(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第70話

メタルグレイモンとアスタモン、そしてアトラーカブテリモンはふたてにわかれた。ゲンナイさんたちがゲートポイントを封鎖してくれるおかげで暗くなり、太一たちのモニターだけが光源となった世界にて、新種のデジモン2体が猛威をふるう。

 

デジモンたちの場外乱闘が始まった。キーンとジェットに似た音が響く。メタルグレイモンの搭載した武器からだ。爆煙の灰色の雲の中を鈍い眠い音をたてて、飛んでいく。

 

大気を切るブレードの音。声をかき消す轟音をあげて、メタルグレイモンはインフェルモンに攻撃を放った。

 

煙を吐いたインフェルモンが安定を失いながら木の葉が舞うように落下してくる。肝を揺さぶるような轟音だった。メタルグレイモンは青空に白い綿のように尾を引いて落ちていくインフェルモン目掛けて追撃をしかける。トライデントアームに塗った銀の色が、水銀のようにこぼれそうに鮮やかに翻った。

 

「なに!?」

 

コクーン状態になったインフェルモンが方向転換し、爆撃機の機影を残しながら激しい角度でメタルグレイモンめがけてのめりこんでいく。メタルグレイモンは吹き飛び、真向かいの壁に激突した。

 

インフェルモンがゆっくりと滑走路のように壁を滑り始めた。地面が揺れている。巨大なコクーンは徐々にスピードを増す。ピッチの高い音で空気が燃えているように感じる。胴体の脇に付いたさらに巨大コクーンが青い炎を吐いた。その先にいたメタルグレイモンは白い腹が浮いたかと思うと、あっという間に爆発の中に吸い込まれた。

 

「メタルグレイモン!」

 

太一の叫びがこだまする。モニターを横切ったのはアトラーカブテリモンだった。激しい羽音をたてながら煙の中に消えていく。強固な装甲はインフェルモンの必殺技を耐え抜き、メタルグレイモンの壁となる。コクーンめがけて超至近距離から雷撃をぶち込み、その隙にメタルグレイモンが復帰する。

 

「よかったあ。ありがとうな、アトラーカブテリモン」

 

「助かった、ありがとう」

 

「構いませんて、それくらい。それよりどないします?」

 

アトラーカブテリモンに促され、太一が視線を投げた先には傷一つついていないインフェルモンの姿があった。

 

「げえっ、まじかよ」

 

「コクーン状態(あの状態)になるとダメージを受けないのか、なんてやつだ」

 

光子郎はいきをつく。蜘蛛のように長い手足で球体空間の壁に這いつくばっているインフェルモンは空中に静止しているように見える。さなぎらデパートの天井からワイヤーで下げられた玩具のように。

 

「くるぞ!」

 

察知したメタルグレイモンが叫ぶ。

 

黒い影が疾風のようにかすめ去った。アスタモンのマシンガンのように自動追尾機能がないたけまだマシだが、連射してくる弾丸の雨を前にメタルグレイモンたちは避ける。わずかに被弾した装甲が粉砕された。

 

どうやら破壊するウィルスが仕込まれているようだ。デジヴァイスの加護により侵食はただちに止まるが、普通のデジモンならおかしくなってしまうだろう。

 

 

報復とばかりにメタルグレイモンとアトラーカブテリモンの攻撃が直撃し、インフェルモンが激しく揺れる。火を吹いて流星のように直線に落ちて行く。極度にのろい速力で、ちょうど空を這っているように見えた。メタルグレイモンが銃火を噴いた。

 

殴りつけるような超低空でインフェルモンは避けながら過ぎていく。間を縫って、映写幕を移動する幻影のように迫って来ていた。それはきらきらと光る固い殻に覆われた虫のように見えた。

 

インフェルモンが突撃しながら口から弾丸を連射してくる。さいわいなのは一直線上の移動しかできないことだろうか。

 

メタルグレイモンとアトラーカブテリモンは防戦一方ながらカウンターをしかける。見越したようにインフェルモンがコクーン状態になってしまうためダメージはいまひとつである。だがだんだんインフェルモンの動きが単調になってきた。

 

「今だ、トライデントアーム!」

 

不意をつき、メタルグレイモンは必殺技を放った。アトラーカブテリモンが続いて雷撃を放つ。メタルグレイモンは無数の弾丸をうちこんだ。

 

「やったか!?」

 

太一の歓喜を含んだ叫びにメタルグレイモンは忌々しそうに首を振った。トライデントアームに捉えられたはずのインフェルモンがいない。

 

隣にはゲンナイさんたちが閉じたはずのデジタルゲートがあった。

 

 

 

 

 

「あらあ、今日はいつもより多くまわってるわねえ」

 

太一と光子郎にジュンのノートパソコンを渡すという重大任務を終えた大輔はひといきついた。喉が渇いたためおばさんに言われて麦茶をもらっていた矢先である。つられてベランダをみた大輔は変なところにお茶が入ってしまい激しくむせた。げほげほ、ごほごほ、咳き込みながら無理やり止めるためにお茶を一気に飲み干す。

 

「あらあら大丈夫?」

 

ケーキの生地作りをしながらおばさんはのほほんと返した。ベランダに飛び出さんばかりに窓ガラスに張り付く大輔をみて笑うのだ。

 

「やっぱりいつもよりまわってるわよねえ?なにかのイベントかしら?」

 

空いた口が塞がらない大輔の向こうにはパレットタウンという遊園地があるのだが、その象徴たる観覧車がぐるんぐるん回っているのだ。はたから見て回っていることが目視できるレベルだからどんどん早くなっているのがわかる。明らかにおかしい。おかしすぎる。

 

「ごちそうさまでした!」

 

大輔は飲みかけの麦茶をおいて、書斎に戻ってしまう。

 

「あら、半分残ってるのに」

 

おばさんは笑いながら冷蔵庫をあけた。大輔がドアをあけると太一たちは逃げられたインフェルモンの行方をおって無数に広がるネットワークにダイブしているデジモンたちを見ながら調べ物をしていた。光子郎のパソコンにはゲンナイさんがいて、ネットワーク契約している個人や会社をリストアップしているところだった。

 

「太一さん、光子郎さん、大変です、観覧車が!」

 

「へ?」

 

「なにがです?」

 

「観覧車あ?」

 

「ぐるぐる回ってるんです!」

 

「観覧車は回るもんだろ?」

 

「ちがうんですよ、ぐるんぐるん回ってるんです!すごい勢いでっ!!」

 

大輔は腕をぐるぐる回しながら説明し始めた。よくわからない顔をしている太一に業を煮やし、大輔は太一の手を取り来るよう急かす。

 

「なんだよなんだよ、大輔。今俺たちは忙し......」

 

太一の目の前にはものすごいスピードでまわる観覧車がある。しかも緊急停止したかと思ったら、今度は観覧車ではなくゴンドラがぐるんぐるんと回りはじめた。

 

「やべっ!?」

 

「でしょっ!」

 

「やべえやべえやべえ、ありがとうな大輔!光子郎、ゲンナイさあん!!」

 

太一が書斎に飛んで返っていく。大輔ははあとため息をついた。

 

「なによ、太一ったらさっきから忙しないわね。あ、大輔くん。さっきのお茶飲む?」

 

「ま、まだいいです」

 

「そう?冷蔵庫に冷やしてあるから飲んでね」

 

「はい」

 

大輔は書斎のドアをあけてみた。

 

「でました!あの観覧車、今日は法定点検日で17時から開始みたいですね」

 

「ってことは動いてること自体おかしいってことだな!つまり!」

 

「アイツ、今観覧車にいるんですね、ゲンナイさん」

 

「そのようじゃな。よし、デジモンたちを転送する準備に入るぞい!」

 

「お願いします」

 

「なあ、ゲンナイさん、あの観覧車止められないのか?ふっとばされそうで怖いんだけど」

 

「いや、やめておいた方がいいじゃろう」

 

「なんでだよ」

 

「あの観覧車はギネスにも載っておる世界一大きな観覧車じゃ。下手に回転軸を固定してあのデジモンに抵抗してしまうと、かえって軸が曲がってしまうなど故障を招く原因となってしまう。構造としては固定せずにゴンドラを回してしまった方が軸に負担は少なく、安全なのじゃ。機種にもよるが、あえて回させたほうがよさそうじゃ。さいわい今日は点検日のようじゃしな、関係者が対応してくれるじゃろう」

 

たしかにパレットタウンの大観覧車のホームページには、毎日運行前に点検しており、今回は法定点検日により休むと書いてある。点検作業を行っている最中の事故として処理されるだろうから、そのどさくさに紛れて新種のデジモンを退治した方がいい。まさかパレットタウン側もデジモンが悪さをしているなんて思わないはずだからと。

 

「ふーん、そんなもんか。じゃあ、俺たちはアイツ倒すのに集中しようぜ光子郎」

 

「そうですね。はやく倒してアスタモンに加勢しないと」

 

大輔はおそるおそるジュンのパソコンを覗き込んだ。

 

「お姉ちゃんは?」

 

「大丈夫だよ、大輔くん。ジュンさんはゲンナイさんとアスタモンのサポートにまわってる」

 

指さす先にはゲンナイさんの隠れ家にいるジュンの姿だった。

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