「はい、そうです。はい、分かりました。それでは」
通信機を切って私のベッドに目をやります。
そこで寝ているのは先ほどボコボコにした少女でした。
身体中を殴ったはずなのですが、完全聖遺物とやらのおかげでしょうか、身体に痣一つありませんでした。私が殴った場所は。
彼女の背中からお尻にかけて酷い蚯蚓腫れを起こしていました。恐らくですが、変身する前にやられた後なのでしょう。敵ながら何故か申し訳ない気持ちになります。
「んぅ......んぁ......」
さっきから唸り声をあげているのですよ。何か悪い夢でも見ているのでしょう。彼女の夢の中にレッツラゴーしたいのですが、残念ながら手持ちにシルバー鍵がないんですよ。銀の鍵ですよ銀の鍵。あれがないとドリームランドいけないんですよね。はぁ~つっかえ。
「うぅ......待って!!!」
彼女がそう声を上げながら勢いよく起き上がりました。すげーびっくりしましたよ。
「目が覚めましたか?」
「ッ!?なんだテメェ!何処だここは!私をどうする気だ!痛ッ」
彼女は私が殴ったであろうお腹を抱え出しました。表面上には見えなくとも内蔵にはダメージは通ったのでしょう。凄く痛そうにしています。
「大人しくしててください。何も危害は加えませんから。......もっともそちらが反抗するならそれ相応の対応をしますが」
「......」
「よきよき。いい判断です。聞きたいことが色々とあるので協力、してくれますよね?」
「......あぁ」
思ったより彼女は頭がいいのかもしれません。
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彼女にいろいろなことを聞きました。
彼女の名前は雪音 クリス。世界的有名なヴァイオリストの父と音楽家の母を持つハーフだそうです。音楽界のサラブレッドですね。
両親が「音楽の力で戦争をなくしたい」という願いを叶えに南米にいったら両親が御陀仏になり、捕虜になったのだとか。
何故完全聖遺物のネフシュタンの鎧...?を纏っているのか、デュランダルを狙ったのか。その理由を聞くと、フィーネとかいう人に指示されてやったとのこと。身体の傷もそのフィーネとかいうのにやられたとか。
響さんを狙った理由も話してくれました。なんでも、シンフォギアの破片が響さんの身体と融合しているのに興味を持ったからそうです。しかし、それは二課でしか知らない情報なのですが......。どこから漏れたのでしょう。もしや内通者が二課の中に...?これ以上考えるのはやめましょう。しんどいっす。
大体このような感じのことが聞けました。これはレポートにして弦十郎さんに報告ですね。
「ありがとうございます。いい情報が得られました」
「そうか......。で、これからあたしをどうするんだ?またさっきみたいにサンドバッグにする気か?」
「いえいえ、そんなことはしませんよ。ただただこの家にいて欲しいだけです。貴女はあくまで客人みたいなものなので」
流石にサンドバッグにはしませんし、だからといって無責任に放り投げるわけにはいきません。ほとぼりが冷めるまで私が保護します。クリスさんには家事などを任せましょう。でも、最初の方は教えないといけませんね。なんでも、フィーネとかいう人が毎回料理を作ってくれたそうで。
「それではご飯にしましょうか。あまり重たいものは用意していませんよ」
「そうか.....」
そう返事をするとクリスさんはベッドからのそのそと出てきました。やっぱりあの際どいタイツ姿とは違って愛らしい姿です。ヒールを履いていたのかはよく分かりませんが、今の姿は私より10cm、下手したら20cmぐらいの身長差があります。思わず抱きしめたくなっちゃいますね。......おっと話がずれました。
私とクリスさんはダイニングまでやってきました。
テーブルに用意した料理は卵がゆ、湯豆腐に温野菜、お味噌汁です。消化に良い料理ですね。前世の私はほとんどと言っていいほど病院食しか食べたことがなかったので特訓しました。未来さんには感謝しかありません。
「それでは、いただきます」
「......いただきます」
先ずはお味噌汁からいただきましょうか。...うん、美味しいですね。いつもの味です。やっぱ高い味噌よりスーパーに置いてある味噌のほうがいいですよ。なんか安心する味がしますよね。お袋の味ってやつ?いいですよねー。
次のバッターは卵がゆです。今回の味付けは鳥ガラスープの素を使いました。だしの素も使うんですけど大体は気分ですね。鶏がらスープの素の良さは味付けが楽、というところでしょうか。
「味はどうですかクリs......え”」
気になってクリスさんを見てみたらガツガツ食べているんですよ。食べるところまでは良いんです。こっちも嬉しいですからね。でも、あれ、うん。食べ方が下品です。口元にいろいろ付けて食べているんです。これは教育していかなくては...。
「クリスさん...」
「な、なんだよ......」
「貴女にはまず食事の仕方からお教えしましょう......!覚悟、してくださいね?」
「ひゃ、ひゃい!」
おやおや、何故怯えた表情を見せるのでしょうか。貴女にはちゃんとした女性にならなくては、困るんですよ!
その日の夜は、「ニャル子さん怖いニャル子さん怖いニャル子さん怖い」etcとなっているクリスさんと肌がつやつやになっている私がいましたとさ。
/////
『念のために鍵は置いておきます。何かあったら電話を寄越してください。すぐに飛んできますから』
『.....あぁ』
朝にクリスさんとそんな会話をしてなんだか新婚さん見たいな感じだなと思い思わず頬がにやけます。
学校は遅刻すると連絡しときました。そんなこんなで弦十郎さんのところにやってきました。
そして昨日私が作成したクリスさんのレポートを見せました。
「そうか...。そのフィーネという奴が黒幕なんだな?」
「そうだと思います。あと、これ。どうぞ」
「こ、これはソロモンのt「静かにしてくださいよ!」す、すまん。でも何故ニャル子君が?」
家にクリスさんがいるからです。あの娘からキャトラッシュしてきました。俗にいう借りパクってやつです。思いっきり盗みましたけど。
「なるほどな。ありがとう、これは私が厳重に保管しておく」
「弦十郎さんだけに?」
「......」
「なんか反応してくださいよもう!」
ここぞとばかりに頬を膨らませてみます。うん、効果なしですね。今すぐやめましょう。
「あ、それと」
「まだ何かあるのかね?」
「ちょっと待ってくださいね。今から結界を張るので。......よし」
適当な場所に指をさすと、私と弦十郎さんがいる空間だけ色が変わりました。ちらっと弦十郎さんを見るともう驚かないぞと言わんばかりの顔をしていました。ちぇ、つまんないの。まぁいいですや。
「ここだけの話。二課に内通者とかいません?」
「な!?」
「あ、結界張ってるので大きな声出してもいいですよ」
「なんだとッ...!?」
本当に出しちゃったよこの人。
「クリスさんが言っていたんですよ。フィーネって人がギアの破片と融合した人間、響さんに興味があると。ついでにデュランダルもゲットすれば万々歳じゃね?って感じだったらしいです」
「そうなのか...。それで」
まず何故響さんの身体とギアが融合していることをクリスさんが知っているのでしょうか。そもそも、この情報は二課にしか知りえない情報のはずです。デュランダルだってそうです。なんでも、国の上層部にしか知られていないらしいじゃないですか。それを知っている人がいる。これってばもうスパイが二課の中にいるとしか考えられませんよ。断言はできませんけど。
「そうか。ニャル子君にとって一番怪しいと思うのは...」
「んー。最初はなんとなくで弦十郎さんかと思ってたんですけどー。今一番怪しいと思うのは櫻井了子さんでしょうか」
「......何故そう思う」
うーん何故と言われましてもねぇ。なんかこう、ビビッと来たんですよ。ほら見てくださいよ。了子さんのことを考えると邪神レーダーが荒ぶるんですよ。それだけじゃ分からないですよね。本当は薬品工場で響さんとクリスさんが戦っていた時なんですけどね。あるとき響さんがデュランダルを掴んだんですよ。一瞬空気が変わったときありませんか?
「あぁ、確かに変わったな」
あの時デュランダルが輝いてどこぞの約束された勝利の剣みたいになったんですよ。その時了子さんの顔を見たらなんか唖然としている感じじゃなかったんですよね。それこそ見惚れているような、そんな感じでした。
その他にもあります。クリスさんと了子さんがなんか見つめ合ったりしていたんですよ。普通敵相手にそんなことしないじゃないですか。その時了子さんにノイズは襲って来なかったですし。攻撃されてたのは響さんだけでした。そこでなんとなーく怪しいなと。
「そうか。俺には良く分からないが、ニャル子君の意見も参考にしておこう。了子君に監視を付けようと思う。それでいいか?」
「大丈夫だと思います。あと、ソロモンの杖は見えるところに置いておきましょう」
「なるほど。おびき出す作戦か」
そうですそうです。英語でいうとオフコース。ソロモンの杖の周りに隠しカメラでも設置すれば何とかなるでしょう。一応私の方からも道具を出すとしますか。
「それでは言いたいことは言ったので」
「分かった。気を付けて学校に行ってきな」
そう弦十郎さんが言ったと同時に結界を解除しました。
そんじゃまずお家に帰ってから学校いきますか。はぁ、めんどくさい。
~ネタ集~
約束された勝利の剣
fate/stay nightのセイバーのあれですよ、必殺技。
~ネタ終了~
書きたいんですけどネタが思いつかないんですよ。すみません。
次回もお楽しみに。