうけどね。アナタのようにジョグレスを繰り返して全く別の姿になることもある」

 

「まあ、あの子も最初は機械型デジモンだったけどさ。......待って、ってことはポキュパモン、あなたまさかアウルモンのデジコアとも融合したってこと?」

 

「当たり前でしょう、なにを言っているのです?ひとりの人間にひとりのデジモン。双子のデジモンだったり3人の人間にひとりのデジモンだったりもしますが、原則は変わりませんよ」

 

「なんてこと......じゃあただでさえアポカリモンの残滓にヴァンデモンのデータまで取り込んじゃったらウィルス種のデータが多すぎて進化経路が思いっきり偏るじゃないの!どう足掻いてもナイトメアソルジャーズとか!」

 

「ああ、ジュンは機械型デジモンがお好きでしたね。おっしゃる通りなので諦めてください。ただでさえ今のデジタルワールドはアポカリモンの悪影響によりウィルス種や闇属性のデジタルモンスターが著しく激減し、不安定になっている。それをワタクシを守護デジモンにすることで一時的にバランスをとっているわけですからね。普通に考えるなら、暗黒勢力との戦いが終わるか、ウィルス種やナイトメアソルジャーズの勢力が勃興しなければ別の進化経路は絶望的でしょうね」

 

「嘘でしょ、絶望しかないじゃない!」

 

「諦めてデジファームを充実させて、テイマー環境を整えるかファクトリアルタウンに通ってください」

 

「あ、アタシが次に生まれ変わったらアウルモンになるんじゃない?」

 

「あのですね、お忘れかも知れませんがジュンが生まれ変わってもワタクシの構成データは変わりませんからね?未来ならともかく過去にアップデートされた以上、次の人生からパートナーはウィルス種になる運命ですよ。しかも今のワタクシはアポカリモンからウィルス種のデータの7分の1を取り込んだ状態ですよ?生半可なジョグレスで機械型デジモンになるとでも?」

 

「言われてみればそうだった......!」

 

「諦めてください」

 

「やだ、諦めきれない!」

 

ポキュパモンは意地悪く笑ってみせた。

 

「......って話を脱線させないでよ。アウルモンは未来を生きてるデジモンでしょ。なんで過去にパートナーデジモンとなったファスコモンが未来でアタシがアウルモンを育ててた記憶を引き継いでるのよ。アウルモンにアンタの記憶が新たに追加されるならともかく」

 

「おや、気づいてしまわれましたか。気づかなければよかったものを」

 

ファスコモンは笑みを濃くした。

 

「おっと......これは藪蛇だったかしら?」

 

「当たり前でしょう、わざわざこちらが言葉を濁してあげたというのに知りたがるとはこちらの気も知らないで。よく考えてごらんなさい。肉体は死んだが精神的にはこちらにアップデートされた。過去世界に死んだはずのもうひとりの自分がいる。どうあがいても自分は会えないことが本能的にわかってしまう。しかも過去には過去のパートナーデジモンとしての己というアイデンティティを真っ向から否定する存在がいる。パートナーデジモンなのにパートナーデジモンになれない。破綻しているにも程がある。行く末などどうあがいても絶望しかないのですよ」

 

「......それもそうね」

 

「だからロイヤルナイツのマグナモンが無断で時空転移アイテム強奪という極刑に値するデジモンを不問にしたんですよ。デュークモンに無断で。もしかしたら事後報告かもしれませんが」

 

「えっ、そうなの?」

 

「ワタクシが強奪したアイテムの管理者はデュークモンでしてね。マグナモンではなかったはずですよ」

 

「うっそでしょ」

 

「嘘なんかついてどうするのです。恐竜型や獣型などの獰猛なデジモンが多く生息する

『ローラン大陸』、『ゴルディア大陸』、『レムーア大陸』で形成されるエリアを管轄していたのが誰かくらいアナタもご存知のはずでは?」

 

「......改めて思うけど、ほんとにとんでもないことしたのね、アンタ」

 

「ワタクシも必死だっただけですよ。アウルモンも死に目に会えずに最後にみとったのがワタクシだと知って理性と感情を分離できず、絶望的な状況に耐えきれず、その矛先をワタクシにしか向けられなかったわけですからね」

 

ジュンは沈黙した。

 

「だから話したくなかったというのに。好奇心は猫をも殺すのですよ。アナタにはいい薬だと思って話しましたのでね、悪く思わないでくださいよ」

 

「ごめん、軽率に聞きすぎた」

 

「本当ですよ、ジュン」

 

ファスコモンはためいきをついた。

 

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