「これどうしよう…。」
私の手元にあるのは2枚の映画のチケット。このチケットは元々妹が友達と見に行く予定だったんだけどどうやら緊急で相手の子に外せない用事が入ったらしく「お姉ちゃんがお友達と行ってきたら?」と言われて渡された。でも私には誘える人がいなくなった。というのも千聖ちゃんはお仕事で忙しいしイヴちゃんはモデルのお仕事が入ってるみたい。日菜ちゃんも麻弥ちゃんも予定があるみたいで…結局誰と行こうかと悩んでいた。
「うーん…後は…」
私はスマホを開いて○INEを見る。
「イサムくんは…大丈夫かな…?」
こうなったらイサムくんを誘うしかない。……とここまでいうと勘違いされやすいんだけどイサムくんとお出かけするのは凄く楽しいし私も誘いたい。ただ問題は…。
「よりによってこの映画……恋愛作品なんだよね…。」
そう、チケットの映画は男女の恋を描いたラブストーリー。イサムくんを誘うのに戸惑ったのは男の子がこういったジャンルの映画が好きなのかわからないのともしそうじゃなかった場合申し訳ないと思ったから。
「とりあえず、聞くだけ聞いてみようかな?」
私はそのままイサムくんに『恋愛ものの映画って興味あるかな?』と売って送信した。すると数分後に『問題ないよ』と帰ってきた。
『じゃあ今度の日曜日、一緒に映画観に行かない?妹から貰ったチケットがあるんだ。』
『わかった。』
そこからは待ち合わせ時間等を確認して○INEを閉じた。
「……ってよく考えるとこれ、デートのお誘いみたいだよね。」
しかも観る映画が恋愛モノ。ここまで来ると何も言わなくても意識してしまう。
「ううん!これはただの友達同士のお出かけ!何もやましいことはない!そう、純粋な友達としての…」
必死で今までの考えを振り払って落ち着こうとする。数分後、なんとか整理のついた私はベッドに横たわり枕に顔をうずくめた。
「私…何でこんなに意識してるんだろ…。」
イサムくんとこの間みたいにお出かけするだけ、それだけなのに考える度に胸がキュッとなって息苦しくなる。もちろんイサムくんと一緒にいられるのは久しぶりだし、会って色々とお話がしたい。だけどこの胸が苦しくなるような想いもある。
この想いは一体なんなんだろうか…。
◆ ◆ ◆ ◆
「よし、今回は先にこれたかな?」
一昨日の晩、バイトからあがってスマホを見るとなんと彩から○INEが来ていた。その内容は今度一緒に映画を観に行かないかというものだった。
そして昨日の夜、俺は早速服の用意から金銭の準備までして万全の状態を整えた。そして寝坊しないように23時にはもう眠りにつくようにしていた。遅刻なんてしたら本末転倒だもんね。そのお陰で今日は朝から結構スッキリして余裕を持って家を出れたのだ。それに前回は女子を待たせるという男としてあるまじきことをさせてしまった為、今回はこっちが待つ勢いで30分前に集合場所についた。
「それにしてもこうして彩と出掛けるのって久しぶりだな~。」
最後に一緒に出かけたのは…出会って間もない頃にカフェに誘われたところだった気がする。それ以降は…まあ色々と大変なことがあったし彩もアイドルの夢を叶えたことにより忙しくなったみたいだからそうそう時間が取れなかった。
「久しぶりで…凄く楽しみだな…。」
やっぱりこうして会うこと自体難しくなっている中で彼女と一緒にいられる俺は結構恵まれているのかもしれない。
ところでふと思ったけど彼女がアイドルデビューしてから始めて一緒に出かけることになったけどそこのところ大丈夫なんだろうか?最近だとアイドルが他の男友達と一緒にいたというだけで熱愛疑惑まで出てくるようになる。というか最近のマスコミは何でそんなにスクープに拘るんだろうね。別にアイドルが恋愛とかしててもいいじゃない人間なんだし。
「イサムくん!」
考え事をしているとこちらに彩が走ってきた。
「もう来てたんだ。早いね。」
「いや、いつもより早く来ただけだから。」
早いと言われたけど実際のところ彩が遅刻したとかではない。ただ俺が30分ほど前から来ていただけだし今も元々の待ち合わせ時間の20分前だ。
「ごめんね。服選んでたら少し出るのが遅くなっちゃって…。」
そう言われて彩の服装を改めて見てみた。服装は白のリブニットに小さな花の柄が入ったリブニットスカート、そして薄手のコートと春らしいものだった。一言で言うととても似合っている。そして…
「うん、可愛い。」
「えっ!?かわ…!?」
感想を言ったところ真っ赤になって慌てていた。そしてそのときの彩が不覚にも可愛いと思ってしまった。いや、可愛いのは当たり前か、彩なんだし(脳死)
「おーい、大丈夫~?」
「かっ…かわ…かわいい…って…」
あ、ダメだこりゃ。なんか知らないけどショートしてるよ。
「彩~?聞こえてますか~?」
「えっ…あっ…イサムくん…?」
「大丈夫?」
「えっ…あ…多分大丈夫かな?」
数分かけてなんとか彩を現実に連れ戻すことに成功した。
「とりあえず映画って何時から?」
「確か…10時30分上映だったと思うよ。」
「後40分か…。どうしようか。」
「じゃあショッピングモール見ていかない?私、気になってた服があるんだよ!」
「わかった。じゃあとりあえず行こっか。……あ、それとさ、変装とか大丈夫なの?」
「もちろん!抜かりはないよ…ほら!」
そう言いながらサングラスと帽子を取り出しそれをつけて自信家に胸を張った。いや、なにこの子行動の1つ1つが凄く可愛いんだけど。
「これで私も芸能人っぽいかな?」
「あー…そうだね。」
こんなやり取りをしながら俺たちはショッピングモールに向かった。
◆ ◆ ◆ ◆
ショッピングモールの服屋にて
「ねえイサムくん、このワンピースとかどうかな?あ、でもこっちのブラウスもスカートとあわせたら可愛いかも…」
彩は様々な服を見ながら色々とコーディネートを考えていた。隣にいる俺は女物の服なんかよくわからないからついていけないんだけど彩が楽しそうだしそれでいいかなって思ってる。
「イサムくんはこっちのワンピースとこのブラウスどっちがいいかな?」
彩が出してきたのは薄い紫の生地に小さな花のプリントがされたワンピースと水色のブラウスだった。
「因みにブラウスだったらこっちのスカートと合わせたらどうかなって思ってるんだけど…。」
「そうだなあ…。」
彼女の問いに考えること数分。そして出した答えは…。
「こっちのブラウスかな?」
「こっち?」
「うん。彩ってワンピースとか結構来てるイメージあるからさ。意外なところをついてみようかなと思って。」
「なるほど。」
「因みになんだけどさ、
「そっか。じゃあちょっと試着してみるね!」
そう言うと俺が選んだ服を持って試着室に入って行った。
「お客様、先のほど子は彼女さんですか?」
「いや、彼女って言うか…その……友達ですかね?」
「そうでごさいましたか。とても仲が良く見えてしまったのでつい。」
「失礼しました。」と言ってその場を立ち去り仕事に戻った店員さんを横目に俺は考えてみた。俺と彩が恋人か…と。無論嫌な訳ではない。彩は優しいし俺にとって憧れの人だ。そんな人と恋人になれるなど願ったり叶ったりだ。しかし彼女はアイドル、俺は一般人。いわや叶うことも危うい恋なのだ。もしそれで彩の夢が崩れ去るようなことがあれば…。
「イサムくん、どうかな?」
考えていたら彩が試着室から出てきた。先ほど選んだ服を見事に着こなしている。
「うん、凄く可愛いよ。それに色が少し違うからか新鮮だしね。」
「~~!そ…そうかな?」
彼女はまた顔を赤くした。そして再び試着室に戻り服を着替えて戻ってきた。
「じゃあ私これ買ってくるよ!」
「いいの?俺ファッションとかよくわからないんだけど…。」
「うん。だってイサムくんが選んでくれた服だから…。」
「え?」
「な…何でもないよ!それじゃ行ってくる!」
そう言うと彼女は慣れた手つきで会計を済ませた。品物を詰めてもらった袋を抱えた彼女はまるで新しい宝物を手にしたかのように嬉しそうな顔をしていた。
おや?彩ちゃんの様子が…?
そして次回はデート?編後編です。お楽しみに!
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