夢ってなんだろう
最近俺の中でこの言葉が浮かぶ。
学校の先生は『早めに自分の将来の夢を見つけてそれに向けて頑張るように』っていうけどその夢がなかなか見つからない。
世の中は『好きなこと=将来の夢』って考える人が多いけど正直それが正しいのかもわからないしそれで成功するかどうかと言われると話も別になってくる。
かといって安全な橋を選んで確実に失敗しない方向を選ぶという手もあるがそれが自分の好きじゃないことだとして仕事にすると長続きするかといわれたらはっきりと肯定出来ないだろう。
こんなことをいっておいてなんだけど俺にも一応夢はあった。
でもその夢はとても現実的ではなくもう過去のものとなった。
故にその夢は幻となったようなものだった。
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「まりなさん、夢って何なんですかね?」
「えっ? 何? 突然どうしたの?」
唐突に疑問を投げ掛けられた女性『月島まりな』は困惑する。そりゃ突然謎の質問をされたら誰だってそうなるだろう。
「いや、今日も先生に『早いとこ夢見つけとかないと将来への計画がたてられなくなるぞ』って言われまして」
「なるほど。そういうことか」
「そんで色々考えた訳ですけどやっぱり『これだ!』って夢が無いんですよね。どれも現実的に難しそうだし」
「うーん……。でもさ、そういう難しいこと抜きにして考えてみたらいいんじゃないかな?」
「ところでまりなさんってなんか夢とかあったりしたんですか?」
「そうだな……。あったのはあったけど……色々とね?」
「はあ……」
「まあ……思うように行かなくてそのままってところかな?」
「えっと……なんか……すみませんでした」
「いやいや、もう終わったことだし気にしなくてもいいよ。だから頭あげて!」
目の前で深々と頭を下げる青年はそう言われると元に戻ったが自分の発言により嫌なことを思い出させたのではないかと罪悪感を抱いていた。
「でも夢ってそうそう叶うものじゃないかも知れないけどさ、それを追いかけてみるのに無駄なことは無いんじゃないかな?」
「そんなものなんですかね……」
「それよりそろそろ上がりの時間じゃないの?」
まりなが時計を指差し、それを見ると時刻は既に6時をまわっていた。「あ」と思い出したかのように青年は更衣室に戻り服を着替えて荷物を纏めて帰り支度を済ませると「お疲れ様です」と頭を下げて帰って行った。
「…………夢、か……」
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「ふぃー……。なんか異様に疲れたな……」
先ほどまでバイト先の『CiRCLE 』にいた青年はうっすらと暗くなった夜道を歩いていた。
「夢を追うことに無駄なことはない……か……」
まりなさんから言われた言葉をそのまま呟いてどこか遠くを見つめていた。
周りの人は多くが何かしらの目標を持って進んでいるだろう。だが俺はどうだ? ただなんとなく今を生きてなんとなく時間を過ごしている。
果たしてこんなやつに夢など見つけることができるのだろうか。そんなことを考えていると何処からか妙な声が聞こえた。
「あの……私急いでるんですけど……」
「良いじゃねえか! ちょっと俺に付き合えよ! ん?」
最悪だ。
よりにもよってこんな現場に出くわしてしまうとは……。もしこの状況を見捨ててしまえば後々罪悪感にかられるだろう。かといって俺が出しゃばったところで勝てるとは言えないし、無闇に突っ込んで返り討ちにあったら元も子もない。
「どーするかな……」
カラン……
「あ……」
どうやってこの状況を乗りきるか考えていると足元にあったら空き缶に気がつかずそのまま蹴ってしまった。当然そこにいた二人にも完全に気づかれてしまいどちらにせよリスクが生じる事が確定してしまった。
「おいそこのガキ、なに見てんだ? ん?」
うわぁ……。典型的なチンピラだよ。控えめに言ってめんどくさいタイプだこれ……。
それよりも今はこの状況をどうするかだ。
知り合いのふりをして彼女を連れて逃げる?
そもそもそれが成功するのは漫画や創作の世界だけだ。
戦うか?
相手は図体のでかいチンピラ、対する俺は格闘技経験ゼロ。どっちが勝つかは目に見えてるだろう。
いずれにしろ勝利の道筋が決まらないことにはどうにも出来ない。……悔しいけどこれは俗に言う『詰み』というものかもしれない。
緊迫した空気の中、俺は女の子の方を見た。その子の顔は今にも押し潰されそうな思いをしているようだった。
『助けて』
そんな声が聞こえた気がした。別に彼女が言ってた訳ではないし俺がエスパーな訳でもない。でもなんとなくそんな気がしている。あくまで幻聴だろうけどもここで見捨てたら男が廃る、というものだろう。
「てめーみたいな価値のないガキに用はねえからどっか行ってろ。もしこの事誰かに言ったらぶち殺すぞ」
あからさまにこっちを馬鹿にしたような言い振りだ。これは少々いらっときた。チンピラとは言えどこのまま馬鹿にされっぱなしで良いのか? 俺の中では否だ。
「あっそ。……でもさ、そういう人って実際人殺せない……というか典型的に度胸ないだけじゃないのかな?」
「なんだと?」
「だって今もそこの女の子相手に一方的に脅してるし。そもそもナンパも人が少ない所でしか出来ない人に俺のことをとやかく言われたく無いんだけど? やるなら堂々とやったら?」
「てめえもう一回言ってみろ!」
よしよし、良い感じに挑発に乗ってくれた。こいつが脳みそすっからかんのアホで助かった。
さて……そろそろ止めの言葉を叩き混むかな……。
「めんどくさいからまとめていうけどあんたみたいなのを人は意気地無しって言うんだよ」
「この糞ガキ……っ! 言わせておけば!」
最後に敢えて逆鱗に触れる言葉をぶちこむことで怒りを失ったチンピラは俺に向かって突撃してきた。こうしたのは良いけどこいつには肉弾戦で勝てる見込みは無し……。後やることは……。
「野郎ぶっ殺してやる!」
「危なっ!」
とりあえずチンピラの攻撃を上手いこと避けて反対側に回り込む。そのまま近くのごみ袋を2つほど投げつけてチンピラとの距離をとると女の子の近くに行った。
「とりあえず逃げて! というか逃げるよ! 走れる!?」
「えっ!? うんわかった!」
少女の手を引き走る。後ろから追っ手が来るがこれは止まったら負けだ。そう思いながら走る。
後少し……。後少し耐えることが出来れば……。
俺たちが走って向かう場所……。
そこは──
「お巡りさん助けてください!」
交番だ。だって昔からよく言われてたじゃん? 何か困ったことがあったらお巡りさんに頼れって。
肝心のお巡りさんは突然の来訪者に戸惑うも俺の話を聞き、追って来たチンピラの確保に出る。その間俺と少女は交番の中でやり過ごした。
数分後、二人ほど応援を呼び男は無事確保された。話を聞く所あの人は前にも問題を起こし警察のお世話になったことがあるらしい。初犯では無いので前より重い処分になるだろう。
何はともあれこれにて一件落着……ってところか。
「あ……あの!」
帰ろうとしていると先ほどの少女に呼び止められた。
「助けてくれてありがとうございました!」
「いや、こちらこそ無理に走らせてごめん」
「えっ? 大丈夫ですよ! それより助けてくれたお礼がしたいんですけど……」
来ちゃったよ。あんまりこういう展開やられてもな……という気はある。お礼って言われてもなんか逆に気を使わせそうだしな……。
「じゃあ……1つお願い聞いて貰ってもいいかな?」
「えっ? 大丈夫ですけど……」
「じゃあ……俺と友達になってくれないかな?」
「えっ?」
少女はびっくりしたような表情だった。でも仕方ない。気を使わせずなおかつお互いウィンウィンの結末にするにはこれが最適だと思ったからだ。
「えっと……ダメだったかな?」
「いえ……それで良いんですか?」
「もちろん。君さえ良ければ」
俺がそう言うと少女は頭を下げて「こちらこそよろしくお願いします!」と言った。
これが夢を忘れた少年『佐倉イサム』とアイドルを夢見る少女『丸山彩』の出会いだった。
皆さんどうもこんにちは。初めましての方は初めまして。キズナカナタです。
ついに掛け持ち投稿に手を出しましたこの作者。
今回はしっかりしたストーリーものでやりたいなと思っておりますので長い目で見守ってくださると嬉しいです。
追伸
@kanata_kizuna
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