(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第82話

大輔は大人たちに連れられて、ペンシルベニア駅の切符売り場でフィラデルフィア行きのチケットを購入した。トレントンという駅まで行き、そこから地下鉄に乗り換え、玄関口30丁目駅を目指すという。

 

ウォレスがいなくなったということで喧嘩別れしていたウォレスの母親は実の祖母と一時的に仲直りすることを選んだようだ。祖母が30丁目駅に迎えに行くというメールをいつの間にか紛失しているためウォレスがくすねたらしい母親の携帯電話に送ったという。大輔もさっきからディーターミナルで送っているのだがウォレスから反応はない。心配ばかりが募る。

 

「だいしけ、泣くなよう。オレまで悲しくなるよ」

 

「泣いてないよ」

 

「嘘だあ、泣いてる」

 

「だから泣いてないって」

 

「ほんとに?」

 

「ほんとだよ」

 

「ならいいけどさあ......。だいしけのお姉ちゃんたちを助けるためにも、泣いてるだけじゃなにも出来ないのはだいしけが1番よく知ってるだろ?な?元気だしてこー」

 

「ん」

 

またじわじわと滲んできていた涙を拭いながら大輔は何度も頷いたのだった。京たちはゲンナイさんの隠れ家で待機していて、パスポートで入国している大輔はウェンディモンが向かっていると思われるサマーメモリーズの場所までジュンのパソコンを運ぶ大事な任務を遂行中だった。

 

今、先代の選ばれし子供たちが誰なのか偶然にも2人まで判明したため、ケイト・マクナルティさんもデジヴァイスをもっていたかどうか。四聖獣たちの力が弱まってきていないか。京と伊織はゲンナイさんの手伝いをしながら調べ物をしているのだ。

 

新しいデジヴァイスをしっかりと握りしめ、大輔は出会ったばかりなのに励ましてくれるパートナーデジモンと共に地下鉄の隅っこの席でこそこそ内緒話をしていた。隣の父親が携帯電話を誤魔化すためのアイテムとして貸してくれているから気にせずおしゃべりができる。

 

「なー、だいしけ。チョコモンてどんなデジモンだったんだ?チョコモンとグミモンが生まれて初めてあったデジモンだったんだよね?」

 

興味津々で聞いてくるチビモンを抱っこしたまま、大輔は話し始めた。

 

「お父さんとお母さんとお姉ちゃんとケイトおばあちゃんのところに行ったんだ。お父さんが本を書きたいからって、ケイトおばあちゃんの話を聞きに」

 

「うん」

 

「あそこのおじさんとおばさんとウォレスはまだケイトおばあちゃんと一緒に住んでて、僕とお姉ちゃんはウォレスとお父さんたちの仕事が終わるまでずっと遊んでたんた。黄色い花畑、サマーメモリーズで」

 

「どんなとこ?」

 

「えーっと、黄色い花がたっくさん咲いてるんだ。はじまりの街と同じくらい、すんごい広いんだ」

 

「そんなに!?」

 

「うん。それで、夜になって、パソコンからデジタマが出てきたんだ。そこからデジモンが2匹生まれたんだよ」

 

「それがグミモンとチョコモン?」

 

「うん。グミモンは興味津々で好奇心旺盛ですっごい元気で、チョコモンは優しいんだけど怖いのが好きじゃないからすぐ泣いちゃうんだ」

 

「そっかあ」

 

「お姉ちゃんはおばさんに料理教えてもらうっていってて、僕だけウォレスと花畑に遊びにいったらチョコモンとグミモンが生まれたってウォレスに教えてもらったんだよ」

 

「それで遊んだの?」

 

「うん、すっごい遊んだ。かくれんぼ、おにごっこ、だるまさんがころんだ、お父さんがウォレスに英語で教えてくれたからずーっと遊んでたんだ」

 

楽しそうにおしゃべりする大輔にチビモンは笑った。

 

「オレ知ってる!かくれんぼもおにごっこもだるまさんがころんだも!」

 

「ほんとに?チビモン知ってるんだ!すごい」

 

「えへへー、チョコモンを元に戻せたらみんなで一緒に遊ぼうな!」

 

「うん!」

 

微笑ましい会話のさなか、急にあたりが暗くなった。地下鉄だからトンネルに入ったということはない。大輔とチビモンは顔を上げた。

 

「おとーさ......」

 

そして固まるのだ。隣にいたはずの父親がいない。

 

「おとうさん!?」

 

立ち上がって見渡してみると父親だけではない。母親、ウォレスの両親、ほかの乗客たちがいない。一人もいない。ずっと暗闇が続いていく中で大輔はチビモンをかかえて一目散に走り出した。

 

「ここも!」

 

力いっぱい扉をひいて車両をかけぬける。

 

「ここもいない!」

 

チビモンは大輔にしがみつきながら突然いなくなってしまった人間たちに困惑する。

 

「誰か......だれか!」

 

大輔は1番前の車両に入った。黒い風が窓から逃げていくのがみえた。大輔は追いかけていくがその風は到着した駅に入り込み、見えなくなってしまう。大輔は真っ青になった。運転席にも誰もいないのだ。

 

「今度はなにっ!?」

 

運転席側から爆発音が鳴り響き、大輔たちはたまらずうしろにさがった。電気系統のトラブルが発生したらしい。煙がどんどん大輔たちに流れ込んでくる。奥の方から焦げ臭い匂いがしてきたではないか。

 

しかも真っ暗だ。

 

「ウェンディモンのせいだよ、だいしけ!あいつ、今度はみんな消しちゃったんだ!オレたちの邪魔してる!」

 

「えええっ!?そんな、普通の人々たちまで!?」

 

大輔はあわてて一番後ろの車両に移動して窓という窓をあける。そしてジュンのパソコンを広げ、ゲンナイさんに助けを求める。大輔たちの状況を把握したゲンナイさんは息を呑む。

 

「いかん、誰もいない!ウェンディモンの力がさらに増しておる!」

 

「うわああ、大変、大変です、ゲンナイさん!このままじゃ曲がれなくて脱線するわ!」

 

「そんな、大輔さん!チビモン!」

 

「このままじゃ駅の人も大変なことになっちゃうよ、ゲンナイさん!」

 

「よし、次の駅で先回りじゃ!」

 

ゲンナイさんがデジタルゲートを構築し、巨大な電光掲示板からアルマジモンと伊織がでてくる。

 

「アルマジモン、お願いします」

 

「よっしゃー!まかして!」

 

アルマジモンの体が光り始める。ディーターミナルから知識のデジメンタルがデジヴァイスに転送され、アルマジモンの構成データが再構築される。そこにはアーマー進化した昆虫型デジモンがいた。

 

「ゴールドラッシュ!」

 

ディグモンはすべてのドリルをミサイルのように発射する。ディグモンは“土”の属性を持っており、このデジメンタルを身に付けたものは大地を操る力を持つ。その特異な形状からみてもわかるように、地中での戦いにおいてはどのデジモンにも負けることはない。得意技は回転するドリルで地面に衝撃を与え、地割れを起こす「ビッグクラック」。必殺技は、鼻先と両手のドリルを高速回転させて、ドリルによる一斉攻撃をする「ゴールドラッシュ」。

 

そして、足場が瞬く間に構築された。

 

「チビモン、出番だで!」

 

「うん!」

 

「えっ、どうするの、チビモン」

 

「まかせて!みんな助けてあげる!」

 

大輔は訳の分からないままデジヴァイスをパソコンにかざした。チビモンが勇気のデジメンタルによりアーマー進化する。

 

勇気のデジメンタルのパワーによって進化したアーマー体の竜人型デジモンがそこにいた。“勇気のデジメンタル”は“炎”の属性を持っており、このデジメンタルを身に付けたものは燃え上がる炎のように格闘能力が上がり、強烈なパワーで敵のデジモンに攻撃をすることができるようになる。得意技は炎と化した拳を敵にたたきこむ『ナックルファイア』。必殺技は、全身を炎のロケットに変え、敵を粉砕する『ファイアロケット』。

 

フレイドラモンはデジタルゲートをくぐるとディグモンの作りあげた足場にたつと制御不能の地下鉄目掛けて必殺技を叩き込んだ。車輪を破壊し、無理やり車体をゆがめ、破壊していく。大輔ははるか奥から聞こえてくる轟音に訳の分からないまま目を白黒にしていた。

 

すさまじい衝撃が大輔を襲う。車体が火花を散らしながら緊急停止したのだった。

 

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