「今日のバイトも疲れたな……」
CiRCLE のバイトの帰り道にいつもの言葉を呟きながら夜道を歩く。そのままスマホを開き通知をいくつか確認した。そこには母から『今日遅くなるから焼きそば机に置いてある』と着信があった。
「……バニラシェイクでも飲みながら帰ろうかな」
そのまま近くのファーストフード店に足を運ぶ。疲れた時はバニラシェイクを飲む。これから行くところのシェイクは程よい甘さで俺のお気に入りだ。疲労回復はこの手に限る。
店内に入ると夜遅くにも関わらず意外と客がいた。俺は列の最後尾に並び順番を待つ。
「ありがとうございましたー! 次の方どうぞー!」
思ったよりも早くに回ってきた。そのまま財布を準備してバニラシェイクを買って帰ろうと思っていたのだが……。
「あれ? キミは……」
「えっ?」
レジにいた少女はまさかのあのときの女の子だった。名前は確か……『丸山彩』って言ったかな?
「えっと……お久しぶりです?」
「うん! 久しぶりだね!」
あれから1週間はたっているだろうか。あの後俺は彼女を見送り帰ったので連絡先等は交換してなくもう会うことは無いかも知れないと思っていたのだが……。
「あのときはごめんね? わざわざ見送りまでして貰って……」
「いや大丈夫だよ。あのままだと不安だったし」
「それにしてもまた会えて良かったよ~。まだお礼も出来てないし……」
「いや、お礼ならもうしてもらってるから大丈夫」
「うーん……。そうなのかな……」
丸山さんは少々腑に落ちていない様子だった。
「えっと……それより注文してもいいかな?」
「あっ! すみませんでした!」
「じゃあバニラシェイク1つ」と注文をすませると会計を行い、丸山さんは奥でシェイクを用意する。本人の前でこんなことを考えるのもあれだが結構制服姿が似合っているな……と思う。
「お待たせしました! ご注文のバニラシェイクです!」
「ありがとうございます」
「あっ……あの……」
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帰ろうとしたら丸山さんに呼び止められた。一体何事だ? と思ったら「私もうあがって良いって言われたから少し待ってて貰ってもいいかな?」と言われた。
今更だけどあの時勢いで友達になったとはいえこんなに距離感って近いものなのかな?
「遅くなってごめんね?」
さっきまでのバイト服から普段着と思われる服に着替えて来た丸山さんにこれをかけられる。1つにくくっていた髪型もほどいていて変わった魅力が溢れて…………って俺は本人目の前に何を考えてるんだよ。
「イサムくん?」
「えっ……あ……はい?」
「どうしたの? 私の顔……何かついてる?」
「いや、あの……」
どう言えば良いのかな……。いきなり「ごめん、つい可愛いなって思って」とか言ったら絶対引かれる。というかこの台詞が許されるのは漫画の世界の彫刻のようなイケメンだけだ。
とりあえず無難に「少し考え事してた」とかでいいかな?
「イサムくん大丈夫?」
「うん大丈夫。
「え?」
や ら か し た !
いや、なんで本音と建前が逆に出てきちゃうの!? これアウトだわ。絶対気持ち悪いとか思われてる多分。そりゃ一回会ったくらいの男の人に「君可愛いね」とか言われたらさすがにアウトだよこれ……。
「ごめん! 今の忘れて……」
「えっ!? 気にしなくても大丈夫だよ!?」
「ホントなにやってんだろ俺……」
「私は気にしてないから大丈夫だよ? それに……」
そのあと何かボソッと呟いていたみたいだけどうまく聞き取れなかった。でも丸山さんは変わらず「それじゃ行こう?」と笑顔で話しかけてくれた。……優しい人で良かったよ本当……。
────────────────────
「ところでイサムくんって学校どこに行ってるの?」
「俺は……風島高校なんだけど知ってるかな?」
「うん。この辺じゃ結構有名な学校だからね」
そう、俺が通う高校は進学校でありながら部活にも力をいれる学校だ。上をみればまだ凄いところはいっぱいあるけどそれでもそこそこの知名度はある。
「私は花咲川に通ってるんだ」
「花咲川って確か女子高だよね?」
「うん」
その会話が終わってからしばらく沈黙が続く。ここまで自分がコミュ障であることに悔やんだことはないだろう。友達もろくにいない上に女の子と話すなんてことは授業のグループワークくらいのものだったからね。
「あ……あのさ」
静まりかえった空気を辛く感じたのか丸山さんが口を開いた。
「実は私……夢があるんだ」
『夢』
彼女が発するその1文字にはどういう訳か大きなものを感じた。まるでそれに自分の全てをかけているかのような。
「夢?」
「うん。私、アイドル目指してるんだ」
アイドルといったらテレビに出て歌ったり踊ったりしているようなイメージしかないけどとりあえず凄い人ってことはわかる。
「私はまだ研修生なんだけど……」
「研修生……ってアイドルのだよね?」
「うん。オーディションとか色々と出てるんだけど……私本番に弱いから何度も厳しい言葉貰ってばかりだけどね」
ちょっとだけ曇ったような顔で語っている彼女を横に俺は何も言えなかった。しかしそれも束の間で「でもね」と彼女は続ける。
「私……諦めたくないんだ。どんなに辛くても諦めなかったら夢は叶うって信じてるから。それに……私と同じように頑張ってる人たちを応援してあげたい、そんなアイドルになりたいから」
その時の目はとても輝いていた。そして……
その姿は夢を失った俺にとっては眩し過ぎた。
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あれからどれだけ会話をしただろうか。気がつかないうちに結構歩いた気がする。それだけ丸山さんとの会話が楽しかったということだろう。
「あ、私の家この辺なんだ」
「そうなんだ」
もうそんなところまで来たのか……。といってももう通ることはないと思うから良いんだけど。
「そういえばまだイサムくんと連絡先交換してなかったよね?」
「確かに」
「じゃあとりあえずRINEだけでも交換しておこうよ。またお話したいし」
彼女に言われるがままにスマホを取り出しRINEのアドレスを交換した。この「AYA」というのが彼女のアカウントだろう。とりあえず流れで友達に追加しておいた。
「丸山さん、ありがとね」
「あ、それとなんだけど……彩で良いよ?」
「え?」
「ほら、なんか……丸山さんって他人行儀みたいじゃないかな? 私たち友達なのに……」
そんなものなのかな? でも呼んでいいっていうなら……。
「じゃあ……彩? で良いのかな?」
「……うん!」
とびっきりの笑顔だ。100円なんかじゃ足りない。この笑顔、測定不能の可愛さだ。
「ありがとね。ここまで着いてきてくれて」
「いやいや、不安になるのも仕方ないとおもうよ?」
「じゃあ……また会おうね?」
「うん」
そう言うと「またね!」と言いながら家の中に入って行った。それを見届けて来た道を戻る。
『私……諦めたくないんだ。どんなに辛くても諦めなかったら夢は叶うって信じてるから。それに……私と同じように頑張ってる人たちを応援してあげたい、そんなアイドルになりたいから』
さっきの言葉が心の中で甦る。彼女は夢の為に頑張って今を生きている。それもアイドルという大きな夢の為に。一方の俺は何の目的もない、そして何の尖った物もない一般人。自分と彼女の違いなど一目瞭然だ。
「…………俺の夢……なんだったのかな」
誰もいない夜の道の中に1人の言葉が小さく響いた。
いつもの如く需要があるのかわからないけどオリ主の設定置いときます。
佐倉 勇
学年
2年生
誕生日
3月10日
好きなもの
卵料理、バニラシェイク
嫌いなもの
匂いが強い食べ物
趣味
音楽鑑賞、入浴
以上です。
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kanata_kizuna