ふわっといずデス?   作:とりなんこつ

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その5 日記8月分後半

8月 12日 (日よう日)

 

キャンプ二日目で、朝早くから弦十郎おじさんにつれれられて森のおくに行きました。

「よし、ここらならたくさん虫がいそうだな」

昨日、九音くんとイノシシをつかまえたときにめぼしをつけていたそうです。

「ちぇすとッ!」といって弦十郎おじさんがふとい木をたたくと、木がびりびりとふるえて、虫がぼとぼとぼとーってたくさんおちてきました。カブトムシとクワガタムシもいっぱいです。

でも、ケムシやムカデもたくさんおちてきて、詩音ちゃんは泣いちゃいました。

弦十郎おじさんが詩音ちゃんをだっこしてなぐさめているとなりで、九音くんも「ちょっせぇ! ちょっせぇ!」と木をたたいてました。

なんでちょっせえなんだろうと思ったけど、なんだかわたしもマネしたくなって、テントのところにもどってラジオ体そうをするとき、九音くんといっしょに「ちょっせぇ!」とかけ声をかけながら体そうしました。とってもたのしかったです。

でも、なんかクリスさんはこまったかおをしてたんだけど、なんでだろ?

 

あさごはんを食べて、それからみんなで川あそびをしました。

クリスさんが水でっぽうでハチをやっつけたのはすごかったなあ。

立花先生が川の真ん中で足ぶみすると、ぶわーっと川の水がとんで、魚もたくさんとんできたのはおもしろかったです。

お昼はその魚をみんなでやいて食べて、テントをかたづけてかいさんとなりました。

かえりの車の中でわたしはねむっちゃったみたいで、目がさめたらおうちのソファーでした。

九音くんと詩音ちゃんにバイバイできなかったのはざんねんだな。

また来年もみんないっしょにキャンプにいけたらいいな、と思います。

 

 

 

 

8月 13日 (月よう日)

 

今日は、パパとママといっしょにはわいわんホテル? とかいうところにとまりにきました。

りっぱなホテルの前に、まっしろいすなはまが広がっていてびっくりです。ぷらいべーとびーちとかいうんだって。

みんなでみずぎにきがえておよぎにいったんだけど、パパはすぐにひかげでねちゃいました。

「パパは今日もうんてんしてつかれてるんデスよ」

ママがそういってねかせてあげるようにいったので、ママと二人であそびました。

あ、ねているパパはくびだけ出してすなにうめてあげました。

 

夜はバイキングで、おいしいりょうりがたくさんです。

デザートまで食べておなかいっぱいでいると、なんかショーがはじまりました。

どんどこってタイコの音に、なんかたくさんの男の人たちが火のついた長いぼうをクルクルとふりまわしてダンスをしてかっこよかったです。

そしたら、みていたお客さんたちがステージによばれて火のついてないぼうをわたされてました。

みんなくるくるとまわそうとしてしっぱいしてばかりです。

するとママもよばれました。

ママもしっぱいするかな、と思ってドキドキしていたら、ママはすごいいきおいでクルクルとぼうをまわしてびっくりです。男の人たちよりじょうずだったんじゃないかな?

みんなからすごいはくしゅをされながらママはステージからおりてきました。

「むかしはもっとうまくできたんデスけどね」

びっくりしているわたしに、ママはこうもいってました。

「ママはぽーるだんすもできるんデスよ?」

ぽーるだんすってなんだろ?って思っていると、ママはパパに、まだ教育にわるい! っておこられてました。たのしかったけど、またママのナゾがふえた夜でした。むむむ。

 

 

 

 

 

8月 14日 (火よう日)

 

 

ホテルからかえってきてから、おぼんなので、夕方にみんなでおはかまいりにいきました。

パパとママといくと、もう調姉さんとマリアさんもいます。

マリアさんがわたしのプレゼントしたブローチをつけてくれていてうれしかったな。

おはかをまえに、みんなで手をあわせておいのりしました。

このおはかには、ママたちのお母さんのナスターシャさんがねむっているんだって。

すると、わたしにとってはおばあちゃんなのかしら?

わたしが生まれる前になくなってしまったそうだけど、えいぞうとかはたくさんのこっているそうです。

「律花が大きくなったら教えてあげるわ。マムがしてくれたことを、色々とね」

マリアさんがそういって頭をなでてくれました。

ママも調姉さんも泣きそうなかおをしてて、なんだかちょっとかなしくてさみしい一日でした。

 

 

 

 

 

8月 20日 (月よう日)

 

今日は、初めてパパの職場に見学にいく日です。

本当は詩音ちゃんもいっしょにいくはずだったんだけど、カゼをひいちゃっておやすみです。

だから九音くんと二人きりで、デートみたいでドキドキしました。

パパの職場は、すごくでっかいお船です。

せんすいかんっていって、海の中にもぐれるんだって。

中はとっても広くて、いろんなけんきゅうしつとかたくさんあります。

その一つで、なんか九音くんといっしょにけんさをうけました。

「ごめんなさいね、ほんぶようのあいしーちっぷを作るから」って言ってたのは友里さん。

弦十郎おじさんのぶかなんだって。

なんかちゅうしゃみたいなのをさされてチクリとしたけど、血とかもでなかったのでへいきへっちゃらです。

「九音くんも律花もえらいな」

パパが食堂でおひるごはんをごちそうしてくれました。とってもおいしかったです。

食後のコーヒーをのんでいると、キョロキョロしていた九音くんが小さな声でいってきました。

「律花ちゃん、みた?」

「みたって何を?」

「さっき、ろうかを小さな女の子が歩いていったんだけど」

そういわれても、見てなかったのでしらないというしかありません。

わたしたちと同じで職場見学なのかなあ、と思っていたら、九音くんに手をつかまれました。

「ちょっとトイレ行ってきます」

ろうかに出ると、九音くんはずんずんと歩いていきます。

わたしが、トイレはあっちだよ? といってもきいてくれません。

「たぶんこっちだとおもうんだけど…」

って、だいぶ遠いところまで歩いたと思います。

なんか大きなとびらの横に、ぱそこんみたいにキーボードがついてました。

行き止まりだから帰ろうよ、とわたしはいったんだけど、九音くんはぽちぽちとキーボードをさわっています。それでも開かないので、いきなりたたいたのにはびっくりしました。

「お父さんが、きかいはたたけばなおるッ! っていってた」そうです。

そしたら本当にとびらが開いたので、二度びっくりです。

「へえー、本当にたたくとなおるんだなあ」

と九音くんもおどろいてました。

でも、キーボードはへこんでなんかバチバチいっているし、なおすというよりこわしていたんじゃないかなあ?

しばらくいったらまたとびらがあって、九音くんも「やっさいもっさい!」っていってまたたたいてました。

わたしがちょせぇ!じゃないの? ってきいたらもうふるいんだって。

 

そうやって、とびらを10こくらいあけたと思います。

なんかどんどん暗くなってきたので、九音くんに「もう帰ろう」ってもう一度声をかけたときでした。

「なんでこんなところにこどもがいるんだゾ?」

いきなり、まっかなかみの毛にギザギザの歯の人が立っていて、きぜつしちゃうかと思いました。

まるで絵本で見た赤オニみたいで、わたしはこわくて何もいえません。

「わるい子はたべられてももんくはいえないんだゾ」

ピカピカしたつめもすごくとがっていて、ああ、本当にわたしは食べられちゃうんだ、となみだが出たとき、九音くんが大きな声をあげました。

「わあ、おねえさんのつめ、うるヴぁりんみたいでちょうかっこいい!」

なんか赤オニもびっくりしたみたいです。

そしたらまたべつの人の声もきこえてきて、わたしは今日で一年ぶんくらいびっくりしてしまったと思います。

「だいじょうぶですよ、ミカ。その子たちはたいせつなおきゃくさまです」

なんかおさげのかみの毛の女の子が立っていました。

「はじめまして。ボクはエルフナインといいます。九音くんに律花ちゃん、ようこそ」

この子がパパたちのいっていたエルフナインって人なんだって、いま日記を書いていて気づきました。

わたしと九音くんが入っていったのは、そのエルフナインって人のけんきゅうしつだったんだって。

そこでお茶とおかしをごちそうになったんだけど、わたしは赤オニの人がこわくてなにをお話したのかあまりおぼえていません。ほかにもギザギザ歯の青オニみたいな人までいたし。

 

だから、パパがむかえにきてくれたときは、だきついて大声で泣いちゃいました。

そして九音くんは、弦十郎おじさんにすごいゲンコツをおとされてました。

パパは「かってに知らない場所にいっちゃダメだよ」とわたしをしかったあと「これから少しずつ、律花にも色々と教えてあげるから」と頭をなでてくれました。

色々ってなあに? ってきいたら、それもふくめて色々なんだって。

 

パパの職場からの帰り道、九音くんから小さな声で「またエルフナインちゃんのところにあそびにいこう」ってさそわれました。

オニの人たちがこわくないの?ってきいても、九音くんはエルフナインちゃんはちょーかわいいってしか言わないのですごくもやもやします。

まだへんじはしてないけど、こんど詩音ちゃんにそうだんしてみようっと。

 

 

 

 

 

 


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