(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
光子郎は祈るような気持ちでミミが宿泊しているはずのホテルに電話をかける。通じたようで声を発しようとしたが固まった。
「だ、誰か英語話せる人いませんか?僕、さすがに英語は......」
「えっ」
「えーっ」
「ジュンに丸投げしとる状態じゃからのう」
「そんなの単語で通じますよ?」
「えっ」
「なんとなくニュアンスで!何とかなりますって!お姉ちゃんいってました!」
大輔のノリにえええと言いながら光子郎は大輔に受話器を渡した。大輔は大袈裟なリアクションと片言でどんどん盛り上っていく。これなら行けるのでは?とみんなが思い始めたころ、大輔は受話器を返した。
「ダメです。どこかにで掛けちゃったみたい」
「ノリノリで会話しといてそれかよ!あーもう期待して損した!」
「次は遼さんですね、よーし」
光子郎はふたたび電話をかけた。遼は携帯電話をもっているからそのまま待つのだ。
「もしもし、秋山ですけど」
「遼さん!遼さんですか?僕です、泉光子郎です!今大丈夫ですか?」
「えっ、光子郎くん!?どーしたんだよ、いきなり!」
まさか国際電話でかかってくるとは思わなかったらしい遼は驚いている。
「新種のデジモンがインターネット上で大暴れしているんです!遼さん、近くにパソコンありませんか!?」
「パソコン!?パソコンか......」
「ジュンさんがサポートにまわってるせいでベルフェモンもなかなか全力が出せないみたいなんですよ。遼さんなら!」
「今どこ?」
「僕達はNTTのネットワーク上、ジュンさんはアメリカです!」
「......アメリカ?」
「はい、アメリカです!」
「なんでアメリカ?」
「ジュンさんのサーバ、アメリカにあるんですよ。おかげで太一さんたちも自由に動けてるんですが、そのせいで逃げ出した個体がアメリカにいったみたいで」
「わ、わかった!なんとか探してみるよ!」
「お願いします!」
光子郎はこれさいわいとNTTのインターネットの戦いに参戦する。ベルフェモンは1度離脱してアメリカのサーバに潜入している選ばれし子供たちの加勢にいくようだ。インフェルモンまで進化した個体は今空港に入り込んでいるようで大混乱しているそうである。
遼はとりあえず観光地のど真ん中でどうやってパソコンを使ったらいいか悩み始める。そもそもインターネットにつなぐ方法がわからない。不思議そうな顔をしている両親に説明することにしたようだ。
一方その頃、おばあちゃん家から近所のパソコンでインターネットにつながっている家を探し始めたヤマトとタケルだったが難航していた。パソコンはあってもインターネットにつながってはいなかったり、パソコンがそもそもなかったり。走って走って必死で走り回りながらパソコンはありませんか、インターネット繋がってませんか、貸してください、と口がカラカラになるまで叫び続けて、また空振りだった。
「島根にインターネットなんてあるわけないじゃん!」
たまらず叫んだヤマトの言葉に車が止まってくれた。それはこの村の電気屋さんで、車に乗せてくれたのだがその家ではインターネットがつながっていなかった。少し夫婦喧嘩に巻き込まれそうにはなりつつも、熱血漢の店主がバイクを飛ばして最近インターネットに繋げたという家に連れて行ってくれた。
子供に使わせて大丈夫だろうかと心配する散髪屋の店主に電気屋の店主が熱血漢をみせつけて無理やり納得させてしまった。散髪の順番待ちをしている老夫婦や心配そうな店主の視線を受けながらやりづらさに身を縮こませながらヤマトたちは光子郎たちに連絡を入れたのだった。
カクカクのテレビ電話ながら音声はしっかり聞こえてくる。さいわいディアボロモンが大暴れしているのは東京だけのため地方からインターネットに入ったヤマトたちは切断されずに済んでいた。
「ヤマトー!タケルー!!よかった、来てくれたんだな!」
「敵は究極体に進化しています!」
「えっ、もうか!?」
「しかも倒しきらないと分裂しちゃうの!」
「えええっ!?」
「しかも同じやつが今アメリカに渡って大暴れしているんです!ジュンさん、遼さん、あっちの選ばれし子供たちがすでに対応してるんですがスピードがはやすぎる!応援にいってあげてください!僕達も終わり次第すぐ向かいますから!」
「転送する前に進化しておくんじゃ。やつはなかなかに強敵じゃぞ」
インターネットを見つけようと奔走している間にえらいことになってしまったと冷や汗をかきながらヤマトはうなずく。ふたつのコードをタケルが持ってきてくれたのでデジヴァイスに繋げる。ガブモンとパタモンがダウンロードされたデータを取り込み、一気に進化した。
(アメリカってことは海外だよな......大丈夫かな、お金......)
ヤマトはふと思ったが今は緊急事態である。いざというときは父親にお願いしてお金を払ってもらわなければならないかもしれない。ここの床屋さんのインターネット料金の契約内容まではわからないため、気づかない振りをしたのだった。
「どうしたの、お兄ちゃん」
「いや、なんでもないんだ、なんでも。ははは」
無邪気に聞いてくるタケルにから笑いしながらヤマトはゲンナイさんの誘導でパートナーデジモンたちをアメリカに送り込んだのだった。
ゲンナイの代わりにジュンのモニターが表示される。ジュンはヤマトたちを見るなり嬉しそうに笑った。
「待ってたわ、2人とも!」
「待たせて悪い、ジュンさん。今どんな状況なんだ?」
「アメリカにも選ばれし子供たちっているんだね!」
「少しづつ増えてるらしいわね。マイケル、マリア、データム、サム、ルー、スティーブ......でもみんな究極体にまで進化できないみたいなの。そこまでの危機が起こってないからだともいえるんだけど。今までの連戦でみんな完全体までいけたんだけど、あいつ、究極体になっちゃったのよ。もう歯が立たなくて」
「なるほど、わかった」
「僕達が頑張る番だね!」
「お願いね、ベルフェモンで個体が増えるのは抑えてるんだけど逃げ出さないようにするので手一杯なの」
デジタルゲートがひらく。メタルガルルモンとセラフィモンがログインした。
キリスト教の国だからだろうか、セラフィモンが登場するなりたくさんの画面にうつっている選ばれし子供たちの目が輝く。
セラフィモンは白銀に輝く聖なる鎧に身を包み10枚の黄金色の翼を持つ、熾天使型デジモンだ。天使型デジモンの中ではもっとも位の高い存在で、全ての天使型デジモンを統治している。その素顔や正体は仮面に隠されて垣間見ることはできないが、“神”と呼ばれる「善の存在」に一番近い存在である。セラフィモンは邪悪なる存在との最終決戦に降臨し、全てを浄化すると伝えられている。
三大天使の一体で天使型デジモンの最高位に位置する。デジタルワールドの「神」の「正義」と「秩序」の側面を分け与えられており、最も「神」に近い存在と言われている。鎧の腹部には希望の紋章が刻まれ、10枚の金色の翼を持ち、デジモン文字で「すべてはわれとともに」と書かれた褌を装着している。
「セラフィモン、お願い!」
「ああ、わかった」
強烈な閃光が走る。セラフィモンの周りに特大の球体が複数出現したかと思うとレーザー砲がディアボロモンに向かって放たれた。一瞬にして分裂体は消滅し、オリジナルたるディアボロモンが残される。光の柱をかいくぐり、完全体のデジモンたちを圧倒する。メタルガルルモンは咆哮すると一気に走り抜け、ディアボロモンに必殺技を叩き込んだ。みんなの歓声や口笛があがる。
「はやい!」
くらいはしたものの、ディアボロモンのスピードは圧倒的だった。
「ベルフェモン、頼むぜ!」
ヤマト達が声の方を振り向くと遼の姿があった。ベルフェモンと呼ばれた巨大な究極体がデジタルゲートの前に立ちふさがる。逃げようとしていたディアボロモンは威嚇するように咆哮するが解することはない。拘束している黒い巨大な鎖がアメリカの子供たちのデジモンに襲いかかろうとしていたディアボロモンを吹き飛ばす。
「あとは頼んだよですって」
次々と完全体たちがログアウトしていく。ジュンの仕事は彼らを無事に転送させてやることだ。
「あいつが最後の一体よ」
「よし」
「がんばれー!」
「いけー!」
ジュンは英語を話しながら子供たちに誘導をはじめる。なにいってるんだかさっぱりわからんと思いながら、ヤマトたちは戦いに集中することにしたのだった。