ファイアーエムブレム覚醒 ~虹が生み出した物語~   作:ユイリー

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追憶1:託された想いと願い



と、追加フラグ


幕間
第45話


 

 

 

「あの…父さんと母さん、そしてルキナ姉さんに聞いてもらいたいことがあるんです」

 

軍師ルフレの目覚めより一週間後。

レインは父と母、そして姉のもとへと来ていた。

 

「僕は…あの時……師匠の後ろ姿をみて…すべて思い出したんです。

みんなのこと、自分の事、そして…師匠の事」

 

「師匠…マークさんの事をそう呼んでいましたね」

 

「はい。姉さんは…記憶になる父さんが訓練していたのをみて習い、そして母さんとリズさんから教わっていましたね」

 

「ええ」

 

「だけど僕には教えてもらえなかった。武器を持つにはまだはやいって…」

 

「それは……」

 

ルキナが言いよどんだ。

あの時代のみんなの中で一番年長なのがルキナで、一番年少だったのがレインとファインだった。

それもあってか、しっかり者のルキナはすぐに剣を手に取った。

父のために。母のために。みんなのために。世界のために。

けれど年少であった二人は精神的にもまだ幼かったから武器を与え教えるよりも庇護の対象だった。

 

「今ではわかっているんです。どれだけ自分が恵まれているのか。

でも、その時は認めたくなかった。自分だけ守られてるのが、嫌だった。

そして守られている分、僕を守ってくれている人は傷ついていった。

だからある日――姉さんと喧嘩して僕は逃げるように出て行った」

 

「「!!」」

 

レインの言葉にクロムとルフレが驚いた。

ルキナはただ、目を閉じていた。

 

「あの時の私は…周りに目に入っていなかった…。

大好きなお父様はいなくなり、大好きなお母様は悲しい顔するばかり。

私がやるしかなかった。イーリス王家の王女として、みんなを導かなければならなかった。

なのに王子であり弟のレインはわがままばかりで…八つ当たりしてしまいました…。

喧嘩して…レインが出て行った後に…気づいたんです。

レインは…戦えないことを悩んでいたと…幼いからって守られてばかりであったことに…」

 

「ルキナ…」

 

「急いで私は探したんです。でも…見当たらなくて…その時お父様が亡くなった後止まってた涙はあふれました…。

私はまた家族を失ってしまうのかと……。

お母様とシンシアは黙って私の傍にいました。スミアさんが…探してくれたのに見つからなかった…」

 

レイン、とルフレは彼の方を見る。

 

「僕は…出て行って気づいたんです。戦えないただの子どもが外に出ても屍兵に殺されるのがオチだって…。

でも…幸運だったのか、不幸だったのかは今でもわかりません。

屍兵に襲われた僕を助けたのが…師匠――ルフレさんでした」

 

 

そして少年は語る。

自分と師匠の出会いと、未来への話を…。

 

 

 

 

 

*  *  *

 

 

 

 

一方――

 

「母さん…セレナ姉さん」

 

ファインもまた、母であるティアモと姉であるセレナのもとへと来ていた。

 

「ずっと…自分の考えをまとめてて…まとめたけれど…まとめれなかったから…まとめただけでも伝えようって…」

 

「ファイン」

 

「私がどうやって父さんの剣を引き継いだのか…私、全部思い出したんです」

 

ファインにはもう一人、兄がいる。

けれどそれは別の大陸での兄のため、今から話す事は関係ない。

それでも一応誘ったのだ。

兄はファインの気持ちを察したため、断って今ごろ書斎にいるか父の部屋にいるだろう。

 

「私…自分でも知らずに父さんと会っていたんです。迷子になった先で…」

 

 

そして少女は語る。

知らずに父と過ごした時と、未来への話を…。

 

 

 

*  *  *

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ…」

 

一人の少年は走っていた。

今はただ、一人になりたかった。

 

「なんで…僕には教えてくれないんだろう…ファインですら杖の使い方を教わっていたのに…」

 

少年――レインは一人つぶやいた。

こっそり持ってきた青銅の剣を抱えて。

 

「僕なんて…いなければみんなに負担…減らせれるのに…」

 

レインの悩みは自分が足手まといになっているのではないかと思ったのだ。

人は誰かを守るために強くなることもあるということは知っている。

だけど、逆に言えば足手まといになるのではと思ったのだ。

悲しい顔の母。ひたすら剣を振るい屍兵と戦う姉。

皆それぞれの信念のもと、武器を持ち戦っていた。

なのに自分はなんなのか?

 

「グォォ……」

 

「!屍兵!」

 

そうだ、外には屍兵がいるのだ。

今はまだ辛うじてイーリス王都にはいないものの、外には普通に存在している。

戦えない者が外に出て行った結末はなんだ?ただの死だ。

使えない剣を抱えながら後ずさる。

目の前にしてレインは顔を歪んだ。

ここで、死ぬのかと。

目を瞑った。恐怖で動けないのもあったけれど…。

だけど衝撃は来なかった。

 

「王都近くにも屍兵がでるんだな」

 

「え?」

 

目を開けた時に見たのは――虹色の刀身の剣をもつ男だった。

髪は母と同じ銀髪――だが使い込まれたコートはかなりの熟練者だと感じた。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「あ…はい…大丈夫です…」

 

これが聖王の息子である少年レインと、少年の父を殺し邪竜に覚醒しながらも竜の心と戦い続ける男ルフレの出会いだった。

 

 

 

 

 

「で、姉と喧嘩して出て行ったと」

 

レインを助けた男はただの旅人だと答えた。

レインも名は名乗らず、ただ姉と喧嘩して出てきたことを言った。

 

「わかっているんです。戦うことの意味がどれほどなのか…でも僕は嫌だった。

幼いからって守られているばかりじゃいられないって…。

いつ大人が子どもを庇って死ぬのか…わからないんです。

だから実戦までとは言わないけれど…それでも戦う術は知りたかった」

 

「そうか…」

 

レインたちがいるのは王都より離れた村だった場所だ。

屍兵に滅ぼされレインが男と訪れたときにはすでに誰もいなかった。

 

「お前は確かに幼い。おそらく精神的にも。だが――考えは大人だな」

 

「え?」

 

「人がいつ死ぬのかわからない時代になった。受け継がれた技もいつ途切れるかもわからない。

実戦は無理でも戦う術を知りたいというのは確かだな」

 

「でも誰も教えてくれなかった。僕だって言ったんです。同じこと」

 

「なのに教えてくれなかった、か…」

 

レインには存じないことなのだが、当時のレインには魔道の方が適正があったのだ。

それは母から受け継がれた魔力でもあるから。

しかし幼い故何が適正なのかわからなかったというのもあるのだ。

聖王の妹の子ども――ウードのように、魔道の適正がありながらも向いていないとかそういうのでもないのだ。

ただレインの周りには剣を扱う人が多かったのだ。

姉はもちろんのこと、姉に剣を教えるために剣で戦う母。

周りの兵たちも剣ばかりだった。レインが知らない場所では違う武器を使っていたかもしれないが。

 

「……お前はこれからどうするんだ?」

 

「僕は……」

 

どうしよう、と思った。

 

「……俺は故あって王都に行きたくてもいけない事情がある。おそらくそこにとあるものを渡したい人がいるはずだ。

そしてお前は王都に住んでいて、でも戦う術を知りたい、と言っていたな」

 

「あ、はい」

 

「俺はお前に戦う術を教える。お前は俺が渡したいものを持って王都に行く。これでどうだ?」

 

そこでレインは気が付いた。

男は交渉しているのだと。

戦う術を教えるかわりに、王都にとあるものを持って行ってほしい、と。

 

「あの、その渡してほしいものって…」

 

断られるかな、言いよどむのかなっと思ったが男はすんなり答えた。

 

「この剣だよ。旅の途中で手に入れたんだ。これがあれば戦力大幅にあがるだろう」

 

「そうなんですか?でもあなたは…」

 

「俺にはこれがあるからいいのさ」

 

「それに俺は目立ちたくないからな。代わりに持ってってくれると助かるんだ」

 

レインはその剣を見た。

布に包まれた剣――だけど、

 

「ちょっと持ってもいいですか?」

 

「ん?いいぞ。まぁ重いだろうが――え?」

 

その剣を持ってみれば――思ったよりも軽かった。

持てるのは持てるけれど――扱うことはできないだろうと思った。

 

「うーん、思ったよりも軽いですね。でも…僕には扱うことはできなさそうだ」

 

ふと男のほうを見れば頭を抱えていた。

どうしたのかと聞いたが返答はなんでもないと戻った。

――少年は気づきもしなかったが、その剣はギムレーが回収し行方が分からないとされていた少年の父が使っていたファルシオンだったと。

 

「えっと、交渉ですけれど、お願いします!」

 

「それはこれを持って行ってくれるということか?」

 

「はい。これなら僕も持っていけるです。僕だって戦う術を知りたいです。利害一致ですね」

 

「そうか。まずはお前は何を使いたいんだ?」

 

「うーん、姉も母も剣を使っていたんでまずは剣ですかね…」

 

「剣な、わかった」

 

こうしてレインは男から戦う術を教わった。

最初は摸擬戦だったが、本人の意欲もあり段々と成長し男の手助けしながらも実戦を行った。

ただ、気になるのは……。

出会った時よりも男の傷が増えて行ったことだ。

それはレインの知らないところでできているようで、聞いても別に襲われてないと答えるばかりで、

手当というものは布で出血を抑える程度だ。

そんなある日――

ファインと再会したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

レインが出て行ったきり帰ってこない。

それは姉であるセレナから聞いた。

ルキナと喧嘩の末に出て行って騒ぎになったのだ。

 

「クラウド、レインまだ見つかってないんですって。どこにいったのかしら…」

 

父の愛馬であるクラウドを世話しながらファインはつぶやいた。

今ファインはトルバドールとして治療を専念している。

いずれ魔導書が使えればいいな、という程度だ。

トルバドールという職業柄、マリアベルさんに教わったりしている。

 

「あ、クラウにラウドもおとなしくしてって…」

 

そしてクラウドには子どもがいた。

クラウとラウドの二頭だ。

今はクラウドに乗っているがいずれクラウかラウドのどちらかに乗るだろうと考えているのだが…。

この二頭はいつも喧嘩している。

多分、どっちがファインに選ばれるのか、かもしれないしべつの事かもしれない。

 

「ファイン?どこー?」

 

「あ、今行きます!」

 

今日は王都南方へ遠征で自分はもちろん回復担当だ。

 

「行きましょう、クラウド」

 

今日も父の愛馬を連れて出かける。

ただ、その日は違った。

無事に終え、帰還するときだった。

クラウドが何かを反応した。いつもは無反応なのに。

 

「どうかしたの、クラウド?」

 

「っ!ファイン、上!」

 

上から竜騎士が襲い掛かりファインはバランスを崩す。

クラウドは私が落ちないようとっさに回避を行ったが竜騎士は一人だけでなく他にもいたのだ。

避けているうちに、仲間とはぐれたのだ。

 

「最悪…あ、クラウドごめんね…私、しっかりしないと…」

 

仲間とはぐれたのは最悪だが、ファインが助かったのはクラウドのおかげなのだ。

 

「クラウド、王都の場所…わかる?」

 

こう見えてファインはこのあたりの地理は詳しくない。

いつも誰かの後を追っていたというのもあるのだが、どうも覚えれないのだ。

これは誰にも気づいていないのだが、父の方向音痴がだいぶ緩んだものの引き継いだためでもある。

まあ簡単に言えば父より大分ましということだが。

ファインはクラウドの指示で王都へと目指した。

屍兵に見つからないように祈ったが。

そしてたどり着いたのは誰もいない村だった。

遠くまで来たのだろうか…だが、そういうわけでもなかった。

 

「あ、あれ?もしかして…ファイン?」

 

「え?」

 

後ろから声が聞こえて振り向けばそこにいたのはみんなが探していた人物、レインだった。

 

「レイン!?なんでここに…」

 

「あはは…いろいろあって…」

 

ちらりとレインが振り向けばとぼとぼと歩いてくるのはレインの師匠。

 

「あの人は?」

 

「僕の師匠!師匠、すみません、知り合いと――」

 

レインの師匠に会ったとき、ファインはどこかで見たことがある気がした。

綺麗とは言えない銀髪は、レインの母とファインの姉に似ている。

だが、男の目線は自分ではなく――

 

「君、その馬からおりな」

 

「え?」

 

「いいから」

 

有無を言わない迫力でファインはクラウドからおりる。

男はクラウドを見る。

 

「そうか――だいぶ持ったんだな」

 

「え?」

 

「怪我している」

 

そこで初めてファインはクラウドに怪我していることに気が付いた。

 

「ここに来たのはあんたのためか、それとも…」

 

「あの、師匠?」

 

「うん?」

 

「その馬…怪我してるって…」

 

「怪我もそうだが、まぁ寿命だな。よくここまで持ったってこと」

 

「え、そんな…」

 

ファインはクラウドに寄り添った。

 

「ごめん…さない…私…気が付かなくって…無茶させて…」

 

「お前のせいじゃないだろう。こいつはこいつの意志でお前について来たみたいだからな」

 

「あの、師匠。わかるんですか?」

 

「大体だがな。ただ、子ども頼んだってさ…」

 

クラウドは静かに息を引き取った。

ファインは泣いてレインは黙って見守った。

クラウドは満足していた。

レインに見守られ、ファインに泣きながら寄り添ってくれて。

そしてもう会うことはできなと予感を抱いていた主と最期に会うことができたから。

 

「お疲れ――――」

 

男は静かにつぶやいた。

これが父親を知らない少女ファインと、邪竜に覚醒しながらも竜の心と戦い続ける少女の父親ルフレの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど…それでここにきた、と…」

 

ファインは自分の身に起きたことをレインと男に説明した。

ちらりと男はレインの方をみるが…。

 

「僕は師匠からまだまだ教わりたいです!」

 

「ってことだからこいつはまだ王都には戻らんようだ。お前はどうする?」

 

「その…戻りたいのですけれど…」

 

やはり目線はレインだ。

見つけたからには連れて帰りたいのだろう。

しかし……

結局ファインは折れた。

レインが帰るときまで。

 

「あ、そうだ。ファインって杖持ってます?」

 

「持ってますよ。ライブの杖だけですけれど…」

 

「師匠、怪我しているみたいなんすよね」

 

「ええっ!?そうは見えませんよ!?」

 

「布でとめてるからな」

 

どや顔で応える男に、どこにどや顔でいう必要があるのかわからない二人であった。

 

「もう、手当しますからね!」

 

「いや、別にいい。俺は大丈夫だし、こいつが怪我したらでいいさ」

 

「て・あ・て・しますからね!」

 

「はいはい」

 

ファインは男にライブをかける。

完全には治療できなかったとみるが、男が大丈夫だというように体力が残っているのか、

それともファインの魔力が足らず回復が少なかったのか。

両方ではあるのだがファインはまだ見習いだと自認しているので後者だと思った。

 

「それにしては…えっと、なんていうんですか?」

 

「ん?」

 

「名前」

 

「あー、別になんでもいいさ。目立ちたくないんでね、名前は名乗らない方針なんだ」

 

「えー」

 

「まあ師匠は師匠ですしね!」

 

レインが気にしていないのでファインも気にしないことにしたのだが、

どう呼べばいいのかわからないので師匠さんと呼ぶことにした。

 

 

それから数日が立った。

食料はどうしているのかと思ったファインだが、村に残っていたものを少しずつもらっていたらしい。

使わないでいたら腐ってしまうから、というのは男の話だ。

保存がきき長持ちするものは別によけておいていずれ王都に戻る際に持っていくことになっている。

だが―――

 

 

「もう俺が教えるものでもないな」

 

ある日、男はものすごく疲れ切った顔で言った。

ファインが気になっていることと言えば、いつの間にかできている怪我と目の下の隈だ。

こんな時代だから隈を持っているのは別に不思議じゃない。

眠れる方が珍しい。

しかし…それを言った日は以前にもまして怪我がひどかった。

隠しているがバレバレである。

 

「ええっ?でも…」

 

「それぐらいならお前の近くにいる剣使いたちも黙ることはないだろう。

俺もそろそろ行かないと」

 

そういえば男はもともと旅をしていたと言っていた。

レインは悲しそうな顔していたが、それでもかなり教わっていたから言い返せなかったのだろう。

 

「あの…また会えますか?」

 

その言葉に、男は。

 

「会えない方がいいさ」

 

なぜそんなに悲しい顔するのかはわからなかった。

だが、今考えてみればそれは正しい。

むしろ今までが奇跡だったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王都に戻って来たレインとファインはみんなに壮大な説教と心配と無事に帰ってきてくれた感謝を受け取った。

とくにレインはほぼ一年もいなかったからルキナと母親に怒られて泣いて抱きしめていた。

そしてファインもー―

 

「うう、ファインが無事でよかった……」

 

「心配かけてごめんなさい…途中でレインを見つけて…」

 

ファインは、そしてレインは師匠の事を話したのだ。

ただ、目立ちたくないと言っていたから性別が男と旅人、凄腕の剣士だということだけだ。

 

「クラウドも…寿命で亡くなって…一人だったから…レインが駄々こねて…」

 

「そう…」

 

「あ、あの…母さんは…?」

 

周りを見るもいつもいる母さんも、そしてスミアさんやリズさんですらいなかった。

 

「あのね…ファイン……母さんは…母さんたちは…先日ギムレーに殺されたの…」

 

「!!!」

 

「巡回しているときにギムレーがやって来たって…わざわざ人の姿をとって、ね……。

母さんはそのまま殺されて…スミアさんはリズさんをつれて逃げ切れたけれどそのまま息絶えたの…」

 

「そ……そん、な……」

 

ファインは崩れた。

母と再会する前に亡くなってしまったことを。

 

一方、レインは母と姉に、

 

「そういえば…師匠から頼まれたことがあったんです」

 

「頼まれたこと?」

 

「はい。師匠、目立ちたくないから王都に寄れないって…。

えっと、これです。旅の途中で拾ったって…」

 

レインは男から託された剣を二人に見せる。もちろん布に包まれているが。

 

「…あの、なにかのろいとかかけられてないですよね?」

 

「ないと思いますが…」

 

母は布を外す。

そこにあったのは竜の祭壇での戦い以後、行方をくらましたファルシオンだった。

 

「ファルシオン!?まさか…」

 

「え!?これが……」

 

レインも驚いた。

これを師匠が持っていたもの?

だとしたら目立つかもしれない。

ファルシオンを回収した人として。

 

「いずれ感謝したいですね…」

 

母はそう呟いた。

 

 

 

のちレインはクラウに乗りパラディンとして戦いに挑み、ファインはラウドにのりヴァルキュリアとして治療しに行った。

 

 

 

 

 

そして――ルキナ達が過去へ行くと決めた時――

二人は惜しくもはぐれてしまったのだ。

 

「いや、前向きに考えるんだ。姉さんたちが過去へ行く際の時間稼ぎになれば…」

 

一人、レインはつぶやき――

 

「確かこの先の時の神殿の力を使えば過去にも行ける…はず」

 

一人、ファインはつぶやいた。

はぐれた、と言っても二人一緒ではない。

別々にはぐれてしまった。

そして二人は偶然にも時の神殿で再会する。

最悪な再会も含めて。

 

「あ、レイン!?」

 

「ファイン!?君もはぐれたのかい?」

 

「ええ。ここ―時の神殿の力を使えば過去に戻れるかもしれないって…」

 

「それじゃあ…」

 

そこで奥からものすごい音が聞こえた。

 

「!?誰かが奥で戦っている!?」

 

「行きましょう」

 

進んだ二人が見たのは――

 

「「トロン!!」」

 

雷の上級魔道書を放つ二人の男女の姿――ーそしてどちらも見覚えのある人物だった。

 

「「え?」」

 

信じたくない景色だった。

戦っている男女――女の方はレインの母であった。

彼女は王都陥落の時に行方不明なったのだ。

その母がここにいる。

対して男の方は――雰囲気がかわっているがレインの師匠であった。

しかし彼は自分が見た限り剣しか使っていなかった。

 

「チッ、誰だ!」

 

気づかれたのなら仕方ない。

レインはとっさに剣を構えつつ出た。

 

「母さん!?」

 

「レイン!?それにファイン!?いけません、逃げなさい!」

 

「え、」

 

男の行動に気が付いたファインはとっさにレインを連れてよける。

そこに雷の残像が残った。

その直後に男に向かって雷が走った。

 

「チッ、まったくあいつも面倒な事をしてくれる」

 

「させませんよ」

 

「ど、どういうこと…?」

 

「レイン、ファイン。彼の事は私がやりますからあなたたちは早く!」

 

「時の神殿の力狙いか!」

 

ファインはあの男はただのレインの師匠に似た人物だと感じた。

なぜなら持つ雰囲気が全く違うからだ。

しかしレインは戸惑った。

似た人物がいくつもいるのだろうか?

それよりも腰にさしてある剣が知っているものだったから。

 

「あなたは…一体何者なんですか」

 

はじめてレインは男に聞いた。

男は楽しそうに言った。

 

「我が名はギムレー。貴様も聞いたことあるだろう?ククク…せっかくだ、貴様らも食らってやろう」

 

「ギムレー!?」

 

なぜ目の前に…?と思ったところで

 

「血族を食らえばさらに我が力も増すだろうな…。甥にはナーガの力もあるが貴様はどちらか問えば母寄り。そして子が俺寄りとなればな」

 

「血族…?」

 

「トロン!」

 

母はトロンを放つ。

しかし男は軽々とよける。

 

「まるで聞かせたくないかのようだな、プリズム。よほどこいつらが大切か」

 

「当然です。貴方なんかに渡しません!」

 

女はレインとファインを守るように立つ。

 

「ひとつ聞かせてください!僕の師匠とあなたは何か関係あるんですか!」

 

「レイン!」

 

「ああ、あいつか。手出しはできなかったが滑稽だったぞ。貴様が我に師という姿はな」

 

「え」

 

ギムレーが、師匠?でも。

 

「まぁまだ器の心が残っていた自体が驚きだがな。しかし気づくのが遅れた。そのせいでファルシオンが貴様らの手に落ちたのは失敗だったな」

 

「レインの師匠からファルシオンを受け取ったとは驚きましたが…あの人だったから所持していたのですか」

 

「え、え?どういうこと?」

 

ファインはどうなっているのかまだわかっていなかった。

 

「簡単な話だ。我――いや、この器の男とそこの女は血を分けた兄妹。女の息子の貴様は我が甥、そして――貴様の父は女の兄だろう」

 

「あ…私が…ギムレーの娘…?そんな…」

 

「ファイン、あなたはギムレーの娘ではありません。ルフレ兄さんの娘です!たとえギムレーが兄さんを使って体を使ったとしても…!」

 

「まあいい、どのみち食らってしまえば関係ない」

 

ギムレーは力をため――レインたちに放つ。

 

「ぐっ…」

 

だが、それも女が庇った。

 

「は、やく…」

 

「母さん!」

 

「そ、そんな…」

 

攻撃をもろに食らった女は誰が見てももう間もないとわかるだろう。

杖使いでもあるファインは、助けられないことに何も言えなかった。

 

「次で最後だ」

 

「レイン、行きましょう!」

 

「けど…」

 

ギムレーの力がたまる。

 

「お願い……過去へ……兄…さんを……クロム、さん…」

 

放つ、直前で

 

「ぐっ…あぁ!」

 

ギムレーが苦しむ声が聞こえた。

溜めていた力は消え失せ、左手を抑えていた。

 

「くっ……」

 

そして腰にあった剣を取り出して自分の肩に刺したのだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ぐっ……」

 

「え?」

 

ギムレーはその場に膝をつく。

敵意は消えているが…。

 

「何を……ぼさっと…しているんだ……」

 

でた言葉は過去へ行く催促。

 

「俺が……ギムレーを…抑えるなんて……もう、わずかしか……できないんだから……」

 

「兄……さん?」

 

女は男の話し方で顔をあげた。

 

「し、師匠!?」

 

「来るな!……頼むから…俺が俺でいるときうちに……」

 

「父…さん…なの?」

 

男のもとへ行こうとしたレインに男は止め、ファインは聞いた。

 

「……父親らしいことはしてないがな……あの時は…ちゃんと帰ってくるつもりだった……。

ティアモと、セレナ…生まれたばかりのお前…ファインのもとに……。

だけど、もう無理だ。だから……時の神殿の力で過去へ行ってくれ。

もう、俺は……知り合いを…誰かを殺したくない……!」

 

「兄さん……」

 

「あの時だって……!俺は止めれなかった……!ティアモを助ける事が出来ずスミアとリズを辛うじて逃がすことはできてもいずれ死ぬ傷だった……!」

 

「っ!」

 

そうだ、セレナから聞いた母の最期。

 

〝あのね…ファイン……母さんは…母さんたちは…先日ギムレーに殺されたの…。

巡回しているときにギムレーがやって来たって…わざわざ人の姿をとって、ね……。

母さんはそのまま殺されて…スミアさんはリズさんをつれて逃げ切れたけれどそのまま息絶えたの…”

 

先日。そして疲れた顔の師匠。

あの時、自分の妻をこの手で殺したのだ。

 

「グ…お、オノレ…己ルフレっ!!」

 

男は苦しみだした。

 

「父さん!」

 

「師匠!」

 

「は、やく…行くんだ……!」

 

男は肩に刺していた剣を引き裂いて自分自身に切りつけた。

そして――ファインの方へと投げた。

 

「アルカンシェルは……ギムレーの牙で作られたから……ギムレーに対する効果もある……

過去に何かあるかわからん。もってけ!」

 

真の持ち主の血を吸った剣は、ファインの手に収まったとき紅く輝いた。

父を救おうと決意したファイン。

母を救おうと決意したレインは時の神殿の力で過去へ飛ぶ。

飛ぶ際にギムレーが逃がさんばかりに力を放つも移転の力は発動した。

しかしギムレーの力により、レインは己と母親以外の記憶を失い、

ファインは父親に関する記憶をすべて失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティアモ。俺はちゃんとここに戻ってくるつもりだ。どうなろうとも、俺の世界はここなんだ」

 

男の言葉にファインは頭痛が走り――失っていた父親の記憶を取り戻した。

 

「別れは、言わない」

 

「ま、まって…待ってください、父さん!」

 

男は走って行った。

自分がやるべきことをやるために。

 

「ファイン……」

 

「父さんが、死んじゃう…いや…せっかく思い出したのに…助けたいって約束したのに…」

 

涙が止まらなかった。

どうしてこのときに思い出したのだろう。

もっと早く思い出したかった。

もっと……一緒に過ごしたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――もう大丈夫だ、後は俺がやる」

 

ファルシオンでギムレーをとどめを刺そうとしたレインの父親を止めたのは男だった。

その人物は今まであった人でもある。

だけど、まとう雰囲気がちがった。

知っている人。

とても苦しんでいた人。

 

「これで―――補える」

 

男は剣を構える。

 

「ま……待って……待ってください、師匠!いえ、ルフレさん!!」

 

ここで…声をかけなければもう話す事はできないんじゃないかと錯覚を覚える。

 

「ルフレ、だと…」

 

「ナ……!」

 

クロムもギムレーも驚いていた。

そうだ、男は…ここではマークと名乗っていたのだから。

 

「レインは、俺の〝本当の名前”を知っていたか」

 

「その…だって、僕は…あなたから剣を教わったから…」

 

声はだんだんと小さくなっていった。

今ようやく思い出した。

悔しかった。

もっと、教えて欲しかった。

 

 

そして――

 

少年の母は心を、魂を消滅させ体だけ残り。

少女の父は体を、存在を消滅して何も残らなかった。

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

「そうだったのか…」

 

話を聞き終わったクロムはつぶやいた。

ルフレはレインの頭を撫でていた。

 

「僕は…待ちます…師匠の帰りを…」

 

「当然だ。あいつは絶対帰ってくるさ」

 

「私だってまだ聞きたいこと、ありますからね」

 

クロムとレイン、そしてルフレが話している中、ルキナは腰に差すファルシオンを見る。

レインが持ってきた剣。

あれは…ギムレーと戦い続けていた軍師が希望を見出しレインから自分へと渡ったのだと。

 

「私も……待ちます。いずれ帰ってきます」

 

幼い記憶にある彼は不器用だけれど、思いやりのある人だったと思い出しながら――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてこちらも…

 

途中で泣き出したファインにセレナとティアモは慰めていた。

とんとんと扉をたたく音が聞こえた。

 

「ホークです、飲み物を用意したのですがどうですか?」

 

「ええ、ありがとう。どうぞ」

 

ティアモに許可をもらいホークが入室した。

 

「熱いのでやけどに気を付けてください」

 

「ありがとう」

 

無言、だったけれど彼女たちもまた、マークの帰りを待っているのだ。

 

 

 

 

 

後日、アズールとウードと共にセレナのもとに一通の手紙が届き、出かけてくるという三人に、

彼らの家族は笑顔で見送った。

帰ってくると信じているから。

 

 

 







今回の追憶編はレインとファインです。

原作でも元のマークは幼いんですけれど、まぁなぜか記憶が自分とマイユニしか記憶ないですが…、
この物語は男女ともにでますし片方が通常で片方が逆にしようと思ったのがまずですね。
ただ、原作でも不明なマークですし、かなりの想像が入ってます。
幼い点から戦う術を教えてなかったというわけですね。
まあクラスは決めてなかったので後付けがおおきいですが。
(当所はシンシアの対でもかんがえてダークペガサスとか考えてました)

その結果、レインにとって男マイユニは師匠になりました。
ファインにとっても知らずに父親と過ごしていました。



次回からの追憶編は〝ルフレ”視点となります。
この話で出てきた〝ルフレ”に関する疑問はその時に解決、判断する予定ですので。



それとifルートについて活動報告に載せておきました。
そちらで質問に答えてくださるとうれしいです。

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