(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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最終話

「ガイアフォース!」

 

ウォーグレイモンがいくつもの球体を出現させ、インフェルモンたちに投げつけていく。ほとんどが逃げてしまったが直撃した個体は圧殺されて消滅した。メタルガルルモンがスピードをいかしてコキュートスブレスを炸裂する。インフェルモンのスピードははやく逃げ遅れた個体が氷漬けになり死ぬだけだ。

 

「ああくそ、どこにいるんだ!スイッチもってるやつは!」

 

「数が多すぎてわかんねーよ!」

 

「光子郎!ジュンさん!ゲンナイさん、わからないか!?」

 

「ダメです、世界中の子供たちからのメールが多すぎてパソコンが処理落ちしちゃってる!」

 

「なにやってんだよ!」

 

「ダメだわ、数が多すぎて!スピードがはやすぎる!」

 

「くそっ!」

 

「数を減らせばいいんだよね!?セラフィモン、お願い!」

 

「そうだ、ヘラクルカブテリモン!君も2人を支援して!」

 

さいわい2体とも広範囲の攻撃技を取得している。鉄格子はビクともしないが攻撃を連射することができた。瞬く間にインフェルモンたちがへっていく。

 

「よし、これなら!」

 

ウォーグレイモンたちはインフェルモンたちを狩りまくった。そしてついに時計を首から下げた個体を見つけるのだ。ウォーグレイモンがドラモンキラーできり殺そうとした瞬間、ものすごいスピードで減りに減ったはずのインフェルモンが吸収されていくではないか。

 

そこにはディアボロモンがいた。

 

「あいつ、また合体しやがった!」

 

「なに考えてるのよ」

 

「無限ジョグレス、もしや狙いはこれか」

 

ゲンナイさんは呟いた。

 

ディアボロモンはインフェルモンの時に受けたダメージが完全に回復してしまったのだ。そしてウォーグレイモンとメタルガルルモンが挟み撃ちにしたとたん、また分裂してインフェルモンたちが逃げていく。

 

「倒せないじゃないか!」

 

「不死身なのか、こいつ!」

 

「いいえ、究極体が分裂はしなくなってるから弱体化はしてるはずなのよ」

 

「そうじゃ、無限ジョグレスは分裂する際にもデータを消費する!ジョグレスする時のスキにダメージを受けると分裂する時のHPが足らなくなって分裂不可能になる!このまま倒していけば!」

 

「でも時間が無いんだよー!」

 

太一の焦りが木霊する。インフェルモン、そしてディアボロモンのスピードはいずれもウォーグレイモンとメタルガルルモンを上回っており回復が追いついてしまう。このままでは消耗戦だ。

 

「止めることが出来ればトドメはさせるんだよ!パワーは上なんだから!」

 

「どうやって!」

 

「知らねーよ!」

 

「くそ!」

 

みんなの焦りが感染するように広がっていく。不味い不味い不味い、このままだとジリ便だ。ジュンも雰囲気に飲まれて焦り始めていた頃。

 

「ウォーグレイモン!」

 

後ろからブレイブシールドに乗りかかったディアボロモンが超至近距離から必殺技を放った。吹き飛ばされたウォーグレイモンに連射される攻撃。

 

「やめろー!」

 

メタルガルルモンが横から突撃してディアボロモンを吹き飛ばし、空中にまう体に必殺技をはなつ。ディアボロモンは即座に二体に分裂してインフェルモンになりかわされてしまった。メタルガルルモンはたたみかけるように攻撃をしかける。インフェルモンはふたたびディアボロモンになると一気に方向転換してメタルガルルモンに襲いかかった。

 

太一はウォーグレイモンを、ヤマトはメタルガルルモンを呼ぶが二体はずるずると球体空間から落ちていき、目を覚まさない。

 

沈黙があたりを支配した。時間の音だけが響いている。発車してしまったピースキーパー。着弾までの時間が表示された。

 

終わってしまった、と誰もが思った。

 

「ジュンさん?」

 

そんな中もくもくと動いている姿がある。あたりまえながら視線がそちらに向く。

 

「止めることさえできれば遠距離攻撃でしとめられるんでしょ?」

 

「まさか空軍基地のセキュリティにハッキングするつもりですか?!」

 

光子郎の言葉にジュンは首をふる。

 

「メールみてないのね?ちがうわよ、まだ諦めてない人たちが世界中にいるの」

 

「えっ」

 

ジュンは自分のモニターに画面を表示させた。

 

「ホワイトハッカーがいるのよ。ロスのお友達のお兄さん、空軍基地のセキュリティシステムを最短で攻略して優勝したことがあるの。知らなかった?向こうだと脆弱性を見つけ出すために大会を行って懸賞金かける文化があるからね。諦めちゃダメよ、まだ爆発してないんだから!!」

 

突然球体空間全体が重くなった。どうやら海の向こうのどこかの街で名前もしらないハッカーが球体空間の権限を一時的にアメリカ空軍から奪い取り、ディアボロモンにハッキングをしかけたのだ。

 

光子郎は目がかがやいた。

 

「僕のところに今のやつのアドレスが届きました!これならいけるよ、ウォーグレイモン、メタルガルルモン!」

 

傍らにおいてあったデジヴァイスから光が放たれ、モニターからウォーグレイモン、メタルガルルモンに光がさした。ジュンのところからも、太一、ヤマト、タケル、空、アメリカの選ばれし子供たち。世界中の成り行きを見守っていた子供たちのパソコンの画面が光だし、二体に降り注いだ。

 

ディアボロモンが動き出す。だが先ほどよりにぶい。どうやら処理落ちしているようだ。頭上に砂時計がういていた。

 

「よし、これなら!」

 

光子郎は自分の管理する交流サイトやメールフォルダに届いていた全てのメールをディアボロモンに送り付ける。

 

2体が光の球体につつまれ、ひとつになるところ目掛けて襲いかかろうとしたその刹那、ディアボロモンはピタリと動きを止めた。動こうと足掻くがさらに処理落ちが激しくなりうごけないのだ。

 

そのすきをつき、メタルガルルモンとウォーグレイモンの2体が融合を開始する。

 

それはやがてデジタルクライシス時、ウィルスバスターズであるウォーグレイモンとメタルガルルモンが、善と平和を望む人々の強い意志と思いと願いによって融合し誕生したという伝説となる。

 

 

ロイヤルナイツの一角となる超究極体の聖騎士デジモン誕生の瞬間だった。

 

左腕にはウォーグレイモンの形をした剣『グレイソード』と肩の盾『ブレイブシールド』が、右腕にはメタルガルルモンの形をした大砲『ガルルキャノン』とミサイルが装備され、その意匠を強く残している。

 

背中のマントは、敵の攻撃を避ける時や飛行の際に自動的に装備される。二体のデジモンの特徴を合わせ持ち、優れたトータルバランスを誇る、如何なる状況でも遺憾なくその力を発揮できるハイレベルのオールラウンダーである。

 

闇との戦いに終止符を打つ“最後”の聖騎士でもある(ギリシャ文字の「Ω」はギリシャ文字において最後の文字であるのが由縁)。

 

オメガモンと呼ばれることになるデジモンが降臨した。

 

 

 

 

 

 

「ウォーグレイモンと......」

 

「メタルガルルモンが......」

 

「合体した......」

 

誰もが見入っていた。

 

「馬鹿な......聞いたことがないぞ......ジョグレスは古代種しかできないはずじゃ......あるいは、はるか昔、共通の祖先を持つもの同士でなければ......2体とも幼年期すら違うというのに......」

 

「構成データの中にあるデジゲノムが同じなんじゃないかしら」

 

ジュンはつぶやいた。

 

太一のデジヴァイスとヤマトのデジヴァイスには、まさにジョイントプログレス、という英単語が表示されている、とジュンは指摘する。ジュンのパソコンの中には太一のデジヴァイスのプログラムをそのままコピーしたものが存在しているのだ。

 

太一のデジヴァイスが反応すれば、ジュンのノートパソコンのプログラムも何らかのアップデートがなされる。ジュンのパソコンのサーバを使ってウォーグレイモンはインターネットに入り込んでいるのだから尚更だ。

 

それはまさにウォーグレイモンとメタルガルルモンのデジゲノム、遺伝子の記憶が奇跡によって呼び覚まされ、融合して進化したことを示していた。

 

「たしかに記録には残ってないかもしれないけど、ムゲンドラモンやキメラモンを作りあげたメタルエンパイア産のデジモンを祖先にもつなら、ありえるんじゃないかしら」

 

かつてメタルエンパイアにより合成デジモンがつくられ、その個体を共通の祖先がいくつにも枝分かれした先に太一のアグモンとヤマトのガブモンがいたとしたら。

 

ジョイントプログレスが共通の因子と共通のルーツをもつデジモン同士でのみ可能だとするなら、そうとしか考えられない。

 

そうでなければ融合後に拒絶反応を起こしてバグが発生する。2つのデジコアに存在するデジゲノムがすべて新しいデジゲノムとして1つに統合され、ウォーグレイモンでもメタルガルルモンでもない全く新しい種のデジモンを作り出したとすれば。

 

「奇跡じゃ......」

 

ゲンナイさんたちの目の前でディアボロモンのように今まで負っていた蓄積ダメージが解消されたオメガモンが飛翔する。

 

「いけー!」

 

太一が。

 

「間に合えー!」

 

ヤマトが。

 

叫んだ。

 

そして今なお処理落ちによりスピードを完全に殺されているディアボロモン目掛けて、巨大な剣を振りかざす。

 

オメガモンの攻撃はまさに圧巻だった。オメガソードが球体空間全体をなぎはらい、ディアボロモンを消滅させていく。そして、起爆スイッチ諸共完全に消滅させたのだった。

 

ばしゃあああん、と凄まじい音と衝撃が窓の向こうから聞こえてくる。太一たちは弾かれたように顔を上げてベランダ目がけて突進した。

 

「なんだあ!?」

 

これ以上ないくらいの水しぶきが鮮やかに光って見える。蹴散らかされた水が爆ぜる。雨のしぶきが霧のように飛んでいき、虹を描く。その向こう側にみたこともない大きさのロケットがあって、ゆっくりとゆっくりとお台場の海に沈んでいくのが見えた。

 

誰もが息を飲んで見守っていた。

 

しばらくして、起爆しなかったことを確認して、空はその場に座り込んでしまう。大輔も空にしがみついたまま固まっている。太一はじっとなにも見えなくなったロケットを見つめていた。光子郎がかろうじてパソコンをみた。

 

モニターの向こうでは力を使い果たしたアグモンとガブモンが疲れた顔をしながら笑っている。

 

「間に合ったよ、太一!」

 

「これで大丈夫だ!」

 

「よくやってくれた!!よくやったぞ、アグモン!ガブモン!ピースキーパーが起爆する前にあのデジモンを倒すことに成功したわい!」

 

まるまる10分ほどたっただろうか、ようやく画面の向こうの戦いが現実世界とリンクしていたのだと理解が追いついた太一は震えがとまらなくなる。

 

「や、やったー」

 

つられて光子郎がいう。誰もが今更ながらに怖くなってきたのだ。

 

「だ、大丈夫ですよね?爆発、しないですよね?」

 

ゲンナイはうなずく。あのウォーグレイモンとメタルガルルモンの融合したデジモンがもっていた剣には全てのプログラムの構成データを初期化して無にしてしまう効果があり、あのミサイルに搭載されていた機械をただのゴミクズにしたらしい。

 

ようやく書斎に歓声があがった、のだが。

 

「どうしよう、出られないよ!」

 

「どうして!?」

 

アグモンとガブモンが叫ぶ。球体空間の中に閉じ込められているのだが機械内部が正常化したはずなのに鉄格子があかないのだ。

 

「ダメです!」

 

「うーむ、また別のセキュリティシステムが起動したようだ」

 

空間が真っ赤に染まり、アラームがなりはじめる。

 

「今更セキュリティシステム発動するなよ、おせーよっ!」

 

太一は叫んだ。

 

「アメリカ空軍からしたら悪質なハッカーだからね、アタシたち!」

 

「そんなあ!」

 

ジュンたちは必死にデジタルゲートをあけようとするがセキュリティシステムからすれば核兵器を発射させようとしたサイバーテロの関係者だ。誤解は解けるかもしれないがまだデジモンの存在がこんな形でバレるのはまずい、非常にまずい。ゲンナイたちも必死で協力するがプログラミング大会の後新たに構築されたセキュリティシステムは強固だ。

 

「だーくそー!世界を救ってやったのになんだよそれー!」

 

太一はさけぶ。気持ちはよくわかるが一気に現実が襲い掛かってきた感じだった。

 

もうダメかと本気でジュンも諦めかけたとき。

 

「このゲート使ってよ!」

 

それは今まで太一たちの活躍を応援していたうちの一人、アメリカ人の少年の声だった。

 

「その声はウォレスくん!」

 

真っ先に反応したのはジュンだった。忘れもしない。父親が取材のために長期滞在していたアメリカのフィラデルフィアの農村部において、お世話になったお家にいた男の子だ。そしてサマーメモリーズの事件の被害者のひとりでもある。

 

「古いゲートだけどかえっていいかもね!」

 

ウインクするウォレスのサーバからデジタルゲートが開かれる。日本にあるサーバに逃げるより、外に出た方がはるかにいい。

 

「どうやってやったの!?」

 

アメリカ空軍の強固なセキュリティシステムをとっぱし、独自にデジタルゲートをつくるなんてとんでもない技術である。ハッキングはまた別の話だ。

 

「孫のお願いだからね、最初で最後よ」

 

「ケイトさん!」

 

ウォレスの横には父親が取材していたアメリカで最初にいたとされる女性プログラマーがいた。

 

「だ、大丈夫なのかあ?」

 

さすがに太一は不安そうだ。

 

「大丈夫よ、ゴーグルボーイ。先輩のいうことは聞くものだわ」

 

「先輩い?」

 

「ええ、そうよ」

 

「まさか......まさか、そんなことが......あなたは、あなたはマクナルティ?ミス、マクナルティですか?」

 

「ゲンナイさん、マクナルティさんて?」

 

「ケイト・マクナルティ、予言の書にかかれていた先代の選ばれし子供の1人じゃ」

 

太一たちは目が点になる。ケイトと呼ばれた老女は笑っていた。

 

そして安全が確認できたとしてアグモンとガブモンはただちにデジタルゲートをくぐるのだ。

 

「まさか、またゴーグルボーイと会うことが出来るなんて思わなかったわ」

 

「え?なんのこと?おばあちゃん」

 

ウォレスの言葉にケイトはなんにもないわとただただ笑っているだけだ。

 

「ねえ、あなたのパートナーは八神っていわない?」

 

アグモンはキョトンとしたあとうなずいた。

 

「うん、そうだよ!八神太一っていうんだ」

 

「そうなの」

 

ケイトはどこか懐かしそうに微笑んだのだった。

 

 

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