彩が柄の悪い男に絡まれていたところをミチルが助けてから、2人はミチルの薦めでショッピングモール内のスムージー店に来ていた。
「ウチはキウイスムージーにしようかな…。彩はどうすんの?」
「えっ?じゃあ…イチゴのスムージーお願いします。」
その後、ミチルの手引きで注文し、出来上がったスムージーを受け取った後に近くの椅子に腰をかけてスムージーを飲んでいた。
「すごく美味しい!甘いしとっても飲みやすい!」
「せやろ?ここのお店のスムージーは果物や野菜を新鮮な状態で使っとるからな!それにマスター厳選のやから栄養素も高いんや。美容にもいいらしいで。」
「そうなの!?」
「もち!」
それからと言うもの2人は他愛もないガールズトークに花を咲かせていた。ミチルは元々気さくな性格であり、先程の出来事もあった為か彩とは早くから打ち解けることが出来ていた。
「それにしてもまさかあのイサムが彩と知り合いやなんて思いもせえへんかったな~。意外と世界って狭いんやな。」
ミチルのその一言に彩はスムージーを飲んでいた手を止めた。
「そう言えば彩ってイサムといつ知りあったん?」
「えっ!?それは…少し前の話なんだけど私がちょっと怖いナンパの人に絡まれてるときそこにイサム君がいて私を助けてくれたんだ。」
「ふーん。あのイサムがなあ…。」
ミチルは遠くを見つめながら何かを考えていた。
「ねえ、ミチルちゃん。1つ聞きたいことがあるんだけど…いいかな?」
「ん?何でもええで?」
「あのさ…ミチルちゃんとイサムくんってどういう関係なの?」
「どういう関係っての言うてもな…。ただの幼なじみで腐れ縁って感じでしかないけど…。」
「でもさ…この間…。」
そう言いかけたが、それ以上言葉が出なかった。それを聞いてもし自分が思った通りの答えが帰ってきたら…もう立ち直れないかも知れない。そう思ってしまったのだ。
それでも聞きたかった。その自分の勘違いに賭けたかった。でももしその通りなら…という葛藤が彩の中で暫く続いていた。
「彩?どうしたんや?」
「あのさ…この間……駅前のクレープ屋さんでイサムくんと一緒にいたよね?」
「そうやな。イサムにクレープ奢らせてその場で食べとったな。それがどないしたん?」
「……ミチルちゃんはさ……イサムのこと…好きなの?」
勇気を振り絞って遂にその事を聞いた。その場で俯いていた彩には見えなかったが、ミチルはそれを聞いた瞬間、目をパチクリさせながら「はい?」と言ったような顔をしていた。
「あのさ彩…話が見えへんのやけど…。ウチ、そんな付き合っとるなんて一言も言うてへんで?」
「でも…あの時、イサムくんと何かしてたしそれに……顔近かったし…。」
顔を赤くしながら彩は呟いた。それを聞いたミチルはポカーンとしていたが、少しして突然笑いだした。
「ミチルちゃん?」
「ハハハッ…。なんや…?」
「笑わないでよ!私真剣なんだよ!?」
「ああ…せやったな。ごめんごめん。」
ミチルの行動に少し怒った彩に対して当の本人は笑っていたことを隠そうとせず、話の為に息を整えていた。
「ふう…。で、ウチとイサムが付きおうとるかどうかやったか?」
「うん…。」
「まあ…結論から言うと付きおうてないで?」
「えっ?」
ミチルの回答に彩は鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をしていた。
「いや、ウチはイサムとは付きおうてないよ?」
「えっ?でもあの時…顔を近づけてたのって…」
「ああ!あれな!あれはイサムの頬っぺたにクレープのクリームがついてたからとってあげてたんや。」
「じゃ…じゃあ…飛びかかっていた光景って…。」
「それは『イサムのクレープ一口くれー!』って感じやな。」
ミチルが言ったことを聞くと彩は顔を真っ赤にしていた。
こういった勘違いから始まる恋愛物語はドラマなどで沢山見てきたがまさか自分がそれをやることになろうとは…。しかもドラマの撮影とかではなく……プライベートで。
「なんやそういう事か!どういうことが良うわかったわ!」
「うう…。穴があったら入りたい…。」
彩は手で顔を隠しながらそう呟くいていた。
「でもそう思うって言うのはさ…もしかして彩ってイサムのこと好きなんか?」
ミチルに聞かれて暫く黙っていたが…
「うん…イサムくんのこと…好きだよ。」
「ほお…。」
彩の答えにそう呟いた。
「なるほどな~。つまりそういう事か~。」
「そういう事?」
「いや…まあ…そういう事はそういう事や!」
何かをはぐらかすようにミチルは「そういう事」と言いきった。それに対して彩は「そういう事ってどういう事!?」とわからないままミチルに問い詰めたのだが、当の本人は自分のスムージーを啜っていた。
「でも彩も乙女やな~。イサムって変なやつやろ?」
「言われてみればそうかもしれないけど…。でもイサムくんは優しいし、面白いし……何より私が苦しい時、傍でずっと支えてくれた。それに…私もイサムくんを支えたいんだ。私の夢を応援してくれたように、私もイサムくんの夢が見つかったときそれを傍で応援してあげたいんだ。」
「…そか。イサムも幸せ者やな。」
スムージーを飲んでいたいたミチルだが、ふと何かを思い出したかのようにそれを止めた。
「そう言えば彩って告白とかせえへんの?」
突然の発言に彩は飲んでいたスムージーを吹き出してしまった。その姿はアイドルとは思えないような光景で、もし千聖がいればたちまちお説教タイムになっていただろう。それに2人の座っている場所が人気の少ないところなのが不幸中の幸いなのかそれを見ていたのはミチルだけだった。
「ケホッ…ケホッ…。こ…告白!?」
「せや!どうせ好きなら告白とかいずれするんやないの?」
「うん…。そうしたいけど…。」
ふと千聖から言われたことを思い出した。
『アイドルとして生きていく為にはスキャンダルは死活問題よ。』
確かに彩たちの所属事務所は恋愛禁止ではない。だが、そんなことはマスコミには関係ない。極端な話、都合のいい情報を面白いように書き上げればそれでいい…という人も少からずいるのではないのだろうか。
もし、告白して付き合うことが出来たとしてもそれを記事にさせるとどうなるのか。
そうなると悪のりするものが増え、いずれはイサム、そしてその周りの人たちにも迷惑がかかる。そんなことは避けたい。しかし、だからといって夢を諦めることはしたくなかった。
二兎追うものは一兎も得ずという言葉があるが、そんな感じになるのかな…と彩は悩んでいた。
「もしかして…恋愛禁止令とかあるんか?」
「えっ…?そういうのじゃないけど……ほら、私ってアイドルでしょ?だからやっぱり禁止じゃなくてもそういうスキャンダルに成りかねないものは避けた方が良いのかな…って。」
「ふーん…。まあ、ウチはアイドル環境とかなんもわからんけど1つ言いたいこと言ってええか?」
「何…?」
「彩はさ、アイドル止めたくないし、イサムも諦めたくないんやろ?」
「…うん。」
「せやったら簡単やん。恋愛禁止令とかないなら正直になったらええやん。」
「………え?」
ミチルの突然の発言に彩は目を丸くした。
「だから、あれや…その…『二兎追うものは二兎とも取れ』ってやつや。なんかで言うとったんやけど…なんやったかな?」
その意見は彩にとって予想外の提案だった。
「でもそれだとイサムくんにも迷惑が…」
「かもしれへんな。そうなったら後は彩とイサムでどうにかするしかないかもしれん。それでもあたしは言いたいことがある。
それは『人は迷惑をかけるもの。それをどう捉えるかは相手次第』ってことや。まあ…ぶっちゃけると当たって砕けろ!ってやつやな。」
「当たって砕けろ…?」
「まあ実際ウチは頭使うの苦手やからな。だから迷ったらとにかくやってみるようにしてるんや。これまでもこうやって何回もピンチを乗り越えてきた。だからきっと…彩にもできる筈や。」
当たって砕けろ。
とにかくやってみるがモットーのミチルらしい言葉だった。
「まあ…後はあんた次第や。でも、あたしはあんたら2人ならきっと大丈夫やと思うとるけどな。」
「…こんな私でも…出来るのかな?」
「出来る!……多分。」
「多分!?」
余計な一言に彩は「多分ってどういう事!?」と不満の声を漏らす。
「でも、彩が本気でイサムのこと好きならどうにでもなると思うで?」
「ミチルちゃん…。」
その言葉を聞いて彩の心は少し軽くなった。少しして、彩は決意を入れ直すかのように頬を両手で軽く叩いた。
「うん。ミチルちゃんのお陰でなんか気合い入った。ありがとう!」
先程までとは違い、心からの笑顔になった彩はミチルに礼を言った。
「まあ…お礼ってわけやないけど…良かったら彩のスムージー1口飲んでみてもええか?」
「いいよ!」
その後、2人はガールズトークに花を咲かせ、親睦を深めていたのだとか。
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