(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第79話

主税は後悔がにじみでている。ぽつりぽつりと語り始めた。

 

伊織の父親にして主税の一人息子である浩樹は、親友だった及川さんとある日テレビの向こうでデジタルモンスターをみた。主税たちは信じなかった。夢だから忘れろといった。

 

それはかつて同じ道場で切磋琢磨した友人が1946年、GHQの統治下に置かれた貧しい日本において突然行方不明になったのだ。しばらくして帰還した彼はアメリカに対する感情が複雑な周りを気にせずアメリカに行きたいといいだした。主税はデジタルモンスターとデジタルワールド、そして繰り広げられた大冒険を聞かされたが信じられなかった。あたりまえだ。太平洋戦争により周りの人間がたくさん死に、主税自身たくさん酷い目にあい、たくさん悲劇を見てきて終戦を迎えてからたった1年である。

 

あまりにも現実離れした放言だった。

 

彼は頑として主張を曲げなかった。やがて彼は日本人が海外に行けるようになると周囲の反対を押し切りアメリカにいってしまい、さらに海外に移住してしまったのだ。

 

おかしくなったんだろう、としか思えなかった。

 

主税が頭を悩ませたのは、2人がデジタルワールドやデジタルモンスターという放言をいい始めたからである。しかも大人になっでもずっと探していた。

 

問い詰めたら絶縁したはずの友人と頻繁にメールをしていることがわかった。息子と友達が友人の妄想をまに受けて、探してあげようとまでしていた。主税は絶句するしかない。

 

及川さんは日本とアメリカが共同で研究しているヒトゲノムについてデジタル面から活動するために出向しているプログラマーになっていた。

 

息子はSPとして要人の警護をしながら海外のあちこちに飛び回る警察官となっていた。

 

目を覚ませ、まともな人間になれ、と叱ったあの日から2人はまともになったと思っていたが、主税の前ではなにも語らないようになっていただけだったのだ。裏切られたという思いが先行して主税は怒りのあまり及川さんに二度とウチにくるなと言い渡した。息子には友人に連絡をとったら絶縁して伊織は自分たちがひきとって育てると言い渡した。

 

その日から少なくても主税の周りでは不愉快な単語が聞こえてくることは二度となかった。

 

「......私は、わたしは、なんてことを......」

 

息子の唯一の理解者だった親友や友人たちとの友好関係を禁止して、デジタルワールドやデジタルモンスターについて二度と口にするなといっておきながら。息子が死んだ一年後に他ならぬ自分がデジタルモンスターを目撃することになるとは思わなかった。

 

しかも友人は言いがかりともいえる喧嘩でもデジタルモンスターにいち早く気づいて、主税をかばって襲われ、目の前で忽然と姿を消してしまったのだ。

 

そして、伊織の友人である井ノ上京がデジモンと一緒にデジモンと戦い、伊織と主税を助けてくれた。目の前にはノートパソコンごしにデジタルワールドについて説明してくれる存在がある。

 

なにもかもが友人が夢中で話してくれた冒険譚そのものだったのだ。

 

「......だからおじいちゃん、怒ってたんですね」

 

「......そうじゃ。全ては私が悪かった......みんな、嘘をいうような人間じゃなかったのに信じてやれなかった......全ては私の弱さ......そのものだ」

 

項垂れる主税に声をかけたのはゲンナイさんだった。

 

「1946年、現実世界はそのような環境じゃったのか......いやはや興味深い話を聞かせてくれてありがとうございます。ワシはそれよりはるか前に生まれたからのう......先代の子供たちはそんな日々を過ごしたのか」

 

ゲンナイさんの言葉に反応したのは京だった。

 

「先代?先代って、ジュンさん達より前ってことですか?」

 

「そうじゃ。デジタルワールドが世界で最初に危機に陥ったとき、助けてくれた最初の子供たち、5人の子供たちがいたんじゃが、おそらくは」

 

「おじいちゃんのお友達が!?」

 

「すごーい!素敵!すごい偶然ですね、ゲンナイさん!」

 

「......だが、あいつは攫われてしまった......」

 

「そうじゃ、それが一番の問題じゃ」

 

主税とゲンナイさんの言葉に京と伊織はハッとなるのだ。

 

「あの白いデジタル時計は太一たちの冒険で初めて作られたはずのデジヴァイスなんじゃ。なぜ先代の子供たちがもっておるのか......」

 

「そんなばかな、あいつは大切な旅の思い出だといつも大切に持っていたはずだ」

 

「なんじゃと?それは一体......?うーむ、わからん。わからんが、それが事実だとするならまずい、非常にまずい。事態は思った以上に深刻だ。時間が無いぞ!」

 

ゲンナイさんは主税と伊織に今起きている選ばれし子供たちに迫り来る危機について説明する。あのデジヴァイスを頼りに敵は次々に選ばれし子供たちを誘拐しているのだと。先代の子供たちも事情はわからないがデジヴァイスをもっているのなら誘拐されたに違いない。

 

「今、先代の子供たちのパートナーデジモンは成長し、アポカリモンという巨悪を封印しておるんじゃ。先代の子供たちが若返り、彼らまで若返ってしまうとアポカリモンの封印が解かれてしまう!」

 

「アポカリモン?それはどれくらいやばいやつなんですか?」

 

「去年の異常気象や世界中で起きていた結晶化現象、そしてお台場の爆弾事件の黒幕といっていい存在じゃ」

 

「えええええっ!?」

 

「た、大変じゃないですか!」

 

「結晶化現象......!」

 

主税はさあっと血の気がひくのだ。息子の遺骨をもちかえるために予約していた飛行機が謎の結晶化現象に見舞われてロンドン空港から飛べなかったのは記憶に新しいからだ。

 

そいつの封印がとかれる?友人が誘拐されたせいで?自分を庇って闇に飲まれたせいで?主税は生きた心地がしなかった。

 

「時は一刻を争う。火田主税さん、あなたのお孫さんの力を貸してほしい」

 

ゲンナイさんは事情を説明するのだ。主税の隣で話を聞いていた伊織は目を瞬かせた。お台場の爆弾事件について、大輔を送り出したこと、ネット越しに応援していたことを思い出したからだ。主税が驚くくらい伊織はしっかりとした顔つきになっていた。

 

「ぼく、いきます」

 

「伊織......」

 

「行かせてください、おじいちゃん。僕は行かなきゃいけないです。お父さんがずっと探していたデジタルワールドを助けるためにも、おじいちゃんが及川さんと仲直りするためにも。僕が、行かなきゃ」

 

息子が死んでから命に変えても伊織を立派な大人にしなければならないと決意していた主税は深い深いため息をついた。思い詰めすぎていて目が曇っていたのかもしれないが、今の伊織はSPになると告げた息子と重なるくらいいい顔をしているではないか。まだ小学1年生だというのにだ。

 

「わかった。行ってきなさい」

 

主税の言葉に伊織は顔が明るくなった。

 

「はい!」

 

「かならず、帰ってきなさい」

 

「もちろんです!」

 

伊織はゲンナイからデジヴァイスを渡される。そして、ディーターミナルから欠伸をしたデジモンが飛び出してきた。

 

「やーっと終わったがや、伊織?むんなの話は長すぎていかん、眠くて眠くてたまらん」

 

緊迫した空気がどこか穏やかな間の抜けたものとなる。思っていたのと違うと伊織はちょっと戸惑った。

 

「オレはアルマジモン。よろしくだがや、伊織」

 

にっこりわらったアルマジモンに伊織はうなずいた。

 

「むんな、固い固い、リラックスしてちょう。思い詰めすぎると大変なことになるんだでこれくりゃーでちょうどいいんですわ」

 

京がディーターミナルのデジモンアナライザーを開いた。

 

アルマジモンら硬い甲殻で体を覆われた哺乳類型デジモン。のん気で愛嬌のある性格だが、お調子者なところがたまに傷である。アルマジモンはホークモン等と同じように古代種族の末裔であるため、特殊なアーマー進化をすることができる。得意技は長く伸びた前足の爪で敵を攻撃する『スクラッチビート』。必殺技は体を丸めて敵に突進する『ローリングストーン』。

 

「おー、オレよりオレのこと知っとるなんて、すげーカラクリだがや」

 

「アルマジモン、これ、カラクリじゃなくてパソコンていうんですよ?」

 

「パソコン?」

 

「はい」

 

「ふうーん」

 

「あはは、ホークモンみたいに昔のデジモンだから新しいものはわかんないみたいね」

 

「そっか......古代種って恐竜みたいなものなんですね」

 

「恐竜?恐竜てグレイモンのことけ?やだなあ、グレイモンの方が新人だってむんないっとったがや」

 

「?」

 

「えー、グレイモンより前からいるとかアノマロカリスじゃない」

 

「アノマロカリモンなら見とるけんど」

 

「どんだけ昔なの、古代種って!?」

 

京とアルマジモンのやり取りに思わず伊織たちは笑ってしまったのだった。

 

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