ここは羽沢珈琲店。
多くの人がここに足を運び、友人とお話したり、コーヒーやケーキ等を食しブレイクしたりしている。
佐倉イサムは現在ここでとある人を待っている。
「いらっしゃいませー。」
カランカラン…とドアが開く音が鳴り響き、イサムはその方向を見る。
入店してきた人物はイサムが座っている席につくと、テーブルの向かいに座りかけていたサングラスを外した。
「久しぶりねイサムくん。」
そこに現れたのは白鷺千聖だった。
「久しぶり。」
「ええ。それにしてもあなたから呼ぶなんて珍しいわね?」
そう言われて「まあ…ちょっとね…」とイサムは目を泳がせた。
「彩ちゃんを誘わなくてもいいのかしら?」
「えっとー…その事については置いといて貰っていいかな?」
「最近ちょっと寂しがってたわよ? イサムくんと会えないって。」
そう言われるとイサムは何処かバツが悪そうにしていたのだが、「それより…」と話を切り替えた。
「今日はちょっと千聖さんに用事があったんだよ。」
「あら?浮気かしら?」
「いや、まだ結婚すらしてないからね?」
そうだったわね、と悪戯な笑みを浮かべながら千聖は呟く。
「それで、何の用なの?」
「あの…彩の誕生日なんだけどさ」
そこから2人の密談は始まった。
「……彩の欲しい物って何か知らない?ほら、服とか小物とか…」
「成る程ね。それで私に聞きに来たと。」
「そうなんだよ。」
千聖は何かを理解したかのように目を閉じた。
明日はイサムの大切な存在といえる人物、丸山彩の誕生日なのだ。そして彼はその日に贈るプレゼントについて悩んでいた。
「色々と1人で考えてみたんだけどさ、やっぱり女の子の好みってわからないからさ…」
「彩ちゃんにさりげなく聞いてみたらいいんじゃないの?」
「いや、本人に中々聞けないでしょそんなこと。」
「それもそうね。」
そう言いながらウェイトレスの少女に紅茶を注目した。
「因みになんだけどさ、千聖さんは何をプレゼントにしたの?」
「私たちは彩ちゃんに似合いそうな練習着にしたわ。」
「そうなんだ。」
千聖の話を聞きながらもイサムは自分は何を送ろうかと考えていた。
「何がいいんだろ…。」
「逆に聞くけど彩ちゃんとはそういう話をしないの?」
「そー言えばしたこと無かったな…。」
「……よく今まで一緒にいれたわね。」
千聖は呆れながらそう呟いた。
「……聞いておけば良かった…。」
「今から聞けば良いじゃない。」
「いや、このタイミングで聞いたら絶対バレるって。」
「…絶対に喜ぶプレゼントが1つあるわよ?」
「それは?」
千聖の提案に食いつくようにイサムは反応を示した。
「貴方よ。」
「は?」
しかし、帰ってきた答えはいまいち理解出来ないものだった。
「だから彩ちゃんに『プレゼントは俺だ』って言えば良いのよ。」
「……却下以外あり得ない。」
「そう?きっと喜んでくれるわよ?」
「というかなんつー爆弾発言してんのあんたは。」
そう文句を言うイサムに対して千聖はため息をつく。
「じゃあ逆に聞くけどあなたが彩ちゃんに贈りたいものは何かしら?」
「え?」
「相手の欲しいものを考えるのは勿論大事だけどわからない場合は貴方が彩ちゃんに贈りたいものを選んであげるっていうのも1つの手よ?」
「そうなの?」
「ええ。特に彩ちゃんは純粋だから変なものじゃなければ喜んで貰えるはずよ。」
そう言いながら千聖は注文した紅茶を飲み、時計を見ると荷物を纏め始めた。
「そろそろお仕事に向かわなきゃいけないから私は行くわね。
…プレゼント、見つかるといいわね。」
そう言い残して千聖は紅茶の代金を支払いお店を後にした。残されたイサムは暫くその事について考えた後にあるところに電話をしていた。
「もしもし?……うん、ちょっと今から大丈夫?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
12月27日。彩はパスパレのメンバーと共に誕生日パーティーをしていた。
「彩ちゃん、さっきからプレゼントばっかり見すぎじゃない?」
「だって…本当に嬉しくて」
「あはは!やっぱり泣いて喜んでるね!」
「本当に日菜さんが言った通りになってますね…。」
パスパレメンバーからもらったプレゼントを大切に抱えながらパーティーを楽しむ彩だった。しかし、1つだけどうしても気になってることがあった。
「(そう言えばイサムくん…今どうしてるのかな…?)」
昨夜、○INEでイサムから『明日の夕方空いてる?』とメッセージがあったのだが、彩はその時間は既にパスパレメンバーに呼ばれていた為、理由を言って『ごめんね?』と返信した。
何の要件だったのかは教えて貰えなかった為にわからないが、なんだか何時もより寂しそうな雰囲気であったというのが画面越しに感じた気がした。
「アヤさん、どうかしましたか?」
「へ?」
イヴに心配そうに見ていることに気付き彩は慌てて「大丈夫だよ?」と笑った。それを見ていた千聖は何かを考え、スマホで何処かに連絡をいれていた。そして連絡が終わると彩たちの傍に戻って行った。
「千聖ちゃん、どこ行ってたの?」
「ちょっと友達から連絡が来てね?ところでそろそろ時間も遅いし今日はもうお開きにしない?」
「えー?まだ出来ないのー?」
「でも確かにもう8時越えてますしね…。」
「ええ。私も明日は早いからそろそろ帰らないといけないのよ。」
「うーん…じゃあしょうがないねー。」
「ナゴリオシイですが…。」
そうして各々は片付けをして、帰宅の準備を始めた。彩も制服に着替えて荷物を纏めていた時…
「彩ちゃん、ちょっといいかしら?」
千聖に呼び止められた。
「千聖ちゃん?どうしたの?」
「イサムくんなんだけど今CiRCLEにいるみたいよ。」
「え?」
「気になってたんでしょ?顔に出てるわよ?」
そう言われた彩は次第に顔が暑くなっていくのを感じていた。それを見た千聖は面白かったのか少し笑っていた。
「そ…そんなに出てるの?」
「ええ、今もね。」
「うう…。」
「ほら、早く行かないとそろそろ向こうも終わっちゃうわよ?」
「…うん!」
そう言われ、彩は駆け足でスタジオを去っていった。
「さて、後はあなたの番よ。イサムくん。」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「3番スタジオの掃除行ってきます。」
「うん!……それにしてもごめんね?突然入って貰っちゃって。」
「いえ、僕も予定なくなっちゃったので大丈夫ですよ?」
「……そう?」
そう言いながら箒と塵取りを手に取りスタジオに向かおうとしていた。
「(プレゼントは…最悪郵便受けにいれようかな…。いや、やっぱり遅くなっても手渡しするべき?)」
そんなことを考えているとお店の扉が開いた。
「あ、すみません。今日はもう閉店なんで…」
そう言いかけた時、イサムは目を疑った。
「イサム…くん…」
「彩?なんでここに…」
「良かった…はぁ…はぁ…間に合った…」
息を切らしながら喋る彩に「大丈夫?」とイサムは声をかけた。その光景を見ていたまりなはイサムを呼んだ。
「まりなさん?どうしたんですか?」
「今日はもう上がっていいよ。お客さんいるし。」
「え?でもまだ掃除残って「帰りなさい?」いやでも「帰らないとバイト代減らすよ?」……わかりました。」
しぶしぶ承諾するとまりなは「それでよし!」と右手でサムズアップをした。言われるがままにバイトから上がったイサムは待っていた彩のところに向かい、CiRCLEを後にした。
「ところでどうしたの?というかよく俺がCiRCLEにいるってわかったね。」
「千聖ちゃんが教えてくれたんだ。」
「……そういうことか。」
そう呟きながら自身の○INEの通話画面を見る。そこには千聖からの「今どこでなにをしてるのかしら?」という1文が映っていた。
「あのさ…イサムくん、あのメッセージのことなんだけどさ…」
そう言われたイサムは「そうだった。」とあることを思いだし、鞄から1つの箱を取り出した。
「これなんだけど…」
「これって…」
「うん。
ハッピーバースデー、彩。」
彩は箱を受け取り、その瞳に涙を浮かべていた。
「私の誕生日…覚えてたんだ。」
「うん。麻耶さんから聞いたんだ。」
「えへへ…。なんか凄く嬉しいな…。
…開けてもいいかな?」
イサムが頷くと、箱の紐をほどき蓋を開けた。
その中にはピンクと白のチェック柄のシュシュが入っていた。
「可愛い…。」
「ほ…ホントに?」
「うん!何処かのお店で買ったの?」
「いや、実はこれ……作ったんだよね。」
「え?」
イサムの言葉に彩は驚いた。
「このシュシュ、イサムくんの手作りなの!?」
「うん。ミチルに相談に乗って貰ったら『せっかくだし、作ってみたらええんちゃうか?』って言われて教えて貰ったんだ。」
それを聞いた彩はシュシュを大切そうに握ったまま…泣いていた。
「彩!?どうしたの!?」
「嬉しい…凄く嬉しい!最高のプレゼントだよ…!」
「ホントに?」
「うん!ありがとう!」
「…良かった。」
そのまま2人は手を繋いで歩いて行った。その後、イサムが彩の家まで彼女を贈り、その際に彩の母親に「どうせなら泊まって行けばいいのに~」とからかわれたらしい。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ありがとうございました!」
後日、彩はファーストフードショップにてアルバイトをしていた。何時ものようにピンクの髪をポニーテールにしていたのだがその髪には今まで無かったシュシュがつけられていた。
「彩ちゃん、そのシュシュ可愛いね。」
隣のレジにいた花音にそう言われて、シュシュを左手で触ると恥ずかしそうに…それでいて嬉しそうにこう答えた。
「うん。私の…大切な宝物の1つなんだ。」
ハッピーバースデー彩ちゃん!
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