(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
「だあああっ!また逃げられたあっ!誰だよ、さっきからデジタルゲート開けてるやつは!あのデジモン、デジタルゲートあけられるのか!?」
「いや、そんなはずありませんよ。それなら幼年期が町中に溢れかえってるはずです」
「ヴァンデモンの時みたいに?」
「そうです」
「うへえ!」
「今から追跡するから待機してくれい」
「待ってらんないや、テレビ見ようぜテレビ!あるいはネットニュース!」
「掲示板のみんなにも呼びかけてみますね」
「私たちも加勢する?」
「そうですね。じゃあ転送を......」
「お姉ちゃん!なんかくるよ!」
大輔の声に弾かれたように太一たちはジュンのパソコンに目を向ける。
「うわあああ、なんだこいつ!」
ジュンのパソコンにさっきのデジモンが出現しようとしているのがみえた。
「ジュンさん、デジタルゲートをとじてください!はやく!生き残りがにげようとしてます!」
ジュンはあわててゲートをとじようとする。切断された上半身から新たな個体がうまれた。転写するデータが足りなかったからだろうか、退化して幼年期になってしまう。デジタルゲートの向こう側に消えた何体かのクラモンたち。ホウオウモンが強制シャットアウトされたデジタルゲートにはじき出されるなり残されるなりした残骸を浄化した。
「うわあっ」
「まずいわ。一回アタシのサーバからシャットダウンするわね!ゲンナイさん、一回アスタモンもホウオウモンも離脱させますね。ウォーグレイモンの回線どうしましょう?」
「そうじゃな、転送し直すか」
「アトラーカブテリモン、一回離脱するけどあと任せて大丈夫か?」
「はいな!追跡は任せとくんなはれ!」
「ごめん、1度離脱する!」
ジュンのパソコンはただちにネットワークから切断された。
「さあ、残りのヤツらを始末しましょうか」
ジュンのパソコンをくまなくアスタモンは捜索する。その間ウォーグレイモン、ホウオウモンはゲンナイさんの隠れ家に待機である。しばらくしてからアスタモンが顔を出した。そして困った顔をしながら肩を竦めた。
「いませんね」
「嘘でしょ?じゃあまさかサーバ経由して逃げたとかいう?」
「どこと契約してるんですか?」
光子郎の問いにジュンが答えようとした矢先。
「太一、太一、太一ったら!電話よー!お母さん手が離せないから出てちょうだい!」
よっしゃ、と太一は顔が明るくなった。
「はあい!やっと通じたんだなー!誰だろ、ヤマトか?丈か?それとも......」
太一は転がるような速度で廊下に向かった。
「もしもし、八神ですけど!」
向こう側で、人工音声が鳴り響く。もしもし、もしもし、もしもし、もしもし。
「太一さん大変です!あいつ、今NTTに!」
リビングで先にテレビをみていた大輔の声がひびきわたる。東京だけで非常に電話が繋がりにくくなっているとかなんとか。太一は受話器をおいた。ダラダラ汗がつたう。大輔と太一が書斎に戻った。
「ジュンのパソコンの安全が確認できましたので再ログインしてください」
アスタモンの言葉に光子郎は胸をなでおろした。
「頼むよ、メタルグレイモン!」
「NTTに向かってください!アメリカサーバについては友達に連絡を入れてみます。なにかしら問題が起こったらさすがにどこか動いてくれるはずだし」
「アメリカの選ばれし子供たちに連絡しましょう、ゲンナイさん。アメリカ担当のベンジャミンさんが行方不明なのは痛いけど!英語ならアタシが話すから!」
「わかった、ジュンにはエージェントの権限を一時的に譲渡するから頼んだぞ!よし、転送完了じゃ。メタルグレイモン、ホウオウモン、頼んだぞ!」
「メタルグレイモン、あいつ時間がたってるからさらに進化してるかもしれないわ。気をつけて!」
「わかったよ!」
「よーし、進化だメタルグレイモン!」
「わかった!」
メタルグレイモンが進化の光に包まれたとき、先行してインフェルモンを追いかけていたはずのアトラーカブテリモンがいきなり動かなくなってしまった。ネット回線にちゅうぶらりんである。意識はあるのかもがいているがどうにもならない。
「どうしたんだ、アトラーカブテリモン!?」
「まさか新しい敵なの!?」
気まずそうに光子郎がつぶやく。
「すいません......僕太一さんの家の回線使ってるからネット回線キレちゃったみたいで......」
みんなの視線が光子郎のパソコンに向かう。NTTと書かれた回線が刺さっていた。まさかのトラップである。
「ネット回線切れてもネットワーク上にいるとこんなになっちゃうの!?」
「デジタルワールドと違ってインターネット上だとどうしても不安定になるようじゃ」
「えー、ヴァンデモンたちと戦ってた時はもっと戦えてたじゃないか!」
「無茶いうでないわ!あの時はデジタルワールドと現実世界が限りなく一体化しつつあったんじゃ!いわば現実世界すらインターネット上にあるも同然じゃったんじゃぞ!」
「僕、一回家に帰って衛星電話の機械取りに行ってきます!それまでみなさん、ジュンさんのパソコンからお願いします!」
光子郎はそういうと大慌てで書斎をあとにした。どうやら光子郎のパソコンからでなければアトラーカブテリモンは離脱すらできないらしい。
「光子郎くんが戻るまで守ってあげてくれる?」
「わかったわ」
ホウオウモンはアトラーカブテリモンの護衛につくようだ。
「お姉ちゃん、アメリカの子供たちで手一杯みたい。頑張ってアスタモン!」
「ウォーグレイモンも頼むぜ!」
デジタルゲートが開かれるが、アスタモンがウォーグレイモンに待ったをかける。マシンガンが乱射され、少しの隙がうまれる。むっしゃむっしゃと一心不乱に個人情報を食べまくっているインフェルモンたちは姿が変わっていた。
「まーた進化してやがる!早すぎるだろ!」
「またいっぱいになってるよ!?」
「逃げるんじゃねーよ!」
「気をつけるんじゃ、太一たち!こやつらはすでに究極体じゃ!」
「ならば相手に不足はありませんね」
アスタモンが進化する。着地する頃には姿が変わっていた。
ベルフェモンスリープモードがデジタルゲートの真ん前に出現した。あまりの大きさに敵は後続に攻撃がとどかない。
「これがアスタモンの進化形っていうベルフェモンか?なんだ、可愛いじゃん。すげーでかいけど。これのどこが悪魔みたいで怖いんだよ、ウォーグレイモン」
「......あの時と姿が違い過ぎない?なんか寝てるし」
「ベルフェモンはいつもは封印状態なんじゃよ。あのときが非常時だっただけでな。じゃが心配いらん。今回はこちらの方がいいじゃろう」
「なんかよくわかんねーけどナイスだぜ。光子郎が戻るまで頑張ってくれよ!」
ベルフェモンは門番のようにデジタルゲートの前に立ち、また脱走者が出ないようにジュンたちが閉じるまでの間炎を吹き出す黒い鎖で応戦した。
「あ、そうだ!空、空ー!今東京繋がりにくくなってるみたいなんだ!他の選ばれし子供たちから連絡入ってるかもしれないから伝言ダイヤル聞いてみてくれ!171のやつ!」
「え?」
「テレビでやってたやつです!留守番電話みたいなやつ、最初に171を入れると使えるんです!」
「待ってよ、私みんなの連絡先知らないわ!」
「あ、そうだった!わりい、俺がかけてみる!」
太一はあわてて選ばれし子供たちがいるはずの場所、あるいは携帯電話に再度171をかけて電話をかけてみた。丈、サッカー大会事務局は不発だった。光にはいいかげん帰ってこいと叫ぶ。ハワイとトルコは除外して、最後の望みはヤマトのおばあちゃん家だ。受話器に耳を押し付けていた太一はぱっと表情がかがやいた。
「通じたー!よっしゃー!!ヤマトとタケルに通じたぜ、みんな!」
空達は歓喜した。太一はそこから何回も何回も繰り返してヤマトとタケルにインターネットを通じて戦いに参加するよう伝える。しかし顔がこわばった。
「あのなあ、島根にだってパソコンくらいあるだろ!探しに行ってくれ!」
太一の絶叫に大輔と空はたまらなく不安になる。受話器をおいた太一はふかぶかとため息をついた。
「大丈夫かなあ、あいつら。島根のおばあちゃん家、茅葺き屋根の家ばっかりで学校のパソコンも圏外で使えねーレベルなんだって」
「メールも?」
「メールも」
「アンテナ1個も立たないんですか?」
「だってさ」
太一は気を取り直してジュンのパソコンに向かう。
「ただいま戻りました!」
「おかえり、光子郎!」
「おかえりなさい」
「お待たせしました、すぐ準備しますね」
光子郎は誰も見たことがないたくさんのコードを伸ばし、自分のノートパソコンに繋げると起動させた。
「あ、そうだ。それ、衛星電話なんだろ?ハワイやトルコに連絡できねーの?」
太一の言葉にみんな振り返った。
「それだ!」
光子郎がパソコンを再起動したことでようやくアトラーカブテリモンが進化する。ホウオウモンとともにベルフェモンが門番をするデジタルゲートでウォーグレイモンと合流することに成功した。
ベルフェモンは眠ったまま、太一たちは未だに名前を知らないデジモン、ディアボロモンたちの猛攻を受け切っていた。あるいは時折反撃して近づく個体を自らのダークエリア領地に送り自己強化を繰り返していた。
ようやく本命が到着したことに気づいたようで、NTTのネットワーク全体に必殺技を放った。寝息のような衝撃波がディアボロモンたちを襲う。即死するか、眠るか、眠らなければ黒い鎖から吹き出す炎の餌食になるかの3択だ。瞬く間な空間が黒から白が増えていく。
やがて自己増殖をして撹乱していた、劣化コピーではない個体、もしくはすぐコピーされたためにオリジナルにほど近い個体だけが残されていく。数にして十数体。
「よーし、こっからは俺たちが相手だ!」
ウォーグレイモンたちが飛び出していく。ベルフェモンはデジタルゲート前に立ち、ゲンナイさんが閉じる作業をしている間逃げ出すやつがいないか目を光らせていた。