思っていたより最悪な事態が起きました。
退院したとはいえ、ついこの間まで入院していた響さんに新聞記者やマスコミなどのメディア関係の人たちがぞろぞろとやってきたそうです。
それだけではありません。唯一生き残った人物として根拠のない責任というものが響さんに乗っかっていきました。
クラスのみんなも、響さんのことをやれ人殺しだの、税金泥棒だの酷いどころでは済まされない言いようでした。
響さんのお父様もそんな生活に耐えられず、家を出て行ってしまったそうです。
正直言って皆さんの人間性を疑いました。
誰かが響さんのことを守ってその方が亡くなったのなら話は別...とは言い難いですが分かります。
しかし、何の罪もないただの少女にこの仕打ちは...なんかやるせない気持ちになります。
私には何もできませんでした。何もできなかったんです。
苦しいことに耐える響さんを慰めることも、みんなの酷い言葉に反論するのも、何もできませんでした。
何が宇宙最強のニャルラトホテプ星人ですか。目の前で苦しんでいる人にも手を差し伸べることもしないなんて何が最強ですか。結局のところ、私も周りの人間と変わらないのです。
今日も響さんに酷い言葉が降りかかってきます。今じゃ机に落書きや花瓶などが置かれています。
響さんと未来さんは机に書かれた落書きを掃除しています。それを嘲笑いながら見るクラスの方々。
私が生まれ変わって見たかった学校生活はこんなだったのでしょうか。
私はこんな生活が続く方がよろしいのでしょうか。嫌な考えが頭の中で周ります。
「あいつらほんっと見てて面白いよねー、さっさと死ねばいいのに。ね?ニャル子ちゃん」
そう目の前のクラスメイトは私に言葉を投げかけます。
いいえ、私が見たかった学校生活はこんな暗くて醜いものではありません。
「そうですね...」
「うひゃー!ニャル子ちゃんもそう思うよね!?」
彼女は腹を抱えて大声で笑っています。響さんや未来さんは悲しい目をして私を見つめていました。
こんな生活が続くなら私は...
「あんたらが死んだ方がマシですよ!!!」
私は全てを投げ出しても友情を取ります。
そう叫びながら机をたたき割りました。パサ、パサと教科書が机から落ちていきましたがそんなことどうでもいいです。私は、もう我慢の限界です。
「え...ニャル子ちゃん...?」
目の前にいたクラスメイトは口をパクパクとさせて驚きました。周りのクラスメイトも同様に、驚いた顔で私のことを見つめてきました。
「大体あんたら何様のつもりですか!?普通クラスメイトが生きて帰ってきたら喜ぶところでしょうが!!!」
「それなのにも関わらずやれ人殺しやら税金泥棒やら...あんたら響さんがどんな気持ちで必死こいて生きようとしたのか分からないんですか!?」
「そもそも税金泥棒とかあんたらが言える立場じゃないでしょうが!親の脛チュバチュバとしゃぶってるだけの養われている存在じゃないですか!そんなの、威張り散らしている貴族の子供と変わりないんですよ!」
クラスメイトの皆さんは唖然としていました。
しかしそんなものは知らないと言わんばかりに私の口からは色々な言葉が溢れ出ていきます。
「こんなゴミ畜生どもと同じなんて私は最悪ですよ!あんたら力を合わせてでしか物が言えない雑魚どもに響さんを、響さんのことを悪く言う資格なんてこれっぽっちも無ェんですよ!てめぇら人間じゃねぇ!」
教室の中がしん、と静まりました。ちらほらと隣のクラスメイトがどんな様子かと背伸びをしながらこちらを覗いています。
息を整えて私は再度口を開きました。
「こんな腐ったクラスに私はいたくありません!あんたらの顔見てるだけで吐き気がします!響さん!未来さん!行きますよ!」
私は響さんと未来さんの手を引き、教室の窓から外へと飛び出しました。
こんなところにはいたくありません。多分、今後教室に向かうことはないでしょう。成績がどうとか関係なく、私は友達をとります。
/////
「ふぅ...ここまでくれば大丈夫でしょう」
私は額にたまった汗をハンカチで拭き取りながら呟きました。
今いる場所は私の家です。幸いなことにお隣の気配はありませんでした。多少騒いでも大丈夫でしょう。
「ニャ、ニャル子ちゃん...私...」
「いいえ。悪いのは私のほうです、響さん」
私は響さんの方に振り返り、頭を下げました。
「私は苦しんでいる響さんに慰める言葉も、手を差し伸べることもできませんでした...」
声が震えてきました。
もしかしたら嫌われてしまうのではないか、と最悪な未来が頭を過ります。
「ううん。あの時ニャル子ちゃんが声を出してくれてほんっと嬉しかった」
「!」
「あんなに声を出して私を庇ってくれただけで、私は幸せだよ」
私のことを抱きしめながら、響さんは私の耳元で囁きました。
「でも...」
「でももなにもないよ。だから、泣かないで、ね?」
「え...」
自分の頬をペタペタと触ると、水滴が手につきました。私泣いているのでしょうか。響さんが言うのだから泣いているんでしょう。涙を止めようと試みるのですが、止まることはありませんでした。
「響さんが...」
「ん?」
「響さんが!あんなこと言われているのが悔しくて、悔しくて!何もできない自分が嫌で!」
気持ちが溢れ出ていくのが分かりました。
必死に抑えようとしますが、溢れていきます。
「それで...それで...」
「いいんだよ。その気持ちだけで十分。ありがとね、ニャル子ちゃん」
「ぬぅぅぅぅ!!!」
その言葉で、私のダムは決壊しました。そのあとは皆さんのご想像通り、泣き叫びました。それはもう、うるさいと言わんばかりに。響さんも、未来さんも、私と一緒に泣いていました。
/////
「うぅ...人前でみっともなく泣いてしまいました...恥ずかしいです」
「あはは...そうだね...」
「ふふっ、でもこういうのも良いかもって思った」
こんなに人前で泣くのは初めてです。すごく恥ずかしい。穴があったら入りたいというのはこういうことでしょうか。でも、すごくすっきりしました。
「これからどうしましょうか」
「ニャル子ちゃんがあんなところにはいたくないって言ってたしね」
「それは言葉のあやってやつでですね...?」
確かに言いました。言いましたよ。でもこれからどうしましょうか。正直勉強のほうはいいんですよ。何かとこの身体有能でしてね、いろんな知識が詰まっているのですよ。流石ニャル子さん、宇宙でトップの大学を卒業しているだけあって頭がすごく良いです。これなら私立は何とか受かると思います。多分。
「...明日のことは明日考えよ?」
「そうだね...未来」
「...そうですよ!」
そう言って私は立ち上がりました。ついでにアホ毛もピーンと立ちました。
「明日のことは明日考えましょう!今日は焼き肉パーティーにしましょう!理由はありません!」
「えぇ!?でも私お金ないよ?」
「私も...」
「いいですよ私が全部出しますから!なんならA5ランクの黒毛和牛を用意しましょう!」
「駄目だよそんな高いお肉は!?」
「流石に高級なお肉をニャル子ちゃんに払わせる訳には...」
「私は丸々一頭買えるお金はありますけど!?」
「「そういう問題じゃないの!!!」」
あらら、怒鳴られてしまいました。あの暗かった雰囲気も自然と明るくなり、気が付けば私たちは笑顔になっていました。こんな生活がしたかったんですよ、私は。
「それではスーパーに買い出しに行きますよ!」
「はぁ...結局焼き肉パーティーするんだね...」
「こういうところで行動力があるのがすごいと思うよ...ニャル子ちゃん」
響さんと未来さんが何か小さい声で会話していますがそんなことはどうでも良いです。いやどうでも良くないんですけどね。お肉が私たちを待っている!私たちの焼き肉パーティーはこれからだ!!!いざ、戦場へ!
「ぬぅぅぅぅ!!!」
は、魔法少女まどか☆マギカの暁美ほむらちゃんが、まどかのソウルジェムを破壊するときに放った?言葉です。
「てめぇら人間じゃねぇ」
は、ポケットモンスター アドバンスジェネレーションの時のタケシがロケット団に放った言葉です。
もう70ものお気に入り件数があって驚いています。
本当にありがとうございます。
それでは次回もお楽しみに。