朝。
それは誰もが活動を始める時。
学校に行ったり、仕事に向かったりと忙しくなる時間帯だ。
もちろん学生ということを考えれば
彼も例外ではない。制服に着替え、朝食を食べ学校に向かう。そして人が行き交う道を歩きながら考え事をしていた。そんなとき…。
「おらどけやあああああ!!」
いつもはいないはずの自転車に乗った見るからにヤバそうなおっさんが現れた。しかもかなりのスピードで漕いでいた。
「誰かーー!そいつ捕まえて頂戴!」
後ろから誰かが叫ぶ声も聞こえた。どうしようかと考えてるうちに自転車の距離は迫っていってた。
すると突然『ぷすっ』と言った音と共に自転車の男がバランスを失い始めた。どうやら近くに落ちていたガラスの破片のせいでタイヤがパンクし、バランスを崩し始めたのだろう。つまりどうなるかと言うと…。
「おいお前!そこをどけええええ!!」
「えっ?ちょちょちょ!?」
自転車のコントロールが効かないまま男はイサムに突撃し、それを止めようとしたイサムは激突したさいに男の体重と共に自転車が倒れた為、そのまま二人は川原の方へと投げ出され転がり落ちて行った。
「痛ったたたた…。」
転がったことにより服の至るところに雑草がついてしまった。
「あ~あ…せっかくアイロンかけたのに…。」
「坊や、大丈夫?」
「あ、ハイ。どうも…。」
差し伸ばされた手を取るとそこには1人の男性がいた。
「いや~ありがとね~!あなたがあいつを止めてくれたお陰でアタシ、鞄取り戻せたわ~!」
「えっ?あっハイ…。ってまさかのひったくり!?」
「そうよ!イケてる顔して何てことしてくれるのかしら!信じらんないわ!」
と、ここで自転車の男がひったくりであったことよりもどうしても気になることがあった。
さっきから女口調で喋るこの人は男である。もう一度言おう、男である。
「(リアルでオネエって始めて見た…。)」
正直イサムは今の状況よりもこの人物のキャラの濃さに戸惑っていた。
「アタシもなんとか取り返そうとして近くの空き缶とか投げてたんだけど人が多くなるとそうは行かないからね~。坊やが止めてくれて助かったわ~!」
「アッ、ハイ。」
「あ、挨拶が遅れたわね。アタシは…」
と自己紹介をしようとしていた最中、ひったくりの男は彼らに背を向けて走り去っていこうとしていた。
「なんだよこいつら…。しかもおっさんの方、オカマかよ!気持ち悪っ!」
という捨て台詞だけ残して。
「あーーーー!!ちょっと待ちなさいこの不届き者めぇぇぇ!!」
「うるせぇーー!! 待つかよクソジジイ!!」
「誰がジジイじゃゴラぁ!」
そう言うその男性はイサムに「運が良ければどこかでお会いしましょ!」とだけ言ってひったくりの男を追いかけていった。
「・・・・キャラ濃。」
それが彼がオネエの男性に抱いた第1印象だった。
◆ ◆ ◆ ◆
「と、いうことが朝っぱからありました。」
「どこから突っ込めと?」
学校に来たイサムは今朝のことをアキラに話していた。その情報量の多さにアキラは少し頭を抱えていた。
「いや、リアルにオネエっていたんだね。初めて知ったよ。」
「というか結局そのひったくりどうしたんだよ。」
「知らない。」
2人で何気ない会話をしていると1人の少女が彼らの机の近くによってきた。
「おお~。二人ともどないしたんや。」
「あ、来てたんだ。ミチル。」
彼らの会話に混ざってきた少女、野方ミチル。
「いや~。こっちの教室久々やからな~。2人ともなかなか話せなくて飽き飽きしてたんや。」
「というかお前…鞄持ってきてるが忘れるなよ?お前の教室隣なんだから忘れても知らんぞ。」
「何ゆうてんねんアキラ。ウチそんなに忘れ物せえへんって。」
「この間ここに鞄起きっぱなしにして俺がお前の教室まで持っていったこともう忘れたのか。」
「え?そうやったか?」
「この鶏頭が。」
アキラとミチルが会話しているのを横目で見ていたイサムを見ているとミチルは彼に話をふってきた。
「あ、そういやイサムに聞きたいんやけどこの間ショッピングモールのゲームセンターおらへんかったか?」
「いたけど…。何で?」
「いや~ということはあれは見間違いやあらへんかったか~。」
「あれ?」
「この間おったやろ?ピンク髪の女の子と一緒に。」
その言葉を聞いた瞬間イサムは頭を抱えた。まさかミチルに見られていたとは…。
「いや~。まさかイサムにも春が来たとは思わへんかったわ~。」
「いや…。あれはその…。」
「それにその子とプリまで撮ってはるとはな~。」
「……俺にどうしろと?」
「今日放課後駅前のクレープ奢ってくれへんか?」
「わかった。」
こうして、彼女は教室から出て自分の教室に戻っていった。
「おい…。」
「どうしたの?」
「あいつまた鞄忘れて行ったぞ。」
「……俺が届けてくるよ。」
「頼む。」
こうして彼らはまた苦難を強いられるのだった…。
◆ ◆ ◆ ◆
そして時は流れ放課後に。
イサムは待ち合わせ場所の校門前に既に来ていた。そして後から彼女もやって来たのだ。
「待たせたな!」
「うん、待った。」
「ちょい!そこは『大丈夫!俺も今来たところ!』とか言うべきやろ!」
「いや、別に恋人でもないし良いかなって。」
「いやいやいや!そこ気にするべきとこやろ!その辺の気配り出来んと彼女のハート射止められへんで!」
「ちょっと!それは関係ないでしょ!?」
そんなことをわちゃわちゃしていたが時間も時間で押していたのでとりあえず駅前に向かうことに。
そして駅前。
「んで?どれにするの?」
「せやな…ウチはチョコバナナしようかな…。イサムはどうすんや?」
「うーん…。イチゴアイスにしようかな?」
「アンタのセンス…ホンマ女子力の塊やな。」
「そうなの?」
そんな会話をしていると彼らの番になった。
「さて、注文するで!」
「すみませ~ん。イチゴアイス1つ。」
「あ、ちょっと先に言わんといてや!おっちゃん!チョコバナナお願い!」
彼らが注文をするとクレープ屋のおじさんは慣れた手つきでクレープを作り、彼らに手渡した。もちろんイサム持ちでのお支払い。
「おお~美味そうやな!」
「アイスになのに意外と熱いんだねクレープって。」
「なんや?イサムってクレープ食べたこと無かったんか?」
「そうだね。こういうの始めてだから。」
「そうやったんか。まあそこにでも座って食べようや。」
2人は近くの席に座り、クレープを黙々と食べ始めた。
「そう言えばなんだけど…ミチルって楽器引けたっけ?」
「うーん…ドラムとかやな。でも急にそんなことゆうてどないしたん?」
「いや、ちょっと昔の夢をもう1回見てみようかなって思ってさ。」
「そっか。」
2人は少しの間沈黙していた。
「なんならアキラも混ぜてバンドやってみよっか。」
「バンド?」
「やるからにはとことんやる!決めたからにはまっしぐらや!」
「……本当ミチルって凄いよなあ。」
「まあその辺は追々アキラと相談するとして…イサム、クレープのアイス溶け始めとるで。」
「えっ?ウソでしょ!?」
イサムはあわててクレープを食べた。それにより口の周りにはベタベタとアイスがついてしまった。
「あーもうなにしてんねん。ほら顔こっち向けて!」
それを見かねたミチルはハンカチを取り出しイサムの顔を拭いた。
「それウチも食べてみてええか?」
「えっ?」
「なんならウチのもあげるけど?」
「いや、ちょっと待ってって!」
彼らの幼なじみ同士の時間は次第に過ぎて行ったのだった…。
近くにいた1人の少女のことも知らずに。
◆ ◆ ◆ ◆
この日、丸山彩はパスパレの練習が早めに終わり1人駅前を歩いていた。
「あっ…ここは確かパスパレのライブのチケットを売ったところ…。」
駅前には劇場がありそこで彩はパスパレの活動に難があったとき必死でチケットの販売をしていた。
「あの時、がむしゃらに頑張って…それから千聖ちゃんが協力してくれたんだよね。」
思い返すととても大変なものだった。だがそれも今となっては懐かしい。
「それにその後でイサムくんにあって…。」
それから色々なことがあった。彼のお陰で再び前を向けるようになったものの、その本人はどこか辛そうだった。だから彩は彼の力になりたかった。彼を支えたかった。
自分でも誰かを支えられる。そんな目指した自分の為に。そして…
「イサムくん…今どうしてるかな?」
彼の為に。
「そうだ。久々に連絡してみよ!もしかしたらこの辺りにいたりして……?」
そう言っていた矢先、彩はとあるものを目撃した。それは…
「イサムくんと…誰?」
知らない女子と一緒にいるイサムの姿だった。
それにその子とはとても距離が近いように感じた。例えるならそう…
恋人のように。
「あーもうなにしてんねん!ほら顔こっち向けて!」
そう言った少女は彼に近づきハンカチで口を拭いていた。仲の良い男子と女子ならそれくらい普通なのかはわからなかった。だが、彼らのその姿はまるで…
(恋人…みたい…。)
そう。2人の距離感はまるでそのようだった。今まで自分があそこまで彼と距離を縮めたことがあっただろうか?いや、無かった。そう思った彼女は自然と駅前から離れ始めた。まるでその光景から逃げるかのように。
(なんでこんなに心が痛くなるの?なんでこんなにモヤモヤしてるの?なんで…なんで…)
(なんで…私泣いてるの?)
彼女の元に吹く風が頬に流れる涙をそっと冷やしていた。
ふう…。とりあえずざっとこんなものかな?
ちょっと、ありがちな展開だな~とか思った人。お兄さん怒らないから正直に言いなさい。
新しく☆9評価をくださった邪竜さん、水色( ^ω^ )さん、ありがとうございます!
コメントの方も新たにくださった方、ありがとうございました!
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@kanata_kizuna