遂にこの日が来た。布団から出てカーテンを開けると朝の日差しが部屋に入ってくる。現時刻は7時。8時までに出れば余裕で間に合うだろう。朝食のトーストを食べて服を着替えると俺は荷物を持ち靴を履いて玄関を開ける。
「行ってきます。」
向かう先は──
Pastel*palettesのライブ会場。
◆ ◆ ◆ ◆
「うわあ…凄い人。」
特に事故に巻き込まれることもなく早めについたけど会場の前は既に入場者による長蛇の列が出来ていた。でもこれ以上増えるとなるとこの時間に来ておいて正解だろう。
「ふう…。」
列の最後尾に並んで時間を待つ今は8時30分だから後30分すれば入場が始まる。とりあえずそれまで暇だから持ってきていたミュージックプレイヤーを起動して耳にイヤホンを差し音楽を聴きながら時間を待つ。
ピロリン
スマホから音が鳴る。誰からだろうかと思いながらスマホを見るとそこには『丸山彩』とあった。
『イサムくん、今日大丈夫かな?会場ついた?』
意外と心配性だった彼女からのメッセージを見て思わずくすりと笑ってしまう。
『大丈夫だよ。ありがとう。』
『良かった~。今日は楽しんで行ってね!私も頑張るから!』
こんなやり取りだけど凄く楽しい。今俺はどんな顔しているかはわからないけど思ってるよりもくしゃっとしてると思う。周りの人にこの事を言ったらどんな風に思われるだろう。
そんなことを考えていた時誰かと背中がぶつかった。
「あ、すみません。」
「いやこっちこそ悪い…ん?」
「え?」
俺がぶつかった人は眼鏡にマスクをつけていて帽子を被っていていかにも怪しい人物……ではあるがその声には聞き覚えがあったしこの人物には見覚えがある。
「もしかして…アキラ?」
そう、多分この人は藤代アキラである。というか一瞬ビクッとしてたよね?見逃さなかったよ?
「…誰だ?俺はアキラじゃないぞ。」
「いやいや、バレバレだから。何で変装してるのかは知らないけどかえってわかるから。」
「いや俺はアキラじゃない…。………山田太郎だ。」
「いやなにそのいかにも成り行きで作りましたよって偽名。というかそのマスクと眼鏡外した方がいいよ?怪しいから。」
そんなことを言い合っていると時間になり入場が始まったのでスタッフの指示に従い俺たちも入場することにした。
因みに途中で人混みでわちゃわちゃしたせいで隣の人物の眼鏡と帽子がとれてアキラだということが確定しました。
◆ ◆ ◆ ◆
入場者が会場に入り暫くがたった。
「ねえアキラ。」
「なんだ。」
「このライブ…成功するよね。」
「知らん。」
そんな会話をしていると会社のブザーが鳴り、ライトが消え、周りの人たちは次第にざわつき始める。多分これはもうすぐ始まるというサインなんだろう。
そしてステージにスポットライトが当たるとそこには五人の華やかな少女達が立っていた。
ボーカル 丸山彩
ギター 氷川日菜
ベース 白鷺千聖
ドラム 大和麻弥
キーボード 若宮イヴ
この五人の登場に周囲わ歓声をあげ、それぞれが持つカラースティックが色とりどりに光る。
「皆さーん!こんにちは!私達…」
「「「「「Pastel*palettesです!」」」」」
「まずは一曲聴いてください。『しゅわりん☆どり~みん』。」
彩の掛け声によりポップな音楽が会場中に広がる。前のように機械から発せられる音じゃない、本当の彼女達の音楽が。
「えっ?これ本当に演奏してんのか?」
「少し音が外れてるところがあったし間違いないよ。本当に演奏してる。」
「アイドルなのに演奏してんのか…。凄いな。」
周りの人達も次第に彼女達の音に耳を傾け始めた。
そしてステージを見ると彼女が必死で、それでも楽しそうに演奏していた。
水色の子は慣れた手つきでギターをかき鳴らし、黄色の子…白鷺千聖は反対に慣れていないところはあるがそれでもしっかりと弾いている。緑色の子は自分のやるべきことを成し遂げながらも楽しそうにドラムを叩き、紫の少女は今までの努力は無駄にならないと言わんがばかりに自信を持ってキーボードを弾く。
そしてピンク色の少女…彩は緊張しているのかどことなくぎこちないところはあるがそれでも自分が積み上げてきたものの為に、ここにいる大勢の観客の為に歌う。その姿はまるで、今この瞬間から空にはばたこうとする鳥のようだった。
「凄い…。」
あまりの圧倒さにこんな言葉しか出なかった。
そして最初の曲は終わり、会場は大盛り上がりだった。
「皆さん、改めましてPastel*palettesボーカルの彩でーす!今日は来てくれてありがとうーっ!最初に…皆さんに謝りたいことがあります。」
そうして彼女達は前回のライブで当てフリの演奏をして多くのファンに嘘をついたことを謝罪した。そして観客の皆は俺が思っていたよりもおおらかなのか彼女達の謝罪を受け入れ今後も応援していくというメッセージやさっきの演奏に対する好評を述べていた。ステージの上の彼女達はその言葉を聞いて嬉しそうな表情を浮かべ彩に至っては既に泣きそうになっていた。
「これからも頑張ってー!でも音はずれてたよー!」
ありゃ。誰だか知らないけどそこを突っ込んじゃったか。その声で観客席では笑いが起きて彩は「これでも練習したんですけど…」と苦笑いしていた。
その後も白鷺千聖を始めとしてパスパレの世界がステージに溢れていた。ステージの上だけどどことなく自然体で…見てるこっちが微笑ましくなるような。そんな彼女が俺の…観客達の前にいた。
「それじゃあ、次ももちろん生演奏で皆さんにお聞かせしたいと思います。彩ちゃん、曲紹介よろしくね。」
「は、はいっ!それでは聞いてください───」
「『パスパレボリューションず☆』!」
彩の掛け声と共に再び彼女達の音楽が始まる。
ギター、ベース、ドラム、キーボード、そしてボーカル。バラバラな個性が1つとなって奏でる音が会場に広がる。
願わくば────この時間が終わりませんように。
そんな思いを抱き、俺はその輝きを目に焼き付けていた。
次回『俺は俺として』
今年のGWが10連休か~。まあ私はバイト三昧ですけどね。
新しくコメントをくださった、流星@睡眠不足さん、水色( ^ω^ )さん、ありがとうございます!
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