T-800(エンドスケルトン)になった俺氏死なないように生きていきます(旧)   作:automata

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日常の裏で行われる頭脳戦

S09地区 エリア20

 

レナが管轄するS09地区は他の地区と比べて、とても栄えている。

特にここエリア20はS09地区で最も大きな都市があり、様々な企業の高層ビルが立ち並んでいる。

生活水準や治安も他の地区とは比べ物にならない程良く、ここに住む人々は大らかな性格の人が多い。

 

 

レナ「このあたりでいいかな?・・・みんな〜着いたよ〜」

 

 

私服姿のレナがAR小隊とターミネーターを乗せた車を駐車場に止めて、降りるよう促す。

車から降りると今までスラム街ぐらいしか見なかったM4達は驚く。

ターミネーターは前世の記憶からかそこまで驚いていなかった。

 

 

SOPMOD「ねぇねぇ!あの店見てー!色んな服があるよー」

 

 

M4「凄く・・・栄えてますね」

 

 

レナ「ここは私の管轄する所で1番大きい都市よ。ここには世界中から人、物資、情報色々なものが集まるの」

 

 

エリア20について説明しながら、レナ達は街中を歩く。顔が広いのかレナに声をかける住民達がいた。

だが、S09地区にはレナすら知らない裏の顔がある。

 

 

 

 

数年前S09地区でコカインの取引現場をレナは抑えたことが全ての始まりだった。

コカインの取引を見事阻止したレナは押収したコカインの成分や流通ルートなどを裏の世界を事をよく知る知り合いの情報屋と一緒に調べ上げた。

結果、南米の旧ボリビアに本拠地を置く巨大な麻薬カルテルが生産、密売していたことが判明した。

 

 

国1つを事実上降伏させる程の絶大な力を持っていたが、レナは正規軍の特殊工作員として単身ボリビアに飛び、たった1人でしかも数ヶ月でカルテルの人員や設備から何から何まで破壊、幹部は全員殺害、ボスは捕まえて、正規軍に引き渡した。

 

 

この事は当然裏社会にも瞬く間に広がり、いつしかS09地区で“仕事”をしてはいけないという暗黙のルールが出来上がり、世界中の裏社会を支える重鎮達は様々なダミーカンパニーを設立し、避難所であるS09地区で過ごすようになった。

S09地区に拠点を置く民間警備会社やセキュリティ開発企業の社員の殆どは実はマフィアのボスのガードマンだったり、プロの殺し屋だったりする。基本彼らは何もせず、立ち上げたダミーの会社で働いている。

そして危険な裏稼業よりもこっちの方が安全で儲かるし、今までよりも生活が充実していると足を洗う者が続出している。

 

 

 

 

レナはターミネーター達をBuger Mirrors(バーガー・ミラーズ)と綺麗な筆記体で書かれた看板があるバーガーショップに連れてきた。

 

 

ターミネーター(どっかの蛇が出てくるタクティカルエスピオナージゲームで見たことある店だな・・・)

 

 

レナ「ここで昼食にしましょ。ここのハンバーガーとっても美味しいから」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

SOPMOD「ん〜〜〜!美味しい〜!」

 

 

M16「このポテトうめぇな」

 

 

AR15「・・・」もきゅもきゅ

 

 

M4「確かに美味しいですけど・・・その指揮官の・・・それは?」

 

 

皆ハンバーガーやポテトに舌鼓をうつがM4はレナの食べている異様なハンバーガーが気になる。

 

 

レナ「これ?ここの看板商品ケミカルバーガーよ」

 

 

鮮やかな緑色をしたとんでもなく異様なハンバーガー。

バーガー・ミラーズの看板商品で、“美味い”それだけを徹底的に追求した先に作られた狂気のハンバーガー。

世界各国で認可された化学調味料と保存料をどっぷりと使用、おかげで色は緑色になったが、店長曰くちょっと食べただけで死にはしない。

 

 

レナ「見た目はこんなのだけど食べるとめちゃくちゃ美味しいの。食べる?」

 

M4「遠慮します」

 

 

即答で拒否する。一部を除いて誰もあんな色のハンバーガーなんて食べたくないだろう。

そんな中ターミネーターは黙々とハンバーガーを食べていた。

 

 

レナ「ターミネーターさっきから何も言わないけど、どうしたの?」

 

 

ターミネーター「えっ、いや何でもない。ここのハンバーガー結構美味いな〜って思って」

 

 

嘘である。

この男、店に入店してからずっと懐に閉まっているグロック26から手が離せなかった。

今はハンバーガーを食べるために太腿の部分に銃を移しているが、いつでも戦闘態勢が取れるようにしている。

何故そんなことをしているのか?

それは・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ターミネーターの位置から奥でセーラー服を着た鉄血のハイエンドモデル達が放課後の女子高生の如くくつろいでいる所を見てしまったのである。見慣れない幼女姿の鉄血人形がいる。もしかすると新型のハイエンドモデルなのだろうか?それだけじゃない、チラ見だが、クルーガー社長がエプロン着けてキッチンに入る姿を見てしまった。

 

 

グリフィンと敵対している鉄血にとって、今ここで騒ぎを起こせば、この都市が戦場と化すだろう。

それだけじゃないこの地区を管轄しているグリフィンがあろうことか鉄血に侵入を許したなど、大スキャンダルになること間違いなし。

鎮圧をするにしてもレナと強化されたAR小隊がいるとはいえ、こっちはまともな武器を持っておらず、せいぜい拳銃一挺ぐらい。実質丸裸だ。あれが新型のハイエンドモデルならば、どのような能力を持っているのか分からない。運が悪ければ、グリフィンの長であるクルーガー社長も死ぬかもしれない。

どうするべきかターミネーターは選択を迫られていると、代理人と思しき人形がスマホを弄り始めた。

 

 

 

ターミネーター(スマホを弄りだした・・・・・まさかウォッ○ドッグスでお馴染みのスマホでハッキングするつもりか!?スチームパイプとか爆発させたり、この都市全てを停電させる気か!?)

 

 

 

早くを手を打たなければならない。だが、どうすればいい?武器を使わず、この都市が戦場にならず、クルーガー社長に被害がなくこの事態を素早く収束させる方法。

前世が一般人のターミネーターの脳では答えが出ず、ただ時間だけが過ぎ、焦るばかりだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

処刑人「なぁ、潜入調査つっても全員で来ることなかったんじゃねぇか?」

 

 

代理人「確かに人数が多いと動きづらいと思いますが情報は多い程が良いですし、それに皆さん1人でも何とかなりますよね?」

 

 

全員頷く。

嘘である。

彼女達、潜入調査なんて最初から頭の中に無いのである。彼女達の目的はただの息抜きである。

最初は「誰か潜入調査に行ってくれない?」とエリザが命令した。まともな娯楽が無く退屈を極めていた彼女達は全員手を上げ、互いにあの手この手の言い訳を言い合って、最終的にエリザも行きたいと言い始めたのでエリザを急ごしらえで用意した人形に機能を移転して全員で行くことになった。

 

 

狩人「むぅ、この服なんだか慣れないな」

 

 

スケアクロウ「学生姿なら怪しまれないから仕方ないですわよ」

 

 

デストロイヤー「おいし〜!」

 

 

ウロボロス「美味」

 

 

アーキテクト「ん〜!これじゃあ、元の食生活に戻れないかも〜」

 

 

セーラー服の着心地に不満のある狩人とそれを論するスケアクロウ。

ハンバーガーやポテト、チキンナゲットなどに舌鼓を打つハイエンドモデル達。

そんな中、代理人の様子は少しおかしかった。

 

 

 

エリザ「代理人、どうしたの?」

 

 

代理人「いえ、何でもありません」

 

 

 

 

嘘である。

この女。自分が座っている位置にしか見えないターミネーター達の存在に気づいていた。ついでにクルーガーにも気づいていた。

敵対する組織の長も最も厄介な敵もAR小隊も今ここにいる。千載一遇の大チャンス。

 

 

だが、何故こんな所にクルーガーもレナもいるのか?それがとても不気味だった。

そして、外で歩いている住民達、スキャンすると全員銃を隠し持っていた。ごく普通そうなサラリーマンは懐に拳銃や折り畳み式のサブマシンガンを忍ばせ、釣り人と思しき人物が担いでいる釣竿を入れるカバンにはアサルトライフルを、ゴンドラに乗って窓を掃除するビルの清掃員は工具箱の中に分解組立式のスナイパーライフルが、街中でギターの弾き語りをしているミュージシャンのギターケースにはマシンガンとロケットランチャーが組み込まれている。

 

 

彼らは裏社会の住人で足を洗っている者もいるが、職業病故に銃がないと怖くて外にも出歩くことが出来ないらしい。

無論彼らが所持している銃は全て正式に登録されている。

これだけの高性能な銃器を持っていても犯罪が起こらない辺り彼らは本当にレナが怖いのだろう。

 

 

 

代理人(外にいる人間達・・・全員銃を持ってる。私達鉄血を滅ぼすことなんて訳ない・・私達はまんまとキルボックスの中に入ってしまったのね)

 

 

そうなれば、ここにいるグリフィンの重要人物達、外にいる武装した人間達の理由がつく。

しかし、何故情報が漏れたのか?この事は配下の鉄血兵にも伝えていないし、データファイルにも残していない。

自分達の情報は全て筒抜けだったということか?

 

 

代理人(最初から私達はグリフィンの手の中で踊ってただけだったの?)

 

 

言葉にできない恐怖が代理人をネガティブにする。

自分達は大丈夫でもエリザだけは何としても守らなくては。

彼女の義体は急ごしらえで用意したもので戦闘能力など皆無。彼女の死は鉄血の死でもある。

今も尚何処かで見られている。ここで仲間達に知らせれば、全員即座に蜂の巣にされるだろう。ハイエンドモデルと言えど、突然の奇襲だと対応しきれない場合もある。

それでも今襲わないのは情けをかけられているのか?

 

 

すると、さっきからこっちをガン見していたターミネーターがグロック26のグリップを握る。

 

 

代理人(銃を握ってる!そろそろ始めるつもりなの!?)

 

 

 

早く手を打たなければならない。全員が無事にこの街から出られる方法。超高性能CPUを持った代理人はある方法を思いつき、偽装用アイテムとして携帯したスマホを取り出す。

 

 

エリザ「うん?代理人何処かに電話するの?」

 

 

代理人「えっ、はい。ちょっと部下に連絡を」

 

 

嘘である。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ピリリリ!ピリリリ!

 

 

ターミネーターの持っている携帯から通知音が鳴る。

ビクッとしながら、携帯を出して、画面を見ると非通知と表示されていた。

 

 

レナ「ターミネーター、どうしたの?」

 

 

ターミネーター「えっ・・ああ、ガンスミスからの電話だ。ちょっと出てくる」

 

 

嘘をついて、席を立つ。

出入り口の前に代理人が横に立ち並び、外へと出て行く。

 

 

 

 

代理人「あの・・・今回はお互い見なかったことにしませんか?」

 

 

白旗を上げてるも同然の発言。

 

 

ターミネーター(何!これはつまり、情けをかけられているのか!?一戦力としても見られていないのか・・俺達は!?)

 

 

表情に出てないが内心ビビっている。

 

 

ターミネーター「そうだな・・」

 

 

代理人(了承した!?今ここで私達を滅ぼせるのに・・・やはり、私達に情けをかけているのね)

 

 

そして、会話は終わり、2人はそれぞれの席に座る。

 

 

レナ「ガンスミスはなんて言ってた?」

 

エリザ「何かあったの?」

 

 

ターミネーター・代理人「「何も問題なかった(ありませんでした)」」

 

 

嘘である。




バーガーミラーズで店の手伝いをしているクルーガーは胃を抑えていた。
軍人時代からの友人が「支店が人手不足なんだ」と電話が来た。
普通なら自律人形でも送ると思うが、何か息抜きになるかもと冷静な判断が出来なくなったクルーガーは「じゃあ、俺が行く」と言った。


が、その支店が何処にあるかを聞かなかったのがクルーガーの最大のミスだった。
その支店がある場所がS09地区だった。
(レナ来るな、レナ来るな)とクルーガーは必死に天を仰いだが、結局レナが来た。


幸いにも顔が厳ついから接客をさせなかったのが彼にとっての救いだった。


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