(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
太一たちが8月1日の初めてデジタルワールドを冒険した日をメモリアル記念日として集まっている。これは選ばれし子供達の中で共通認識となっていた。それなら賢たちは1年前の大晦日の冒険を記念日とするべきなのだろうが、あいにくエスカレーターで進学する予定の遼はともかく治もジュンも外部受験だったり高校入試だったりで 試験日が1月に迫っていた。
しかも選ばれし子供達にとってのデジモンに関わる事件があった日はことごとくなんらかの事件が新たに発生している。2000年最後の大晦日は2000年問題が終息する日でもあり、経験則からなにかあるのではないかという予感めいた確信があった。だからのんきに集まりたくない。
それでも太一たちみたいに集まりたいと遼はジュンと治の予定を聞きまくり、8月中で塾や講習会が終わったあとの条件付きで集まることになった。賢は気兼ねなくアイマート前でアイスを食べたり海に遊びにいったりしている大輔たちがうらやましかったが、彼らは選ばれし子供達になる前からの友達だ。たまたまみんな小学生なだけで。そういう意味では来年からは大輔たちみたいにもっと気軽に集まれるはずだった。
集まるとはいってもサマーキャンプにいった先でデジタルワールドに呼ばれた太一たちと違って、遼たちはゲンナイさんの隠れ家が初めてあった場所だから特定の場所はない。過去世界はまだホメオスタシスやエージェントがミレニアモンの改変した7万年分の歴史を調べているために出入りできない。そもそもプログラムでいうデバック空間にはいられてはデジタルワールド側も困るだろうことはよくわかっていた。
どこで集まろうか悩んでいた彼らに話題を提供したのは賢だった。
「兄さん、兄さん。スティングモンからメールが来たよ。今度、つよいデジモンを決める大会があるから、遊びに来て欲しいんだって。遼さんがジュンさんに大丈夫な日を聞いてくれてるからいこうよ!」
スティングモンもまたポキュパモンのようにファイル島の守護デジモンをしていることは治も知っている。デジタルゲートの宛先はファイル島のビートランドである。
ビートランドは太一たちが行かなかった場所だ。なにせ連れて行ってくれるはずのシードラモンの尻尾に焚き火の薪を事故とはいえ突き刺し、怒らせてしまったのである。
唯一の案内人と友達になれなかったために太一たちがその場所を知ったのは、スティングモンが守護デジモンをするようゲンナイさんから言われたときが最初だった。太一が焚き火に竹をいれたせいだとアグモンは呟いて、新しい選ばれし子供達に知られたくなかった太一はアグモンを黙らせるのに忙しかったのはまた別の話だ。
「わかった、わかった。ちょっと調べるから待ってくれ」
「うん」
予定がびっちり書き込まれている手帳を広げた治は、空いてる日は空白の日だと賢に見せた。
「これだけしかないんだね、お休み。兄さん大丈夫?」
「ダブルスクールにサッカーにデジタルワールドの手伝いだからな。でもどれも楽しいからいいんだよ。賢だってダブルスクールが塾だけになっただけで、あとは似たようなものだろ」
「言われてみればそうかもしれないけど」
「なにもない日の方が落ち着かなくないか?」
「そうかも」
「だろう」
「じゃあ、空いてる日メールするよ」
「ああ、よろしく。僕はそろそろ塾にいってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
「賢ちゃん、留守番よろしくね。それとスティングモンさんによろしくいっておいてね」
「はーい」
賢は手をふって母親と治を送り出した。
治は大手の中学受験塾と個別塾の両方を利用しているのだが、ひき逃げにあってからというもの母親がすべて送迎していた。治はいいかげんうんざりした様子だったが目の前で交通事故を目撃した賢からすれば1人で夜遅くまで塾に行く方が心配だから留守番くらい構わないのだった。
そして実は8月1日に治と賢が母親の運転する車から忽然と姿を消してしまったものだから、デジモンやデジタルワールドのことはすでにバレていた。母親から父親に伝わり、ゲンナイさんにお願いして話をしてもらった。
さいわい父親はヒトゲノムの研究に技術者として携わるプログラマーで政府機関に出向している人間だったから母親よりは受け入れが早かった。きっとデジタルワールドにいく日と時間を教えておけば送り出してくれるだろう。
賢はさっそくディーターミナルで遼とジュンにメールをするのだった。
「あれ?」
やけに早いなと思ってメールを開くとそこには父親の同僚である及川さんからのメールだった。彼は賢たちが優秀な成績を残した小中プログラミング大会の関係者でもあったからもともと連絡先は知っていた。父親と連絡が取れない時は中継をよく母親が頼んでいたからだ。
まさかずっとデジタルワールドやデジモンを探している人だとは思わなかった。伊織の祖父と和解したあと、デジタルワールドに案内したと大輔が一生懸命話していた。賢はジュンからそう聞いていたのだ。
「えっ」
それは衝撃の内容だった。及川さんたちが研究しているはヒトゲノムの研究資料が外部から不正取得された形跡があったらしい。しかもサーバがデジタルワールドのアドレス。どういうことか教えて欲しいと書いてある。賢はそのアドレスに見覚えがあった。気づいてしまったその瞬間に悪寒がかけぬけていく。
「過去のデジタルワールドからだ··········」
忘れもしない、ミレニアモンを倒すための冒険の舞台である。賢は冷や汗がとまらない。すぐゲンナイさんにメールをすることにしたのだった。
結局デジタルワールド側と及川さん、賢の父親の話し合いになってしまい、賢は途中からメールをやめたが嫌な予感しかしない。
スティングモンからのメール、添付されているデジタルゲートを念入りに確認した。一応ゲンナイさんにもみてもらい、スティングモンに直接あって返事をした。さいわいメールは本物だった。
数日後、久しぶりに賢はみんなと再会することになる。
デジタルゲートの先は竜の目の湖手前の森の中、いわゆる迷わずの森。治たちがトコモンだったころ、ずっと住んでいた場所だった。
竜の目の湖にてシードラモンに乗せてもらい、向こう側まで連れて行ってもらう。
「ありがとう、シードラモン。これはお礼よ」
極上肉のデータをさしだすとシードラモンはくわえたまま向こう側に帰っていった。
鬱蒼とした木々を抜ける。大きな大きな看板が現れた。
「なんだなんだ、英語?賢よめるかー?」
「ええと、ビートランド?」
「あー、なるほど」
「おい6年生」
「英語は中学からやるんだ、まだ出来なくてもいいだろー」
「あはは。さすがになんとかランドは読めたわよね?」
「そりゃわかるってジュンさん。さすがにそれは僕に失礼だろー」
ネオンに照らされている大きな看板には、大きな拳マークがついている。なんだかとっても強そうな筋肉ムキムキの男の人の腕みたいなマークだ。
おもちゃの街くらい大きなエリアである。大きな建物がたくさんあって、どこからも明かりが漏れている。
スティングモンがまつ会場よこから声がする。顔を見合わせた遼たちはとりあえずのぞいてみよう、ということで、一番近くにあった建物に並んでいる樽によじ登った
賢は、よいしょっとのぞいてみた。
「だーから、だめだっていってるだろ!こんなちっちゃいお前が行けるほどこのあたりは安全じゃねーんだ」
「そうそう、だからおとなしく迎えが来るのを待ってな」
「なんだよ、なんだよ。クワガーモンたちの分からず屋!だから探しにいくんじゃないか!」
「俺たちの攻撃であっさりふっとばされててよく言うぜ」
「うぐぐぐぐ」
「ねえ、どうしてもだめ?」
「だーめだ、だめだ。せめて成熟期になるまで鍛え上げろ。あのレオモンが強い強いいうから呼んだら、まさかこんなちっちゃいとは思わなかったんだよ。せめてお前がもっと大きかったらいいけどな」
「オレだって好きでまだ進化できないわけじゃないんだよーだ!」
「そりゃこないだ幼年期から進化したばかりだもんな」
「あたりまえすぎる」
「気合いが足りないんだよ、気合いが!」
「ここから出たけりゃ強くなれ!」
「なにいってんだよー!それどころじゃないのに!」
賢と治は顔を見合わせた。樽から飛び降りて、入り口に向かう。どうやらここにいるクワガーモンたちは言葉が通じるようだ。
「あ」
「げ」
「ばれた」
「何見てるのさ」
クワガーモンたちに食ってかかっているデジモンがこちらにむかってきた。
「よお、選ばれし子供達じゃねーか。話は聞いてるぜ。スティングモンならあっちの会場だ」
「なんの騒ぎなの?」
「実はこいつが大会に参加させろってうるさくてな」
「こいつってなんだよ!オレにはモノドラモンて名前があるんだぞ!」
「あー、はいはい。成長期別の大会にしろってさっきから言ってるのに聞きやしねえ」
クワガーモン曰く、はじまりの街に大会開催のチラシを配っていたらモノドラモンが参加したいとやってきたらしい。
最初にあった時には襲ってきたと勘違いしてそりゃもう大パニックだったとクワガーモンは笑う。
モノドラモンはいってる傍から物申すのだ。成長期になったばかりでいざ強さを求めて旅に出たはいいが、クワガーモンのコロニーに迷い込み襲われた経験があるのだと。
ビートランドのクワガーモンは知性があるから一緒にするなと周りは笑う。ぐう、とモノドラモンは言葉につまる。
「ここから出してもらえないのに言ってることが無茶苦茶なんだ!」
「ここらへんって成熟期のデジモンが多いからお迎えがくるまで待てっていってんだよ」
「つれてってくれればいいのにさ、けちー!」
「だーれがけちだ、自分の身も自分で守れねえやつの言葉なんざ誰も耳を貸さねえよ」
クワガーモンたちは笑う。拾われた場所が悪かったなと。ここは強さを求めるデジモンたちが集まる場所であり、ファイル島中から力自慢が集まるそうなのだ。ここはビートランド、虫型デジモンたちが運営する闘技場を運営しているエリアだという。
モノドラモンは成長期だ。その時点で危ないからここから出るな、といわれてしまってどこにも行けなくて困っているという。成長期の時点でバカにされているのが見え見えで、モノドラモンはすっかり不機嫌だ。
「脳味噌まで筋肉なんてふざけてるよな、ほんと。やってらんないよ」
ぶう、と頬を膨らませる。
「でも、お迎え来てくれたからいいだろ?」
「あー?馬鹿言え、選ばれし子供達たちは客人だ、客人!手をわずらわせるんじゃねーよ。冗談も休み休みいえよ」
「えーっ!?」
「そんなに悔しかったら、うちの闘技場で優勝でもなんでもしてみるんだな、あっはっは」
「なんだよー!」
モノドラモンはまたむくれるのだった。