(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
「ねえ、アスタモン。アタシ、対応間違えたかしら?」
「比べるのは野暮ですよ、ジュン。あのデジモンは明らかに人為的な工作によって生まれている形跡がある。偶発的に生まれたわけではなさそうだ」
「そりゃそうだけどさあ......クリサリモンに進化しちゃったわよね、あれ」
「そうですね。だがやつは序盤から増殖しようとしていた。放置すれば無数のクリサリモンが並ぶことになりますよ」
「たしかに」
濃厚な殺意がジュンたちに向けられている。
「いたちごっこですよ。ワタクシたちデジタルモンスターが1番成長するのはいつだって生きるためだ」
「ミレニアモンみたいに?」
「アポカリモンがそうだったように」
突如ネットに現れた無邪気ながら凶悪なデジモンは、凄まじい食欲を持ち、ネット上のバグが寄り集まって出来たデジタマからわずかな期間で成長期から成熟期に進化をした。「遊び」で世界を危機に陥らす、かなり性質の悪いデジモンにジュンは手を焼いている。
体格も大きくなり、その大きな口でツメモン以上のデータ量を侵食することができるケラモンは、1秒間に100メガ以上のデータを侵食するために、ケラモンに進入されると同時にデータが破壊されてしまう。
非常に陽気な性格で、破壊行為は遊びの一環だと思っている。笑いながら口から破壊力抜群の光弾を吐き出すケラモンたちをアスタモンは難なく躱す。繰り出されたウィルスバスターの効果が付与されたマシンガンはケラモンたちを次々ほふり、あと一体にまで迫っていたのだが。
弾幕の先にいたのは成熟期デジモンだ。成長期のケラモンが、より強いデジモンに進化するために一旦蛹のような状態になり、エネルギーを温存している。
一切の行動が出来ないが硬い外皮に守られ、背後から伸びる触手で攻撃する。
げえ、とジュンは顔をゆがめた。
デジタルモンスターは進化を繰り返し、転生を繰り返して強くなる生命体だ。テイマーとしての経験則から知っているのだが、初めての進化は世代をひとつひとつ経験して段階を踏んだ方が、同じ究極体としても格段に強くなる。ケラモンの進化系列は形態を踏まずに完全体のインフェルモンへと進化できるが、この形態を踏む事でより強いインフェルモンに進化するだろうことは明らかだ。
この時点で完全体のくせにウォーグレイモンの技を耐えきるインフェルモンがさらにつよくなるのだ。ぞッとする話ではないか。
蛹のような姿をした成熟期デジモンがこちらを睨んでいる。より強いデジモンに進化するために一旦蛹のような状態になり、エネルギーを温存しているやつは、いっさいの移動はできなくなるが、硬い外皮に守られ、背部から伸びる触手で敵を攻撃できる。
「うそでしょ、完全体になっちゃった」
ありとあらゆるネットワークに侵入してデータを破壊することができる凶悪な完全体がそこにいた。
繭のような身体に手足を収納することで防御力が格段に上昇、究極体であるウォーグレイモンのドラモンキラーをまともに喰らって耐えた程である。
手足の長い蜘蛛のような姿をした完全体デジモンの殺意が向けられる。頭や手足を伸ばした状態の通常形態と、手足を本体にしまいこんだ繭形態をとることができる。
繭形態になるとあらゆる攻撃を跳ね返すほど防御力が上がるが、一直線にしか進めず、軌道をかえられないのが欠点である。強固なセキュリティーを物ともせずあらゆるネットワークに侵入することができる。インフェルモンがネットワークに放たれたら最後、世界中が混乱に陥るだろう。
インフェルモンが突撃してきた。アスタモンは着地すると黒い波紋を描きながら周りを浮遊する無数の円形を蹴り出した。インフェルモンがふっとばされる。射程を確保しながらふたたびオーロサルモンで脳天をぶちぬこうとした。
繭状態の本体ではなく収納されている四肢や頭を狙うが隙間なく埋められた防御状態は跳ね返してしまう。舌打ちをしたアスタモンはまた突撃してきたインフェルモン目掛けて超至近距離から蹴りあげた。空中から方向転換するために一瞬インフェルモンが顔を出す。
「ヘルファイア!」
地獄の果までついていく追尾弾の雨が降り注ぎ、ふっとばされたインフェルモンは向こう側の球体の壁にぶつかってずるずるずると落ちていった。
装填しながらアスタモンはウィルスバスターが付与された弾丸をトドメとばかりにぶっぱなす。
「おっと?」
インフェルモンの口の中の銃口から、凄まじい破壊力のエネルギー弾を打ち出されたのだ。ゲートポイント中央付近で大爆発が起きる。ジュンはたまらず手をおおった。
「ジュン!」
「えっ?うわあ!」
ジュンは虚空に投げられた。
インフェルモンがコクーン状態になりものすごい勢いで球体の空間を利用して突進してきたのだ。もう一体いたようである。
ジュンはあわててデジヴァイスの結界を展開した。
「トライデントアーム!」
全身の半分以上をサイボーグ化することで、戦闘力を高めたグレイモン系デジモンの完全体が、完全機械化された左腕「トライデントアーム」を炸裂させる。インフェルモンは激しく叩きつけられてしまった。
「ギガデストロイヤー!」
胸のハッチから核弾頭1発分に匹敵する破壊力を持つ有機体系ミサイルを発射する。拘束しているインフェルモンはもろに直撃を受けた。
「ジュン、大丈夫?」
6枚の翼を使っての飛行能力も獲得したメタルグレイモンが声をかけてくる。ファイル島より高度なサイボーグ化技術により、拒絶反応を起こすことなく進化することに成功した黄色のメタルグレイモンだ。
ぱ、とモニターが出現し、心配そうな太一たちがうつった。
「ホーンバスター!」
雷撃が走る。
「大丈夫でっか?お待たせしましたで、アスタモン」
カブテリモンが進化した昆虫型デジモンがそこにはいた。飛行能力を少し退化した代わりに高い筋力を獲得し、頭頂に備えた角は巨大化、さらに全身の装甲が硬質化しており高い防御力を発揮する。また、性格も変化し本能しか持っていなかったカブテリモンと違い、か弱いデジモンを守る騎士道精神を持っている完全体、アドラーカブテリモンである。
「お待たせしました、ジュンさん!僕達も加勢します!」
「お姉ちゃん、みんな、がんばれ!」
モニターごしに光子郎と大輔が現れる。ジュンはメタルグレイモンに助け起こされ、こちらにやってきたアスタモンに渡された。
「ありがとう、みんな。気をつけて」
爆煙の向こう側に黒い影がふたつある。太一たちは目を見開いた。そんな馬鹿な、確かに手応えはあったのに。
「なかなかの強敵みたい」
インフェルモンが人工音声で高い音を出し、体を震わせているのがみえた。どうやら笑っているようだ。選ばれし子供たちの完全体3体に囲まれて笑い転げているのだ。あまりにも異様な姿に光子郎たちは息を呑む。
「あ、このデジモンからメールがきました」
光子郎がフォルダを開いてメールを読み上げる。
「ハローハローハロー」
ピロン、という音がした。
「あ、お姉ちゃんのパソコンにも来たよ」
大輔が読み上げる。
「アソブ?」
ピロン、ピロン、ピロン、と立て続けにメールがくる。大輔はだんだん顔が強ばってきた。
「いっぱいアソブ?って書いてある......」
ジュンたちはゾワッとした。悪寒が体を走り抜けた。こんな短時間でジュンと光子郎のパソコンを特定してメールを送って来ているということは、完全に読まれているということだ。しかもおちょくっている。こいつ、ヤバいデジモンだと悟った太一はゴーグルをつけ直した。
「なあにがアソブだよ、馬鹿にしやがって!待ってろ、俺達が相手だ!」
「ジュンさんは一回ログアウトしてください、ゲンナイさんと僕でなんとか追い込みをかけてみますから!」
「ありがとう、みんな。あとはお願い!」
ジュンはゲンナイさんが展開してくれたデジタルゲートに飛び込んだのだった。