CiRCLEのイベント当日。
イサムは参加しているバンドの照明や音響を大きくミスする事無くその仕事をやり遂げていた。
「Pastel*Palettesでしたー!」
ちょうどパスパレのステージが終わり次のバンドの準備の時となった。この後にはハロハピ、Roseliaと後が控えているのでまだまだ気は抜けない状態だ。
『それではこれより5分の休憩を行います。観客の皆様は水分補給などを行い、体調を整えてください。』
そうアナウンスをした後、イサムは再びマニュアルを確認した。
「イサムー!」
そんな中、こちらに走って向かってくる少女がいた。
「えっと…弦巻…さん?」
「イサム!花音を見なかったかしら?」
その少女…弦巻こころはイサムの元に来るや否や質問をしてきた。どうやら彼女のバンドメンバーである松原花音を探しているようだった。
「松原さん?見てないけど…」
「お手洗いに行ったきり戻ってこないからみんなで探しているの!」
「……手伝おうか?」
「ええ!助かるわ!」
そうしてこころに協力することにしたイサムは先程まで飲んでいた水の入ったペットボトルをその場に置いて花音を探し始めた。
「松原さーん?」
辺りを見回してみるがそれらしい人物はどこにもいなかった。「どこに行ったんだろうなぁ…」と考えながら歩き続けるが、近くの扉の先から物音が聞こえた。もしかしたらその部屋に花音がいるのでは無いのかと思い、イサムは軽くノックをし…
「失礼します。」
と、扉を開けた。
しかし、その選択は彼にとんでもない物をもたらしてしまった。
「・・・・・・」
「…………イ…イサムくん!?」
そっとイサムは扉を閉め、Uターンをした。その時、イサムはただ「俺は何も見ていない」と呟きながら別の場所に行こうとしていたのだが…
「あら?どこに行くのかしら?」
後ろからとんでもない魔のオーラを感じ思わずその足を止めた。
「ちょっとお時間良いかしら?」
「いや、その…僕には用事が…」
「良 い わ よ ね ?」
「アッハイ」
そのまま彼は千聖によって連行されて行った。
その後、彼の姿を見たものはいなかったという…
「いや死んで無いわ!」
◆ ◆ ◆ ◆
「それで?言い訳を聞こうかしら?」
先程の部屋に連れ込まされるや否や正座させられてるイサムに対して、
「いやあれは…」
「どういう事かしら?
私たちの着替えを見てそのまま逃げようとするなんてねえ?」
どうやら彼が見たものは彩、千聖、そして麻弥が着替えをしていた光景だった。パスパレがステージを終え、最後の全体でのステージの準備の為にアイドル衣装から今日のために作られたTシャツに着替えていたところを見てしまったのだ。
「それで?ど う な の か し ら ?」
「……事故です。」
そのせいで今絶賛お叱り中なのだ。
「イサムくん…私は…大丈夫だから…本当の事を言って?」
「あれ?俺の味方ゼロ!?だから事故だし不可抗力だって!!」
遂に彩にまで哀れみの目を向けられてしまう始末。もうこの時点でイサムは何を信じれば良いのか分からなくなり始めていた。
「まあまあ…イサムさんも反省してるみたいですし…今回は許してあげましょうよ。」
そんな彼に唯一救いの手を差し伸べてくれたのは麻弥だった。その時、イサムには麻弥がいつもの何倍も輝いているように見えた。
「そ…そうだよ!イサムだって悪気があった訳じゃ無いと思うし…」
「うん、手のひらくるっくるだよね彩ちゃん?」
「そ…そんなこと…」
「……まあいいわ。今回だけは許してあげるわ。」
その一言を聞いてイサムは安堵した。
「でも…次同じことしたら…わかるかしら?」
「……イゴキヲツケマス」
(千聖さんと付き合った人…絶対尻にひかれそうだよね…)
「あら何か?」
「イエ!ナニモ!」
この日、イサムは千聖の恐ろしさを始めて経験したのだった。
因みにこの後ちゃんと花音も見つけ、ステージに間に合ったのだとか。
◆ ◆ ◆ ◆
「今日は本当に!」
「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
全体のステージが終わり、今回の参加者全員での観客への挨拶も終わった。その後、お客さんが帰っていくのを見届けた後、俺を含めるスタッフは片付けを行っていた。
「イサムくん!今日はお疲れ様!」
「お疲れ…様ですっ…。」
その場に来たまりなさんと俺は挨拶を交わした。その時の俺はかなり重量のあるダンボールを1人で持っていた為、会話も途切れ途切れになっていた。
「大丈夫?」
「大丈夫…です。もう少しです…から。」
「もー…キツイなら素直にそう言いなさい!」
まりなさんは俺の持っていた荷物の反対側を持った。すると荷物の重みが一気に来たのかまりなさんも一瞬荷物を離しかけた。
「やっぱり無茶してたじゃん。」
「……すみません。」
そのまま2人がかりで運び、目的の場所につくとその荷物を指定の場所に置いた。
その後は機材のチェックやステージの清掃などを行い、後片付けは終了した。
「お疲れ様でした〜。」
全てが終わり、スタッフさん達は解散となる。もちろん俺も普段の上がり時刻からはかなり遅くなってしまったがようやく帰宅することが出来る。
「眠…」
ここ数日無理をしたせいか落ち着いた途端に一気に疲れが押し寄せてきた感じがした。
今日1日を頑張った自分へのこ褒美としていつもの様にファーストフードショップでバニラシェイクを購入しようとし、入店した。
「いらっしゃいませー。」
レジの方を見ると全く知らない女性がいた。
「(流石に今日はいないか…)」
そう思い、レジでバニラシェイクを注文をしてそのままお店を出た。
そう言えばと古い記憶を思い返してみる。
最初に彼女と俺が交友を深めたのもここで会えたからだ。
「思えばあの時から…始まってたんだよなぁ。」
彩にはたくさんのものを貰った。多分彩と出会って無かったら未だに夢が何なのかなんて答えが出せていなかった。
きっと周りが先に進んでいく中で俺は何時までも動けずにその場で縮こまっていたのだろう。
でも今の俺ならそれが何となくわかる気がする。悩み続けて、手探りで色々と試してみて、その答えを掴もうとしてきた。
俺がやりたいことは何なのか。俺の夢は何なのか。
「(俺の夢は…)」
そんなことを考えながら俺はバニラシェイクを飲みながら再び我が家へと歩き始めた。
◆ ◆ ◆ ◆
「この間のCiRCLEのライブ見た?」
「うん!すっごく楽しかった!」
「私も何か楽器始めてみようかな〜。」
次の日、学校に行くとクラスの女子たちがCiRCLEのライブについて語り合っていた。話を聞く限りどうやら好評だったらしく、どのバンドが好きかとかあの曲が良かったとか話しているのを聞いているとイサムも自分の事のように嬉しくなった。
「どうした?随分と嬉しそうだな。」
「そうかな?」
アキラに言われてイサムはいつもの様に返答した。
「ねえアキラ、誰かを応援するのって…悪くないね。」
「……何なんだ藪から棒に。」
「別に?」
どう見ても何時もよりも機嫌がいいように見えるイサムを見て、アキラは少し変な物を見ているような気持ちになった。
「ねえ、今日もKINGDOM行くの?」
「そうだな。やれるか?」
「もちろん。ちょっとやりたいこともあるからね。」
「やりたいこと?……なんだそれ「イサム!アキラ!おるか!?」」
突然教室の扉を勢いよく開けてミチルが2人のいる教室に入ってきた。
「煩いぞミチル。朝くらいもうちょっと静かにできないのか。」
「それどころやないねん!コレ見てやコレ!」
「えっ?なにこれ…。」
3人はミチルが持ってきたチラシを見て驚愕していた。
ここからこの物語もクライマックスに向かいます。
イサムの夢とはなにか、そして彩とイサムは無事結ばれることが出来るのか。皆さん、クライマックスも是非お付き合いよろしくお願いします!
良ければコメントや評価もよろしくお願いします!