これはとある日曜日のこと。
「始めるか。」
目の前に広がるのは大量の敵。
攻略方法は自らの努力のみ。
彼はたった1人で立ち向かう。
この戦いに…。
「行くよ!」
ヴオオオオン…。
さて、俺は今部屋で1人掃除機をかけていた。えっ?さっきまでのバトル物が始まりそうな冒頭は何だったのか?そもそも敵ってなんなんだよって?そりゃ…敵はこの大量の物資だけど?あとこの下りに関しては俺もよく知らない。
「あ~あ、この本凄く埃被ってるよ…。とりあえずこれ払わないことにはどうにも………ゲッホゲッホ!!」
埃を払ったら想像の倍は舞い上がりそれを吸ってしまった為思いっきり咳き込んでしまった。というか半年くらい掃除しなかったらこんなになるのか。これからはこまめに掃除しよ。
それから30分ほど過ぎ部屋の整理も一区切りついたところでペットボトルのジュースを飲んでいた。
とりあえずどうして突然部屋の掃除を始めたのか説明しておくと……まず俺は今まで夢という物がわからなかった。というのもあったのはあったんだけどその夢を完膚なきに否定されてからどうにも心に火がつかない状態が続いていたわけで。でもある時『丸山彩』という少女に出会った。彼女は俺と違い大きな夢を持っていた。それもアイドルになるという夢を。そんな彼女と接し、どれだけ辛くても夢を諦めようとしない姿を見て俺はもう一度夢を…自分が好きだと思えるものを探してみようと思った。
という訳で心機一転という感じで部屋の掃除を始めてみました!(いやどういう感じ?)まあ何事も形からって言うしね。
「さて、このあとは…」
椅子を回しながら考え事をしているとさっきの掃除で出てきた謎のクッキー缶が目に入った。
「そういやこれ何が入ってるんだろ?」
缶を開けようとするが錆びているのかなかなか開かない。思いきって缶の底を叩いてみたがやはり開かない…。
「……これならどうだっ!」
近くにあった粘土用延べ棒で横から叩いてみたところ蓋が外れ中からジャラジャラと物資が流れ出る。それは昔集めたビー玉だったりファーストフード店のおまけのおもちゃだったりするが…。
「あ~あ、せっかく綺麗にしたのに…」
さっきのせいで流れ出た物が散らばり再び部屋が散らかってしまったのだ。仕方なくビー玉やおもちゃを拾い集めてる中であるものが目に入った。
「これって…。」
手に取ったのは……ハーモニカだった。昔親に貰ってそのまま無くしていた物だ。
「こんなところにあったんだ…。」
埃を払いそれをじっと見てみる。
白いハーモニカには所々傷が入っていたが決して壊れているという訳ではない。試しに吹いていたけど音も割れてたりはしなかった為まだ使えるんだろう。
ハーモニカを見ながらふと思い出した。俺は昔音楽が好きでギターを欲しがっていたことを。
「ギターか…。」
いい機会だし買う買わないは別にしてとりあえず見に行ってみようと思い、さっき散らかったものを片付けて家を出た。
◆ ◆ ◆ ◆
「いらっしゃいませー!」
江戸川楽器店に入った俺は早速ギター売り場に足を運ぶ。そこにはアコギからエレキまで多彩なギターが取り扱われていた。まるでギターのバーゲンセールだ。まあ楽器店だし当たり前か。
「値段は…………ゑ?」
驚きの価格に思わず変な声が出た。たまたま手に取ったギターは単品で50000円、セット価格で70000円だった。まさかの初っぱなから予算倒れということになってしまった。まあ是非もないよネ。
「というかいっぱいあるけど…これ何が違うんだろ…?」
音楽好きなだけで楽器に関する知識ゼロな為にいきなりこの有り様である。もう前途多難にもほどがあると言われても反論が出来ない。でもしょうがないじゃん、使ったことのある楽器なんてリコーダーか学芸会で役貰った小太鼓くらいだし。
「………どうしよっかな…おっと」
と考え事をしていると誰かとぶつかった。
「すみません。」
「いえ、こちらこそ。」
茶髪で眼鏡をかけた女の子とぶつかりお互いに謝罪してそのまま俺は場所を移動した。とりあえず財布の中にもギター買えるようなお金は無いからギターに関する本を見ていこうかなと思い本のコーナーに向かい、しばらく色々な本を閲覧していた。
「あの…すみません。」
するとさっきぶつかった女の子が傍にきていた。
「えっと…どうしましたか?」
「いや、これを拾ったんですけどさっきぶつかったときに落とされたんじゃないかと思いまして…。」
彼女が渡してきたのは白色のハーモニカ。うん、完全に俺のだ。
「ありがとう。助かったよ。」
「いえいえ、それより…何か探されているんですか?」
「うん。ギターが気になってるんだけどどれがいいのかいまいちわからなくて。」
「そうでしたか。もし良かったらジブンが教えましょうか?」
「いいの?」
「はい。ここで会ったのも何かの縁でしょうし。」
そう言われて彼女のお世話になることになった。
◆ ◆ ◆ ◆
「それでですね。このギターなんですがまず音がですね…」
眼鏡の子に色々と説明してもらってるけどやっぱり専門的なことはいまいちわからない。でもこの子の説明が丁寧だから大体のことは理解できた気がする。それにしてもこの子…どこかで見たような…。
「どうしました?」
「あ、いやごめん。ちょっと色々と考えちゃって…。」
「もしかしてまたジブン…走ってましたかね?」
「そんなことないよ。結構分かりやすいし。」
「そうですか。ジブン、機材のことになるとよく口走っちゃって…。悪い癖だとは思うんですがどうしてもって感じなんですよね。」
少女はアハハ…と苦笑いしながら話した。
「そんなことないと思うよ?」
「…えっ?」
「だってさ、自分の好きなことに夢中になってそれを誰かに語れるってことはさ凄いことだと思う。それに君が色々教えてくれたおかげでギターの事なんて全くわからなかった俺も色々と知ることが出来たしさ。」
「そ…そうですか?」
「だからそれは悪いってことはないと思うよ?」
「あ…ありがとうございます!そう言ってくれるなんて…ジブン嬉しいです!」
女の子は機材の話をしていた時と同じくらいの満開の笑顔を向けてきた。うん…彩といいこの子といいどうして俺が最近会話するようになった女の子はこうも可愛い笑顔を向けてくるのか。というかここまで来ると俺明日死ぬのかな?と思ってしまう。
その後彼女から機材の話を聞いていると突然スマホが鳴った。俺はごめんと言ってその場から離れ電話に出た。
「もしもし?」
『イサム、今どこ?』
「ちょっと出掛けてるけど?」
『それならちょうど良かった。鶏肉買ってきてくれない?今日唐揚げにしようと思ったんだけどちょうど鶏肉きらしちゃって。』
「わかったよ…。それじゃ。」
スマホを閉じて再びその子の元に戻った。
「ごめん、ちょっと用事ができたから帰らなきゃいけなくなったんだけど…。」
「いえいえ、元々ジブンが誘ったことですし気にしなくてもいいですよ。」
「それでなんだけどさ…また機会があったら楽器のことについて教えてくれないかな?まだわからないことがあるからさ。」
「もちろんです!ジブンで良ければ!」
俺がそういうとその子はそうだ!とスマホを取り出した。
「せっかくですし○INEの交換しませんか?」
「うん、いいよ。」
俺とその子はアカウントを互いに登録した。
「申し遅れましたがジブンは大和麻弥って言います!上から読んでも下から読んでも大和麻弥です!……なんちゃって…。」
「上から読んでも下から読んでも……ほんとだ。凄っ。」
キツツキとかトマトとかその辺ならよく見かけたけどまさか人名でこんな奇跡があるとは思わなかった。
「俺は佐倉イサム。よろしく。」
その後俺は彼女と別れて母親の頼み通り鶏肉を商店街の精肉店で買い、途中の公園で少し休憩していた。
「……お金、貯めないとな。」
色々とギターを見たけど思ってたよりもギターって奥が深いんだなって再度確認した。でも麻弥さんのお陰で少しだけど色々とわかった気がする。
今はまだまだ道のりは遠いけど近い未来できっとその願いを自分の手で叶えたい。こんなこと彩と出会う前までは考えたことなかったのにね。
そんなことを考えながらポケットからハーモニカを取り出す。俺が今いる公園には周りには人がいなかった。
「また吹いてみようかな。」
何年ぶりかわからないハーモニカ。正直上手いわけでは無いし、吹きかたもうろ覚えの状態だ。それでも少しだけ体が覚えていた。だから…ここで吹いてみよう、そう思いハーモニカを口にして奏でてみた。
一人きりの公園にぎこちない音が流れる。誰かが聞いている訳でもない。ただ俺が吹きたかっただけの音が。
昔駅前で弾き語りをしていたお兄さんも、今もやっている人たちもそんな気持ちなのかな?彼らはどんな想いで音楽を奏でているのだろうか。そんなことを考えながら俺は一人でハーモニカを吹いていた。
近くで一人の少女がそのメロディーを聞いていたことも知らずに。
どうもキズカナです。しばらく投稿出来ずにすみませんでした。
はい、イサムくんが無くしたものはハーモニカでした!何でハーモニカかというと温泉好きで楽器と言えばハーモニカでしょということです!(特撮脳)
今回は麻耶ちゃんとイサムくんが遭遇した…という回ですね。楽器知識無知なイサムくんに色々教えてあげれるのはこの子くらいかな~と思い登場させました(作者も楽器知識ゼロです)。
因みにこの作品のヒロインは彩ちゃんです。もう一度言います、ヒロインは彩です(大事なことなので2回言いました)
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